【Caution!】

こちらの小説は全て作家様の大切な作品です。
無断転載・複写は絶対に禁止ですので、よろしくお願いします。
★エロし ★★いとエロし!
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※このお話は、はやおさんのサイト最果て倉庫の『バラの香り』の後日譚です。





赤茶けた屋根が青空に映えて、白い外壁が眩しい輝きを見せる町並みを、飾るように咲き誇る桜並木を抜けて、石畳の道を街路樹と同じ桜色の髪をした少女が駆けて行く。
 少女は時折立ち止まり、周囲に目をこらす。
 しめしめ。誰にもバレてないわね。
 カテドラルの鐘が鳴る賑やかな道を、振り向いた途端、目の前に立つ金髪の少年の姿を見つけて、少女はぎくりと肩を窄ませた。
「サ~クラちゃん。どこに行くんだってばよ?」
「ナ……ナルト!なんで、アンタがっ」
「隊長が探してたんだってばよ。またお城を抜け出したのか?サクラちゃんも懲りないってばよ」
 金髪の少年に呆れた顔でそう口にされると、サクラはムッとした顔を浮かべて、言い返した。
「何よ、騎士見習いのくせに。生意気!私がどこに行こうと、私の勝手でしょ」
「勝手では困りますよ。サクラ姫」
 背後からかけられた声に、サクラが驚いて振り返ると、そこには今一番会いたくない人物が立っていた。呆れ顔と共に。
「げ!隊長」
「隊長じゃないよ。ナルト、君もだよ。鍛錬をサボって」
 サボってなんかいないってばよ!と言うナルトの声を無視して、馬を引く黒髪の騎士はサクラに歩み寄ると「城に帰りますよ」と口にした。
「もう、帰らないわよ!今日はイルカ先生達の様子を見に行くんだから!」
 そう言って走り出すサクラの後を、金髪の少年が追いかけて行く。
「待って~サクラちゃ~ん!」
 石畳の道を抜けて、町外れへと向かう二人の様子を眺めながら、黒髪の騎士――テンゾウはため息をつく。
「ま、仕方が無いか。先輩の所なら安全だし」


 王の住まう居城の下に広がる城下町の外れに、一軒の廃屋があった。
 町外れと言うこともあって、静かなこの場所は、元は教会として使われていた建物で、使われなくなって久しいが、イルカの補修の甲斐もあって、元の姿を取り戻しつつあった。
「カカシさ~ん。少しは手伝って下さい」
 崩れかけた外壁を補修しているイルカの側で、のんきに壁にもたれかかり、熱心に本を読みふける男がいた。
 輝くような銀髪が目を引くこの男は、元は近隣の王国中に名を轟かせた凄腕の騎士であったが、今は騎士を引退して、国王の計らいで王侯貴族の子息相手に剣術の指南をして生計を立てていた。
「カカシさん?もう、何夢中になってるんですか?」
 ムッとした顔でカカシの本を取り上げたイルカは、その内容に目をやり、真っ赤になって俯いた。
「だ~か~ら~いつも言ってるじゃない?イルカには刺激が強すぎるって」
 呆れ顔でイルカから本を取り上げたカカシに、頬を赤く染めたイルカが口を開く。
「何いかがわしい本読んでいるんですか!そんな本読んでる暇があったら、俺の手伝いして下さいよ」
「いかがわしくなんかな~いよ?今都で一番流行ってるロマンス小説よ?」
「ロマンスなんて言っても、ただのエッチな本じゃないですか!」
 むぅぅっと唸るイルカを「可愛い」と言って抱きよせる男の腕から逃れると、イルカはそそくさと元の作業を始める。
 照れくささを隠そうと、ムキになって作業を続けるイルカの姿を眺めながら、微笑ましそうにカカシは色違いの瞳を細めた。

 イルカとカカシが、テンゾウとナルトと共にこの地に逃れて、一年が経っていた。
 ひっそりとこの地に住まう人々に紛れて過ごす予定が、王の居城のある城下町に入った途端、一変した。
 町中で暴漢に襲われそうになっていた少女を助けた事で、王の居城に招かれ、この国に居を据えることになってしまったのだ。
 少女はこの国の姫君で、おてんば姫として有名だったらしい。
 時折お忍びと称して一人で城下町を散策して楽しんでいた所を狙われたのだ。少女の名はサクラと言い、ナルトと同じ年頃だった。
 サクラの父である国王は、大変喜び、カカシを是非姫の近衛騎士として迎えたいとおっしゃったのだが、これをカカシは固辞し、代わりにテンゾウが姫の近衛騎士となった。

「何が俺はイルカだけの騎士だからですか!僕は田舎暮らしに憧れていたんですって。先輩も知ってるでしょう?何でまた近衛騎士に僕がならないといけないんですか~!」

 そう言ってぼやいていたテンゾウも姫付きの近衛騎士隊長に収まり、ナルトは騎士見習いとして士官学校への入学が許可された。
 修道士を辞め、カカシと人生を供に歩くことを決めたイルカもまた、貴族の子息相手に神学を教える教師として登用され、サクラ姫相手に教鞭を取ることもあった。
 神学の教師となったイルカは、カカシと生計を供にしながら、二人の夢を実現させようとしていた。
 カカシとイルカの夢。それはこの地に小さな孤児院を建てることだった。
 幼き日を共に過ごしたコノハ修道院を思わせるような、小さくても暖かい、そんな孤児院を開きたいとそう思っていた。
 その夢を聞いたサクラ姫の計らいで、国王からこの廃屋となった教会を譲り渡され、イルカは休日になるとカカシと供にこの場所に通い、修繕作業に勤しんでいた。

「イルカは本当に器用だよね~。壁の穴だって、簡単に直しちゃうし」
 補修作業に当たるイルカの様子を眺めながら、カカシがそう呟く。
「当たり前ですよ。修道院では自給自足が基本理念ですから。建物の破損だって、自分達で直さないといけない。修道士なら誰でもしている作業です」
 作業する手を止めることなくイルカが答えると、本を閉じ目を上げたカカシがにっこりと微笑んだ。
「逞し~い。さすがイルカ」
「おだてても何もでませんよ」
 そう言って呆れ顔で微笑むイルカに、銀髪の恋人はため息交じりに口を開いた。
「俺なんて剣術しか出来な~いよ?人殺しの技しか知らない。生きていくのに必要なのは、本当はイルカの知っているような、そんな事なんだろうねぇ」
「カカシさん……」
「なんて顔してるの?イルカは」
 カカシは腕を伸ばすと、そっとイルカの黒髪を撫でた。
「イルカがいてくれるから。イルカが俺に生き方を教えてくれるから」
「教えます。俺がカカシさんに、カカシさんが知らないことも全部。生きていくのに必要なこと全部、教えてあげます」
「ありがとう……」
 ふわりと抱き込まれて、驚きに目を見張りながら、イルカはバラ色に染まった頬を照れくさく思いながらも、カカシの背にそっと腕を伸ばす。
 抱きしめた身体の温かさに、目を閉じると、そっとカカシがイルカの頬に唇を寄せた。
 小鳥が啄むようなキスを繰り返し、クスクスと笑う銀髪の恋人が愛しくて、イルカもまたカカシの頬に唇を寄せる。
 この人を愛せて良かった。
 カカシとこうして過ごすことが出来るとは、今でも夢の中にいるようだった。
 優しい恋人の温もりが、夢ではないと、これは現実なのだと教えてくれる。
 イルカはこうしてカカシと触れあう瞬間が、一番好きだった。
「ねぇ、大人のキスしよ?」
 カカシの囁きにイルカがそっと目を閉じた時だった。
「イルカ先生!あー!!」
 素っ頓狂なサクラの叫び声に、サクラの後を追ってきたナルトが声を上げる。
「サクラちゃんっどうしたんだってばよ?」
「見ちゃダメー!アンタにはまだ早すぎる!」
 慌ててナルトの目を塞ぐサクラの様子に、驚いたイルカがカカシから離れると、そんな二人の後を追ってきたテンゾウが苦笑した。
「どうも。久しぶりです。イルカさん。それに先輩」
「ちょっとテンゾウ!お目付係が目を離してちゃダメでしょうが」
「ごもっともです……」
 ははは……と乾いた笑いを浮かべるテンゾウに、カカシが渋い顔を浮かべて、もう一度イルカを抱き寄せる。
 戸惑うイルカに構うことなく、カカシはイルカのあごに手を掛けると、引き寄せた。
「「あー!!」」
 驚きに叫ぶ子供達の目の前で、チュッと言う甘い音を立てて、カカシはイルカの唇を奪うと、にんまりと微笑んだ。
「イルカは俺だけの物だからね!」
 頬を真っ赤に染めて「きゃー(メルヘンゲットー!)」と喜びの声を上げるサクラに、あわあわと涙目で「イルカせんせぇ~」と叫ぶナルト。
 そんな子供達の様子に、呆れ果てたテンゾウがぼやく。
「せんぱ~い、何やってるんですかっ」
 満足げに微笑むカカシの腕の中で、肩をふるわせイルカは叫んだ。
「もうっカカシさんなんかっ!大嫌いだ~!!」
「え?大好きの間違いデショ?」
「大っ嫌い!」
「え~!愛してるっていつも言ってるくせにぃ」
「大っ嫌い!」

 五人の声が賑やかに聞こえる、その側に立つ補修途中の建物の横で、大きな桜の木が風に揺れた。
 淡い桃色の花びらは風に舞い上がり、ふわりふわりと、青い空から降りてくる。
 優しい気配を漂わせた花びらは、カカシの腕の中のイルカを包むように舞い、その黒髪の上に降りてきた。
 そっと花びらに手を伸ばすカカシの耳元で囁くと、イルカは頬を染めた。
「やっぱり……大好きです」

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