【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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五代目からの緊急式を受け、里外の森を俺は駆けに駆けていた。


 ナルト術に呑まれ狐暴走の懸念大
 イルカ追従
 神無の森


これだけの情報だが相当まずいことになってるのは分かる。だがイルカ先生が『追従』?
ただ追っている訳でも操られている訳でもなく、自らの意志で付き従ってるということか?
暗部や結界班は何をしているんだ。
詳細の分からない焦燥に任せ、俺は更に脚にチャクラを込めた。



神無の森は里からかなり離れた所にある、昼間でも薄暗い森だ。
そこにぽっかりと空いた直径二百メートル程の中心にナルトが立っている。本来白であるべき白目の部分は黒く染まり、赤い双眸が爛々と不気味に輝いている。その背に尾の影はない。

「テンゾウ。一分で説明」
「はい」

スッと隣に降り立ったテンゾウが巻物を手に説明を始めた。
保管庫にいたイルカ先生の手伝いをするとナルトが言って巻物が暴発、それは心の内にあった不満や憎悪等あらゆる負の感情を、無意識下のものまで全て引きずり出すという呪いのような巻物だった。
ナルトが急速に術に呑み込まれる間、イルカ先生は五代目に式を飛ばしつつ相殺を試みたがナルトのチャクラが強大過ぎて失敗、苦肉の策としてとっさに自分のチャクラをナルトに流し込んだらしい。そのおかげか先生のことは敵と見做さず、膨大な負のチャクラを撒き散らしながらも神無の森までイルカ先生の誘導に着いてきた。
その間も負のチャクラは時折暴発し、この円形の場所のように抉られた土地が里との間に幾つか散在しているという。
解術の方法は分かっているが、何しろ他人が近付くと攻撃してきて周囲への被害が甚大なので、ここで抑え込むのが精一杯。術を封じる為には対の封印の巻物で物理的にナルトを巻かなければならないが、イルカ先生に巻物を渡そうにも下手に策を講じようとすると動物的な勘が働くのか、すぐに嗅ぎ付けてやはり攻撃される。
という訳で刺激もできず、現在は膠着状態である。

……ってことは、式にあったイルカ追従というのはイルカ先生『に』ナルトが追従してた訳か。
それにしても、イルカ先生が側にいた時の事故発生で良かったというか悪かったというか、ムカつくというか。
何もチャクラを流し込まなくても、日頃の関係からしてナルトはイルカ先生にだけはおとなしく従ったんじゃないかと思うと余計にムカムカしてくる。

「なるほどね。テンゾウ、巻物。あとお前だけ着いてこい。他は五属性五重結界に切り替えて待機」
「はい!」
「はっ!」

テンゾウから対の巻物を受け取ると、円形の縁の結界ギリギリまで近付く。今のところナルトは、時々苦しげに呻く以外は立ち尽くしてるようだ。
ナルトの背後で一定の距離を保ちながらも寄り添うイルカ先生が、俺たちに気付いて目を見開いた。僅かに首を横に振るが、その悲壮な顔付きで分かってしまう。

――あんたは、いざという時にはナルトと道連れになる気なんだね。

――そんなにも簡単に、俺を置いて。

俺は怒りと諦めの籠った重いため息を吐くと、結界をかき分けるようにして内部に入り込んだ。テンゾウが続いたのを気配で確認し、後方で準備してた待機組に片手を挙げる。すると空気がぎちりと揺れ、厳重な五重結界が張られた。

「おーい、クソガキナルト~! 聞こえてるか~?」
「ちょっと、先輩!」

慌てて袖を引くテンゾウに構わず、すたすたと中心部に向かって歩いて行くと、ナルトの口から獣じみた唸り声が漏れた。

「ヴァア、ガァァアアアッッ」
「カカシさん…!」

どうやら俺もあっさり敵と認定されたらしい。もしかしてイルカ先生が今日は俺のインナーを着てるからだろうか。洗濯はしてあるけど俺の匂いが微かに残っているのかもしれない。ナルトは動物的な勘を持ってるからなぁ。俺たちのことは伝えてないが、なんとなく察して母親を取られたような気持ちでいたのかも。それで簡単に負の感情に呑まれることに繋がったのだとしたら、理解はできなくもないなぁ。
などとのんびり考えてたら、いきなり初撃が来た。
印も組むことなく軽く右手から放たれたのは拳大の螺旋丸。だが俺たちを吹き飛ばし粉々にするには余りある威力だ。
それをひょいと体を傾けて避けると、ナルトから五十メートル程の所で立ち止まる。後ろのどこかで螺旋丸が結界にぶつかって破損した音がした。
イルカ先生が歪めた顔でこちらを見て必死に首を横に振っているけど、そんなの聞いてあげない。
テンゾウに暗部の指文字を三つ示すと、俺はまたナルトに呼びかけた。

「お前ね、イルカ先生に甘えるのもいい加減にして乳離れしなさいよ。先生のおっぱいを吸っていいのは俺だけだからね?」
「カカシさん! 何てことをっっ!」
「オ”ア”ア”ァァアアア!」

今度は螺旋丸の漆黒バージョンが、さっきより大きい塊でしかも数倍早く飛んできた。
さすがに大きく跳躍して避けたが、左足の脚絆が鎌鼬に切り裂かれたかの如くばらりと散った。
イルカ先生が思わずといった体でこちらに駆け寄ろうとしたが、その前にナルトが立ちはだかる。

「グォォオオオオオ!」
「ふーん、あくまでも譲る気はない訳ね。それなら……」

俺は右手にチャクラを集めた。
チチチチチという囀りが徐々にバチバチバチと鳴動に変わり、低く下げた体勢からナルトを睨み付ける。

「……力尽くでも返してもらうよ」
「グガァァアアアアッ」

チャクラを込めた利き脚で思いきり地を蹴り、一気にナルトに接近する。
ナルトが一際大きな咆哮を上げる。
イルカ先生が印を組み始めたが、それじゃ間に合わない。
そのイルカ先生に向かって、辰の方角から数本の太い蔓が唸りを上げながら伸びていく。
ナルトがそれに気付き、一瞬気が逸れた。
――俺とイルカ先生奪還を目的とした蔓と、どちらを優先して対処するべきか。
その一瞬の逡巡だけで俺には十分だ。
空いた左手で封印の巻物をばらりと広げると、雷切の残光の中、ナルトの体を頭から足先まで覆うようにぐるぐると巻き付けて印を切った。





「ホンっト~にごめんだってばよ……」
「まったくお前は! 巻物の取り扱いには十分に注意しろって、あれだけいっっっつも言ってただろ!」

ゴツッといつもより数段重い音が響き、ナルトが頭を抱えてしゃがみ込む。そしてそのままごろんと倒れてしまった。

「えっ、ナルト⁉ そこまで強く殴ってないだろ!」

慌てて抱き起こそうとするイルカ先生を抱き止め、テンゾウに様子を見させる。

「……チャクラ切れですね。まぁ、あれだけいろいろ大技を連発してましたからねぇ」
「じゃあナルト持って五代目に報告してきて」
「はい」

そっと抉じ開けたナルトの目は元通りになっていた。
憎悪に呑まれたといっても九尾の封印が解けた訳でもなく、自らのチャクラだけであれだけの破壊行為をしてのけたんだから当然だ。目覚めたら恐らく何も覚えてないだろう。まったく、いつもながらのお騒がせ忍者だ。
テンゾウに尋ねると、暗部や結界班にも死傷者は出てないようだった。ナルトも擦り傷くらいで目立った外傷はなく、九尾のチャクラのお陰で急速に治り始めているからそこは良しとしよう。

「じゃあカカシさん、俺たちも」
「イルカ先生はね、だぁめ」

にこりと笑顔を向けると、先生は腕の中で身を竦ませた。

「あの…………怒ってます、よね?」
「分かってくれた?」
「勝手な真似をしてすみません。それに監督不行き届きで……」
「そこじゃない」

ほらね、やっぱり先生は分かってない。

「あなた、俺を置いていく方を選びましたよね」
「え、あ……」
「それに俺がトラップで雷切を使おうとした時、俺に反撃しようともしてましたよね」
「あれは……! あんなの食らったら、いくらナルトだって無事じゃ済まないでしょう⁉」

俺は頭をガリガリとかいた。
付き合っていても身体を繋げても、しょせん俺はナルトには敵わない。
俺がもし子供だったら。
せめて年下や中忍や女だったら、この関係も少しは違ったのだろうか。

「……ま、いいです。イルカ先生がこうして無事だったんだから」

もしもは生きていく上で何の役にも立たない。
どんなものであれ、俺たちは配られたカードでやっていくしかないのだ。
今はイルカ先生が俺の腕の中にいてくれる。
俺と一緒にいてくれることを選んでくれている。
それだけでも俺には過ぎた贅沢だ。
半ば諦めの境地で腕を緩めると、イルカ先生の髪に付いた木の葉や小枝を払い落とした。

「五代目が待ってますからね、机を叩き割られる前に戻りましょうか」
「あの……!」

イルカ先生が潤んだ目を向ける。
でも今は謝罪の言葉なんて聞きたくない。
おとなげなく無視して背を向けると、ドンと衝撃があって先生がナルトのように飛び付いてきた。

「俺は……確かに俺はナルトが大事です。家族のように思ってます。守りたいと思ってます」

うん、知ってるよ。
二人の絆は十分に知ってるから、これ以上畳み掛けないでほしい。

「でもそんなの今の内だけです。ナルトはすぐにもっと強くなって、いずれ巣立っていきます。それで新しい、本当の家族を見つけるでしょう」

そうかもね。
だけどまた同じようなことが起きれば、あんたは迷わずナルトを選ぶんでしょ?

「その時にも、それからも、共白髪になるまでずうっと一緒にいたいのは、カカシさんなんです」

俺は今も白髪みたいなもんだけどね。
でも共白髪っていい響きだ。イルカ先生とお揃いの白髪頭。
うん、いいね。

「それで……それに俺は、俺が……」

突然ぐいと首を回され、折れたかと思った次の瞬間にはキスされていた。
色気もへったくれもない、めいっぱい唇を押し付けるだけの。
初めての、イルカ先生からのキス。

「俺がこういうことをしたいと思うのはカカシさんだけです。ナルトはあなたとは違う!」

そう叫ぶと、イルカ先生は里の方に向かってバタバタと走り去っていった。



………………参った。



本当に参った。
そうか、ナルトと俺は違うのね。そっか。

聞きようによっては、ナルトの方が大事とも取れる言い方かもしれない。
でもイルカ先生はあの言葉を選んだのだ。
ナルトと俺には明確な線がきっちり引かれてると、俺にちゃんと真意が伝わると信じて。
それだけの積み重ねてきた二人の時間があると信じて。
ならばその信頼に応えなきゃ。でしょ?
そう。
ナルトと俺は違うのだ。
イルカ先生の笑顔や泣き顔はナルトだって何度も見ているだろうが、甘えたり、拗ねたり、嫉妬したり、そういう恋人としての顔は俺だけが知っている。
それと、気持ちよさが極まっての泣き顔も。
そんな愛おしい顔を、あいつは何一つ知ることなく一生を終えるのだ。

ナルトと俺は違う。

あの時と全く同じ言葉なのに、あの時とは全く逆の感情が熱を帯び、じわじわと全身に行き渡る。
今は俺とナルトが違うのだ。
ねぇイルカ先生、そういうことでしょ?
それをじっくりと見せてもらう為に、木立に見え隠れする黒髪の尻尾を目掛けて俺は跳躍した。



【完】

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