【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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―― 深い、深い 戀でありました ――
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小さな村の外れにある寂れた寺に、一人の男が住み着いたのは、村人たちが種まきや田植えに忙しい、ある春の日のことでありました。
目から下を布で隠していても美しいと分かる顔には、左目を塞ぐように大きな傷が走っておりました。
男はたいへん無口で、一体何者かと不審がる男衆にも、色めき立つ女衆にも、僅かな言葉をぽつぽつと返すばかりでありましたので、村人たちは、やがて皆それぞれの田畑の世話に戻って行き、いつかその男のことも、あまり思い出さなくなりました。
男は名をカカシといい、腕の良い仏師でありました。住み着いた寺の離れで、仏様の姿を描き、それを木から彫り出して、日々を過ごしておりました。
男のその姿を知っているのは、寺の者達と、寺に通う身無し児の小さな男の子、そして私だけでした。
彼は、時折ひどく憂いに満ちた顔をしておりました。
それでも仏様と向き合う時には、慈愛と思慮に満ちた、おだやかな目になりました。
その目が私に向けられるたび、私の心は幸せで満ちました。
ある晩、彼の手が私の顔に一筋の傷を刻みました。
それは、私が仏ではなく、彼だけを恋う者となった証だったのでしょう。
彼は私にイルカと名付け、昼間は仏様を、夜には私を、丹誠を込めて掘り出していきました。
そしてある夜、私はとうとう、彼の前に姿を現すことがことができたのです。
彼は私を見て、少し驚いたようでした。けれど私が彼の手に触れると、そっと私を抱きしめてくれました。そして、「ああ、イルカ。やっと会えた」と、一筋涙をこぼして言いました。
私も、彼を抱きしめました。
「私も、こうして貴方にお会い出来る日を、ずっと待っておりました。ずっと、貴方とこうしたかった」
それから私たちは、夜毎に逢瀬を重ね、そうして、たくさんの話をしました。どこで生まれたか、どのようにしてここに来たのか。春の花、夏の鳥、秋の虫の音、冬の雪。
人と人ならざる者であっても、同じ世界に在る者。話すことはいつまでも尽きませんでした。
ある晩、彼は大切な道具を、随分難しい顔でじっと見ていました。そういえば、昼間は本堂の阿弥陀如来様を熱心に見つめていたのでした。
「どうかなさいましたか」
そう尋ねると、彼は寂しそうに微笑みました。
「いや、俺に仏様を彫る資格があるのかと思ってね」
「…どうしてそのようなことをおっしゃいます」
問うと、彼は左目の上を走る傷を手でなぞって言いました。
「俺はね、俺を妬んでこの目を切った連中も、仏師としての志ではなく金に従った師も、心のどこかで許せていないんだ。あんな連中まで、なぜ救ってやらなければならないのかと…どうしても、そんな思いが浮かんできてしまう。
仏様の心に添えぬ者が、仏様の姿だけを写しても、それはただ形だけの…空っぽの木の塊にしかならないだろう」
彼は、膝の上で拳を握りしめました。
私は、彼の手に触れました。涙こそ流れていませんでしたが、彼の心が、裏切られた悲しみに泣いているのが伝わってきました。
「…体も心も、傷付けば痛むものでしょう。それは罪でも悪しき事でもありません。痛みを知らぬ者に…痛みを思いやり寄り添える心を持たぬ者に、人の痛みが救えましょうか」
「それは…」
「妬みも、志を歪めることも、決して心安らかなことではございますまい」
彼は微かに、青の右目を見開きました。私は彼の左目の傷を、そっと指で撫でて言いました。
「カカシさん、貴方は正しく私の姿を見付けて下さった。貴方を恋う私の心さえ。…大丈夫です。貴方のその目には、ちゃんと仏様の姿が見えているはずです」
彼はしばらく考えこみ、それから静かに微笑みました。
「あの事がなければ…俺は今ここにいなかったし、イルカを見つけることもできなかった。この傷が、俺をイルカへと導いてくれたのかもしれないね」
「…カカシさん…」
「ありがとう、イルカ。もう大丈夫」
それから彼は、迷いなく鎚と鑿を振るい続け、やがて季節が移る頃、阿弥陀如来様を彫りあげました。
そうして、私を連れて寺を去りました。
私と彼は、村から外れた海辺の小さな庵で、穏やかで幸せな時を過ごしました。
彼は、その腕前を伝え聞いた人々に頼まれた時に、仏様を描いたり、小さな仏像を彫ったりして暮らしていました。
長く共にいるうちに、私はいつの間にか自分を「俺」と呼ぶようになり、彼は「うつってしまったねえ」と言って笑っていました。
やがて、その庵があちこち傷み、傍に芽吹いた冬青(そよご)の木がすっかり大木になる頃、彼は静かに息を引き取りました。
それは、人と人ならざる者の避けられぬ別れでありました。
泣いて泣いて、このまま涙が止まらぬのではないかと思うほど泣いた頃、私に語りかける声がありました。
―― イルカ、もう彼の魂を送っておやり。お前がそのように泣いているから、彼は心配で行けないのだよ。このままでは生まれ変わることもできぬ
「俺は像の化身です。この身が朽ちぬ限り死ぬこともなく、カカシさんを待ち続ける事しかできません。けれど、カカシさんではない誰かに拾われて、人目につかぬところに置かれるかもしれない。人の手の届かぬところへ打ち捨てられるかもしれない。そうなれば、永遠に会えないまま待ち続けることになるでしょう。
俺も…俺もカカシさんと一緒に行きたい。それが叶わぬなら、せめてこのまま朽ちて消えてしまいたい…」
声の主はしばらく思案しているようでした。そうして、やがて静かに言いました。
―― その者は探し見つけ出す者。お前は待つ者。その役目は変えられぬ。それでもよいか
私は迷わず答えました。
「構いません」
―― その運命(さだめ)は彼からお前の記憶を失わせてしまうだろう。お前もこの約束を思い出すことは出来ぬ。巡り合うまでは彼のこともその思いも忘れることになるだろう。それでもよいか
「構いません。カカシさんと共に在れるのならば」
―― ならば、その願い聞き届けよう
声の主は静かに微笑み、二人を暖かな光が包みました。
俺は貴方を信じて待っています
だからどうか、どうか早く見つけて、俺を
俺を見つけられるのは、貴方だけ
貴方の目印は左の目蓋の上下に走る傷
それは俺と貴方を繋ぐ糸
俺の目印は鼻を横切る真一文字の傷
それは貴方を恋う俺の心
俺の名はイルカ
貴方の名は――
+++
ある日の夜更け、小さな村の外れにある寂れた寺で、小坊主が大慌てで和尚の手を引いて廊下を渡っておりました。
「和尚様、早く早く!!」
「そう慌てるな。仏像が一人で出歩くわけもなし、見間違いじゃないのか?どうもお前はそそっかしいからなあ」
「だって本当に無いのです!ほら!!」
本堂の入り口で小坊主が指差した先では、阿弥陀如来様が静かに微笑んでいらっしゃいます。
「…あれ?」
「…おられるじゃないか」
和尚は呆れたようにため息をつきました。
「いや、でも…あれぇ?」
「夢でも見ていたんじゃないか?」
「そんなわけありません!ま…まさか物の怪の仕業では…」
「ハハハ、物の怪か」
和尚はおかしそうに笑いました。
「よしんば物の怪であったとしても、物の怪にも心もあれば情もある。大事ない」
「はぁ…」
「さあ、仏様はちゃんとおられる。早くお務めをすませておいで」
「はい…では…」
和尚に優しく諭されて、小坊主が首を捻りながら立ち去った後、和尚は静かに阿弥陀如来様に近付きました。
丹念に掘り出された優しげな手には、黒く長い髪が一筋、絡みついています。その髪は、清らかな光を纏って、水面(みなも)のようにきらきらと煌いておりました。
和尚はその髪を、丁寧に懐紙に包みました。
「…あなたは本物の仏師でございました」
そう言って、懐紙を大切に懐に納め、阿弥陀如来様に手を合わせました。
「阿弥陀如来様、どうかカカシ殿を…カカシ兄ちゃん達をお守りくださいませ」
それは 今では誰も知る者のない物語
一人の仏師と像に宿った魂の
深い 深い 戀の物語でありました
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