【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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÷÷÷÷÷ 3.はやおさん ÷÷÷÷÷
うっそうと茂る山の中を、木立を飛びながら、部下である暗部二名と供に、あの日イルカは駆けていた。
昼間でも薄暗い山の中は、曇天の為かよりいっそう闇が濃く、低い空からはもう間もなく雨粒が落ちてきそうだ。
「隊長」
部下に声をかけられて、空を見上げると、火影勅命の式鳥が舞い降りてくるところだった。
イルカの手に止まった鳥に、小さくねぎらいの言葉を告げると、鳥は煙を上げ、小さな紙片になった。
木立の上で足を止め、紙片に書かれていた報せに、獣面の下で思わず眉をひそめると、怪訝に思った部下達がイルカの元に集まってきた。
「どうしたんです?何か火急の知らせでも?」
「……写輪眼が……救援を要請しているらしい」
「写輪眼が!?」
部下達が驚くのも無理はなかった。写輪眼のカカシと言えば、ビンゴブックにも名を連ねる程の凄腕の忍びだ。そんな男が救援を要請しているなど、余程の事がなければあり得ない。
「俺が行く。お前達は先に行ってくれ」
「え……しかし、隊長」
「大丈夫だ」
イルカはそう言い残すと、部下達と別れた。
雨が降り始めてきた。
燻る火薬の匂いと、鳴り響く金属音に、イルカは目的の場所に到達したことを知った。
雨の中を、一人の男が仲間を抱えて、泥水を跳ね上げ、必死に抗っていた。
降りしきる雨の中でも、ひときわ輝く銀髪が目を引く男。写輪眼のカカシだった。
手負いの獣をいたぶるようにカカシの後を追う忍びの数は片手では収まらない。
上忍クラスの忍びを相手に、仲間を庇い、両手を塞がれた状態で走り続ける事は、困難を極めていた。
何故、庇うのか?
「一人目」
イルカは手近な敵忍の背後に音もなく飛びかかると、クナイでのど元を引き裂いた。
写輪眼のカカシほどの男だ。仲間を庇いさえしなければ、これくらいの状況から脱することなど、造作ないはずなのに。
「二人目」
カカシを狙い千本を投じようとした忍びを、イルカは長い鍵爪で打ち払った。鮮血が筋を引いて飛び跳ねる。
ゴトリと鈍い音を立てて地に転がった忍びを、冷たい目で一瞥すると、カカシを追う輩の元へ駆けていく。
何故なのか?何故あの男は、自らの命を投げ捨ててまで、仲間を庇うのか?イルカには理解出来なかった。
戦場において、つまらない感傷は、己だけではなく、ひいては仲間まで道連れにするというのに。
馬鹿げたことをしている。
写輪眼のカカシは、一個隊長としての勤めを果たすのであるならば、仲間を切り捨ててでも生き延びなければならないはずなのに。
雨に濡れ、泥にまみれ、血まみれになっても、仲間を庇い続けるカカシの姿は、イルカにはとても綺麗な生き物に思えた。
血に染まった己が取りこぼしてきた物を、あの男は決して失わず、持ち続けているのだと思うと、なんとしてでもあの綺麗な男を失ってはいけない。そう思った。
イルカはカカシを追い詰める忍びを、彼らが気づかぬうちに、一人、また一人と屠っていく。
地に転がったカカシの元に、撒き餌に食らいつく獣のように集まった忍びを四人、まとめて切り裂いた。
起爆符を握りしめ、呆然とイルカを見つめるカカシの手から札を奪い取ると、踵を返した。
アンタはこんな所で終わる男じゃない。
イルカに出来ることはここまでだった。
カカシのいる場所を正確に里へと伝え、救護の手が届くまで、殺気で山を覆った。
地に転がるカカシの庇い続けていた男がまだ、生きていることは分かっていた。分かっていたけれど、伝えるわけにはいかなかった。
カカシさん。アンタは生きなければならない。いや、生きてくれ。
あの日、その場を離れたイルカの脳裏から、カカシの姿が消えることはなかった。
カカシが戦忍を辞め、アカデミーの教員となった事を知ったのは、間もなくのことだった。
あれほどの腕を持ちながら、戦忍を辞めるとは……にわかには信じられないことだった。
イルカの見つめる先にいるカカシは、アカデミー教師として、生徒に慕われ、楽しそうに見えたけれど、時折見せる暗い影が、イルカの胸をむしばんでいた。
何故アンタはそんなに辛そうなんだ?
光が眩しければ眩しいほど、闇が深くなるように、カカシの姿があの日の輝きを失って行く様を見ているのは、イルカにとって辛いことだった。
絶望の淵に落とされても、希望を捨てず、輝いていたはずだったのに。あの綺麗な男の心を何が蝕んでいるのか?
心の闇を払拭してやることは出来ないのか?
そう考えて、我に返った。これではまるであの男に焦がれているようではないか?
いや、本当は分かっていたのだ。あの日から、イルカの心はあの綺麗な男に持ち攫われてしまったのだと。
認めるしかなかった。これは――片恋だ。一方的な、カカシへの恋慕の気持ちだ。
それでも、良いじゃないかと思った。俺に出来ることで、あの男を救うことが出来るのならば。俺は何だってしてやろう。
その日からイルカは、カカシが戦忍として最後に関わった任務。あの日の出来事について、調べ始めた。
あの日、カカシが背に庇っていた男が、名前を消され、草となったことを知るのは、そう難しいことではなかった。
しかし草の素性はたとえ身内であっても秘匿とされており、生存していることをカカシに知らせることは叶わなかった。
カカシが何に怯えているのか。それを知ることも容易かった。あの日以来、カカシは単独任務しか受けていない。あの男が仲間を失うことを恐れているのは明白だった。
カカシが自分が死なせたと悔やんでいるであろう中忍二名の身元もすぐに割れた。
イルカは何気なさを装い、そのうち一名の親族に近づくと、二人の真実を聞き出した。
「貴方はうちの孫と一緒の任務に就いたことがあるのですか。そうですか。それは嬉しい」
老人はそう言って朗らかに笑った。
「孫を覚えていてくれる人がいるとは、あの子も幸せもんです。最後まで忍びとして死ぬことが出来た上に、忘れず覚えていてくれる人までいるなんてのぅ」
「……恨んだりはしていないのですか?殉職したことを」
イルカの問いかけに老人は頷くと、どこか遠くを見つめながら語り出した。
「あの子はね、どちらにせよもう長くはなかったんです。不治の病で、もう忍びとして生きる身体ではなかったんですよ」
「……」
「忍びを辞めるくらいなら、死んだ方がましだと、常々申しておりました。どこかで死に場所を探していたのでしょうな。忍びとしての矜持を抱え、死ぬことが出来たのだから、あの子は幸せだったんでしょう……」
「……あの任務で亡くなった方はもう一人いらっしゃるはずです」
「よく知っておりますよ。うちの孫とは恋仲だった子ですよ。……うちの子が治らない病だと知っていたようで、二人一緒に泣いていたのも知っていますよ。……あの世で一緒になろうなどと、約束していたことも」
老人はそれだけ口にすると、嗚咽を零した。
「最後に一つだけ。……はたけカカシさんを恨んではいないのですか?」
老人はただ一言「感謝しております」と零すと、涙を流した。
カカシさん、アンタが悔やむ事なんて、何一つないんだ。
伝えたい。あの日の真実を全て、カカシに伝えたい。
伝えることで、アンタが救われるなら。闇の深淵から引き上げてやれるなら。
俺は――
月明かりが浮かび上がらせる漆黒の暗部の獣面に、震える手でそっと触れたカカシは俯くと、手を離した。
「……俺が誰なのか?知りたくないのですか?」
静かに語る暗部の男は、怪訝に思ったのか?獣面の下からじっとカカシの姿を見つめていた。
「あなたが誰であれ……俺はあなたに救われた。俺は……二度救われたことになる。一度目はあの日命を救われ、今日また俺は心を救われた」
「……」
「あなたには……感謝している。ありがとう……」
獣面の下で、暗部の表情が和らいだ気配を察し、カカシは微笑んだ。
「あの日……俺はあなたに見惚れた。綺麗だった。雨に濡れても……」
「!」
漆黒の暗部が驚いたように、肩をびくりと震わせた。
「……俺もあなたと同じ。綺麗だと思ったんだ」
しばらくの間の後、先に笑い出したのは、暗部の男の方だった。
くっくっくっと笑いを堪える様子に、カカシもまた笑顔を見せた。
「おあいこですね。それじゃぁ、賭をしましょうか?」
漆黒の暗部はそう言うと、赤い髪紐をほどいた。
「アンタが俺が誰なのか?当てることが出来たなら……アンタの物になってやりますよ」
暗部の男は赤い髪紐をカカシに手渡すと、獣面の下で微笑んだ。
「これ」
「俺の正体が分かったなら、それを返して下さい。アンタが返しに来てくれる日を、楽しみにしていますよ」
そう言うと、暗部の男は闇の中に跳躍し、消えた。
カカシはその後ろ姿をじっと、見つめ続けていた。
アカデミーのチャイムが鳴り、放課後の校舎を、残っている生徒達に声をかけながら、カカシは歩く。
本部等に続く通路を歩いていると、校庭に見慣れた子供達の姿が見えた。
「おーい、カカシ先生!」
「なんだぁ、あいつら」
カカシはニコニコ微笑みながら、近づいてくるナルト達第七班の子供達を待ち受ける。
「お前達、ちゃんとがんばってる~?だめだ~ぞ、イルカ先生に迷惑かけちゃ」
「んもう、カカシ先生ってば!私たちカカシ先生みたいにルーズじゃないから、ね、イルカ先生」
「そうだな、サクラの言うとおりだな」
そう言うとイルカが笑った。
「イルカ先生はこの後何か用事でも?」
「いや。後は報告書を提出するだけです」
カカシの問いかけに、笑みを浮かべながら、イルカは答える。
「良かったら、この後一緒に一杯どうですか?この間おごって貰ったから、今度は俺のおごりって事で」
「良いですね。それじゃ校門の所で待っていますね」
そう言って踵を返すイルカの後ろ姿に、カカシは声をかけた。
「イルカ先生。あなたにお返ししたい物があるんです」
振り向いたイルカにカカシは口を開いた。
「あなたから預かったこれ。お返ししますから、待っていてくださいね」
照れくさそうに笑うカカシの右手には、あの赤い髪紐が握られていた。
「……もう、バレちゃったか」
小さく呟くイルカの耳に、カカシの声が響いてくる。
「約束ですよ~約束守ったんだから、俺の物になってくださいよ!」
「あ~、もうっ!」
イルカはカカシに駆け寄ると、カカシの首筋に腕を絡ませ、キスをした。
【完】
うっそうと茂る山の中を、木立を飛びながら、部下である暗部二名と供に、あの日イルカは駆けていた。
昼間でも薄暗い山の中は、曇天の為かよりいっそう闇が濃く、低い空からはもう間もなく雨粒が落ちてきそうだ。
「隊長」
部下に声をかけられて、空を見上げると、火影勅命の式鳥が舞い降りてくるところだった。
イルカの手に止まった鳥に、小さくねぎらいの言葉を告げると、鳥は煙を上げ、小さな紙片になった。
木立の上で足を止め、紙片に書かれていた報せに、獣面の下で思わず眉をひそめると、怪訝に思った部下達がイルカの元に集まってきた。
「どうしたんです?何か火急の知らせでも?」
「……写輪眼が……救援を要請しているらしい」
「写輪眼が!?」
部下達が驚くのも無理はなかった。写輪眼のカカシと言えば、ビンゴブックにも名を連ねる程の凄腕の忍びだ。そんな男が救援を要請しているなど、余程の事がなければあり得ない。
「俺が行く。お前達は先に行ってくれ」
「え……しかし、隊長」
「大丈夫だ」
イルカはそう言い残すと、部下達と別れた。
雨が降り始めてきた。
燻る火薬の匂いと、鳴り響く金属音に、イルカは目的の場所に到達したことを知った。
雨の中を、一人の男が仲間を抱えて、泥水を跳ね上げ、必死に抗っていた。
降りしきる雨の中でも、ひときわ輝く銀髪が目を引く男。写輪眼のカカシだった。
手負いの獣をいたぶるようにカカシの後を追う忍びの数は片手では収まらない。
上忍クラスの忍びを相手に、仲間を庇い、両手を塞がれた状態で走り続ける事は、困難を極めていた。
何故、庇うのか?
「一人目」
イルカは手近な敵忍の背後に音もなく飛びかかると、クナイでのど元を引き裂いた。
写輪眼のカカシほどの男だ。仲間を庇いさえしなければ、これくらいの状況から脱することなど、造作ないはずなのに。
「二人目」
カカシを狙い千本を投じようとした忍びを、イルカは長い鍵爪で打ち払った。鮮血が筋を引いて飛び跳ねる。
ゴトリと鈍い音を立てて地に転がった忍びを、冷たい目で一瞥すると、カカシを追う輩の元へ駆けていく。
何故なのか?何故あの男は、自らの命を投げ捨ててまで、仲間を庇うのか?イルカには理解出来なかった。
戦場において、つまらない感傷は、己だけではなく、ひいては仲間まで道連れにするというのに。
馬鹿げたことをしている。
写輪眼のカカシは、一個隊長としての勤めを果たすのであるならば、仲間を切り捨ててでも生き延びなければならないはずなのに。
雨に濡れ、泥にまみれ、血まみれになっても、仲間を庇い続けるカカシの姿は、イルカにはとても綺麗な生き物に思えた。
血に染まった己が取りこぼしてきた物を、あの男は決して失わず、持ち続けているのだと思うと、なんとしてでもあの綺麗な男を失ってはいけない。そう思った。
イルカはカカシを追い詰める忍びを、彼らが気づかぬうちに、一人、また一人と屠っていく。
地に転がったカカシの元に、撒き餌に食らいつく獣のように集まった忍びを四人、まとめて切り裂いた。
起爆符を握りしめ、呆然とイルカを見つめるカカシの手から札を奪い取ると、踵を返した。
アンタはこんな所で終わる男じゃない。
イルカに出来ることはここまでだった。
カカシのいる場所を正確に里へと伝え、救護の手が届くまで、殺気で山を覆った。
地に転がるカカシの庇い続けていた男がまだ、生きていることは分かっていた。分かっていたけれど、伝えるわけにはいかなかった。
カカシさん。アンタは生きなければならない。いや、生きてくれ。
あの日、その場を離れたイルカの脳裏から、カカシの姿が消えることはなかった。
カカシが戦忍を辞め、アカデミーの教員となった事を知ったのは、間もなくのことだった。
あれほどの腕を持ちながら、戦忍を辞めるとは……にわかには信じられないことだった。
イルカの見つめる先にいるカカシは、アカデミー教師として、生徒に慕われ、楽しそうに見えたけれど、時折見せる暗い影が、イルカの胸をむしばんでいた。
何故アンタはそんなに辛そうなんだ?
光が眩しければ眩しいほど、闇が深くなるように、カカシの姿があの日の輝きを失って行く様を見ているのは、イルカにとって辛いことだった。
絶望の淵に落とされても、希望を捨てず、輝いていたはずだったのに。あの綺麗な男の心を何が蝕んでいるのか?
心の闇を払拭してやることは出来ないのか?
そう考えて、我に返った。これではまるであの男に焦がれているようではないか?
いや、本当は分かっていたのだ。あの日から、イルカの心はあの綺麗な男に持ち攫われてしまったのだと。
認めるしかなかった。これは――片恋だ。一方的な、カカシへの恋慕の気持ちだ。
それでも、良いじゃないかと思った。俺に出来ることで、あの男を救うことが出来るのならば。俺は何だってしてやろう。
その日からイルカは、カカシが戦忍として最後に関わった任務。あの日の出来事について、調べ始めた。
あの日、カカシが背に庇っていた男が、名前を消され、草となったことを知るのは、そう難しいことではなかった。
しかし草の素性はたとえ身内であっても秘匿とされており、生存していることをカカシに知らせることは叶わなかった。
カカシが何に怯えているのか。それを知ることも容易かった。あの日以来、カカシは単独任務しか受けていない。あの男が仲間を失うことを恐れているのは明白だった。
カカシが自分が死なせたと悔やんでいるであろう中忍二名の身元もすぐに割れた。
イルカは何気なさを装い、そのうち一名の親族に近づくと、二人の真実を聞き出した。
「貴方はうちの孫と一緒の任務に就いたことがあるのですか。そうですか。それは嬉しい」
老人はそう言って朗らかに笑った。
「孫を覚えていてくれる人がいるとは、あの子も幸せもんです。最後まで忍びとして死ぬことが出来た上に、忘れず覚えていてくれる人までいるなんてのぅ」
「……恨んだりはしていないのですか?殉職したことを」
イルカの問いかけに老人は頷くと、どこか遠くを見つめながら語り出した。
「あの子はね、どちらにせよもう長くはなかったんです。不治の病で、もう忍びとして生きる身体ではなかったんですよ」
「……」
「忍びを辞めるくらいなら、死んだ方がましだと、常々申しておりました。どこかで死に場所を探していたのでしょうな。忍びとしての矜持を抱え、死ぬことが出来たのだから、あの子は幸せだったんでしょう……」
「……あの任務で亡くなった方はもう一人いらっしゃるはずです」
「よく知っておりますよ。うちの孫とは恋仲だった子ですよ。……うちの子が治らない病だと知っていたようで、二人一緒に泣いていたのも知っていますよ。……あの世で一緒になろうなどと、約束していたことも」
老人はそれだけ口にすると、嗚咽を零した。
「最後に一つだけ。……はたけカカシさんを恨んではいないのですか?」
老人はただ一言「感謝しております」と零すと、涙を流した。
カカシさん、アンタが悔やむ事なんて、何一つないんだ。
伝えたい。あの日の真実を全て、カカシに伝えたい。
伝えることで、アンタが救われるなら。闇の深淵から引き上げてやれるなら。
俺は――
月明かりが浮かび上がらせる漆黒の暗部の獣面に、震える手でそっと触れたカカシは俯くと、手を離した。
「……俺が誰なのか?知りたくないのですか?」
静かに語る暗部の男は、怪訝に思ったのか?獣面の下からじっとカカシの姿を見つめていた。
「あなたが誰であれ……俺はあなたに救われた。俺は……二度救われたことになる。一度目はあの日命を救われ、今日また俺は心を救われた」
「……」
「あなたには……感謝している。ありがとう……」
獣面の下で、暗部の表情が和らいだ気配を察し、カカシは微笑んだ。
「あの日……俺はあなたに見惚れた。綺麗だった。雨に濡れても……」
「!」
漆黒の暗部が驚いたように、肩をびくりと震わせた。
「……俺もあなたと同じ。綺麗だと思ったんだ」
しばらくの間の後、先に笑い出したのは、暗部の男の方だった。
くっくっくっと笑いを堪える様子に、カカシもまた笑顔を見せた。
「おあいこですね。それじゃぁ、賭をしましょうか?」
漆黒の暗部はそう言うと、赤い髪紐をほどいた。
「アンタが俺が誰なのか?当てることが出来たなら……アンタの物になってやりますよ」
暗部の男は赤い髪紐をカカシに手渡すと、獣面の下で微笑んだ。
「これ」
「俺の正体が分かったなら、それを返して下さい。アンタが返しに来てくれる日を、楽しみにしていますよ」
そう言うと、暗部の男は闇の中に跳躍し、消えた。
カカシはその後ろ姿をじっと、見つめ続けていた。
アカデミーのチャイムが鳴り、放課後の校舎を、残っている生徒達に声をかけながら、カカシは歩く。
本部等に続く通路を歩いていると、校庭に見慣れた子供達の姿が見えた。
「おーい、カカシ先生!」
「なんだぁ、あいつら」
カカシはニコニコ微笑みながら、近づいてくるナルト達第七班の子供達を待ち受ける。
「お前達、ちゃんとがんばってる~?だめだ~ぞ、イルカ先生に迷惑かけちゃ」
「んもう、カカシ先生ってば!私たちカカシ先生みたいにルーズじゃないから、ね、イルカ先生」
「そうだな、サクラの言うとおりだな」
そう言うとイルカが笑った。
「イルカ先生はこの後何か用事でも?」
「いや。後は報告書を提出するだけです」
カカシの問いかけに、笑みを浮かべながら、イルカは答える。
「良かったら、この後一緒に一杯どうですか?この間おごって貰ったから、今度は俺のおごりって事で」
「良いですね。それじゃ校門の所で待っていますね」
そう言って踵を返すイルカの後ろ姿に、カカシは声をかけた。
「イルカ先生。あなたにお返ししたい物があるんです」
振り向いたイルカにカカシは口を開いた。
「あなたから預かったこれ。お返ししますから、待っていてくださいね」
照れくさそうに笑うカカシの右手には、あの赤い髪紐が握られていた。
「……もう、バレちゃったか」
小さく呟くイルカの耳に、カカシの声が響いてくる。
「約束ですよ~約束守ったんだから、俺の物になってくださいよ!」
「あ~、もうっ!」
イルカはカカシに駆け寄ると、カカシの首筋に腕を絡ませ、キスをした。
【完】
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