【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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泣き脅し①
こちらの漫画とリプのやり取りが元です☆


 蜘蛛の巣



 今日はイルカ先生が受付に入るのは夕方から。
 いつもは任務の報告に行くと七班の面々に向けるあの愛らしい笑顔のおこぼれをもらえるのに、貴重な一回を逃して残念でならなかった。
 でも不在の時にやっておきたかったことがあるからちょうど良い。これ幸いとばかりに例のアイツ──モブ野ゲス太を探し、書庫に呼び出した。

「何だよカカシ、俺は久しぶりに里に戻ってきて疲れてんだ。用件なら早く済ませて……っ」

 ゲス太の顔がみるみる青褪めていく。
 俺の殺気というか怒気を間近でもろに浴びてるんだから、当たり前か。

「お疲れのところごめんね? でもこないだ受付でイルカ先生に絡んでたでしょ? 先生を困らせる奴はどうしても見過ごせなくて」
「何だよマジだったのか。どうせあいつはただの中忍だろ……ヒッ」

 どこまでも先生を侮るゲス太に、つい苛立ちが表に出てしまった。
 俺に睨まれたくらいでビビる小物に、ここまで時間をとる必要なんてなかったかも。でもイルカ先生を馬鹿にする奴は許せないんだよねぇ、どうしても。

「そうだね、あの人は中忍だ。でもね……」

 恥ずかしながら俺も以前はそう思っていた。
 なんなら関心すら持たなかった分、ゲス太よりもひどかったかもしれない。

「あの人は怖いよ。それが分からないようじゃ、この先は長くないねぇ」

 うっすら笑顔まで見せてやったのに、ゲス太は壁に背を付け、ずるずると崩れ落ちてしまった。
 ……こいつ、これで本当に上忍なのかね?
 ま、完全に失神する前にこれだけは言っとかなきゃ。

「このこと、先生には言わないでね♡ バレたらまた怒られちゃう」

 辛うじて頷いてから白目を剥いたゲス太を見下ろすと、書庫の結界を解いた上で痕跡を消す。それからゲス太の首根っこを掴むと、廊下の窓から裏庭に放り投げた。
 さ、そろそろ受付に行って、愛しのイルカ先生ウォッチングしなきゃね。



 ゲス太を探すのに思ったより時間をとられていたらしく、イルカ先生はもう受付に入っていた。先生を眺める貴重な数分をロスしたのは痛いけど、ああいう馬鹿な輩はまめに潰していかないと。
 あ、先生が「お疲れさまです」って言ってる。先生はどうでもいい奴や絡んでくる面倒くさい奴には「お疲れさまでした」って言うんだよねぇ。
 俺も面倒くさいと思われてる自覚はあるんだけど、少なくともまだ「でした」とは言われてない。上忍師として初めて会った時から、まだ一度も。
 当時はあの子たちの元担任くらいの認識しかなかった。
 ずいぶん子供たちに入れ込んでるなぁとは思っていたし、教師としての甘っちょろい保護者っぷりが鼻について苦々しさも感じていた。
 受付で任務帰りの上忍に理不尽な言いがかりをつけられている時も、正直イルカ先生を助けるというよりは、同じ上忍が下の者を嬲るという状況が不愉快だっただけだ。
 不愉快じゃなくなったどころか、愉快になったのはその後。
 俺の報告書を受け取って受領印をダンっと捺した先生が、綺麗な外面で言ったのだ。

「あの場を収めてくださってありがとうございました。でも」

 ニコリと笑みを浮かべる。
 受付応対試験があったら満点だろうという、完璧な受付スマイルを。

「受付のことは受付で処理いたしますので、どうぞお構いなく」

 隣に座っている同僚君が慌ててイルカ先生の脇を肘でどついていたが、先生はびくともしないで「お疲れさまです、はたけ上忍。次の方」と俺を列の邪魔者として捌いた。
 こんな面白い男、放っとける訳ないでしょ?
 あれからなんとなく視界に入るようになって、気付いたらおはようからおやすみまで見守り態勢になってたのは予想外だったけど。
 イルカ先生もそれに気付いているのに、ずっとスルーしてるところがまた憎らしいし面白い。今だってほら、じっと見つめる俺と笑っちゃうくらい目が合わない。
 でもそろそろ次のステップにいく頃合いかな。
 やっと人気のなくなった受付で、イルカ先生の前に立つ。

「せーんせ、今日こそ飲みに行きましょ」
「すみません、残念ながら今日は夜勤なので」

 間髪入れず返るよどみない答えに、俺はうーんと悩むふりをした。

「そうか〜、先生に悩みを相談したかったんだけどなぁ」
「私では力不足ですよ。上忍の方にお願いしてください」
「イルカ先生じゃないと意味がないんですよ。恋の悩みだから」
「それでしたら尚更でしょう。なんならサクラにでもお願いしてくださいっ」

 ……あれ?
 なんだかいつもの木で鼻を括るような返事じゃない? 語尾が荒れてる気がする。もう少しこの方向で押してみるか?

「サクラ相手じゃ大人の話ができないじゃない。俺はイルカ先生の『イイヒト』なのに、つれないなぁ」

 先生が持っていたペンをぐっと握りしめた。

「俺はあなたのイイヒトじゃない。はたけ上忍が一番よくご存知のはずでしょう」

 ガタッと音を立てて立ち上がった先生が、給湯室に向かう。
 逃さないよ。
 多分、今この瞬間を逃したら、またあの固い殻に閉じこもった完璧な受付スマイルを拝み続けることになるという勘で、すかさず後を追う。

「ここは部外者は立入禁止です」
「ハイ、嘘。こないだゲンマが一緒にいたじゃない」

 俺のストーキングスキルを舐めるなよ。
 腕を掴むと、必要以上の力で振り払われた。

「……ねぇ、俺じゃダメ? 俺はあなたのイイヒトになれない?」

 弱々しい懇願の響きを滲ませると、とたんにガードが緩くなる。
 そう、イルカ先生は『弱ってる人』に弱いもんね。

「俺は……誰かのイイヒトになれるような、そんなたいした人間じゃないんですよ」

 その言葉は俺の胸を歓喜で満たした。
 一歩踏み込めば、あなたの殻はこんなにも脆い。
 その中で膝を抱えて背を向けるイルカが、誰よりも愛されることを欲し、誰よりも恐れてるなんて。
 歓びのあまり緩みそうになる頬の内側を噛み、今度はゆっくりと手を伸ばしてイルカ先生の手を握る。

「俺に愛させて。溺れるくらいに」

 糸は垂らした。
 あとは、あなた次第だよ。



【完】
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