【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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時は六代目火影の為政時代――。
はたけカカシは戦忍としての顔を里長へと変え、日々木ノ葉のために働いていた。
その手に握っていたクナイは火影印になり、目の前に築き上げられているのは死体ではなく書類の山。
六代目火影の象徴である火影の編笠は今は傍らに置かれ、全身をすっぽりと覆う白いマントのまま執務机に向かっている。
その脇には臨時なのか、小さな簡易机が置かれていた。
机の上には同じように書類の山が、執務机の上と競うが如く絶妙なバランスで幾つも林立している。
「カカシ様、こちらの二点だけ至急ご確認ください」
書類の山の向こうに、黒髪の尻尾がぴょこんと覗いた。
そして山の間から一部の申請書が突き出される。
「ん、後で口頭で伝えとく。あと、様はやめて」
「カカシ様はカカシ様でしょう。はい、ありがとうございます」
「やめてくれないなら、イルカ先生のこともイルカ様って呼びますよ」
「意味分からんことを言い出さないでください。あ、そちらの嘆願書は今日の夕刻までにハンコお願いします……そう、それです」
二人は終始口を動かしながらも、手と目は休まず書類の山と格闘していた。
あまりの処理速度に、カカシの手にある書類は残像のみが捉えられ、イルカに至っては千手観音の再来かと見紛うほどだ。
「イルカ様、今の右手の方の報告書はシカマルに直接渡しといて」
「カカシ様、この部外秘のですよね? あと、様はやめてください」
「イルカ様がやめてくれないからでしょ。あれ、今日の夜の会食の同伴は誰だっけ」
「ナルトとシカマルです。シカマルにはくれぐれもナルトのフォローをよろしくと伝えてあります。それから子供っぽい屁理屈はやめてくれませんかね、カカシ様」
「イルカ様こそ、いい加減昔みたいにカカシさんって呼んでくれませんかね」
「…………」
「………………」
千手観音だったイルカの両手がふと止まり、二本に戻った。
「よし、一旦休憩しましょう。イライラしてると効率が下がります。こういう時は甘いもん食わなきゃ」
「はぁ~、やっと休憩ーーーーー! センセ、俺煎茶がいいです」
「はいはい」
一気に弛緩した空気の中、イルカが苦笑しながら煎茶を煎れに立つ。
しばらくして盆を持って戻ってくると、机の上の僅かなスペースに茶托を置いた。盆の上には柿の種ならぬ木ノ葉の種と、小皿の上に一つだけ乗っている苺大福。
カカシは手を伸ばすと一瞬迷い、苺大福の方を取ろうとした。
「ちょっと待った。カカシ様はこちらです」
イルカはマントから出た手首を掴み、木ノ葉の種の方に誘導しようとする。だがその手はびくともしなかった。
「……何ですか、カカシ様は甘いもん苦手でしょう」
「今日はちょっと食べたい気分なの」
「じゃあ他の甘味をお持ちします」
「この苺大福でいいよ」
「いえ、どうぞ遠慮なさらず。六代目雷切最中をすぐお持ちするので」
「自分の名物なんかヤだよ。苺大福がいい」
二人の力が拮抗して、イルカとカカシの手がぶるぶると震える。
イルカが絶対に取られまいと高く掲げた盆まで、かたかたと震え始めた。
「この苺大福は! 相模屋の期間限定なんですよ! 昨日までだったから、これを逃すと来年まで食えねぇんですっ」
「そんなレア物を独り占めしようとしてたの⁉」
「だーかーら! カカシ様は甘いもん苦手でしょうが! なんで急に執着するんですか!」
そう叫ぶとイルカは掴んでいた手をパッと離し、一足飛びにカカシから距離を取った。
カカシがゆらりと立ち上がる。
「……分かりました、それなら正々堂々と勝負で決めましょう」
「だからこの苺大福は俺のですって」
カカシは人差し指を一本立てると、チッチッと舌を鳴らした。
普通の男がやると気障で笑えないのに、カカシがやると口布越しでも様になることが、今のイルカには余計に腹立たしいところだった。
「ねぇセンセ、俺のパンツ……見たくないですか?」
イルカの目がカッと見開かれた。
唐突な変態宣言にも思える、里長のパンツ露出発言だったが。
ごくりと鳴ったのはイルカの喉だった。
!!!説明しよう!!!
ここはただの木ノ葉の里ではないのだ!
木ノ葉の里という名の通り、葉っぱは忍たちの生活に深く根付いている。
里には帆鶇(パンツ)の木という、手の平のような大きさと形をした葉っぱの木が群生していた。
ツグミが種を落としていったといわれるこの木は、初代火影が里を興す遥か前からこの地に自生していて、その葉っぱは帆布の如く丈夫で絹のように柔らかい。
しかも抗菌・防臭効果もあるということで、忍の股間を覆うのに最適なのだ。
それを提唱したのは初代火影だったが、帆鶇の葉っぱを実際にパンツとして愛用していたのも、初代火影のみだったそうだ。
いくら普及活動をしても広まらなかったため、柱間は帆鶇のパンツに特別な術をかけ、帆鶇の葉っぱをパンツにする作り方と共に、己だけの術として巻物に封じた。
後に二代目扉間がそれを発見し、火影だけに伝える秘伝の術としたそうだ。
火影のみに伝わる秘伝の術がかけられている、特別なパンツ。
歴代火影は、五代目を除き全員帆鶇のパンツを着用していたとの噂だった。
――そう。あくまでも『噂』なのだ。
それを見たことがある者は、歴代火影の伴侶のみ。
三代目の息子のアスマですら、どんなに頼んでも見せてもらえなかったそうだ。
歴代火影の治療に携わった際、不本意にも帆鶇のパンツを見てしまった医療忍には、全員記憶操作が施されたという。
そんな木ノ葉の秘伝にも等しい帆鶇のパンツを、カカシは苺大福のための賭けに差し出したのだ!
「五分以内に俺のパンツを見ることができたら、イルカ先生の勝ち。先生は期間限定の苺大福を独り占めできる上に、俺のパンツまで見られる。悪い条件じゃないでしょ?」
「う……っ」
「しかも今日は暑かったからねぇ。なんと! このマントの下はパンツだけです! 今ならもれなく、マントをめくるだけというイージーモード!」
「うううっ」
「さあセンセ、どうします?」
マントの下はパンツ一丁という当代火影のド変態発言にも関わらず、イルカの気持ちは揺れに揺れた。
見たい。
こんなチャンスは二度とないだろう。
相模屋の期間限定苺大福は来年も会えるが、帆鶇の葉っぱの火影パンツは今この時だけだ。
ちなみに柿の種ならぬ木ノ葉の種というのは、帆鶇の木の実をかたどったミニおかきと帆鶇の種が入った菓子だ。
そして木ノ葉の五月の節句に食べる柏餅は、若鶇餅(わかつぐみもち)と呼ばれている。もちろん帆鶇の若葉に包まれているからだが、どちらも帆鶇の種、帆鶇餅と名付けなかったのは頷けるところだ。
このように帆鶇の葉っぱは、本当に木ノ葉の日常に深く根付いている。
火影のパンツだけが特別なのだ。
「…………分かりました。その勝負、受けて立ちましょう!」
「そうこなくっちゃ」
四つの瞳に火の意志が宿り、燃え上がる。
「苺大福は机の上に置いといて。範囲は執務室、武器の使用は無し、他は何でもあり。あと、俺も逃げるだけじゃなくて反撃しますよ。それで俺のパンツをちらっとでも見られたら、イルカ先生の勝ち」
イルカが小さく頷く。
「それじゃ、スタート」
あっさりとした掛け声と同時に、カカシの姿が消える。
イルカも間髪入れず後を追った。
たとえ中忍といえども、有事には里の帆鶇の若葉である子供たちを守るアカデミー教師だ。防御からの追跡、捕獲能力は皆抜きん出ている。
消えたかに見えるカカシが執務室の天井裏を目指して飛び上がったのを、イルカの黒い双眸はしっかりと捉えていた。
上忍のスピードには及ばなくとも、天井裏に抜け出そうとする一瞬の隙を突いて、壁を蹴って横から斜め上に蹴りを繰り出し進路妨害を仕掛ける。
「邪魔するだけじゃ、パンツは見られな~いよ」
余裕の笑みでくるりと一回転して着地しようとした先には、イルカが低い姿勢で見上げながら待ち構えていた。
「影分身か。やるねぇ」
下から覗けば、マントの裾が広がる隙間からパンツを拝めるチャンスもあるかもしれない。
だがそんな好機を、上忍が簡単に与えるはずはなかった。
回転した時に膝を抱えて裾の広がりを押さえていたカカシは、その体勢のままイルカの上に落ちて押さえ込もうとする。
と、のしかかったはずのイルカの姿が、ぼふんと煙を上げて消えた。
「じゃあ本体はこっちね」
くるりと振り返りざま、真後ろに迫っていたイルカの脇下に潜り込むと、腰を抱えて引き倒す。
「くそっ」
「まだだよ。あと三分ある」
余裕を見せてにんまりと笑うカカシに、イルカは悔しそうな顔を隠しもしなかった。
仰向けになったイルカの、開いた足の間にカカシが陣取っている。両腿はカカシの両膝で押さえ付けられ、両の手首を片手できつく固められて、なお自由な片手を残すカカシ相手に、イルカに取れる手段があるとは思えない。
「それ、いいなぁ……絶対に屈しないって顔してさ。イルカ先生ってそんなやらしい顔もするんだね」
イルカの頬をちょんと突ついて煽るような言葉を降らせるカカシに、拘束からなんとか抜け出そうと抗っていたイルカの力が、ふっと抜ける。
「なに、諦めちゃうの? つまんないなぁ。あと二分半あるよ? もっと俺を興奮させてよ」
戦忍時代にも見せなかったようなぎらつく目で、舌なめずりせんばかりにイルカを覗き込んだ。
「……だ、……まも……やる」
「ん? どうしたのセンセ」
ほとんど睦言のように甘い声で問いかけると、よく聞こえるようイルカの顔に耳を寄せた。
「大丈夫だ、俺が守ってやる……カカシさん」
「……っ」
カカシの灰青色の目が見開かれ、弾かれたように顔を離した。
その両目を真っ直ぐに見据えると、イルカは更なる言葉を迸らせる。
「お前を放ってはおけない!」
口布越しにカカシの唇がわななくのが見てとれ、片手で口を覆う。
「イルカ先生、その台詞……そしてその声は……っ」
信じられないとでも言うように目が揺れ、だがイルカの黒い瞳から決して逸らすことはできなかった。
それほどまでに、魅力的なセイレーンの如き声だった。
「明るく爽やかで透明感のある甘い声、時に父のように力強く時に母のように優しく、それでいてどこか儚さ弱さをも感じさせる揺らぎを含むこの声は……!」
イルカの両手が震える。
掴んでいるカカシの手が震えているのだ。
「間違いない、CV:席俊彦ッッッ」
「カカシ様、敗れたり!」
ハッと振り返ったカカシは、既にマントの裾をめくられていた。
ガキ大将のような満面の笑みのイルカに。
「影分身……もう一体いたのか」
イルカにのしかかった体勢でマントをまくられたまま、カカシは脱力した。掴んでいたイルカの手首も、するりと抜け落ちる。
目的を果たした影分身が煙を上げて消えると、しばらくしてイルカが微妙な顔に歪んだ。
「え、……えっ? うわぁ…………」
記憶の統合が行われたのだろう、念願の火影パンツの正体をちらりとだが見たはずのイルカの顔色は、なぜか優れなかった。
「……見たね?」
「……見ましたね。ほんとにちょっとですけど、あれ……あんな風になってたんだ……」
どこか呆然としているイルカに、カカシがぐいと顔を寄せた。
先ほどよりさらに近く、鼻を突き合わせるくらいに。
「火影の帆鶇のパンツを見られるのは、火影の伴侶のみ。つまり、イルカ先生は今から俺の伴侶ってことになりますね」
「はい?」
「帆鶫のパンツの噂は聞いてるでしょ?」
「ええと、まぁ、はい」
「じゃあそういうことで、今日から火影邸に住んでね。細かい事は追々、まずは親睦を深めましょ。さっきみたいな顔、もっといっぱい見せてね」
イルカが何と答えたのかは分からない。
ぼふんと上がった煙と舞い散る木の葉と、執務室に残ったのはそれだけだったからだ。
ちなみにこの葉っぱももちろん、帆鶫の木の葉である。
今の今まで静かに見守っていた天井裏の護衛たちが、突然の展開にひそひそと相談を始めた。
「……おい、どうする」
「どうするって」
「護衛対象がいないのに、ここでぼんやりしててもしょうがないだろうが。ありゃ夜までお帰りにならないぞ」
「一応いるよ」
下からかけられた六代目の声に、護衛の暗部たちはびくりとする。
小さな監視穴から覗き見ると、なぜかカカシが二人いた。
一人は机に向かって冷めきった煎茶を啜ると、書類の山を処理する作業を再開している。
もう一人は苺大福の乗った小皿を取り上げると、大事に胸に抱え持った。
「これはイルカ先生のだからね。後でお腹空くだろうし。ま、俺も夜には戻るからよろしく」
そして天井に向かってウィンクすると、また煙を上げて消えてしまった。
「何の後ですか……」
小さな呟きはカカシに届いたかどうか。
影分身であろう六代目火影の執務姿を、また静かに見守る護衛たちだった。
【完】
※帆鶇のパンツの正体を知りたい者のみ、この先に進んでください
はたけカカシは戦忍としての顔を里長へと変え、日々木ノ葉のために働いていた。
その手に握っていたクナイは火影印になり、目の前に築き上げられているのは死体ではなく書類の山。
六代目火影の象徴である火影の編笠は今は傍らに置かれ、全身をすっぽりと覆う白いマントのまま執務机に向かっている。
その脇には臨時なのか、小さな簡易机が置かれていた。
机の上には同じように書類の山が、執務机の上と競うが如く絶妙なバランスで幾つも林立している。
「カカシ様、こちらの二点だけ至急ご確認ください」
書類の山の向こうに、黒髪の尻尾がぴょこんと覗いた。
そして山の間から一部の申請書が突き出される。
「ん、後で口頭で伝えとく。あと、様はやめて」
「カカシ様はカカシ様でしょう。はい、ありがとうございます」
「やめてくれないなら、イルカ先生のこともイルカ様って呼びますよ」
「意味分からんことを言い出さないでください。あ、そちらの嘆願書は今日の夕刻までにハンコお願いします……そう、それです」
二人は終始口を動かしながらも、手と目は休まず書類の山と格闘していた。
あまりの処理速度に、カカシの手にある書類は残像のみが捉えられ、イルカに至っては千手観音の再来かと見紛うほどだ。
「イルカ様、今の右手の方の報告書はシカマルに直接渡しといて」
「カカシ様、この部外秘のですよね? あと、様はやめてください」
「イルカ様がやめてくれないからでしょ。あれ、今日の夜の会食の同伴は誰だっけ」
「ナルトとシカマルです。シカマルにはくれぐれもナルトのフォローをよろしくと伝えてあります。それから子供っぽい屁理屈はやめてくれませんかね、カカシ様」
「イルカ様こそ、いい加減昔みたいにカカシさんって呼んでくれませんかね」
「…………」
「………………」
千手観音だったイルカの両手がふと止まり、二本に戻った。
「よし、一旦休憩しましょう。イライラしてると効率が下がります。こういう時は甘いもん食わなきゃ」
「はぁ~、やっと休憩ーーーーー! センセ、俺煎茶がいいです」
「はいはい」
一気に弛緩した空気の中、イルカが苦笑しながら煎茶を煎れに立つ。
しばらくして盆を持って戻ってくると、机の上の僅かなスペースに茶托を置いた。盆の上には柿の種ならぬ木ノ葉の種と、小皿の上に一つだけ乗っている苺大福。
カカシは手を伸ばすと一瞬迷い、苺大福の方を取ろうとした。
「ちょっと待った。カカシ様はこちらです」
イルカはマントから出た手首を掴み、木ノ葉の種の方に誘導しようとする。だがその手はびくともしなかった。
「……何ですか、カカシ様は甘いもん苦手でしょう」
「今日はちょっと食べたい気分なの」
「じゃあ他の甘味をお持ちします」
「この苺大福でいいよ」
「いえ、どうぞ遠慮なさらず。六代目雷切最中をすぐお持ちするので」
「自分の名物なんかヤだよ。苺大福がいい」
二人の力が拮抗して、イルカとカカシの手がぶるぶると震える。
イルカが絶対に取られまいと高く掲げた盆まで、かたかたと震え始めた。
「この苺大福は! 相模屋の期間限定なんですよ! 昨日までだったから、これを逃すと来年まで食えねぇんですっ」
「そんなレア物を独り占めしようとしてたの⁉」
「だーかーら! カカシ様は甘いもん苦手でしょうが! なんで急に執着するんですか!」
そう叫ぶとイルカは掴んでいた手をパッと離し、一足飛びにカカシから距離を取った。
カカシがゆらりと立ち上がる。
「……分かりました、それなら正々堂々と勝負で決めましょう」
「だからこの苺大福は俺のですって」
カカシは人差し指を一本立てると、チッチッと舌を鳴らした。
普通の男がやると気障で笑えないのに、カカシがやると口布越しでも様になることが、今のイルカには余計に腹立たしいところだった。
「ねぇセンセ、俺のパンツ……見たくないですか?」
イルカの目がカッと見開かれた。
唐突な変態宣言にも思える、里長のパンツ露出発言だったが。
ごくりと鳴ったのはイルカの喉だった。
!!!説明しよう!!!
ここはただの木ノ葉の里ではないのだ!
木ノ葉の里という名の通り、葉っぱは忍たちの生活に深く根付いている。
里には帆鶇(パンツ)の木という、手の平のような大きさと形をした葉っぱの木が群生していた。
ツグミが種を落としていったといわれるこの木は、初代火影が里を興す遥か前からこの地に自生していて、その葉っぱは帆布の如く丈夫で絹のように柔らかい。
しかも抗菌・防臭効果もあるということで、忍の股間を覆うのに最適なのだ。
それを提唱したのは初代火影だったが、帆鶇の葉っぱを実際にパンツとして愛用していたのも、初代火影のみだったそうだ。
いくら普及活動をしても広まらなかったため、柱間は帆鶇のパンツに特別な術をかけ、帆鶇の葉っぱをパンツにする作り方と共に、己だけの術として巻物に封じた。
後に二代目扉間がそれを発見し、火影だけに伝える秘伝の術としたそうだ。
火影のみに伝わる秘伝の術がかけられている、特別なパンツ。
歴代火影は、五代目を除き全員帆鶇のパンツを着用していたとの噂だった。
――そう。あくまでも『噂』なのだ。
それを見たことがある者は、歴代火影の伴侶のみ。
三代目の息子のアスマですら、どんなに頼んでも見せてもらえなかったそうだ。
歴代火影の治療に携わった際、不本意にも帆鶇のパンツを見てしまった医療忍には、全員記憶操作が施されたという。
そんな木ノ葉の秘伝にも等しい帆鶇のパンツを、カカシは苺大福のための賭けに差し出したのだ!
「五分以内に俺のパンツを見ることができたら、イルカ先生の勝ち。先生は期間限定の苺大福を独り占めできる上に、俺のパンツまで見られる。悪い条件じゃないでしょ?」
「う……っ」
「しかも今日は暑かったからねぇ。なんと! このマントの下はパンツだけです! 今ならもれなく、マントをめくるだけというイージーモード!」
「うううっ」
「さあセンセ、どうします?」
マントの下はパンツ一丁という当代火影のド変態発言にも関わらず、イルカの気持ちは揺れに揺れた。
見たい。
こんなチャンスは二度とないだろう。
相模屋の期間限定苺大福は来年も会えるが、帆鶇の葉っぱの火影パンツは今この時だけだ。
ちなみに柿の種ならぬ木ノ葉の種というのは、帆鶇の木の実をかたどったミニおかきと帆鶇の種が入った菓子だ。
そして木ノ葉の五月の節句に食べる柏餅は、若鶇餅(わかつぐみもち)と呼ばれている。もちろん帆鶇の若葉に包まれているからだが、どちらも帆鶇の種、帆鶇餅と名付けなかったのは頷けるところだ。
このように帆鶇の葉っぱは、本当に木ノ葉の日常に深く根付いている。
火影のパンツだけが特別なのだ。
「…………分かりました。その勝負、受けて立ちましょう!」
「そうこなくっちゃ」
四つの瞳に火の意志が宿り、燃え上がる。
「苺大福は机の上に置いといて。範囲は執務室、武器の使用は無し、他は何でもあり。あと、俺も逃げるだけじゃなくて反撃しますよ。それで俺のパンツをちらっとでも見られたら、イルカ先生の勝ち」
イルカが小さく頷く。
「それじゃ、スタート」
あっさりとした掛け声と同時に、カカシの姿が消える。
イルカも間髪入れず後を追った。
たとえ中忍といえども、有事には里の帆鶇の若葉である子供たちを守るアカデミー教師だ。防御からの追跡、捕獲能力は皆抜きん出ている。
消えたかに見えるカカシが執務室の天井裏を目指して飛び上がったのを、イルカの黒い双眸はしっかりと捉えていた。
上忍のスピードには及ばなくとも、天井裏に抜け出そうとする一瞬の隙を突いて、壁を蹴って横から斜め上に蹴りを繰り出し進路妨害を仕掛ける。
「邪魔するだけじゃ、パンツは見られな~いよ」
余裕の笑みでくるりと一回転して着地しようとした先には、イルカが低い姿勢で見上げながら待ち構えていた。
「影分身か。やるねぇ」
下から覗けば、マントの裾が広がる隙間からパンツを拝めるチャンスもあるかもしれない。
だがそんな好機を、上忍が簡単に与えるはずはなかった。
回転した時に膝を抱えて裾の広がりを押さえていたカカシは、その体勢のままイルカの上に落ちて押さえ込もうとする。
と、のしかかったはずのイルカの姿が、ぼふんと煙を上げて消えた。
「じゃあ本体はこっちね」
くるりと振り返りざま、真後ろに迫っていたイルカの脇下に潜り込むと、腰を抱えて引き倒す。
「くそっ」
「まだだよ。あと三分ある」
余裕を見せてにんまりと笑うカカシに、イルカは悔しそうな顔を隠しもしなかった。
仰向けになったイルカの、開いた足の間にカカシが陣取っている。両腿はカカシの両膝で押さえ付けられ、両の手首を片手できつく固められて、なお自由な片手を残すカカシ相手に、イルカに取れる手段があるとは思えない。
「それ、いいなぁ……絶対に屈しないって顔してさ。イルカ先生ってそんなやらしい顔もするんだね」
イルカの頬をちょんと突ついて煽るような言葉を降らせるカカシに、拘束からなんとか抜け出そうと抗っていたイルカの力が、ふっと抜ける。
「なに、諦めちゃうの? つまんないなぁ。あと二分半あるよ? もっと俺を興奮させてよ」
戦忍時代にも見せなかったようなぎらつく目で、舌なめずりせんばかりにイルカを覗き込んだ。
「……だ、……まも……やる」
「ん? どうしたのセンセ」
ほとんど睦言のように甘い声で問いかけると、よく聞こえるようイルカの顔に耳を寄せた。
「大丈夫だ、俺が守ってやる……カカシさん」
「……っ」
カカシの灰青色の目が見開かれ、弾かれたように顔を離した。
その両目を真っ直ぐに見据えると、イルカは更なる言葉を迸らせる。
「お前を放ってはおけない!」
口布越しにカカシの唇がわななくのが見てとれ、片手で口を覆う。
「イルカ先生、その台詞……そしてその声は……っ」
信じられないとでも言うように目が揺れ、だがイルカの黒い瞳から決して逸らすことはできなかった。
それほどまでに、魅力的なセイレーンの如き声だった。
「明るく爽やかで透明感のある甘い声、時に父のように力強く時に母のように優しく、それでいてどこか儚さ弱さをも感じさせる揺らぎを含むこの声は……!」
イルカの両手が震える。
掴んでいるカカシの手が震えているのだ。
「間違いない、CV:席俊彦ッッッ」
「カカシ様、敗れたり!」
ハッと振り返ったカカシは、既にマントの裾をめくられていた。
ガキ大将のような満面の笑みのイルカに。
「影分身……もう一体いたのか」
イルカにのしかかった体勢でマントをまくられたまま、カカシは脱力した。掴んでいたイルカの手首も、するりと抜け落ちる。
目的を果たした影分身が煙を上げて消えると、しばらくしてイルカが微妙な顔に歪んだ。
「え、……えっ? うわぁ…………」
記憶の統合が行われたのだろう、念願の火影パンツの正体をちらりとだが見たはずのイルカの顔色は、なぜか優れなかった。
「……見たね?」
「……見ましたね。ほんとにちょっとですけど、あれ……あんな風になってたんだ……」
どこか呆然としているイルカに、カカシがぐいと顔を寄せた。
先ほどよりさらに近く、鼻を突き合わせるくらいに。
「火影の帆鶇のパンツを見られるのは、火影の伴侶のみ。つまり、イルカ先生は今から俺の伴侶ってことになりますね」
「はい?」
「帆鶫のパンツの噂は聞いてるでしょ?」
「ええと、まぁ、はい」
「じゃあそういうことで、今日から火影邸に住んでね。細かい事は追々、まずは親睦を深めましょ。さっきみたいな顔、もっといっぱい見せてね」
イルカが何と答えたのかは分からない。
ぼふんと上がった煙と舞い散る木の葉と、執務室に残ったのはそれだけだったからだ。
ちなみにこの葉っぱももちろん、帆鶫の木の葉である。
今の今まで静かに見守っていた天井裏の護衛たちが、突然の展開にひそひそと相談を始めた。
「……おい、どうする」
「どうするって」
「護衛対象がいないのに、ここでぼんやりしててもしょうがないだろうが。ありゃ夜までお帰りにならないぞ」
「一応いるよ」
下からかけられた六代目の声に、護衛の暗部たちはびくりとする。
小さな監視穴から覗き見ると、なぜかカカシが二人いた。
一人は机に向かって冷めきった煎茶を啜ると、書類の山を処理する作業を再開している。
もう一人は苺大福の乗った小皿を取り上げると、大事に胸に抱え持った。
「これはイルカ先生のだからね。後でお腹空くだろうし。ま、俺も夜には戻るからよろしく」
そして天井に向かってウィンクすると、また煙を上げて消えてしまった。
「何の後ですか……」
小さな呟きはカカシに届いたかどうか。
影分身であろう六代目火影の執務姿を、また静かに見守る護衛たちだった。
【完】
※帆鶇のパンツの正体を知りたい者のみ、この先に進んでください
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