【Caution!】
こちらの小説は全て作家様の大切な作品です。
無断転載・複写は絶対に禁止ですので、よろしくお願いします。
★エロし ★★いとエロし!
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『桃尻伝説 〜イルカ先生の尻に秘められた謎〜』
夏特有の青い空に対比するように、草葉の緑が眩しい。
キラキラとした水面が輝く川辺りに生える木の上で、カカシはのんびりとアカデミーの校外授業を眺めていた。
初夏と呼ぶには暑いこの季節、川の中で水遁の授業を受ける子供達は水遊びに夢中になっている。
そんな子供達の姿を見て、引率してきた教師の男が声を上げた。
「こーら、お前達!遊んでる場合じゃないぞ!課題をクリア出来ない者は、先生と一緒に居残りだぞ!一番最後に残った子は、今日は家に帰れないかもな!」
ハハハ!と勝ち誇ったような笑みを浮かべて、健康的な小麦色の肌を惜しみなく晒す海パン一丁の教師は、子供達に発破を掛けていた。
子供達は「えー!」とか「ヤダ!」とか不満を露わにしていたのだが。
樹上で海パン教師を見詰めるカカシは、思わず呟く。
「え?何それ?イルカ先生と居残り?ご褒美デショ?」
少年、少女達が羨ましぃ……
グヌヌヌと奥歯をギリギリさせながら、じっとイルカを見詰めるカカシのすぐ側で、ガサガサと木の枝が揺れる音がした。
「先輩。こんな所に居たんですね。探しましたよ」
そう言って姿を現したのは、暗部時代の後輩であるテンゾウだった。
「また、イルカさんの様子、覗き見していたんですか?」
呆れたように肩を竦めるテンゾウに、カカシは真顔で問う。
「覗き見じゃないよ。観察だよ観察。例えるならバードウォッチング?一般人でもいるんじゃない?双眼鏡持って野鳥の観察する人。あれと同じだよ。お気に入りの鳥の姿を探して、その生態を観察するって趣味」
「あー先輩の場合ですと、ちょっと趣旨が違う気がシマス……」
テンゾウの声が最後尻窄みになったのは、カカシがギリッと睨みつけたせいだ。
「いえいえ!ドルフィンウォッチング!海辺の町でもやってますもんね!川でやってもいいと思います!見付からなければ!」
慌てたテンゾウは必死に肯定する。
どうやらカカシは無意識のうちに、右拳に雷を纏っていたらしい。
危うく雷切しなくて良かったと思ったその時だった。
「こらー!止めろ!」
イルカの叫び声に振り向けば、悪ガキの一人が調子に乗って他の子供達の海パンを引き下ろしていた。
叱るイルカにも体当りして、イルカの海パンに手をかけている。
突然のラッキースケベチャンスにカカシは写輪眼を剥き出しにして、決定的瞬間を脳裏に焼き付ける。
イルカは慌てて引き下げられた海パンを死守したが、周囲の焼けた肌よりも白い尻の谷間がほんの僅かな時間だが晒されていた。
イルカに怒られた男子生徒には悪いが、イルカの生尻を拝む事が出来て、カカシは満足した。
だが一瞬にして同じくイルカの生尻を目撃しただろう男が隣にいることに気付き、不機嫌な声をあげる。
「テンゾウ。お前も見たデショ?」
「見てない!見てないです!」
テンゾウは必死に否定した。
川の中ではイルカが悪さをした男子生徒相手に、こんこんと説教をしていた。
「馬鹿者!相手が嫌がる事をするなんて、卑怯者がする事だ!それにだ!お前も忍びを目指しているなら、忍びの体は機密事項だと言うことも教えた筈だ!忍びが隠し持つ秘密を、晒すような真似をするな!他人の目から覆い隠す必要がある物に手を触れるなんて、絶対にしてはいけないことだぞ!」
だんだん興奮してきたのか、イルカの声もますます大きくなっていく。
「あ、僕。急用を思い出しました!」
この隙にと逃げ出そうとするテンゾウを、カカシは逃さなかった。
「テンゾウ君。俺に用事があったからここに来たんだよね?ついでに今見た物も忘れて行こうか?」
「本当に!本当に見てないです!あと先輩にはお願い事があって来たのですが、またの機会にしようかなって……」
「お願い事って何よ?」
「いや……大したことではないのですが。今夜ナルト達と一楽に行く約束をしていたのですが、急に任務が入ってしまって。一楽の割引券今日までなので、良かったら先輩に使って貰おうと持ってきたんですよ。ナルト達とたまにはラーメンでも食べて来て下さい」
そう言ってテンゾウは一楽の割引券を差し出す。
「僕は本当に任務に行くんで。後はよろしくお願いします」
そう言ってテンゾウは瞬身で消えてしまった。
「ま、いっか。あいつの記憶は後で消すとして。たまにはあいつらとラーメンてのも」
ちょうどイルカ達の校外授業も終わったようで、子供達が帰り支度をしている姿が見えた。
カカシもノンビリと伸びをすると、テンゾウと同じく瞬身の印を切った。
夕刻になり一足早く一楽に着いたカカシは、店主のテウチと世間話をしながらナルト達が来るのを待っていた。
しばらくすると賑やかな話し声が近づいて来て、暖簾を潜ってくる。
「な~んだ、カカシ先生だったのか。てっきりヤマト隊長、イルカ先生に割引券あげたんだと思ってたってばよ」
「え?何それ?なんかごめ〜んな?俺で」
ナルトに残念そうな顔をされると、カカシも思わず苦笑いするしかない。
「カカシ先生ご無沙汰してます。もう、ナルトってば!」
ナルトに続いて暖簾を潜り入って来たサクラが、ナルトの脇腹を肘で付く。
「サクラちゃん痛いってばよ!」
「これだからチンカスは空気が読めないって言われるんだよ」
「サイ、アンタもね!」
サイもまたサクラに肘鉄を食らって身を捩っている。
「うん、逞しいねぇ」
「カカシ先生、何か言いました?」
男子二人を撃沈させたサクラの剛腕ぶりを褒めたつもりだったのだが、女心は複雑なのだ。
やぶ蛇になりそうだったので、カカシは曖昧に笑って誤魔化した。
出来立てホカホカのラーメンを四人で啜っていると、一番先に完食したナルトがおかわりを注文していた。
「良く食うねぇ。流石成長期」
感嘆の声をあげたカカシに、ナルトはニシシと笑う。
「それ程でもないってばよっ。カカシ先生こそ相変わらず顔隠したまんま食ってるじゃん!どうやって食ってるんだってば?早食いか?」
「ん~~これはだな」
実際は部分的に幻術を応用した、印象操作の術をかけているだけなのだが。
「ナルト、カカシ先生の素顔は機密事項なのよ。スケアさんと一緒に暴こうとして、注意された事あったじゃない」
「あ〜そう言えば、そんな事もあったってばよ」
「チンカスはろくな事してないんだね」
フフンっとサイに鼻で笑われて、ナルトが憤慨する。
「何だと!」
「ちょっとアンタ達、食べてる時位落ち着きなさいよ」
一触即発のナルトとサイを、サクラが嗜める。
チームワークが良いのか悪いのか。
「まぁ〜俺の顔は機密事項って程じゃ無いけど」
これはテンゾウも苦労してそうね。
「イルカ先生も言ってたじゃない。忍びが隠し持つ秘密を晒すような真似をするなって」
カカシが思わず今日仕入れたばかりのイルカの台詞を口にすると、ナルトがムスッとふくれっ面を浮かべた。
「何で俺達が怒られた時、イルカ先生が言ってた事知ってるんだってばよ?」
鋭い指摘に、今日盗み聞きしてきましたとは、もちろん言えるわけがない。
「あ〜それはだな」
「さてはカカシ先生も、イルカ先生の秘密暴こうとしたんだな!」
「イルカ先生の秘密?」
秘密?秘密があるの?イルカ先生に?
年単位でイルカの行動観察記録を取っていると自認してるカカシは、まだ知らない事があったのかと、軽くショックを受けた。
「あー!それ知ってる。桃尻伝説でしょ?」
「桃、尻?」
一瞬にして、昼間見たばかりのイルカの生尻が、カカシの脳裏に蘇る。
桃尻。確かにあの滑らかな白さは、白桃のようだったな。
思わずカカシはゴクリと喉を鳴らした。
「女子が桃尻なんて、卑猥な言葉使って良いの?」
「サイは黙ってなさい!卑猥だって決めつけるから、卑猥になるのよ!」
ちぇっとつまらなさそうなサイを無視して、サクラが語りだす。
「イルカ先生のお尻には、うみの家秘伝禁断の恋の術が刻印されてるって、メルヘンゲットなお話なのよね!桃の形の刻印なんですって!」
キャーっと叫ぶサクラを見て、ナルトが首を傾げる。
「あれ、そうだったか?イルカ先生の爺ちゃんと婆ちゃんが、川で拾った桃から出てきた、イルカ先生の父ちゃんに授けた禁術が、イルカ先生に遺伝したんだって聞いたってばよ」
「禁術って、そんなにホイホイ遺伝するわけないよ。大体桃から人が出てくるなんて、有り得ない」
ボソリと呟くサイを無視して、ナルトとサクラの話は続く。
「ナルト、イルカ先生と銭湯行ったことあるんでしょ?桃の刻印見た事あるんじゃない?」
「イルカ先生、ちゃんと尻は手拭いで隠してたからな。大事な所は隠さないと駄目だってばよ」
「アンタにも隠すって事は、真実味がますます濃くなって来たわね」
あの爽やか健康優良男子の、イルカ先生の尻に桃の刻印!
しかも禁断の恋の術!
お義父さんは桃から産まれてる!人ならざるもの?もしかして妖精さんか?メルヘン過ぎるだろ!!
「ちょっと……情報量が多過ぎて、精査出来ないな……」
眉間に深い皺を寄せ、カカシは難しい顔を浮かべる。
カカシが纏う気配が変わった事に、ナルトやサクラ、サイの表情まで固くなった。
「これは徹底的に調査しないとね」
翌日、カカシは任務から帰って来たばかりの、テンゾウを待ち構えていた。
埃まみれで草臥れているテンゾウには悪いが、一仕事してもらわねばならない。
ちょうど任務受付所で、イルカに報告書を提出している所を見付けたカカシは、眉間に皺を寄せるとボソリと呟く。
「何でイルカ先生に提出するのよ。隣の奴に提出しなさいよっ。やっぱりアイツ先生の生尻見たから、吸い寄せられてるのね。くっこれが恋の術か?」
ギリギリと奥歯を噛み締めながら、カカシは不穏なチャクラを垂れ流す。
テンゾウは禍禍しい気配を感じたのか、振り向く。
その途端、カカシを見付けたらしい。
驚いた猫のように全身の毛を逆立てると、アワアワと逃げ出した。
「逃がすか!」
カカシは無駄に上忍のパワーを発揮して、あっという間にテンゾウに追いつくと背後を取った。
「テンゾウ君、何で逃げるかな?何か思い当たる事、あるんじゃない?」
テンゾウはビクリと全身を震わせている。
「あ……いえ、逃げてないですよ。先輩の気のせいですよ」
「……イルカ先生の生尻」
テンゾウの耳元でカカシがボソリと呟くと、可哀想な位テンゾウは動揺する。
「ヒエッ!み、見てないですっ。イルカさんのお尻なんて見てないです!」
「俺も可愛い後輩の記憶を消すのは、可哀想かなって思っちゃってね」
テンゾウは、必死にコクコクと頷いている。
「記憶を消さないであげるからさ〜かわりに頼みたい事あるんだよね。嫌だとは言わせないよ?」
ニコニコと機嫌良さそうな笑顔でお願いしたつもりが、カカシの目が全く笑っていないのは仕方がないだろう。
「分かりました」
半ば脅迫したようなものだが、テンゾウは素直に頷いた。
数日後カカシの元へ、テンゾウから1枚の書類が届いた。
「流石テンゾウだね。仕事が早い」
自宅でのんびりと寛ぎながら、カカシは書類を眺めていた。
忍者経歴書と書かれた書類には、一人の男の経歴が写真付きで載っていた。
うみのイッカク上忍。今は亡きイルカの父だ。
この人がイルカ先生のお義父さん。
黒髪の精悍な顔付き、チョビ髭がトレードマークの細マッチョだ。
桃から産まれたという、メルヘンな妖精さんのイメージからはほど遠い。
どちらかと言うと武士?和の国の戦国武将のような雰囲気の男だった。
「もしかして和の国の妖精さんって戦闘系?木ノ葉とは妖精さんの概念が異なるのかも?」
愛らしいファンシーな妖精さんよりも、イルカの父親ならばゴリゴリの戦国武将の方がシックリ来る。
禁断の恋の術を授かり、イルカに遺伝させたのは、大事な一人息子を思っての親心だろう。
皆に愛される人に育って欲しい。
そんな親心を感じる。
だが――カカシの心は非常に狭かった。
「駄目でしょ!これ以上イルカ先生の魅力を増幅させたら!先生のお尻が狙われちゃう!これは何があっても桃の刻印を、封じなければならないねぇ……」
クククッと、禍々しい笑い声が思わず漏れてしまう。
「その為にも、桃の妖精さんについて、もっと調べないと」
木ノ葉の中枢部と呼ばれる本部棟には、誰でも閲覧できる資料室があった。
里内待機日のこの日、カカシは資料室に向かうと、早速和の国について調べ始めた。
イルカの父であるイッカクが桃の妖精さんなら、禁断の恋の術も、和の国の伝来の物だと考えたのだ。
カカシはコピー忍者という二つ名の通り、あらゆる種類の忍術をコピーしているが、恋の術と呼ばれる類の術はコピーしていなかった。
俺の忍術って、ほとんど戦闘系なのよね。
恋の術と言うくらいだ。脳の精神を支配する系統か、はたまた幻術系か?バリバリの戦闘系武闘派のカカシには、縁の薄い領域だった。
とりあえず手がかりがありそうな、和の国の資料を探しているのだが、思いの外少ない。
和の国とは文化交流もあり、輸入貿易でも縁がある筈なのだが。
近年で一番縁がありそうな情報は、輸入品のウォシュレット付き便座で、座ってもヒャァっとならない温かい便座であり、お尻に優しい洗浄機能付き、和の国の英知の結集品であることが書かれていた。
大名の屋敷のトイレに、必ずと言っていい程あるので、火の国では大ヒット商品らしい。
「いやいや〜。俺が知りたいのは、こういうんじゃないんだ〜よ」
思わず独り言が漏れてしまう。
「やっぱり五代目に頼むしか無いのか……」
五代目火影綱手の住む火影屋敷なら、歴代火影が集めた門外不出の資料が、屋敷の蔵の中にどっさりある筈。
ちょっと蔵に入らせて、なんて頼もうものなら、絶対に対価を要求される。
綱手の事だ。S級任務を、これでもかと押し付けて来るかもしれない。
なんならSSS級任務、なんてのも有るかもね。
そう思うと気乗りしなかった。
はぁ~と思わずため息が漏れてしまった時、資料室のドアが開く音がした。
思わずカカシが振り向くと、ドアを開けて入って来た、黒髪尻尾の愛嬌のある男と目が合う。
「あ、カカシさん。お疲れ様です」
い、い、イルカ先生!!
まさかのイルカの登場に、カカシの心臓が跳ね上がる。
ああああっ、あのダボッとした先生のズボンの下には、魅惑的な白いお尻がある!
思わず先日見たイルカの生尻を思い出し、頬が急激に赤く染まった。
口布してて良かった。
いきなりイルカ先生を見て赤面してるのがバレたら、絶対に不審に思われてしまう。
ここは努めて冷静にならなければ!
カカシは必死に自分に言い聞かせた。
それなのに何も知らないイルカは、無邪気な笑みを浮かべながらカカシに近寄って来る。
「珍しいですね。カカシさんが資料室に居るなんて。何か調べ物ですか?」
「あ〜まぁ、ちょっとね。和の国に興味があって……」
「和の国ですか。ウォシュレット付き便座が有名ですよね!もしかして、カカシさん家も付けるんですか?」
「いや……まだ、です」
モゴモゴと口ごもりながら、カカシは脂汗を流していた。
まさかイルカの尻の秘密である桃の妖精さんと、禁断の恋の術を調べてるなんて言えない。
「ウォシュレット付き便座も良いんですが、もっと伝統的な文化と言うか……そういうのを探してるんですが。思いの外資料って無いんですね」
カカシはハハハ……と乾いた笑みを浮かべる。
「伝統文化ですか……」
イルカは何か思い付いたのか、小脇に抱えていたアカデミーの教材の中から、一冊の絵本を取り出した。
「これなんかどうですか?俺の私物なんですが、和の国の民間伝承で有名な物語です」
イルカが差し出した絵本には、桃太郎というタイトルと、おかっぱ頭に前掛一丁の、尻丸出しのわんぱく小僧の絵が描かれていた。
「これは!」
思わず絵本を受け取った、カカシの手が震える。
主人公の桃太郎らしき尻丸出し小僧は、パッカリと割れた桃の中に立っていたのだ。
桃から産まれた子供!まさかこれが桃の妖精さんか!
ズキューンと心臓が撃ち抜かれたような衝撃に、目眩がしそうになった。
「え〜と、こ、これは……お借りしても大丈夫ですか?」
「はい、どうぞ。カカシさんは民話にも興味があるんですね」
ニコニコと何も知らないイルカは微笑んでいる。
カカシはイルカに礼を言うと、颯爽と資料室を後にした。
カカシが向かった先は上忍待機所だった。
日当たりの良い窓辺の席に腰掛けると、桃太郎の絵本を早速読み始めた。
――お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行きました。
――川の上流から大きな桃が流れてきて、お婆さんが思わず拾い上げると、中から子供が出てきました。
「こ……これは!」
『あれ、そうだったか?イルカ先生の爺ちゃんと婆ちゃんが、川で拾った桃から出てきた、イルカ先生の父ちゃんに授けた禁術が、イルカ先生に遺伝したんだって聞いたってばよ』
ナルトが言っていた、イルカ先生のお義父さんが誕生した秘話と同じじゃないかー!!
やはりイルカ先生のお義父さんは、桃の妖精さんに違いない。
そうカカシが確信した時だった。
「あら〜カカシ。面白い本読んでるのねぇ」
鈴の音が鳴るような声に顔を上げれば、絵本を覗き込んでいる紅の姿があった。
「いつもいかがわしい本しか読んでいないのに、こんな可愛い絵本も読むのね~」
カカシはビクリと肩を震わせると、慌てて桃太郎の絵本を背中に隠した。
「隠さなくたって良いのに。いつも堂々とエロ本読んでるくせに、絵本は恥ずかしいの?」
「いや、これはだな!借り物で……」
「ふ〜ん、そうなの?アカデミーの子供が読んでいそうな本よねぇ」
紅に意味ありげな顔で見つめられて、カカシはいたたまれなくなり顔をそらした。
「ま、良いか」
急に興味を失ったのか、紅が立ち去ろうと背中を向けた。
「あのさ」
思わず引き止めてしまったのは、紅が幻術のエキスパートだからだ。
カカシが調べているのは、桃の妖精さんだけではない。
禁断の恋の術。
紅ならば、何かヒントになる物を知っているのではないかと、カカシは直感したのだ。
「何?」
振り向いた紅に、カカシは言いにくそうに小声で尋ねた。
「幻術とかで、相手を好きになっちゃうような術ってない?例えば……恋の術、とか?」
珍しくモジモジしてるカカシの姿に驚いたのか、紅は目を見開いた。
「アンタまさか!イルカ先生に掛けるつもり!?いくら何でもやって良い事と悪い事があるわ!ストーカーってだけでキモいのに!」
「いや!まさか!むしろ逆だよっ!解術したいの!!」
なにげに失礼な事を言われた気もするが、背に腹は代えられない。
「このままじゃイルカ先生の魅力が垂れ流しで、先生のお尻が狙われちゃう!俺は何としてでも、阻止しなければならない!!」
熱い決意を表明したカカシに、紅は呆気にとられていたが、カカシの気持ちが伝わったのだろう。
「何だかよく分からないけど……イルカ先生に害を加えないなら、話くらいは聞いてあげるわよ」
甘味処と書かれたのぼりが、そよ風に揺れている。
上忍待機所を抜け出したカカシは、紅と共に木ノ葉商店街にある喫茶店に移動した。
女子が好みそうなお茶とデザートを奢る代わりに、カカシは紅から恋の術について詳しい説明を受けていた。
「恋の術って言っても多岐に渡るけど、結論から言えばどんな術も解けちゃうわよ。永続的に掛かる術なんてないわ」
紅の話によると、古今東西様々な者達が恋の術の開発を試みてきたが、完璧な物はないらしい。
「恋は幻、一時の気の迷いなんて言うけど。精神に直接作用したり、幻を見せたり、記憶改変から媚薬までいろんな方法があるけれど、持続可能な時間は術者によって異なるし、媚薬に至っては薬が体から抜けてしまえば終わりよね。まぁ……恋が始まるきっかけとして使うなら、長持ちしそうだけど。恋の術だけでは、長期間恋愛感情は維持出来ない筈よ。カカシが心配しなくたって、時間が経てば解術されるわよ」
「普通はそうかも知れないけど、禁術とか?刻印みたいなので、永続出来たりしない?」
「禁術?」
紅は綺麗な眉をひそめると、胡散臭そうな目でカカシを睨みつける。
「アンタやっぱり、変な事考えてるんじゃないでしょうね?」
「違う!本当に違うの!イルカ先生に恋の術の刻印があるって聞いたから、そんな危険な物ほっとけないデショ!」
必死に言い募るカカシに、紅の表情も変わった。
「まぁ……その話が本当かどうかは分からないけど。例えば対象者の体に直接術式を刻む事で、ある程度の期間術の効果を継続させる事が出来る、とは聞いたことがあるわ。カカシの言う刻印が恋の術の術式なら、可能性は有るかも」
「術式……」
「術式自体を消してしまえば良いんじゃない?」
デザートを食べ終わった紅は立ち上がる。
「ま、頑張りなさい。イルカ先生とちゃんと仲良くなれば、消す機会も出来るでしょ?」
そう言うと紅は、喫茶店から出て行った。
数日後、カカシの姿は任務受付所にあった。
任務報告書を手に、まっすぐイルカの座る列に並ぶ。
「お願いします」
「お疲れ様でした。確認します」
カカシの差し出した報告書を受け取ったイルカは、キラキラ輝くような笑みを浮かべていて、カカシは思わず頬が緩んだ。
イルカ先生ってば、いつ見ても可愛すぎる!
この笑顔を独り占めしたいと思うけれど、悲しいかな。受付係の標準的な対応の一つだって事は、もちろん知っている。
カカシは暇さえあれば、イルカウォッチングしてるのだ。
受付係の朝のミーティングで、「受付係は笑顔が命!皆さん今日もお疲れ様です!ガンバです!」と職員達が唱和しているのを見てるのだ。
ああ……営業スマイルではない、イルカ先生の心からの笑顔が欲しいよ。
「あの、カカシさん?」
ぼーっとしていたのを不審に思ったのか、イルカが怪訝な顔でカカシを見つめていた。
「ああ、すみません」
「大丈夫ですか?今日から三日間休暇になりますので、ゆっくり休んで下さいね」
ハンコをペッタンと押しながら、イルカが微笑む。
「次の方どうぞ」
イルカがそう声を発した時、カカシは大慌てで背負っていたディパックの中から、桃太郎の絵本を取り出した。
「ちょっ、ちょっと待って、先生!あ、あの!これ!ありがとうございました!」
ワタワタしながら、カカシはイルカに絵本を手渡した。
「ああ、桃太郎ですね。これ、お役に立ちましたか?」
「ハイぃぃ!もちろん!」
カカシはガシッと、イルカの両手を握り締める。
驚くイルカを前に、カカシは必死に声を張り上げた。
「お礼を!お礼がしたいんです!」
「あ〜、いやいや〜。そんな気にしないで下さい」
必死の形相のカカシに、しっかりと握り締められた両手をブンブン振り回されても、受付業務のプロであるイルカは、嫌がる素振りも見せない。
周囲からヒソヒソと「何やってるんだあれ?」「カカシが興奮してるぞ」「今近づいたらヤバい、出直した方がいいかも……」等と声が聞こえてきて、初めてカカシは我に返った。
ああ、いかんいかん。イルカ先生の仕事の邪魔になっちゃう!
でも、これだけは言わないと!
「イルカ先生。今夜暇でしたら、一緒に飲みに行きませんか?お礼をしたいんです」
脂汗をダラダラ流しながら、カカシは決死の覚悟でイルカを誘った。
「はい、喜んで」
イルカはニコニコしながら頷く。
よっしゃー!メルヘンゲットォォォ!!
カカシは興奮のあまり泣きそうになりながら、握ったままのイルカの両手を、再びブンブン振り回した。
任務受付所の窓の向こうがすっかり暗くなった頃、イルカの仕事が終わるのを待っていたカカシは、イルカと連れ立って繁華街に向かった。
イルカ先生にお礼をするならば、高級料亭に連れて行かねば!
そうカカシは張り切っていたのだが、結局イルカに勧められた、安くてつまみの美味い大衆居酒屋に落ち着いた。
「イルカ先生は、いつもここで飲んでるの?」
「はい。中忍仲間とよく来るんですよ」
ニコニコ答えるイルカは知らない筈だが、年単位でイルカの行動を観察しているカカシは、もちろんイルカのお気に入りの店だと知っている。
店の奥には座敷席があって、そこでいつもイルカが仲間達と飲んでいる姿を、カカシは何度も気配を消しながら、こっそり隠れて観察していたのだ。
今までは眺めているだけだったけれど、今夜のカカシは違う。
堂々とイルカと面と向かって、酒を交わすのだ!
こんな日が来るなんて!
ありがとう桃の妖精さん!ありがとう桃太郎!
心の中でグッジョブと叫ぶ、イルカのお義父さんの姿が見えた。
イルカは手慣れた様子で店員に声を掛けると、ビールとつまみを注文していた。
「カカシさんもビールで良いですか?それとも日本酒にします?」
「俺もイルカ先生と同じ物で、お願いします」
「ビールをもう一つ追加して下さい。あとホッケの塩焼きと、サンマはさすがに無いですよね?」
「シーズンじゃないので生サンマはありませんが、缶詰で良かったらありますよ」
「それじゃ缶詰でお願いします」
テキパキと店員相手に注文するイルカは、とても頼もしかった。
カカシはと言えば、こういう賑やかな居酒屋は本来苦手なのだ。
イルカを眺めていたい一心で来店して来たが、店員にはいつも不審者だと思われてしまい、注文するのが苦行だった。
でも今日は違う。
堂々とイルカと向かい合い、誰の目も気にする事なく酒席を楽しむ事が出来る。
それが何よりも嬉しくて、イルカと上機嫌で酒を飲み、つまみを突付いた。
変化が訪れたのは、イルカの頬が赤く染まった頃だった。
いつもよりも飲むピッチが早いなとは思っていたけれど、イルカが酒に強い事はカカシは知っている。
それなのに、こんなに早くイルカが酔っ払ってしまうとは!
酔いが回って、トロンとしたイルカ先生の顔も可愛いな~
デレデレしながら見つめるカカシの前で、イルカはおもむろにベストのジッパーを引き下げた。
「暑いな~」
イルカは豪快にベストを脱ぎ捨てる。
「暑くないですか?この店」
暑い暑いと手で仰ぎながら、イルカは支給服の上着にも手をかけた。
「ちょっ!ちょっと待って!」
えいやっとばかりに宙を舞うイルカの上着に、慌ててカカシは目を見開く。
イルカの上着の下から現れたのは、素肌に鎖帷子という標準的な忍びらしい姿だったのだが、鎖帷子の網目から透けて見える乳首が、なんとも言えない色気があった。
なんてケシカランお乳首!!
ラッキースケベチャンス!!到来の筈なのだが、カカシは大慌てでイルカに上着を着せる。
「こんな所で脱いじゃ駄目でしょ!」
「う〜暑い」
「暑くても駄目!誰かに見られたらどうするの!!」
「でも暑い〜」
「暑くても我慢して!」
なおも上着を脱ごうとするイルカに、カカシはしっかりとベストも羽織らせる。
「もう飲み過ぎだよ。今日はお開きね。先生の家まで送るから。帰りますよ」
カカシはイルカを背負うと、会計を済ませ居酒屋を後にした。
ひんやりとした夜風が心地良い。
背中にイルカを背負いながら、カカシはゆっくりと木ノ葉の住宅街を歩いていた。
イルカは眠くなってしまったのか、カカシの背にクッタリと体を預けながら、スースー寝息を立てている。
雑多な住宅街にある、イルカの住むオンボロアパートが見えて来て、カカシの足が自然と止まった。
ああ、もうすぐこの幸せな時間が終わってしまう……
背中から感じるポカポカとした温もりを手放すのが惜しくて、カカシは立ち止まったまま動けない。
いっその事、このまま俺の家に連れて行っちゃおうか?
今こそ憧れのお持ち帰りチャンス!この機会を逃したら次はないかも!?
そう思うけれど、悲しいかな。
年単位でこっそりとイルカを観察して来たせいか、カカシは直接行動に移す勇気が持てなかった。
「んん~」
イルカが小さなうめき声を漏らして、カカシの背中でモゾモゾと身じろぐ。
イルカはカカシを信頼して、身を委ねてくれてるのだ。
イルカも忍びだ。どんなに酔っ払っていても、信頼できない相手に無防備な姿を見せたりはしないだろう。
「せっかくのお持ち帰りのチャンスだったけど。仕方がないな……」
イルカの信頼を失いたくない。
カカシは再びアパートを目指して歩き出した。
古びた金属製の階段を上がり、アパートの二階にある共用通路までたどり着く。
イルカの部屋が一番奥の角部屋だということは、カカシはもちろん知っていた。
だっていつもアパートの隣に生えた、大きな木の上から観察してるもの。イルカ先生の部屋の間取りだって、全部把握済みよ。
カカシがその気になれば、鍵が掛かっている玄関ドアだって開けられるが、ここは家主のイルカに確認した方が良いだろう。
「先生、イルカ先生。お家に着きましたよ」
「フワァ?」
「玄関開けても良い?鍵、貸して下さい」
「鍵?鍵は……ポストの中、レス」
ポストの中デストォォォ!!
まさかの返事に、カカシはイルカを背中から下ろし、その場に座らせる。
大慌てで共用通路を走り、階段を駆け下りた。
カカシは階段の裏側にあるアパート全個室の集合ポストの中から、うみのと名札が着いたポストを開ける。
すると蓋の裏側に貼り付けられたマグネットに、申し訳無さそうにイルカの部屋の鍵がくっついていた。
なんてこった!無防備が過ぎる!
カカシは猛ダッシュでイルカの元へと戻る。
「先生、駄目でしょ!鍵をあんな所に置いちゃ!取りあえずこの鍵は俺が没収します!」
「あ〜ハハハ。鍵かけてもかけなくても、一緒なんれ」
酔っ払いのイルカはテヘヘと笑う。
イルカの言いたい事は、カカシにだって理解出来る。
ここは忍びの里だ。忍びならドアの鍵の施錠なんて、簡単に解除出来てしまう。
それでも暗黙の了解として、鍵が掛かっている所には立ち入らない。勝手に鍵を開けてはいけないという事くらい、アカデミー生でも知っているのだ。
「それでも!防犯対策は徹底してちょうだい!」
イルカのお尻には、禁断の恋の術の刻印があるのだ。
こんなにガードがユルユルでは、イルカのお尻が危ない!
カカシはイルカを再び担ぎ上げると、玄関ドアを開け中へと入る。
イルカを居間に下ろすと、カカシは自分のベストのポケットの中を、ガサガサと漁った。
「あった。取りあえずこれで応急処置しておくから」
丸めてしまっておいた護符の束を取り出し、入って来たばかりの玄関へと戻る。
これでもかと言うくらいドアに護符をベタベタと貼り付けて、ようやくカカシはほっと一息ついた。
「先生、取りあえず護符で玄関ドアを塞いでおきましたから。後で必ず新しい鍵にして下さいね」
そう言いながら居間に戻って来たカカシは、居間で寝転がるイルカの姿に、ブハッと吹き出した。
ゴブゴブ激しく咳き込むカカシは、涙で視界が歪む。
何で?何でこの人!服、脱いじゃってるのよぉー!!
床に転がるイルカはパンツ一枚しか身に着けておらず、周囲には脱ぎ捨てた衣服が散らばっていた。
無邪気に鼻息をピスピス鳴らすイルカは、問答無用で可愛かった。
ああああ〜、これは!これは!俺に対する試練なのか!?
「せんせぇ、お願いだから!服着てちょうだい!」
カカシはイルカの体をユサユサ揺さぶって起こそうとしたが、イルカは全く目を覚まさない。
ああああ〜、このままでは目の毒だ。俺のマグナムが反応するのも、時間の問題だぁよ〜。
カカシは大急ぎで寝室に向かう。
押し入れから毛布を引っ張り出すと、イルカの元へと戻り、寝転がるイルカに覆いかぶせた。
これで一安心。
カカシがほっとした途端、大きく寝返りを打ったイルカが、かぶせたばかりの毛布を蹴飛ばしてしまった。
ノォォォ!!
「せんせぇ、大人しく毛布に包まっててよぉ~」
ワタワタしながら再び毛布を掴んだカカシの耳に、紅の言葉が蘇る。
『術式自体を消してしまえば良いんじゃない?』
もしかして、今がその大チャンスなんじゃ……
カカシはゴクリと喉を鳴らした。
幸いイルカは眠っている。身に付けているのは、お尻を覆い隠すパンツのみ!!
このパンツをちょっとだけ引き下げれば、桃の形の恋の術の刻印が見える筈。
そこで術式自体を消してしまえば良いのだ。
これはイルカのお尻を守る為。
正当防衛とも言える。
カカシはそっと手を伸ばすと、イルカのパンツに触れてみた。
心臓の音がうるさいくらいドキドキしてる。
緊張感で脂汗がダラダラ流れてきた。
カカシはそっとそっと少しずつ、イルカのパンツを引き下げる。
尻の割れ目から、ふっくらと膨らむ双丘が目に飛び込んでくる。
イルカの小麦色の肌に唯一残された、日焼けしていない白い領域だ。
まるで禁断の地に踏み入ってしまったような感覚に、全身の血が吹き出しそうになる。
カカシはゆっくりと時間をかけて、最後までパンツを引き下げた。
全容を現したイルカの生尻に、クラクラと目眩がしそうになった時だった。
イルカの白い生尻に、青あざのような逆ハート型のシミを見つけたのだ。
まるで桃のように見えるこれは……
「これが恋の術の刻印?」
色素が沈着したあざにしか見えない。
「いや……もっとよく見てみないと」
カカシはじっと目を凝らすが、桃の形のあざには、それらしき術式が刻まれているようには見えなかった。
カカシはイルカの尻にある桃の形のあざを、撫でたり擦ったりしてみる。
特に異変も起こらず、桃の形のあざが消える様子もない。
試しに解術の印を組んだが、全く何の効果もなかった。
「これってもしかして……ただの青あざなんじゃ……」
そう呟いた時だった。
「んん~」
小さなうめき声と共に、イルカがむっくりと身を起こした。
「あれ?何で裸?」
まだ寝ぼけ眼のまま、イルカはぼんやりしている。
一方カカシはと言えば、まさかイルカが目を覚ますとは思っていなかったので、頭の中が真っ白になった。
ああああ〜!イルカ先生がー!起きてしまった!!
ノォォォ!!
アワアワと慌てて逃げ出そうと、瞬身の印を切ろうとした時だった。
ぱっちりと開いたイルカの目と、目が合ってしまったのだ。
「カカシ……さん?」
「……はい」
カカシは間抜けな事に、思わず返事をしてしまった。
これで完全にイルカに、カカシの存在を認識されてしまった。
イルカはようやく自分の置かれた状況に、気付いたようだ。
「うわああああ!!」
素っ裸で、中途半端に足にパンツが引っ掛かっているという、あられもない姿に、悲鳴のような雄叫びをあげる。
「見、見ましたね!?俺のお尻!!」
「……見ちゃいました」
今更嘘を言った所で、バレると確信したカカシは、正直に答えた。
イルカは必死にパンツを引き上げると、手をバタバタさせながら、毛布を引き寄せる。
まるでミノムシのように毛布に包まると、身を縮めた。
グスグスとイルカが鼻を啜る音がする。
「あ……あの、泣かないで。何にもしてませんから」
カカシは恐る恐る声を掛ける。
「当たり前です!!」
その途端、食いつくす勢いで、イルカがガバリと毛布から顔を出した。
「……は……恥ずかしいから、絶対誰にも見られたくなかったのに!!」
涙目で訴えられて、カカシもオロオロと狼狽える。
「い、言いませんから。絶対に言わないから」
「言わないで下さいよ!お尻に蒙古斑が残ってるなんて!俺もう子供じゃないのに……このまま一生消えないんだ!!」
まだ酔っ払ってるからか、イルカは盛大にボロボロ涙をこぼした。
申し訳なくてイルカの背を擦るカカシは、ふと首を傾げる。
「蒙古斑?……恋の術の刻印じゃないんだ」
カカシの呟きが聞こえたのか、イルカが声をあげる。
「恋の術の刻印?何の事ですか?それよりも……俺のお尻見たんだから……責任……取って下さいよ」
最後は消え入りそうな声で、イルカは頬を染めた。
「責任?」
「俺の事、いつも見てましたよね?それってつまり……少しは自惚れてもいいのかなって……」
ゴニョゴニョと小さな声をあげたまま、イルカは再び毛布をすっぽりとかぶり、ミノムシになってしまった。
「俺が見てたって……先生、気付いてたの?」
カカシは驚くしかなかった。
絶対にイルカには、気付かれていないと思っていたのだ。
「お、俺だって……忍びですから。それくらいは、気付きます」
毛布の中からくぐもった声で、イルカが答える。
「蒙古斑……他の人に見られたくないから。カカシさん……責任取って、俺と付き合って下さいよ」
カカシの頭の中で、カランコロンと結婚式場のベルの音がした。
これってつまり……イルカ先生は俺の事が好きって事!?
桃の妖精さんこと、イルカ先生のお義父さんが親指を立てて、白い歯を煌めかせながら微笑んでいる。
「責任取ります!!取らせて下さい!!イルカ先生、大好きです!!」
カカシは、ムギュッとミノムシを抱きしめる。
この瞬間、イルカのお尻の秘密は、カカシの独り占めが決定した。
恋の術に掛かったのも、カカシ一人だけ。
それはこの先もずっとだ。
【完】
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はやおさんからリクエスト何かある?って聞かれた時、ちょうどXでカカイル尻フェス企画が開催されてたんですよね。
お祝いにゆう本°さんだけの桃尻を貰えるってヤバくない⁈という欲望のリクエストです!
しかもはやおさんはゆう本°さんがおっぱい星人だと知ってるので、お乳首様チラリのご配慮までもしてくださるという……
持つべきはオタクのお友達!!!
これカカシさんもDTっぽくて可愛いし、イルカ先生はもちろん可愛いのは宇宙の真理なんですけどね。
イッカクさんが桃の妖精さん!
この点においては伝説が真実であったらとめっちゃ笑いました!
でもさ〜〜〜蒙古斑は可愛すぎるでしょ…(噛みしめ)
そして先生の必殺
『責任取って付き合ってください』
んんんんんんんんんんんんっっっっっ
はやおさんめちゃめちゃありがとうございました!
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