【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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『今日も木の葉は平和です…たぶん』シリーズでの時系列順に並べ直したので、pixivとは掲載順が変わってます。
イルカの必殺技 ★

1(完)


午後の受付…
朝イチで任務を振り分けて書類整理をし、依頼人の対応をしつつ任務に必要な書類や情報を集め、なんとか昼飯の時間をひねり出してからのまた書類整理が一段落した、谷間のような時間。
朝任務に出た日帰りの者達が帰るにはまだ早く、突発の緊急事態もなく、受付メンバーに弛緩した空気が流れる。
自然と口数も増え、話題は血継限界や上忍の必殺技になった。

「やっぱさ、血継限界もすごいけど必殺技のカッコよさは男のロマンだよな。あれって一から自分で開発するじゃん?なんつーか美学ってのがあるよ。あれこそ忍の真髄だよな~」

イルカがうっとりと宙を見ながら言う。

「だな。特上や上忍ともなると、必ず一つや二つ当たり前に持ってるもんなぁ。あれって上忍試験の推薦状に必須項目ってのホントか?」

コテツがイルカの方に身を乗り出した。すると横の書類棚から戻ってきたイズモが
「いやそれはないだろ。逆に必殺技の一つもなきゃ上忍なんかなれねぇってことじゃねぇか?あ~あ、俺もなんか考えようかな~…とうっ!」
と、よく分からない決めポーズをした。それを見たイルカは盛大に吹き出した。

「それカカシ先生の雷切!しかもなんか混ざってるし!」
「やべぇ、弱そう!いや敵が爆笑してイケるかも!」

ひとしきりみんなで笑うと、イルカは目尻に浮かんだ涙を拭いながら、
「あ~でもホントにいいよな、必殺技。俺もちょっと考えてみるかな」
と言うと、コテツとイズモは顔を見合わせた後、まじまじとイルカを見た。

「いやお前はもう……」
「イルカせんせ~~~!」

受付の後ろの開いていた窓から銀色の物体が飛び込んできて、座っていたイルカの背後から抱き付く。

「カカシ先生!今日は待機じゃなかったんですか?」

椅子から立ち上がり、へばりつくカカシをグイグイと引き剥がしながらイルカが尋ねる。
だがカカシはいっこうに剥がれず、べらべらと早口で喋り始めた。

「だぁって暇なんだもん!それに昨日っていうかほとんど今朝まで?イルカ先生にムリさせちゃったじゃない。ま、任務帰りで久しぶりだったしね!あんな可愛い声でもうやだ、ムリとか言われたら止まんないよね~!それでほら、朝は腰痛いって唸ってたでしょ?だから心配で心配で…」
「黙れっ!!!」

いつの間にかイルカは体を反転し、カカシに腰の入った見事なストレートを決めていた。カカシは窓から綺麗な放物線を描いて飛んでいく。
コテツはそれを見送りながらイズモに尋ねる。

「…おい、見えたか?」
「いや、体を捻ったのは何とか見れたけど、それだけじゃはたけ上忍の拘束は外れないだろ。何したんだあれ」
「分からん。パンチの前に腕を引いたのは一瞬見えた…気がする」

二人がぼそぼそと話してると、イルカは顔を真っ赤にしながら窓の下に飛び降りた。着地の瞬間、腰を庇うような動きをしたが、すぐに体勢を整え腕組みをして仁王立ちになる。
二人が窓の下を見下ろすとイルカの前にはいつ戻ったのか、カカシがちょこんと正座していた。

「はたけ上忍、今日は言われる前から正座してるな」
「ああ、いつものパターンだからな。飛ばされた時点でもう正座してたんだろ。さすが上忍は違うよな」

そのカカシを、腕組み仁王立ちのまま無言で見下ろすイルカ。
上から顔は見えなくても、回りに渦巻くどす黒い氷のオーラで怒りは伝わってくる。
それに恐れをなしたのか、窓のそばの木に止まっていた鳥達は皆一斉に飛び去っていった。

「相変わらずスゲぇな、イルカの怒りのブリザード」
「アカデミーの子達はさ、これ知らないでイルカ先生怒ると怖いとか言っちゃってるもんな。本気のドルフィンブリザードをあいつらにも教えてやりたいよ」

眼下ではお説教が始まったらしい。カカシの頭がコクコクと頷いているのが見える。

「これでもイルカは必殺技が欲しいって思ってんのかね。もう十分持ってるだろ」
「里の最強忍者を吹っ飛ばすドルフィンパンチ。里の誉れを問答無用で正座させるドルフィンブリザード。これ以上、何がいるんだよ…」
「あ。もう一つあった」
「……ああ、あれな。ていうかこれからな……」

二人の目が途端にどんよりとする。
カカシはようやく説教から解放されて、上忍待機所に戻っていったようだ。イルカも受付に戻るためだろう、入り口の方に向かう。


しばらくすると、ドスドスと忍らしからぬ足音を響かせてイルカが帰ってきた。

「すまん」

一言きっぱりと謝ると、さっきのジャンプが腰に響いたのだろう、そうっと受付の椅子に座る。

「あ~、いやいいって。それより大丈夫か?」

コテツが尋ねるとイズモがカッと目を見開き、コテツの足を蹴る。
コテツはハッとしたが、もう遅かった。
怒りはまだ収まってなかったらしく、イルカのペンを持った右手がぶるぶると震え出した。

「まったく、なんでアイツはああいう事を平気で人前で言うんだ!なんだ?上忍は羞恥心を捨てないとなれねぇのか?だいたい久しぶりって五日だぞ五日!それなのに会いたかっただの寂しかっただの、グダグダネチネチ朝までやりやがって!もうムリって言ったらムリなんだよ!何度も何度もイカされる身にもなりやがれ!もう出るもんもねぇっつーの!あんだけガタガタ揺さぶられりゃ俺の腰もガタガタだわ!しかもかっ、可愛いとか!お前のへにゃんって笑う顔のがよっぽど可愛いだろうが!」
バキッ!

イルカの握りしめたペンが真っ二つに折れる。
(出るもんがないって…一晩でどんだけ…いや!考えるな俺!)
(想像するな…!想像したら終わりだぞ!ら~ららら~らら~~♪)
二人は焦点の合わない目で、あーとか、うーとか唸り声のような相づちを打ちながら書類をめくり始めた。
どうせ何を言っても聞こえてないだろう。そもそも何を言ってしまってるのか、イルカ自身でも分かってないだろうから。

「だいたい俺みたいなむさい男を舐め回して何が楽しいんだ!しかもいちいち声聞かせてとかやらしい顔見せてとか!お前の方がよっぽどやらしい顔してるんだよ!そんなエロい顔で俺の股間の実況とかすんな!昂るだろうが!だからいつまでも終わんねぇんだよ!」

イルカの精神的攻撃はまだまだ続く。
(イルカ……お前の方がよっぽど恥ずかしい事言っちゃってるぞ…)
(頼む、誰か来てくれ!この激怒ノロケを早く止めてくれ…!)

そう。
これが二人の恐れていたイルカの最終奥義「激怒ノロケの術」だった。

カカシの奇行・恥行を激怒しながらつらつらと並べるが、普段なら絶対に言わないであろう二人の時のあれこれを、怒りのあまり赤裸々に垂れ流してしまうのだ。
その為イルカ本人は文句を言ってるつもりだろうが、周りにはノロケにしか聞こえないという、恐ろしくも破壊力ある技。
しかもイルカは教師なので、無駄によく通る声が聞きたくなくても聞こえてしまう。さらには「聞きたがらない相手にも聞かせる」という教師スキルまで無駄に発動するのだ。
そして聞かされた者達は皆意欲を削がれ、ひたすら目前の事に集中しようとしても出来ず、止める気力さえ奪い去るので結局全部聞かざるをえないという、防御不可能な技なのだ。(解説:イズモ)

以前、この激怒ノロケをやられた猿飛上忍でさえも、これを止める事はかなわなかったという。可哀想なことに、その後そのまま任務に向かったそうだ。
同行した中忍によると猿飛上忍は結局どうしてもモチベーションが上がらず、
任務中ずっと死んだような目で、あのちっこくて可愛かったイルカが…とかブツブツ呟いていたそうだ。(情報源:ゲンマさん)

木の葉の誇る上忍すら防ぐ事の出来ない必殺技が三つ。
そりゃあもちろん、本気で対抗しようと思えばどれも楽勝な技だろう。だがイルカがそれを発動するという一点において、全ての抵抗は弱々しく無に帰する。
(考えてみりゃイルカ自身が必殺技かもしれないな…)
イズモは隣をチラリと見やる。
当のイルカはやっと怒りが収まってきたらしく、
「まぁ、今日は秋刀魚でも買って帰るかな。だがアイツにはやらん!」
などと言っている。
どうせそんな事言っちゃっても、はたけ上忍の分も買うんだろ?その証拠にイルカの頬には、さっきの怒りとは違う赤みが差している。
カカシにとって五日が久しぶりなら、イルカにとってもそれは同じなのだろう。久しぶりに一緒にとる夕飯を思って、イルカは頬を染めたに違いない。

と、早めに任務が終わったのか、八班の子供たちと紅がどやどやと受付に入ってきた。

「お帰りなさい、お疲れ様です!お前らちゃんと頑張ったか?」

イルカが受付スマイルじゃない満面の笑顔を向けた。

(まぁ、イルカの必殺技が発動する限りは、木の葉も平和ってことだな)

そろそろ任務を終えた者達のラッシュアワーが始まるだろう。コテツもイズモも机の上の書類を手早く片付ける。
なにしろ激怒ノロケを最も多く受けているおかげで耐性が高く、立ち直りも早かった。二人は一瞬目を合わせ、ニヤリとする。

さてと、もうひと頑張りしますか。


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