【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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それは災厄の年のクリスマスの夜だった。
俺はいろいろ心配だからとじっちゃんに言われてお屋敷でしばらく暮らすことになり、アスマ兄ちゃんの隣の部屋を与えられていた。
今年はもちろんケーキもチキンもなく、ただ一人で布団にもぐり込むだけの夜だった。父ちゃんと母ちゃんと暮らした家も無くなった今、お腹いっぱいになれてあったかい布団があるだけでも有り難いと思うべきだけど。
アスマ兄ちゃんもじっちゃんも任務や会議で居なくて、しんと静まり返った広いお屋敷はちょっとだけ恐い。
頭まで布団をかぶって寝ようとしていると、障子の外からカタンと音がした。
もしかしてアスマ兄ちゃんが帰ってきたのかも! と頭を出すと、障子に人影が写っている。やっぱりと思って声をかけようとしたら、すうっと障子が開いた。
「お帰りアスマ兄ちゃ……」
そこに立っていたのは、短い白髪頭に真っ赤な服を着たサンタクロース――いや違う。
あれは服じゃなくて……
「ぎゃあああああ血まみれサンタ……いやサタンーーーーーー!!」
「ちょっと、任務帰りの忍相手に失礼な子だなぁ」
そう言われてよく見ると、むき出しの腕や暗部服のプロテクターが赤くなっているだけで、もちろんサンタでもサタンでもなかった。ていうか俺よりはでかいけど、大人でもなさそうだった。
「あ、の、すみません! 任務お疲れさまでした! ていうかケガして……?」
「ん、俺もこんな姿のまま勝手に開けてごめ~んね。これ全部返り血だから安心して。あのさ、三代目に急ぎの報告があるんだけど、見付からないんだよね。どこにいるか知ってる?」
三代目ならまだ会議に、と言おうとして今さら目の前の忍が狐面を被っていることに気付いた。そうだ、暗部服を着てるんだから当然暗部なんだ。細っこくてアスマ兄ちゃんより年下に見えるのに。
「暗部かよ、すっげぇ……かっこいい」
うっかり声に出して、慌てて両手で口を塞ぐ。
やべぇ、母ちゃんにもイルカはすぐ思ったまんま口に出すんだから気を付けなさいって言われてたのに。
「かっこいい? ふぅん、かっこいいねぇ……」
いつの間にか狐面が目の前に立っていた。
首を傾げて、布団をはね除けたまま座ってる俺を見下ろしている。
「……あんたは可愛いね。名前は何ていうの?」
なんとなく。
なんとなくねっとりと空気が変わった気がして、ぞわっと鳥肌が立った。
ふと目線を下ろすと、俺の目の高さはちょうど狐面の股間の位置だ。
そこはなぜかもっこりと盛り上がっていて。
「ぎゃあああああ! 変態暗部ーーーー!!」
じっちゃんやアスマ兄ちゃんから、お前を見て股間をもっこりさせてる奴がいたらとにかく叫べ、そしてこれを股間に向けて投げ付けろと言われてた俺は、枕元に置いといた髪紐をサッと取り上げて奴の股間に投げ付けた。
だが奴は反射的に避け、髪紐は障子に当たって閃光を放ちながら爆発した。
「うわ、あぶなっ、何よこれ⁉」
「大丈夫かイルカーーーーーー!!」
光が収まった後に立っていたのは、部屋に飛び込んできた任務帰りのアスマ兄ちゃんだけだった。
俺はアスマ兄ちゃんに飛び付いて「もっこり変態が! サンタのサタンが!」と泣きわめいた。
その後、俺を宥めながら事情を聞いたアスマ兄ちゃんは、なんだか複雑な顔をして「あー、カカ……そいつにはよく言って聞かせるから。親父にも言っとくからな、もう大丈夫だからな」とひたすら慰めてくれた。
それ以来俺は九尾とは別の理由で狐と、そしてサンタが苦手になってしまった。
次の年はまだお屋敷にいたんだけど、やっぱりクリスマスの夜は一人で。
去年の変態暗部のことを思い出しながら布団にもぐり込んだら、また何か嫌な気配を感じて目を開けた。
すると赤いサンタ帽を被った白い狐面が、目の前で俺のことを覗き込んでいた。
「あれ、起きちゃったの? ずいぶん敏い子だぁね。メリークリスマス!」
「ひ……ッ」
「しぃ~っ、アスマには内緒で来てるんだから騒がないで」
片手で俺の口を押さえ、狐面の口の辺りに人差し指を立てた変態暗部は俺の横に並んで寝そべり、じぃっと見つめてきた。
ヤバい、またぞわっと鳥肌が立ってきた。
嫌な予感がして、奴の股間に恐る恐る目を向けると……
もっこりしてる!
やっぱりもっこりと盛り上がってる!!!
慌てて枕元を探っても、そこに置いといたはずの髪紐は無かった。
「あぁ、これ探してるの? 危ないから今は預かっとくよ」
「うぅううう! ふぐうううう!」
頼みの綱の髪紐爆弾は奴の手の中だ。
俺は首に下げてあった紐を引きちぎり、小さな袋を変態暗部の股間に向かって投げ付けた。
奴はまたしても飛び退いて避け、小袋は後方の畳にぶつかると閃光を放ちながら爆発した。
「何よこれ! どんだけ過保護なのあいつら⁉」
「ぎゃあああああ! 変態暗部が出たーーーーー!!」
口が自由になった俺がめいっぱい叫ぶと、お屋敷の護衛の寅おじさん暗部が飛んできた。
「無事かイル坊!」
「変態サンタが! 変態暗部のサンタが!」
「チッ、あいつ本当に子供か⁉ 俺たちの護衛をすり抜けるなんて」
「狐のサンタがもっこりしてたーーーー!」
そう。
奴は今年は血まみれの暗部服じゃなかった。
サンタクロースの服を着て、狐の面を被っていたのだ。
「不甲斐なくてすまんなぁ……ん? イル坊、これお前のか?」
護衛の寅おじさん暗部が、枕元から一本のクナイを取り上げた。
それは子供用の小さなクナイで、赤いリボンが結び付けられていた。
こうして更にサンタが苦手になってしまったというのに、それからも毎年クリスマスになると変態サンタは俺の所にやってきた。
じっちゃんのお屋敷にいても、アスマ兄ちゃんの部屋にいても、じっちゃん直伝のトラップまみれのアパートの自室にいても。ある年は任務先の野営テントにまでやってきた。
俺がどこにいるか、なぜ分かるんだろう。何かの術かとじっちゃんに確かめてもらったけど、そんなもんはないと言われてしまった。「あやつもな……悪い奴じゃないんじゃがの」と渋い顔をしていたが、俺にとってはただの変態サンタ暗部だ。
毎年サンタの服を着てクリスマスに夜這いしてくる、変態サンタ暗部だ。
そして今年も。
十年以上磨いて磨いて磨き抜いてきた俺のトラップと結界を抜けて、奴はまた来るのだろう。
俺はもう布団にはもぐり込まず、寝室の中央に腕を組み仁王立ちしてその時を待った。
十二月二十四日、時計の針が十二時を回る頃、窓の外の結界が震えて侵入者を知らせた。
そちらに体を向けると、突然バリーンと大音声が響き、両腕を顔の前でクロスしてガードしたサンタクロースが窓を割って飛び込んできた。
予想外の派手な登場に驚いた俺は、両腕のガードを解いて「メリークリスマス!」と陽気な声を上げたサンタの両目に、反射的に指を二本突き出して目潰しを食らわせてしまった。
「目がぁ! 目がぁぁぁあああ!」
俺がとっさに放った必殺技は、狐面の両目に空いた穴に見事にクリーンヒットした。
面の上から両目を押さえて畳に転がる変態サンタは、変態の名に相応しく上着の前面のボタンを全開にはだけていて、ゴロゴロと転がる度に真っ白な胸と腹を丸出しに見せ付けている。あ、変態サンタの乳首はずいぶんと綺麗なピンクなんだな……。
これは更なる変態をアピールしているとしか思えないんだが、まさかお色気アピールじゃないだろうな。
思わず蹴り飛ばしたくなる気持ちをぐっと堪え、俺は変態サンタを見下ろした。
「何か俺に言うことはありませんか?」
「えっ? ……えっと、窓を割ってごめんなさい。今年はちょっとスケジュールが厳しくて、間に合いそうもなかったから最後は力業で突破しちゃった。後で直すからごめ……」
「窓のことはいいです。それより俺に言うことはそれだけですか? 本当に?」
あの災厄で両親を亡くしてから、変態サンタは毎年欠かさず俺のところにやってきた。
最初の一年目を除いた毎年、クリスマスプレゼントを持って。
それは子供用の小さなクナイだったり手裏剣だったり、殺傷能力を持った武器ばかりで、子供向けのプレゼントとは到底思えないような物ばかりだったけど。
たとえそれをくれたのが股間をもっこりさせた変態でも、俺はサンタクロースに忘れられた子供じゃないと思えたのだ。
それに、今なら分かる。
毎年同じ日の夜に俺を探してやってくるのに、暗部の彼がどれだけの労力を費やしていたのか。
これが愛でなくて何だというのだろう。
俺はついに自分にも、そしてこの変態サンタにも答を出すことにしたのだ。
「もっと他に、いえ、最初に言わなきゃいけないことがあるはずですよね……カカシさん」
「……やっぱり気付いてた?」
変態サンタ――木ノ葉の誇る上忍はたけカカシ、いやカカシさんは、むくりと起き上がると狐面を外してがりがりと頭をかいた。
「もしあなたが本当に暗部だとしたら、と思ったら、銀髪で狐面なんて一人しかいませんでしたよ」
「だ~よね。とっくに気付いてるだろうに、なんで言わないのかと思ってた。受付でもどこでもよそ行きの顔で知らんぷりしちゃってさ」
拗ねたように口を尖らせる里の誉の可愛らしい一面に、思わず笑みが零れる。
「受付で言って良かったんですか? 毎年クリスマスに夜這いする変態サンタはお前だろって」
変態サンタはないんじゃない? とぶつぶつ呟くカカシさんの前に、俺は苦笑しながらしゃがんで目を合わせた。
股間をもっこりさせて夜這いする奴なんて変態以外の何だっていうんだと言いかけて、ふとカカシさんの股間を見ると。
赤いズボンの股間は普通に平らになっていた。
いや正確には平らじゃないが、誉は股間も誉なのかと感心するくらいに盛り上がってはいたが、少なくとも臨戦状態ではないようだ。
俺の視線に気付いたカカシさんが、憮然としてぼそっと「さっきの目潰しで縮んじゃったよ」と言う。
そういえば貴重な写輪眼に傷を付けてないかと慌てて目を覗き込むと、不意に両手を握られた。
「ねぇ。今年はずいぶんと歓迎ムードじゃない? とうとう俺の求愛に応えてくれる気になった? やっぱりこの肉体美にムラムラしちゃった?」
………うん、分かるよじっちゃん。
悪い奴じゃないのは分かる。
ただ、ちょっと発想が変態なだけなんだよな。
つーか夜這いはこいつの求愛行動だったのか……。
俺は深い深いため息をつくと、おもむろに頭突きをかました。
「痛………っっっ!!!」
「だからそうじゃなくて! その前に最初に言うことがあるはずだろ⁉」
「えっ、何を? ああ、ヤる前にヤりたいことを言うべきなの? あのね、イルカに突っ込んで朝までひんひん啼かせたい。あとできればその可愛らしい顔にぶっかけたい」
「違うわーーーーーーーー! いいか、その変態的な発想からいったん離れろ! そもそもあんたはなんで俺に求愛したいんだ⁉ そこをよく考えて言えって言ってんだよっっっ」
するとカカシさんはきょとんとしてから眉間にしわを寄せ、目を閉じ腕組みをして真剣に考え出した。
おいおい、まさか本当に今まで考えたこと無かったのかよ。
俺もちょっと早まったかもしれんなと目線を落とすと、またしても股間が盛り上がっている。こいつは股間で考えるタイプの男なのか。やっぱり今年も追い出そうかと思い直して髪紐に手をかけると、その手をがしりと握られた。
「……最初にイルカを見た瞬間から、股間がドキドキして熱くなった。あんなの初めてだった。これって何なの? もしかして、これがみんなが言う恋ってやつなの? ……教えてよ。イルカは先生でしょ?」
思いがけず真っ直ぐに純真な目を向けられ、胸がばくんと跳ねた。
いやいや言ってることはとんでもない変態だけど、きっと圧倒的な情操教育の不足からなんだろう。
これは思ったよりもゆっくり育てていかなきゃならないかもしれないと、俺は先生の顔で笑いかけた。
「そうですね、じゃあこれから一緒に勉強していきましょうね。とりあえずあっちにチキンとケーキを用意してあるから、二人でクリスマスパーティーをしませんか、サンタさん」
カカシサンタさんは目をぱちくりとさせ、それからぱっと花がほころぶように笑った。
「生クリームプレイなんて思い付かなかったよ。さすが先生だぁね」
「だーーかーーらーー! その変態的な発想から離れろっっ!」
カカシさんに教育的指導のげんこつを落としてから二人で窓ガラスを段ボールで塞ぎ、居間に行ってチキンとケーキを食べた。
カカシさんは目と額と頭と満身創痍だったが、それはそれは楽しそうにたくさん食べて飲んで喋った。「これがクリスマスっていうものなんだねぇ、楽しいね」と、何度も繰り返しながら。
そんなカカシさんを見て、俺も楽しかった。迷ったけど、こうして良かったと心から思った。
はい、今年のプレゼントと初めて手渡してくれたのは、深い藍色のマフラーだった。なんとカカシさんの手編みだそうだ。
綺麗に揃った編み目に感心してると、ちゅっとキスをされた。
「イルカ、可愛い。大好き」
なななななななんだ普通の恋人みたいなことしやがってびっくりしただろうが!
そういえば俺はちゃんと言ってなかったなと思って、「お、俺も、その……えっ、と……同じ気持ちです」と言ったら、カカシさんは「ホントに?」と嬉しそうに言って。
次の瞬間にはベッドに連れ込まれ、あちこちいろいろされて泣かされて。
気持ち良すぎてやだこわい、一人にしないでいっしょにいってとか、恐ろしいことにAVみたいなエロい台詞まで言わされた。いや言ったのは俺だけど。
さすが夜の業師の称号は伊達じゃない。すごい。
あれから数年経った今、そんな訳で俺はサンタも狐も苦手じゃなくなった。
俺だけのサンタクロースは変態だけど、もう細かいことは気にしないことにした。
ちなみに俺だけのサンタクロースというのは、カカシさんにそう呼んでと言われたからだ。「俺はイルカだけのサンタクロースだよ」と。確かに恋人を変態サンタ呼ばわりは如何なものかと頷けるところもあるので、俺も素直に従うことにした。
俺だけのサンタクロースは、なぜか今年も夜這いに来ている。
もう一緒に住んでるようなもんなのに、カカシさんは「だって二人の記念すべき出会いは忘れたくないから」と変なところで乙女を発揮する。生活を共にしてる内に感化されつつあるのか、それもそうだなと納得してしまう自分が恐い。
だから俺は毎年この日を指折り数えて待つ。
たぶん、いや間違いなくカカシさんもだろう。
真っ赤な衣装を身に付け、わざわざ外から忍び込んでくるカカシさんを、今年も俺は渾身のトラップと結界で迎え討つ。
それでも変態サンタ……じゃないや俺だけのサンタクロースは数多のトラップを潜り抜け、俺の家にやってくる。
プレゼントと変態的なプレイ願望と、胸と股間に溢れんばかりの愛を抱きながら。
【完】
祓華さんから頂いたネタは「目がぁ! 目がぁぁぁあああ!」のシーンでした!
お陰さまで久々にクリスマスカカイルを書けましたよ~(・∀・)ノ
ありがとうございました!
俺はいろいろ心配だからとじっちゃんに言われてお屋敷でしばらく暮らすことになり、アスマ兄ちゃんの隣の部屋を与えられていた。
今年はもちろんケーキもチキンもなく、ただ一人で布団にもぐり込むだけの夜だった。父ちゃんと母ちゃんと暮らした家も無くなった今、お腹いっぱいになれてあったかい布団があるだけでも有り難いと思うべきだけど。
アスマ兄ちゃんもじっちゃんも任務や会議で居なくて、しんと静まり返った広いお屋敷はちょっとだけ恐い。
頭まで布団をかぶって寝ようとしていると、障子の外からカタンと音がした。
もしかしてアスマ兄ちゃんが帰ってきたのかも! と頭を出すと、障子に人影が写っている。やっぱりと思って声をかけようとしたら、すうっと障子が開いた。
「お帰りアスマ兄ちゃ……」
そこに立っていたのは、短い白髪頭に真っ赤な服を着たサンタクロース――いや違う。
あれは服じゃなくて……
「ぎゃあああああ血まみれサンタ……いやサタンーーーーーー!!」
「ちょっと、任務帰りの忍相手に失礼な子だなぁ」
そう言われてよく見ると、むき出しの腕や暗部服のプロテクターが赤くなっているだけで、もちろんサンタでもサタンでもなかった。ていうか俺よりはでかいけど、大人でもなさそうだった。
「あ、の、すみません! 任務お疲れさまでした! ていうかケガして……?」
「ん、俺もこんな姿のまま勝手に開けてごめ~んね。これ全部返り血だから安心して。あのさ、三代目に急ぎの報告があるんだけど、見付からないんだよね。どこにいるか知ってる?」
三代目ならまだ会議に、と言おうとして今さら目の前の忍が狐面を被っていることに気付いた。そうだ、暗部服を着てるんだから当然暗部なんだ。細っこくてアスマ兄ちゃんより年下に見えるのに。
「暗部かよ、すっげぇ……かっこいい」
うっかり声に出して、慌てて両手で口を塞ぐ。
やべぇ、母ちゃんにもイルカはすぐ思ったまんま口に出すんだから気を付けなさいって言われてたのに。
「かっこいい? ふぅん、かっこいいねぇ……」
いつの間にか狐面が目の前に立っていた。
首を傾げて、布団をはね除けたまま座ってる俺を見下ろしている。
「……あんたは可愛いね。名前は何ていうの?」
なんとなく。
なんとなくねっとりと空気が変わった気がして、ぞわっと鳥肌が立った。
ふと目線を下ろすと、俺の目の高さはちょうど狐面の股間の位置だ。
そこはなぜかもっこりと盛り上がっていて。
「ぎゃあああああ! 変態暗部ーーーー!!」
じっちゃんやアスマ兄ちゃんから、お前を見て股間をもっこりさせてる奴がいたらとにかく叫べ、そしてこれを股間に向けて投げ付けろと言われてた俺は、枕元に置いといた髪紐をサッと取り上げて奴の股間に投げ付けた。
だが奴は反射的に避け、髪紐は障子に当たって閃光を放ちながら爆発した。
「うわ、あぶなっ、何よこれ⁉」
「大丈夫かイルカーーーーーー!!」
光が収まった後に立っていたのは、部屋に飛び込んできた任務帰りのアスマ兄ちゃんだけだった。
俺はアスマ兄ちゃんに飛び付いて「もっこり変態が! サンタのサタンが!」と泣きわめいた。
その後、俺を宥めながら事情を聞いたアスマ兄ちゃんは、なんだか複雑な顔をして「あー、カカ……そいつにはよく言って聞かせるから。親父にも言っとくからな、もう大丈夫だからな」とひたすら慰めてくれた。
それ以来俺は九尾とは別の理由で狐と、そしてサンタが苦手になってしまった。
次の年はまだお屋敷にいたんだけど、やっぱりクリスマスの夜は一人で。
去年の変態暗部のことを思い出しながら布団にもぐり込んだら、また何か嫌な気配を感じて目を開けた。
すると赤いサンタ帽を被った白い狐面が、目の前で俺のことを覗き込んでいた。
「あれ、起きちゃったの? ずいぶん敏い子だぁね。メリークリスマス!」
「ひ……ッ」
「しぃ~っ、アスマには内緒で来てるんだから騒がないで」
片手で俺の口を押さえ、狐面の口の辺りに人差し指を立てた変態暗部は俺の横に並んで寝そべり、じぃっと見つめてきた。
ヤバい、またぞわっと鳥肌が立ってきた。
嫌な予感がして、奴の股間に恐る恐る目を向けると……
もっこりしてる!
やっぱりもっこりと盛り上がってる!!!
慌てて枕元を探っても、そこに置いといたはずの髪紐は無かった。
「あぁ、これ探してるの? 危ないから今は預かっとくよ」
「うぅううう! ふぐうううう!」
頼みの綱の髪紐爆弾は奴の手の中だ。
俺は首に下げてあった紐を引きちぎり、小さな袋を変態暗部の股間に向かって投げ付けた。
奴はまたしても飛び退いて避け、小袋は後方の畳にぶつかると閃光を放ちながら爆発した。
「何よこれ! どんだけ過保護なのあいつら⁉」
「ぎゃあああああ! 変態暗部が出たーーーーー!!」
口が自由になった俺がめいっぱい叫ぶと、お屋敷の護衛の寅おじさん暗部が飛んできた。
「無事かイル坊!」
「変態サンタが! 変態暗部のサンタが!」
「チッ、あいつ本当に子供か⁉ 俺たちの護衛をすり抜けるなんて」
「狐のサンタがもっこりしてたーーーー!」
そう。
奴は今年は血まみれの暗部服じゃなかった。
サンタクロースの服を着て、狐の面を被っていたのだ。
「不甲斐なくてすまんなぁ……ん? イル坊、これお前のか?」
護衛の寅おじさん暗部が、枕元から一本のクナイを取り上げた。
それは子供用の小さなクナイで、赤いリボンが結び付けられていた。
こうして更にサンタが苦手になってしまったというのに、それからも毎年クリスマスになると変態サンタは俺の所にやってきた。
じっちゃんのお屋敷にいても、アスマ兄ちゃんの部屋にいても、じっちゃん直伝のトラップまみれのアパートの自室にいても。ある年は任務先の野営テントにまでやってきた。
俺がどこにいるか、なぜ分かるんだろう。何かの術かとじっちゃんに確かめてもらったけど、そんなもんはないと言われてしまった。「あやつもな……悪い奴じゃないんじゃがの」と渋い顔をしていたが、俺にとってはただの変態サンタ暗部だ。
毎年サンタの服を着てクリスマスに夜這いしてくる、変態サンタ暗部だ。
そして今年も。
十年以上磨いて磨いて磨き抜いてきた俺のトラップと結界を抜けて、奴はまた来るのだろう。
俺はもう布団にはもぐり込まず、寝室の中央に腕を組み仁王立ちしてその時を待った。
十二月二十四日、時計の針が十二時を回る頃、窓の外の結界が震えて侵入者を知らせた。
そちらに体を向けると、突然バリーンと大音声が響き、両腕を顔の前でクロスしてガードしたサンタクロースが窓を割って飛び込んできた。
予想外の派手な登場に驚いた俺は、両腕のガードを解いて「メリークリスマス!」と陽気な声を上げたサンタの両目に、反射的に指を二本突き出して目潰しを食らわせてしまった。
「目がぁ! 目がぁぁぁあああ!」
俺がとっさに放った必殺技は、狐面の両目に空いた穴に見事にクリーンヒットした。
面の上から両目を押さえて畳に転がる変態サンタは、変態の名に相応しく上着の前面のボタンを全開にはだけていて、ゴロゴロと転がる度に真っ白な胸と腹を丸出しに見せ付けている。あ、変態サンタの乳首はずいぶんと綺麗なピンクなんだな……。
これは更なる変態をアピールしているとしか思えないんだが、まさかお色気アピールじゃないだろうな。
思わず蹴り飛ばしたくなる気持ちをぐっと堪え、俺は変態サンタを見下ろした。
「何か俺に言うことはありませんか?」
「えっ? ……えっと、窓を割ってごめんなさい。今年はちょっとスケジュールが厳しくて、間に合いそうもなかったから最後は力業で突破しちゃった。後で直すからごめ……」
「窓のことはいいです。それより俺に言うことはそれだけですか? 本当に?」
あの災厄で両親を亡くしてから、変態サンタは毎年欠かさず俺のところにやってきた。
最初の一年目を除いた毎年、クリスマスプレゼントを持って。
それは子供用の小さなクナイだったり手裏剣だったり、殺傷能力を持った武器ばかりで、子供向けのプレゼントとは到底思えないような物ばかりだったけど。
たとえそれをくれたのが股間をもっこりさせた変態でも、俺はサンタクロースに忘れられた子供じゃないと思えたのだ。
それに、今なら分かる。
毎年同じ日の夜に俺を探してやってくるのに、暗部の彼がどれだけの労力を費やしていたのか。
これが愛でなくて何だというのだろう。
俺はついに自分にも、そしてこの変態サンタにも答を出すことにしたのだ。
「もっと他に、いえ、最初に言わなきゃいけないことがあるはずですよね……カカシさん」
「……やっぱり気付いてた?」
変態サンタ――木ノ葉の誇る上忍はたけカカシ、いやカカシさんは、むくりと起き上がると狐面を外してがりがりと頭をかいた。
「もしあなたが本当に暗部だとしたら、と思ったら、銀髪で狐面なんて一人しかいませんでしたよ」
「だ~よね。とっくに気付いてるだろうに、なんで言わないのかと思ってた。受付でもどこでもよそ行きの顔で知らんぷりしちゃってさ」
拗ねたように口を尖らせる里の誉の可愛らしい一面に、思わず笑みが零れる。
「受付で言って良かったんですか? 毎年クリスマスに夜這いする変態サンタはお前だろって」
変態サンタはないんじゃない? とぶつぶつ呟くカカシさんの前に、俺は苦笑しながらしゃがんで目を合わせた。
股間をもっこりさせて夜這いする奴なんて変態以外の何だっていうんだと言いかけて、ふとカカシさんの股間を見ると。
赤いズボンの股間は普通に平らになっていた。
いや正確には平らじゃないが、誉は股間も誉なのかと感心するくらいに盛り上がってはいたが、少なくとも臨戦状態ではないようだ。
俺の視線に気付いたカカシさんが、憮然としてぼそっと「さっきの目潰しで縮んじゃったよ」と言う。
そういえば貴重な写輪眼に傷を付けてないかと慌てて目を覗き込むと、不意に両手を握られた。
「ねぇ。今年はずいぶんと歓迎ムードじゃない? とうとう俺の求愛に応えてくれる気になった? やっぱりこの肉体美にムラムラしちゃった?」
………うん、分かるよじっちゃん。
悪い奴じゃないのは分かる。
ただ、ちょっと発想が変態なだけなんだよな。
つーか夜這いはこいつの求愛行動だったのか……。
俺は深い深いため息をつくと、おもむろに頭突きをかました。
「痛………っっっ!!!」
「だからそうじゃなくて! その前に最初に言うことがあるはずだろ⁉」
「えっ、何を? ああ、ヤる前にヤりたいことを言うべきなの? あのね、イルカに突っ込んで朝までひんひん啼かせたい。あとできればその可愛らしい顔にぶっかけたい」
「違うわーーーーーーーー! いいか、その変態的な発想からいったん離れろ! そもそもあんたはなんで俺に求愛したいんだ⁉ そこをよく考えて言えって言ってんだよっっっ」
するとカカシさんはきょとんとしてから眉間にしわを寄せ、目を閉じ腕組みをして真剣に考え出した。
おいおい、まさか本当に今まで考えたこと無かったのかよ。
俺もちょっと早まったかもしれんなと目線を落とすと、またしても股間が盛り上がっている。こいつは股間で考えるタイプの男なのか。やっぱり今年も追い出そうかと思い直して髪紐に手をかけると、その手をがしりと握られた。
「……最初にイルカを見た瞬間から、股間がドキドキして熱くなった。あんなの初めてだった。これって何なの? もしかして、これがみんなが言う恋ってやつなの? ……教えてよ。イルカは先生でしょ?」
思いがけず真っ直ぐに純真な目を向けられ、胸がばくんと跳ねた。
いやいや言ってることはとんでもない変態だけど、きっと圧倒的な情操教育の不足からなんだろう。
これは思ったよりもゆっくり育てていかなきゃならないかもしれないと、俺は先生の顔で笑いかけた。
「そうですね、じゃあこれから一緒に勉強していきましょうね。とりあえずあっちにチキンとケーキを用意してあるから、二人でクリスマスパーティーをしませんか、サンタさん」
カカシサンタさんは目をぱちくりとさせ、それからぱっと花がほころぶように笑った。
「生クリームプレイなんて思い付かなかったよ。さすが先生だぁね」
「だーーかーーらーー! その変態的な発想から離れろっっ!」
カカシさんに教育的指導のげんこつを落としてから二人で窓ガラスを段ボールで塞ぎ、居間に行ってチキンとケーキを食べた。
カカシさんは目と額と頭と満身創痍だったが、それはそれは楽しそうにたくさん食べて飲んで喋った。「これがクリスマスっていうものなんだねぇ、楽しいね」と、何度も繰り返しながら。
そんなカカシさんを見て、俺も楽しかった。迷ったけど、こうして良かったと心から思った。
はい、今年のプレゼントと初めて手渡してくれたのは、深い藍色のマフラーだった。なんとカカシさんの手編みだそうだ。
綺麗に揃った編み目に感心してると、ちゅっとキスをされた。
「イルカ、可愛い。大好き」
なななななななんだ普通の恋人みたいなことしやがってびっくりしただろうが!
そういえば俺はちゃんと言ってなかったなと思って、「お、俺も、その……えっ、と……同じ気持ちです」と言ったら、カカシさんは「ホントに?」と嬉しそうに言って。
次の瞬間にはベッドに連れ込まれ、あちこちいろいろされて泣かされて。
気持ち良すぎてやだこわい、一人にしないでいっしょにいってとか、恐ろしいことにAVみたいなエロい台詞まで言わされた。いや言ったのは俺だけど。
さすが夜の業師の称号は伊達じゃない。すごい。
あれから数年経った今、そんな訳で俺はサンタも狐も苦手じゃなくなった。
俺だけのサンタクロースは変態だけど、もう細かいことは気にしないことにした。
ちなみに俺だけのサンタクロースというのは、カカシさんにそう呼んでと言われたからだ。「俺はイルカだけのサンタクロースだよ」と。確かに恋人を変態サンタ呼ばわりは如何なものかと頷けるところもあるので、俺も素直に従うことにした。
俺だけのサンタクロースは、なぜか今年も夜這いに来ている。
もう一緒に住んでるようなもんなのに、カカシさんは「だって二人の記念すべき出会いは忘れたくないから」と変なところで乙女を発揮する。生活を共にしてる内に感化されつつあるのか、それもそうだなと納得してしまう自分が恐い。
だから俺は毎年この日を指折り数えて待つ。
たぶん、いや間違いなくカカシさんもだろう。
真っ赤な衣装を身に付け、わざわざ外から忍び込んでくるカカシさんを、今年も俺は渾身のトラップと結界で迎え討つ。
それでも変態サンタ……じゃないや俺だけのサンタクロースは数多のトラップを潜り抜け、俺の家にやってくる。
プレゼントと変態的なプレイ願望と、胸と股間に溢れんばかりの愛を抱きながら。
【完】
祓華さんから頂いたネタは「目がぁ! 目がぁぁぁあああ!」のシーンでした!
お陰さまで久々にクリスマスカカイルを書けましたよ~(・∀・)ノ
ありがとうございました!
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