【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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子供の頃、一度だけ海豚を見たことがある。


木の葉は海から遠く、任務であちこちを回る戦忍でもない限り、海を見ることもなく一生を終える者も少なくない。
かく言う俺も海はこの時が初めてで、匂いを嗅ぐだけで塩の味を舌に感じるほど特徴的な潮風と、絶え間なく足元が揺れる船の感覚にようやく慣れてきたところだった。
海を越えた任地に向かうその船に乗っていた時、波間に見え隠れする黒っぽいものを発見して敵の諜報かと隊長に報せると、「カカシは初めて見るのか? あれは海豚というのだ。賢くて人懐っこい生き物だから、船と並び泳いで遊んでいるのだろう」と教えられた。
海豚は結局任地先の海べりまでついてきてしまった。
砂浜に上がる時に振り返ると、つぶらな黒い瞳がこちらをじっと見つめていた。

キュウ キュウッ

忍の訓練された耳がごく小さな音を拾ったが、これはあの海豚の鳴き声だろうか。
ふと、仲間はいないのだろうか、と思った。



次に海豚を見かけたのは、やはり海辺の任地だった。
正確には海豚のぬいぐるみだから、海豚を見た内には入らないだろうが。
その頃青年期に差し掛かっていた俺は、子供に変化して父親くらいの年頃の上忍と組み、ターゲットの気を逸らす役割を振られた。
子供らしい言動はよく分からないと断ったが、俺が適当に話を振るからお前はそのままでいいと言われた。
観光地の土産物屋で買い物をするターゲットに、観光客の親子連れの体で近付く。子供らしく、と自分に言い聞かせながら落ち着きなく店内を見回していると、それを見付けた。
スカイブルーの海豚のぬいぐるみ。
つぶらな黒い瞳は艶々としたボタンで表現されていて、体表はいかにもぬいぐるみらしく、柔らかで毛羽のある生地でできている。海に棲む生き物だからそんなはずはないのだが、俺が知らないだけで実際の海豚もこんな風に滑らかな柔毛で覆われているのだろうか。
突然、どうしてもそれが欲しいという強烈な思いが湧き上がった。折しもターゲットの気を逸らす合図があり、俺は「父さん、これ欲しい」と袖を強く引く。

「駄目だ、別の物にしなさい。お前は男の子だろう」

その言葉に咄嗟に出たのは「嫌だ! これが欲しい! 絶対絶対欲しい!」という、俺らしくはないがいかにも子供らしい我儘だった。
そして海豚のぬいぐるみを抱きしめ、「これは僕の海豚だ!」と叫んで店外へと走り出す。視界の端にターゲットが驚いた顔でこちらを見ているのが写った。父親役の上忍が何か叫びながら追いかけてきて、店内に連れ戻される。
しょうがないなぁと買い与えてくれた海豚のぬいぐるみをしっかり抱きしめていると、ターゲットから静かに、だが素早く離れた女がいる。目的の物は掏り盗ったようで、任務の第一段階は完了だ。俺は店員にしきりに謝る『父さん』と手を繋いで店を出た。
後ほど彼に、ちゃんと子供らしい振る舞いもできるじゃないかとからかわれた。そのぬいぐるみはどうするんだとニヤニヤしながら聞かれ、「別に。処分しとくよ」と変化を解きながら答えたが。
こっそりと巻物に収納して、大事に里へと持ち帰った。



木の葉にも海豚がいると知ったのは、それからだいぶ経った時だった。
もちろんあの海に棲む生き物などではなく、立派な成人男性だ。
うみのイルカ。
アカデミー教師で受付業務にも携わっているらしい。アカデミーは全く縁がなかったし、受付を通す任務もあまり受けなかったから知らなかったが、外勤の忍の間ではけっこう有名なようだった。
鼻筋を横切る一文字の傷痕が特徴的で、「お疲れさまです」と笑顔になると浅黒い肌に白い歯並びが煌めく。
人波の向こうにぴょこぴょこ揺れる結い上げた黒髪は、波間に垣間見える背ビレのようだ。
そしてあの、黒い瞳。
夜の海を閉じ込めたかの如く艶々と輝く瞳に、俺は少なからず興味を持った。
その後、どんな縁が結ばれたのか、彼の教え子を導く上忍師となり、図らずも(多少は図ったかもしれないが)彼と急接近を遂げた。

彼はなかなか面白い人物で、何度か呑みに行くうちに生真面目な教師で受付もこなす人当たりの良い忍、というのはわりと外向きの顔であることが判明する。
もちろんそれも彼の一面ではあるのだが、子供の頃はかなりやんちゃな悪戯小僧だったらしく、時折その面影を覗かせるところがまた興味深い。
いつだったか酔いに任せて、誰にも言ってない秘密の暴露交換をしましょう!と言い出した時は、ナルトを彷彿とさせる、いやイルカ先生こそがナルトの原形なのだと確信する悪戯小僧の笑顔を見せてくれた。

「実はですね……」

と肩を寄せて囁きかけられた時は、いったいどんな秘密を聞かされるのかという緊張と好奇心のせいか、思わずドキッと心臓が跳ねた。
その秘密とは、『三代目の膝の上で、火影衣装のマントにおもらしをしてしまった』という、考えようによっては火影の威厳にも関わる本当に秘密にしておいた方がいいことで、呆れるより感心してしまった。

「でもあれはじっちゃんが恐い話をするからなんですよ! 俺は聞きたくないって言ったのに」

そう口を尖らせて言い訳をする姿は、子供の頃の彼を容易く想像させる。
三代目をじっちゃんと呼ぶあたり、昔から親交が深かったのだろう。
その頃の彼を見てみたい、と思った。
ちなみに俺は例の海豚のぬいぐるみの話をした。
秘密というにはたいしたこともないが、十代も後半に差し掛かった青年がこっそり持ち帰る物ではないだろう。
イルカ先生は「確かにそれは誰にも言えませんねぇ。俺、絶対に秘密にします」と、くふふと笑ったが。
彼だけが知っていると思うと、何やら本当に大事な秘密のような気がしてきて、今後は絶対に誰にも言わないようにしようと秘かに決意した。

その後また約束を繰り返して、いつしか彼の家に招かれ手料理を振る舞われるようになる。
忍ともあろう者が他人の作った料理を気軽に口にするなんて、と思っていたのは誰だったか。
イルカ先生のは焼く、炒める、煮る、切って盛り付けると野営料理の延長みたいなもので、いかにも男の手料理といった感じなのに、しばらくするとなぜかまた食べたくなる。粗雑なようでいて、季節の旬をきちんと取り入れているからだろうか。
もうすぐ枝豆が旨くなりますね、そしたら縁側で一杯やりたいですねぇ、このぼろアパートじゃ無理ですけどと切なそうな顔で言うので、普段は使ってない実家を提供することをつい提案してしまった。

「良いですね! 縁側で枝豆にビール! 父ちゃんがいっつも幸せそうで、大人になったら俺もやりたいってガキの頃からの夢だったんですよ! 嬉しいなぁ」

イルカ先生の夢を叶える一端を担うとは、話がおおごとになってしまった。
俺は次の休みに忍犬を総動員して、実家の大掃除を敢行した。
忍犬たちには何をそんなにそわそわしているのかと問われたので、ある人の夢を叶える手伝いをするのだと説明した。
その落ち着かなさが伝染したのか、犬たちまで張り切って手伝ってくれた中、パックンだけが「……鈍いにも程がある」と皺を深めていた。

それからお互いに何だかんだと忙しく、実際にイルカ先生を招いたのは一ヶ月近くも経ってからだった。
俺は七班の指導の後そのまま暗い方の任務明けで、お疲れのところ申し訳ありませんと恐縮する彼を半ば強引に連れてくる。
途中買い物をしてきたと言う袋の中身を二人で古びたテーブルの上に広げ、冷蔵庫行きと下拵えをする物に仕分けていく。その作業は思いがけず楽しく、イルカ先生も長年の夢が叶うせいか俺より楽しそうだ。
袋の中に艶々と光る濃紫の茄子を見付けて手に取ると、イルカ先生が「あっ」と声を上げた。

「俺ね、凄いことを聞いたんですよ。海の海豚の、いや俺じゃなくて哺乳類の方の、って俺もか!」

何をそんなに興奮しているのか、怪訝に思いながらも頷いて先を促すと、先生は袋から茄子を取り出した。

「この茄子、濡らすと海豚の肌の手触りと同じなんですって!」

――イルカの肌の手触りと同じ。

咄嗟に浮かんだのは、何も身に着けていないイルカ先生の濡れた素肌だった。
まだ五月も終わりの頃でさほど日焼けしてない、うっすらと小麦色に色付いた肌。
鎖帷子に隠された腹や内腿は意外にも白かったりするんだろうか。
日々チョークや書類を扱って荒れ気味の手だが、実は肌理が細かく滑らかな肌質だと知っている。
いつだったか捲り上げた二の腕に打撲痕があり、特製の薬を塗ってやるのに触れたことがあったのだ。
適度な油分と水分量の肌はさぞかし水を弾くことだろう。その上を滑り落ちていく水滴まで見えた気がする。

ザァーーーーーーッ

勢いよく出された水音で我に返る。
どこから見つけ出してきたのか、ボウルに茄子をあけたイルカ先生が茄子を洗っていた。
その内の一つを両手で包むように握り、こちらに見せてきた。

「ほら、カカシさん、これ」

イルカ先生の肉厚な掌から、濃紫のむっちりとした茄子が飛び出している。
綺麗に切り揃えられた爪の親指がその表面を二度、三度と強く撫でた。

キュッ キュキュッ キュッ

「うわぁ、これが海豚の肌!」

キュッ キュッ キュキュッ キュッ

茄子が鳴き声を上げている。
あの時、俺を見送っていた海豚のように。

「なんか弾力があって面白いですよ! カカシさんもやってみましょうよ」

イルカ先生の濡れた手から水滴が垂れた。
ひとつ、ふたつ。
そしてイルカ先生に鳴かされた茄子が、またキュッと鳴き声を上げる。

不意にこれはひどく間違っている気がした。
鳴くのは茄子などではなくイルカであるべきで、イルカを鳴かせるべきなのは――。

俺はイルカ先生の両手を茄子ごと包むと、その上に屈み込んだ。
そして茄子をひたむきに愛撫している親指に唇を寄せ、茄子から剥ぎ取るように口に含む。
反射的に引かれた指を歯で軽く噛んで引き止め、舌でゆっくりとねぶって味わった。

「あ、の……カカシ、さん……?」

怪訝さと戸惑いを含む声色に、俺が聴きたいのはこの音じゃない、と強く思う。
ならば引き出せばいい。
この発声器官から。

俺は惜しみながらも指を解放し、顔を上げた。
イルカ先生が息を呑む。
その黒い瞳が二つとも俺を見つめていることに、なぜかひどく安堵した。

「かわいく鳴いて」

そう言って唇を合わせる。
んんん、うむぅと初めは違う音を出していたイルカ先生は、ほどなく苦しげな息を二つの唇の合間から吐くようになった。
何かに突き動かされるように唇を貪っていたが、求めていたのはこの音でもない気がする。これはこれでとても良いのだが。
それに発声器官を塞いでしまったら欲しい音は聴けないのに、俺としたことが何をしているんだろうか。
そこでなぜか固く勃起している己の性器に気付いた。

「これ、は、何のつもりです、か!」

茄子を握りしめたままのイルカ先生が、ふうふうと肩で息をしながら睨み付けてくる。涙目になって、真っ赤な顔で。
――うん、分かった。
俺は唐突に自分がしたいことを理解した。
そして、俺が本当に欲しいものが何かということも。

触れたい。
鳴かせたい。
入りたい。

俺のものにしたい。
あの海豚のぬいぐるみのように。
あの海豚のぬいぐるみよりも、遥かに強い気持ちで。

「イルカセンセが欲しい」

俺はその願いを叶えた。




イルカ先生は結果的に俺のものになってくれた。
結果的に、だ。
あの後散々イルカ先生の鳴き声を堪能して、茄子よりも遥かに気持ちいい手触りも十分に味わった。背ビレのようだった黒髪尻尾もめちゃくちゃにしてしまったので(主にイルカ先生が自分で)、丁寧に手櫛で梳いた。
イルカ先生の中は狭くてきつかったが、熱く柔らかく俺を包んでくれた。
まるで食われるかと思うくらいによく絞り上げていたから、イルカ先生も十分に俺を味わったことと思う。
満腹感に近い、それよりずっと素晴らしい充足感に身を委ねていると、唐突に頬を殴られた。

「あんた、何やってんだ!」

あえて殴られたが、避けずにいたのは判断ミスだったかもしれない。チャクラで薄くガードしたとはいえ、それほど重い拳だった。

「何って、イルカ先生はもう俺のものでしょ? 俺も先生のものだけど」

頬を擦りながら答えると、殴られた側の半面全体に痛みが走る。
イルカ先生はというと、あんぐりと口を開け、まじまじと俺を見てたかと思うと。
さらに目を見開き俺を指差した。

「ああ、あああんた、俺のこと好きだったのか⁉ そういう意味で⁉」

そういう意味でがどういう意味かは分からないけど、これは俺がイルカ先生を好きかどうかと問われたのだろうか。
それならば、

「好きですよ、もちろん」
「そうじゃねぇ! 絶対どういう意味か分かってねぇだろっっ!」

凄い。いつも何考えてるか分からないって言われるのに、イルカ先生は的確に俺を判定する。
それじゃどういう意味かと訊ねるとイルカ先生はぐうっと唸り、耳まで赤くして助けを求めるかのように見回していたが、ここには二人きりで誰の助けもないことに気付くと、腹を括ったのか俺を真っ直ぐに見返した。

「それはですね、何と言うか、カカシさんが俺、のことを、ことを…………その」

俺の方が教師のように、ゆっくりと頷いて先を促す。

「その! ニクヨク、を持った気持ちを込みで好きだってことですっ」

早口で小さく呟いた部分は肉欲で合ってるかと問うと、先生はぎゅっと目を瞑って何度も首を縦に振った。
その顔があまりにも愛らしく、思わず口付けてしまうと、「体目当てかよ⁉」とまた拳が飛んできたので今度は避ける。空振ってバランスを崩した体を抱き止め、そのまま抱き寄せた。しっくりと馴染む肌が気持ちよく、また勃起してくる。それに気付いた先生が「ちんこで答えるな!」と怒るので、それがまたそそると囁いてもう一度イルカ先生の肉を味わった。



「体だけじゃないよ。全部が俺のものでしょ?」

二度目、いや何度目かの吐精後に抜かないまま抱きしめてそう言うと、イルカ先生がぼうっとした顔で俺を見上げた。

「なら、いいです……ただ、後でもういっぺん殴らせろ。あと、枝豆……」

そう言い残し、イルカ先生は気を失うように寝てしまった。
そして目覚めて一番に殴られた。今度は拳骨で、頭を。

「これで許してやる。あと枝豆」

と言ってたが、つまりはこの拳骨と引き替えにイルカ先生は正式に俺のものになってくれた訳だ。あと枝豆と。
それで、俺も先生のものに。
戦闘中頭を殴られるならいざ知らず、日常で頭に拳骨を落とされるなんて生まれて初めてだったが。
痛みを幸せと感じるのも、生まれて初めてだった。
そしてすっかり忘れていた枝豆を俺は丁寧に茹で、真夜中の縁側で二人で食べた。体がぐにゃぐにゃで蛸になったみたいだ、とぶつくさ言うイルカ先生を大事に抱えながら。





あの時巻物に収納して大事に持ち帰った海豚のぬいぐるみは、その後の木の葉崩しで無くなってしまった。
厳重な結界に守られていた貴重な巻物の保管庫と違い、普通に収納していたのだから当然だが。
でももういいんだ。
俺は今、腕の中にイルカを抱いているから。
――木の葉の海のイルカを。
いつか、イルカと海を見に行こう。
できれば海豚も見られるといい。
イルカと海豚が対面して黒い瞳を見合わせる時を思って、俺は一人微笑んだ。



そういえばもう何年も海を見ていない。



【完】
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