【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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ふ、と目が覚める。
何か言われてたような。王子様がどうとか。夢か?
夢………待てよ、目覚ましの音で起きてないぞ?
手にした時計は、俺が受付に座ってるべき時間まであと七分と告げている。
ほとんど一っ飛びに洗面台の前に立ち、ヒゲだけでも剃ろうと剃刀を手に鏡を覗いた。

「…………ほえ?」

鏡の中で間抜けな声を上げているのは、両耳の垂れた人間サイズの一匹の黒うさぎ。
もしかしてまだ夢の中かとまじまじと鏡を見ると、見返してくるのは紛れもない黒うさぎだ。興味のある時の習性なのか、鼻先がひくひくと動く。

「なんっじゃこりゃあああああああヤベェ遅刻!」

うさぎになろうと狸になろうと仕事は仕事だ。
幸いにもヒゲは剃る必要がなくなったから、とにかく忍服に着替えて出勤せねば。後の事は後で考えよう。
アンダーを引っ被りズボンに足、いや脚を突っ込むと辛うじてファスナーが閉まった。ベストもオッケー。髪を結ぼうと両腕を上げて、その必要もないことに気付く。両脇に垂れた長い耳が邪魔だが、その下をくぐらせて額当てをキュッと結ぶ。
よし、冗談みたいな格好だが遅刻の減俸よりマシだと、鞄を掴んで部屋を飛び出した。



ぎりぎり受付に飛び込むと、案の定みんながぎょっとして俺を見るが、それよりこの行列を捌かねばと「詳しいことは後だ」
と一言告げて席に着く。

「いってらっしゃいませ、ご武運を! 次の方どうぞ……あっ、はたけ上忍おはようございます。お前達もおはよう!」
「イルカせんせー、それどうしたんだってばよ⁉」
「分からん。起きたらこうなってた」
「え~、先生珍しい」

ナルトが騒ぐが、俺の方が聞きたいくらいだ。
サクラ、珍しいのは分かるけど人に指を差すな。サスケも口を開けて見るんじゃないぞ。気持ちは分かるけどな。
七班を引き連れたはたけ上忍は、右目を見開くと俺の手から依頼書を受け取って「ほらほら、いつまでもイルカ先生の邪魔しないの」と連れ去ってくれた。
と思ったら、まだ目の前にいて俺の腕を掴むと肩に抱え上げた。

「ちょっと、はたけ上忍⁉」
「とりあえずその姿を何とかしましょ。この人借りてくね」

俺の隣に座ってた奴に一言かけると、回りの景色が揺らいだ。
最後に見えたのは、受付を出ていく七班とはたけ上忍の背中で。あー、影分身の術だったのか。印を結ぶの全っ然見えなかったぞ。

「さすが上忍。スゲェな」
「何がですか? とにかくはい、これ」

肩から下ろされ、手渡されたのはクナイと髪紐。
ここはアカデミーの医務室か? でもなんでクナイと髪紐?

「いくら遅刻しそうでもヒゲは剃らないとまずいでしょ? 髪もちゃんと結んで」
「え、でも俺うさぎだから」

口布の上からでも分かる。はたけ上忍の口がぽかんと開いた。

「うさぎです。耳が垂れてるから分からないでしょうけど、こういう種類のうさぎもいるんです」
「うさぎ……イルカ先生が?」

はたけ上忍はとたんに険しい顔になると、額当てをぐいと上げた。
噂の写輪眼だ。綺麗だなぁ。

「……なるほど、あなたはうさぎなんですね?」
「はい、朝起きたらこんな姿になってて」
「戻りたいですか?」
「そりゃもちろんですよ!」

はたけ上忍の人差し指がぴんと立てられた。その動きで手甲の革がキシッと音を立てる。

「いいですけど条件があります。元の姿に戻れたら、俺の言うことを一つだけ聞いてください」

さすが誉様、俺を人間に戻せるのか! さっきの写輪眼で見ただけで何の術か分かるなんて凄い……俺の言うこと?

「どんなことですか?」
「うーん、それはね、後で」

気になるけど、まさか十万両寄越せとも言わないだろうしな。何だろう、無報酬で次の任務のサポートしろとかも……ねぇな。
俺にできる事なんてたかがしれてるし、

「分かりました。お願いします」
「その言葉、忘れないでね」

そう言うと、目元が緩く弧を描いた。
初めて見る意地の悪い、いや、悪戯が成功した子供のような笑みで。
あれ、俺失敗した?
ちょっと動揺してると、右手を持ち上げられた。
そしてはたけ上忍は身を屈めると、俺の手に顔を近付けて。
何か柔らかくて温かいものが薬指の先、爪の根元辺りに触れる。

――これは、もしかして。はたけ上忍の。

「はい、解けましたよ。鏡を見てみて」

慌てて洗面台の上にかかってる鏡を見ると、無精ヒゲに髪を下ろした俺が写っていた。
人間の。

「やった戻った! ありがとうございます!」
「どういたしまして」
「あの、でもどうやって? これ何の術だったんですか?」
「そうね、簡単に言うなら幻術かな。幻術ならチャクラを流し込めば解術できるでしょ?」

そうか、幻術。さっきのは口づけじゃなくて、チャクラを流し込んでたのか。
待てよ、うさぎになる幻術?
でも幻術なら、自分がうさぎに見えてたのは俺で。
振り返った俺に、はたけ上忍がにこりと笑う。

「言ったでしょ、『あなたは』うさぎなんですねって。俺というか、みんなに見えてたのは最初から人間でしたよ。あの子達が騒いでたのは、ヒゲ面に髪を下ろしたイルカ先生が珍しかったからでしょうね」
「あー、そういう……」

俺はいかにも寝起きですって姿のまま、受付に座ってたのか。しかも自分がうさぎだと信じて。

「ちゃんと戻りましたよね?」

どこか勝利宣言するようなはたけ上忍の声にドキッとする。

「じゃあイルカ先生、約束通り言うことを聞いてもらいましょうか」

足音一つ立てず、一歩を詰めてくる。
その目はまるで。

「サクラに聞いたんですよね。お姫様にかけられた呪いは、王子様のキスで解けるんですって。愛のこもったキスで」

獲物を捕える獣のそれで。

「これからよろしくね、俺のお姫様」

無精ヒゲの俺がお姫様なんて、と笑い飛ばせれば良かったんだが。



【完】

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