【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old (カテゴリ内↓new ↑old)

『お見合い』六×中
こういう先生が好きです。こういう先生じゃなくても大好きです。


÷÷÷÷÷・÷÷÷÷÷・÷÷÷÷÷


 ぽつん、ぽつんと飛び飛びの街灯の下、わざわざ遠回りするのはイルカ先生の住むアパートの前を通るためだ。
 別に声をかけるでもなく、ただ通るだけ。もしかしたら、少し立ち止まって月を見上げるのもいいかもしれない。


 会いたいなぁ。


 でももう会うことはない。できない。
 俺から別れを告げてしまったから。
 いつまでもぼうっと月を見上げてる俺に、護衛の暗部は陰に潜んで静かに待っている。こいつらも仕事とはいえ早く帰りたいだろうなと、また重い足を動かし始めた。
 明日はご意見番から押し付けられた見合いがある。有り難くも六代目に相応しいお方を見繕って頂いたみたいだし、会うだけは会わなきゃならない。
 もう一度だけ月を見上げると、視界の片隅に揺れるカーテンの向こう側に黒いシルエットが見えた気がした。



 鹿威しがカコーンと景気よく響く中、俺は見合い相手と見合っていた。
 本日の仲人を務めるコハル様が「本日はお日柄も良く」などと口上を述べているが、俺は見合い相手とお互いものすごく見合っていた。
「……とまぁ、形式張るのはここまでじゃ。あとは若い者同士、庭でも眺めながら話でも何でも好きにするがよい」
 コハル様がさっさと退散してからもなお、俺たちは無言で見合っていた。
 見合いというより果たし合いのような空気が、ふと緩む。
「コハル様もああ仰ってたことですし、庭に出ますか?」
 イルカが結い上げた髪を揺らしながら立ち上がるので、俺も黙って続く。
 背を向けて庭に降りるイルカに、こっそりとチャクラを探ってみたがやっぱり本物だった。この成り行きと目的が見えずイルカの出方を窺っていると、池の傍まですたすた歩いていったイルカが、背を向けたまま立ち止まった。
「今日は本当にいい天気ですね。お見合い日和だ」
「そうですね」
 他人行儀な態度を崩さないイルカに合わせ、俺も当たり障りのない言葉を返して背後に立つ。
 スーツ姿のイルカなんて初めて見た。
 支給服のベストの立ち襟に隠されてないうなじがひどく無防備に見え、屋根に潜む護衛から見えないように自分の立ち位置をずらす。
「先ほど見合って決めました。このお見合い、お受けしようと思います」
「…………え?」
 イルカの唐突な言葉に、俺を捨てて誰と結婚するつもりだという理不尽な怒りが湧いた。
 だが待て。
 イルカの見合い相手は、俺だ。
 それに先に相手を捨てたのも、俺だ。
「ずっと黙ってますけど、あなたはいかがですか?」
 穏やかに聞くイルカはまだ振り返らない。
 でもこっちを向いて、俺を見てと言う勇気はなかった。どんな顔をしてるのか、確かめるのが怖かった。
 イルカの肩が小さく揺れ出す。泣いてるのだろうか。
「……ふはっ! さっきのあんたの顔! なんで俺がいるのか意味分かんねぇって顔して、くくっ、しまいにゃ俺のチャクラ探ったりして」
 ……笑ってた。
 待って、本当に意味が分からない。
 イルカは何をしに来たんだ? 今日はどこかのご令嬢がいるはずだったのに、それはどこに行ったんだ。そもそもコハル様のセッティングしたお見合い自体が、イルカの何かの計画だったのか? 火影に就任するからと簡単にイルカを捨てた俺に対する復讐とか。だから楽しそうなのか?
 でも、さっきの台詞。「見合いを受ける」って。
「もう一度だけ聞きます。カカシさん、俺と結婚を前提にお付き合いしてもらえますか?」
 やっとイルカが振り返った。
 今の今まで笑ってたとは思えないほど、真剣な目が俺を射抜く。
 気持ちではイエスだ。
 でも俺は火影で、背負う物は昔とは比べものにならないくらい重い。その伴侶ともなれば、当然生活にも支障が出る。常時暗部の護衛が付き、行動も交流相手も全てが『火影の伴侶』としての配慮を求められる。
 そんな不自由なものにイルカを据える訳にはいかなかった。
 そうなってほしくない、イルカにはいつまでもあの眩しい笑顔のままでいてほしいというのは、完全に俺の我儘だ。
 いつまでも黙ってる俺に、イルカがハァー、と深いため息を落とした。
「あのねぇ、カカシさん。六代目火影の正式なお見合いの席に、なぜ俺がこうやって居られてるんだと思います?」
「それは、……幻術とか、何かコハル様の弱味を握ったとか」
 とうとうイルカが盛大に笑い出した。
「んな訳ないでしょう。コハル様に幻術なんてかけた日にゃ、猿飛川に簀巻きにして流されますよ! さすがにコハル様にはしません」
 コハル様にはってことは、他のご意見番にはしたのか。
 ちょっと引いてると、イルカがずいと間を詰めてきた。
「カカシさんは俺を舐めすぎ。こう見えて政治向きの事もいろいろ経験してるし、人脈もそこそこあります。今日だってコハル様に直々にお願いしに行ったんですよ? カカシさんのお見合い相手は俺にしてくれって」
「火影の見合い相手って、お願いくらいでチェンジできちゃうもんなの?」
「さすがの俺でもちょっと張り込みましたね。紅梅の五月限定若鮎一箱でした」
 ……俺って和菓子一箱で売られちゃうくらい安いんだ。
 いや紅梅の若鮎は、伝手がないと手に入らないって有名だけど。というか、イルカはそういう伝手も持ってるってことで。
「火影の伴侶なんて面倒この上ないけど、そういうの全部秤にかけても一緒にいたいってくらいには、あんたを愛してますよ」
 俺がどんな思いでイルカを諦めたと思ってるのか。
 それをこんな殺し文句一つで。
「……負けました」
「俺の勝ちですね!」
 にかりと笑う小憎たらしい笑顔に、笑えばいいのか怒ればいいのか分からなくて。
 とりあえずぐいと抱き寄せた。
「やっぱり俺の伴侶はイルカしかいないと思う。クナイの一本もなく俺を殺せるのはイルカだけだからね」
 光栄です、と笑って抱き返してくれるイルカの背が震える。
 こんなに逞しくて優しくて泣き虫で寂しがりな人を、本当に手放すことがなくて良かった。
 イルカが俺を諦めないでくれて、本当に良かった。

 もうカーテンの向こうで独り泣くイルカを見ることはないだろう。



スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。