【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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目が覚めたら、木目の並ぶ知らない天井が見えた。
こういうことはしょっちゅうとは言わないが、今までに何度もあるから驚かない。
だが呑んで潰れた誰かの部屋でも病院でもなさそうだし、と起き上がって今度はさすがに驚く。

チャラリ

胸元で金属質な音を立てたのは、文字通り金属の細い鎖だった。
鎖は首からやけにでかいベッド、そして床の上を長々と這い、壁にボルトでガッチリ取り付けられた太い輪っかに繋がっている。
ぎょっとして首元を探ると、革製の首輪みたいなもんが巻かれていた。
鎖は細くて軽く、ちょいとチャクラをこめれば引きちぎれそうだが、そこで気付いた。
――チャクラがほとんど練れない。
ものすごく集中すれば少しは使えるが、得意な水遁ですら口からちょろちょろと零れるくらいで、涎のように間抜けに垂れた水を手の甲で拭いながら結論を出す。

俺はどこかに閉じ込められている。

これは首輪と鎖だけで判断した訳じゃない。
安易な結論に飛び付くなと言う奴には、“あれ”を見せてやりたい。
さっきから視界の端にちらちらと入っていて、でもどうしても信じられなくて無視していた“あれ”。
俺の頭に浮かんできては押し込んでいた単語と、やっと向かい合う。

『座敷牢』

本来ドアがあるべき壁の一部には、床の上にベッドという様式の部屋には不似合いな木製の格子が嵌まっていた。
壁一面に格子がないのは、まさかと思うけどプライバシーに配慮してるとでもいうつもりなんだろうか。
無理すれば斬新なデザインのドアと思えないこともないが、素っ気なく頑丈さだけが取り柄といった感じの木格子は、やっぱり座敷牢としか思えない。こんな時代錯誤なもんはどっかの大名の奥座敷とか、旧家の離れや地下室、遊廓にしかないもんだと思っていた。今まで任務でお目にかかることもなく、半ば怖い話としてしか聞いたことがなかったので、もしかしてここはその内のどこかなのかと考える。
何らかの理由で俺はここに監禁、或いは好意的に考えると隔離されているという現実を、まずはいったん受け入れることにする。そして現状把握に務めることにした。

今身に付けているのは前開きのパジャマだ。
最後に記憶にあるのは支給服だったから、鎖が着替えの邪魔にならないようにという配慮だろう。誰のセンスだか知らんが白地にいろんな種類の犬のイラストが散らばっている、青年男子が着るにはどうかと思うデザインだが、たぶんものすごく上質な物だ。
ベストや額宛、支給服その他の装備は見当たらないので、付随した仕込みや武器等も一括して取り上げられたと思っていいだろう。結い上げていた髪はほどかれているから、髪紐に仕込んでいた札も取り上げられている。
この辺りまでは予想通りだ。
予想外なのは、この部屋だった。
見渡したところ二十畳くらいはある広々としたワンルームに、俺が座ってるベッドと本棚とエアコンと洋服箪笥、キッチン、冷蔵庫、ダイニングテーブルセットがあるのに、テレビの前には卓袱台と座布団まで置いてある。
窓がないのは当たり前としても、天井に嵌め込まれたマンホールくらいの大きさのガラスからは柔らかい光が落ちていた――あれは外の光じゃないか?
監禁というにはあまりにも待遇が良すぎる。
とにかく一通り視認を終えたので、次は切羽詰まった欲求を満たすための大事な施設を探すことにして、フローリングのひやりとした床に足を下ろした。

誰か様子を窺いに来るかもと、目は壁に嵌まった木格子に向けたままチャラチャラと鎖を鳴らしながらもう一つのドアへと向かう。
こちらは普通の引き戸で、そっと開けてみるとトイレだけではなく広々としたバスルームまで完備されていた。
中は洗面所と脱衣所があり、もう一つドアがあるからあれがトイレだろう。どれくらい寝ていたのか、けっこうな限界を訴えてくるので取り急ぎトイレで用を足す。
ここも監視されているかもしれないが、構うもんか。どうせここでの生活は誰かの監視下にあるんだろうから、いちいち気にしてたら身がもたない。
すっきりしてトイレを出て手を洗うと、脱衣所の向こうの風呂場が気になった。ここもチェックしておこうと引き戸を開けた瞬間、思わず声を上げてしまった。

「なんじゃこりゃあ⁉」

風呂場は俺の想像を遥かに超えた、総檜造りだった。
新しい檜特有のつんと尖った清浄な薫りを胸一杯に吸い込むと、恐る恐る湯槽を覗きこむ。
今は空っぽだが、ここに溢れんばかりに湯を溜めて入る風呂は最高だろう。ごくりと喉を鳴らす音で我に返り、さっと風呂場から飛び出る。
危ない危ない。危うく敵の術中にはまるところだった。
敵の思惑も、そもそも敵かどうかすら分からない状況だが、風呂の一つで俺を籠絡しようとはいい度胸だ。総檜造りの風呂はかなりヤバかったが。
引き戸をぴしゃんと閉めて馥郁たる檜の薫りを遮断すると、ほっと息をつく。
そして思ったより現状がヤバいことに気付いてぞっとする。

目的が何であれ、この環境を用意した奴は俺を知り尽くしている。

明らかに監禁するための部屋なのに、無駄に豪華な総檜造りの風呂。
部屋が洋室なのに、わざわざ用意された卓袱台と座布団。
これらは俺の趣味嗜好と普段の生活様式を知っているからとしか思えない。
まだ確認はしてないが、賭けてもいい。
台所の収納か冷蔵庫には各地の限定ラーメンが用意されているだろう。本棚にあった本や巻物はきっと、忍術の稀覯本や稀少な巻物も多く収められているはずだ。
俺はしばらく立ち尽くしていたが、よしと腹を括る。
目的が何であれ、まずは相手からの接触がないと今の段階では何も分からない。
ならば次にすることは一つ。
腹が減っては戦ができぬってことで、腹ごしらえだ。



ベッドと対角線上にある台所に立つと、すぐ横にある玄関というか木格子が嫌でも視界に入る。
人の気配はしないが、なんとなく見られている気がして、そうっと近寄ってみた。木格子の隙間は十センチくらいで、外側にはなんとも古風な馬鹿でかい閂と錠前が取り付けられている。隙間から手を出せば届くことは届くが、チャクラ認識型も併用してるようで閂はびくともしなかった。まぁ、期待はしてなかったけどな。
格子に顔を押し付けて外を覗いてみたが、薄暗い通路が奥へと続いてるだけでほとんど何も分からなかった。
だが一つだけ推測できたのは、ここは地下室なのではないかということだった。
奥の方にうっすらと上へと続く階段が見えるような気がしたのだ。それに、通路の壁には通気孔があった。
そうすると部屋の天井にあるガラスから差す光は、やはり外からのものだろう。
原則として捕虜にはカレンダーや時計など、時間の経過や現在の時間を教えるような物は与えない。
それに反するあの天井からの光は、なんとなく俺への気遣いに思えた。時計ほどはっきりと時間を教えると外の世界での生活を思い出させて焦燥感を煽るが、日差しならそれがだいたいの感覚になる上に、昼夜の区別が付けられるので体調は崩しにくい。なんならあの日差しを浴びてもいい。人間は長期間日光を浴びないと骨も弱るし鬱傾向に陥る。そこまで考えて、再びぞっとした。
やっぱりここは長期間の幽閉を目的としてるのだろうか。
それなら尚更ここでの自分なりの生活リズムを作り上げる必要がある。
監禁生活に負けないように。
改めて気合いを入れ直すと、その為の腹ごしらえをすべく冷蔵庫のドアを開けた。

一人暮らしには大きすぎる冷蔵庫の中には冷蔵タイプのラーメンや水、お茶などドリンクの他に予想外の物がぎっしり詰まっていた。
ビール。
発泡酒ではない、正真正銘の缶ビールだ。
敵は俺をどうしたいんだろう。まさかビールで酔わせて何かを自白させるとか?
仮にも中忍相手にそんな馬鹿な、と首を振りながら野菜室を開けると、今度は野菜がみっちり詰まっている。冷凍庫には肉類各種とアイス。冷凍食品のレンジで温めてすぐ食べられる炒飯やおにぎり、麺類まで揃っている。
これではまるっきり普通の家庭の冷蔵庫じゃないか。
台所の収納にはやっぱりインスタントラーメン。それとインスタントの味噌汁やスープ、お目にかかったこともないような調味料の数々。
食材の豊富さに眩暈すら覚えて、いったん深呼吸をする。
それから冷凍食品で一番馴染みのある焼豚炒飯とインスタント味噌汁を取り出して食器類を探しだし、やかんに湯を沸かし始めた。

簡単に出来上がった食事をどこに運ぼうか迷い、とりあえず手近なテーブルの上に置く。
湯気の立つ炒飯と味噌汁はうまそうで、俺に分かる範囲では何らかの薬の匂いもない。敵は食事に混ぜ物をして何かをする気はないらしいと判断して、遠慮なく手を合わせて頂く。
うん、うまい。
最後の飯の一粒まで綺麗に平らげると、食後のお茶が欲しいなぁと思い立つ。
これだけ至れり尽くせりの座敷牢なら当然あるだろうと台所の棚を漁ると、案の定ほうじ茶の葉と急須、湯呑みが見付かった。ついでに煎餅や干菓子などのお茶請けも。
ところでさっき炒飯の皿を探した時にも思ったが、湯呑みといいなぜ全て二組あるんだろう。予備だろうか。俺がよほどそこつ者と思われてるか、準備した者が慎重派なのか。
そんなことをぼんやり考えながら茶を啜り煎餅をばりばりかじっていると、不意に木格子の方からガチャガチャと音がして、思わず椅子の上で飛び上がってしまった。
そうだ、今はチャクラがほとんど感じられない状態だったと思いながら、とっさに壁に張り付く。見晴らしのよいワンルームだからあまり意味のない行動だが、無防備に煎餅をかじっているよりはましだろう。
ギィと木の軋む音に首だけ伸ばしてそっと窺うと、なんと木ノ葉の支給服姿がのっそりと入ってきた。
いやあれは俺の油断を誘う姿かもしれないと息を詰めていると、その男がこちらを向いて――

「カカシさん⁉⁉⁉」

銀髪に斜めの額宛、口布に隠された顔は間違いなくはたけカカシだ。

「あ、いたいたイルカ先生。お茶の最中にごめんね」

これが敵の変化でも、俺に向けたこのへにょりと下がった眉尻と目尻までは模倣できないはずだ。
今まで何度もメシや呑みに行って散々この人の表情を見てきたので、チャクラ判別できなくてもこれは分かる。そしてもう一つ。

「俺もお茶をもらってもいい?」

そう言いながら下ろした口布の下から現れた口元には、ぽつんと黒子があった。



「ほんとは夜の内にここに帰れるはずだったんだけど、遅くなっちゃってごめんね。起きたら一人でびっくりしたでしょ? ちょっと予定外のことが起きちゃって、そっちも片付けなきゃならなくなってね、後輩とパックンが……」

まるで毎日こういう日が続いているかのように、席に着いたカカシさんがお茶を啜りながら煎餅をかじり、合間にぺらぺらと喋っている。
俺はというと、向かいに座って湯呑みを両手で包みながら、カカシさんのよく動く口元を呆然と見ていた。
手甲を外して手を洗っていたカカシさんは、どう見ても任務帰りだ。
その任務帰りのカカシさんが、なぜこの座敷牢に『帰って』くるのか。
そこで俺は一つの可能性に気付いた。

「そうか、カカシさんも一緒に監禁されてたんですね⁉ それで俺の命とか何かを盾に脅されて、仕方なく望まない任務に駆り出されてっ」

突然立ち上がって叫んだ俺を、カカシさんが煎餅をかじろうとした口のまま、ぽかんとした顔で見上げる。

「……えっと、別にそういう訳では……普通に任務でしたけど」
「違うんですか⁉ じゃあなんであなたまで座敷牢に?」

カカシさんは煎餅を置くと、くしゃくしゃと髪をかき回して俯いた。
何か言いにくいことなんだろうか。
やっぱり敵の陰謀に巻き込まれてとか、里のお偉いさんに無理難題を押し付けられてとか、……まさか。

「ナルトに何かあったんですか⁉ それで俺を監禁して近付けないように」
「待って待ってイルカ先生、落ち着いて!」

カカシさんがテーブルを回ってきて、俺を抱きしめるようにして椅子に座らせた。
そして落ち着かせるためか、俺の手をそっと握りながらまた俯いていたが、そのままぼそぼそと喋り出した。

「ナルトは大丈夫、自来也様と元気にやってます。……あの、ね。その……イルカ先生には申し訳ないんだけど、俺とここで暮らしてほしいの。何も不自由はないように準備したつもりだし、それでも出られないのは不自由だと思うけど……」
「準備した、って……カカシさんがですか?」
「うん。何か足りなかったり、気に入らないところがあったら言ってね」

それならこの座敷牢が、徹底的に俺の快適さに配慮されていたのも分かる。
カカシさんは俺のボロいアパートに何度も来てるし、泊まっていったこともある。俺の生活習慣や好みも知っているだろう。
だが……。

「なんで俺は座敷牢に監禁されてるんですか? こんな鎖まで付けて」

カカシさんがうっと詰まった。
首を傾けて覗き込むと、額宛に隠されてない方の目がバッシャンバッシャン泳いでいる。

「カカシさん?」
「それは、そのあの、えっと……よかったら俺のことだけ見てもらいたいな……って、思って、その……」
「カカシさんを、ですか?」

カカシさんのことだけを見る。
言われた通りカカシさんのことをじっと見つめ続けてみたが、一向に目は合わないから、やっぱりそういう意味ではないんだろう。
すると見るというのは、面倒をみるとかそういう意味合いなのかもしれない。
アカデミーでは一番手のかかる子達も皆卒業して手が離れたし、ナルトも里を離れたし、今度は里で最も優秀で多忙な上忍のカカシさんの面倒をみろということなんだろうか。
確かに身の回りの世話をする者がいれば、カカシさんは今よりもっと任務に集中できるだろう。
日常の雑務――食事の支度、洗濯、掃除、日用品の買い物、忍犬の世話や隣に回覧板を回す……はないかもしれないが、そういったことは意外と日々の時間を奪われる。
だがそういうのはもっとこう、細やかな気配りのできる女性に頼んだ方がいいんじゃないのか。俺みたいなむさ苦しい男ではなく。

「あの、それは光栄なんですが、俺でいいんですか?」
「もちろん! イルカ先生じゃなきゃ困る! 俺はイルカ先生がいいんです!」

がばりと顔を上げたカカシさんに至近距離で見つめられて、思わず息を呑んでしまった。
いつもは気にならないが、こういう時は整った顔立ちというのはとてつもない破壊力があるから困る。
ようやく俺のと合ったカカシさんの目は、灰色がかった瞳が不安に揺れていた。
そういえばこの人は、サスケに続いてナルト、サクラまで離れてしまっているのだ。厳しく育てながらもあれだけ可愛がっていた子供達が立て続けに自分の元を去っていくというのは、どれだけこの優しい人にダメージを与えたことか。自分の部下とはっきり認め、慈しみ育ててきた子達が。
カカシさんは何も言わなかったけど、やっぱり相当参っていたのかもしれない。
どんな時でも飄々と独りで立ち、淡々と任務をこなす裏には、きっと寂しい想いを抱える夜もあっただろう。
俺は思わず涙ぐんでしまった。
そのカカシさんにここまで必要とされるなんて、中忍冥利に尽きるじゃないか。
これはぜひとも期待に応えないと、男うみのイルカの名が廃る。
俺はカカシさんの繊細な手をぎゅっと握り返すと、力強く頷いた。

「お任せ下さい。俺がカカシさんのことをちゃんと、ずっと見ます」
「いいの? ほんとに?」
「はい。俺なんかに務まるか分かりませんが、できる限りあなたをサポートさせて頂きます!」

カカシさんはちょっと微妙な顔をしたが、すぐにぱっと顔を綻ばせてくれた。
その一瞬の躊躇いのような表情に、もしかしたらカカシさんは俺のことを信じきれてないのかもしれないと気付いた。
――この鎖と首輪。
この二つはもうこれ以上カカシさんの元から誰も離れてほしくないという、執着の表れではないか。
淡白に見える彼がそれほどまでに参ってるなら、精一杯お世話をして傷付いたカカシさんを癒すべく務めたい。
大事なカカシさんのためになるなら、なおさら。
俺は安心させるように笑みを返した。


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