【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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 名ばかりの春、吐く息も凍るような夜更け――。
 木ノ葉の里の西地区、その外れに広がる還らずの森の粗末な小屋の中に、幾つかの影が揺れている。
「いよいよ明日だ。潜入する準備は万全だろうな」
 男の抑えた低い問いかけに、若者の興奮を隠しきれない声が返った。
「ああ、全員分の事前登録は済ませたぜ。俺は問題ないとして、あんたたちこそちゃんとバレないように変化できるんだろうな」
「こいつらは変化が得意な奴ばかりだから心配ない。それより本当に名家のガキばかりなんだろうな。攫ったはいいが、その辺のチンケなガキばかりじゃ困る」
「参加する奴らはちゃんと調べたさ。俺たちの新たな忍里の未来を担うガキだぞ、当たり前だろ。そんな心配ばかりしてないで、木ノ葉を出た後の事を考えようぜ」
 浮かれた様子の若者に、頭領らしき男がため息で返す。
「任務は事前準備が最も重要なんだ。それが分からないようなひよっこじゃ、俺たちの里には迎えられんぞ」
「木ノ葉の現役の忍の俺がいたからこそ成り立つ計画だろ。七代目の息子が去年卒業したから、今年は警備もそこまで厳重じゃないはずだ。おい、今さらビビるなよ、今が絶好のチャンスなんだ!」
「声を抑えろ。ここはもう敵地だと思え」
 鋭く叱責した年嵩の男を若者が正面から睨み付ける。
 剣呑な空気が漂ったところで、頭領らしき男が片手を挙げて二人を制し全員を見回した。
「とにかく明日だ。総員抜かりなく臨め。――散」
 静かな号令に、小屋の中の影が全て消えた。


*****


「皆さんこんにちは!」
「こんにちは~!」
「こうちょう先生こんにちは!」
 アカデミーの体育館で、壇上に上がる校長のマイクを使わない朗々とした挨拶に、子供たちのあどけない声がてんでんばらばらに返る。
 その後方には保護者が並んで子供たちをにこやかな笑顔で見守っていたが、中にはあからさまに心配そうな顔をする者もいた。
 青藍色の詰襟に身を包んだイルカは、十六人の子供たちの顔を一通り見渡してから大人たちにも頷きかける。
「今日のアカデミー親子体験見学会は、入学してみたいと思ってる皆さんに授業の様子や学校の中をしっかりと見てもらいます。この中でアカデミーに通ってみたい子は手を挙げて……」
 イルカが全部言い終わる前に、子供たち全員の手が元気良く挙がった。
 ぴょんぴょんと跳ねながら両手を挙げる子や、「はいはいはーい!」と叫びながら手を振り回す子もいて大騒ぎになると思いきや、イルカが両手をパンと打ち合わせたとたんに静かになる。
「ようし、みんな元気いっぱいでいいな! 静かにするべき時もちゃんとできてえらいぞ」
 そう言ったイルカの姿が壇上から消えたかと思うと、子供たちの真ん前にシュッと現れた。たった今イルカが立っていた所には丸太がごろんと転がっている。
 いかにも忍者らしいパフォーマンスに、子供たちも「すっげぇ!」「うわぁ忍者だ!」と大喜びだ。
「まずは授業をしてる教室を見に行こうか。見学する時は喋らない、勝手な行動をしない、先生の言うことを聞く。立派な忍者になりたいなら、まずはルールをきちんと守れなきゃならない。できる人は静かに手を挙げてごらん」
 今度は全員が黙って手を挙げる。
「先生がこうやって人差し指をシーってしたら、絶対に喋っちゃダメだぞ。それじゃ、みんなで初めての見学任務に出発だ。列を崩すなよ」
 任務という言葉にキラキラと真剣な目をした子供たちが、イルカの後にぞろぞろと続く。その殿を務めるのは油女シノだ。列の中間には同じく教員二人と保健医のアオイも加わって、子供たちの動きをさりげなく見守っている。
 そして体育館に残された保護者はアンコの誘導で会議室に向かった。こちらは特に禁止されてないせいか、知り合い同士でお喋りしながら移動していく。中には男性もちらほら混じっていて、卒業生なのか懐かしそうに辺りを眺めながらゆっくりとついていった。
 子供たちには初めての任務と言ったが、イルカたち教員側にもこの体験見学会は初めての試みだった。
 来年度にアカデミーに入学を希望している親子が春から安心して通えるようにと、事前に希望者を募っての体験見学会だ。実際の授業風景や校内の施設を案内するのだが、実は授業中の生徒たちの方にも不安材料があった。さすがに大がかりな悪戯はしないと信じたいが、不慮の事故や不測の事態までは防げない。第一回ということで、念のため先代火影で前校長のカカシにもスケアに変化して教員として参加してもらってはいるが。
 どうか無事終わりますようにと、教員たち全員が笑顔の影で切に祈っていた。



 最初は座学の教室の見学だ。
 イルカの後ろに二列で続いていた子供たちは、きょろきょろと見回しながら静かに歩いていたが、教室の後方の出入り口の前でイルカが足を止めると一斉に注目する。
 くるりと振り返ったイルカが、小さな声で子供たちに話しかけた。囁き声でも全員にはっきり伝わる話し方は忍の話術の基本だ。
「これから教室の中に入って、お兄さんお姉さんたちが勉強してるところを見学させてもらいます。みんな、さっきのシーッのルールは覚えてるかな? できる子は静かに手を挙げて」
 イルカが人差し指を立てて唇に当てると、子供たちも片手で同じようにシーッとしながら反対の手を挙げた。それをにこやかに頷いて手を下げさせると、引き戸を静かに開けて教室に入る。その後を二列で続いた子供たちが、室内の様子を興味津々で見回していた。
 今行われているのは最高学年の合同授業で、すり鉢状に段々に下がった座席の前方では、教師が巻物を広げて口寄せの契約の説明をしている。未就学児にはちんぷんかんぷんな内容に、案の定子供たちは生徒や教室の中ばかりを見ていたが、教師が印を組んで巻物から大きな赤茶色の犬が現れたとたん全員が釘付けになった。
「すっげぇ! でっかい犬だ!」
 シノの真横で大声を上げた男の子の目は黒目がなく真っ白で、日向家に連なる子供だろうか。隣にいた黒髪の男の子が「ミナミのバカ! シーッ! 忍犬なんていつもうちで見てるだろっ」と険しい顔で怒ったが、虎ほどもある大きな忍犬の登場に教室内の生徒たちもざわめいたのであまり目立たなかった。
 二人の背後に立ったシノが顔を寄せ、「犬塚フサ君、バカと言うのは良くないが今の注意は良かった。日向ミナミ君は次回から気を付けよう」と囁きながら二人の男の子の肩をぽん、ぽんと叩く。するとミナミとフサと呼ばれた子たちは決まり悪そうに頷いた。
 イルカはその様子を見て満足げな笑みを浮かべ、大きな犬に夢中な子供たちに目を戻す。忍犬に興奮して声を上げる子供がいるのは想定内だったので、大騒ぎにならない限りは特に問題はない。口の動きだけで「わんわん、かわいい、わんわん」と嬉しそうな女の子もいて、最初に口寄せの授業の見学にして良かったと内心で胸を撫で下ろした。



 教室を出た見学任務の一行は校長室へと向かった。
 黒檀のドアが見た目の重厚さに反して軽々と開くのは、非力な子供でも簡単に開けられるようにという配慮だろう。
 イルカがドアを開けて教員を含め総勢二十人近くを招き入れると、校長室のわりに質素でそう広くない部屋は、小さな子供ばかりとはいえほぼ満員御礼の状態だ。
「ここが校長先生の部屋です。みんなが何か困ったりお話したいことがあったら、いつでも来ていいんだよ」
 物珍しげにきょろきょろと動く小さな頭にイルカが穏やかに語りかけたが、子供たちは初めて見る校長室に夢中のようだ。
「こうちょう先生、あのおっきいはこはなぁに?」
「あれは金庫だよ。先生の大事なものをしまってあるんだ」
「ねぇ、先生のいすにすわってみてもいい?」
「いいけど大きいし回るから、落っこちないよう気を付けるんだぞ」
 先生先生と口々に呼びかける声に、イルカは丁寧に答えていく。
 机の背後にある大きな窓に数人の子供が駆け寄った。窓を開けて乗り出したやんちゃな子供は、付き添い教員のカジカが素早く抱き上げて引き戻す。
 壁に向かって「が、こと、よう、さんの」と謎の言葉を発している男の子は、壁にかかったスケジュールボードに書かれた文字を読めるところだけ音読しているのだろう。女の子数人が来客用のソファーに座ってひそひそ話をしているのをイルカが見守っていると、ジャケットの裾がくいと引っ張られた。
「先生、おしっこ」
 ナルトのような金髪を三つ編みにした女の子は、ずいぶん我慢していたのか小刻みに足踏みをしている。イルカは急いで保健医のアオイを呼ぶと、廊下のすぐ先にあるトイレに連れてってくれるように頼んだ。そして室内の子供たちに声をかける。
「みんな、ちょっとトイレタイムにしようか。行きたい人はシノ先生についていくように」
 シノが校長室のドアの外に移動して「こっちだ」と手を挙げると、六人がぞろぞろと部屋を出た。その様子を見て自分も行きたくなったのか、茶色い髪の男の子が一人みんなの後を追って走っていく。
 アカデミーのトイレは男女別だが隣り合っている。シノはその前に立つと「トイレを済ませて手を洗ったら、またここに戻ってきましょう」と声をかけた。
 男の子四人と女の子三人が分かれてトイレに入っていくと、先に行っていた保健医のアオイと女の子が女子トイレから出てきた。
「あら、トイレタイムにしたのね。この子を校長室に連れてったら私もここに戻りましょうか?」
「お願いします」
 二人を見送ったシノはしばらく一人で突っ立っていたが、ふと何かの気配を感じたように肩に顔を向ける。
 そこには小さな灰色の羽虫が止まっていた。



 男子トイレの中には、口寄せの授業でシノに注意されたミナミとフサもいた。
 その二人に向かって、後から走ってついてきた男の子が声をかける。
「なぁ、お前ら日向と犬塚の奴だろ」
「そうだけど」
「だれだよお前」
 二人は本家ではないとはいえ、木ノ葉では名の通った家の生まれなので、そう言われることに慣れていた。
 茶色い髪の男の子は他に一緒にトイレに来た男の子が個室に入るのを横目で確認すると、ミナミとフサに顔を寄せていかにも重大な秘密を明かすように声を潜めた。
「おれの兄ちゃんがアカデミー行っててさ、すごい口寄せ獣がいる部屋を教えてくれたんだ。どうだ、一緒に見に行ってみないか?」
 二人は顔を見合せると「いく!」「やめとくよ」と同時に答えた。
「ミナミ、ダメだよ。シノ先生が待ってるんだから」
「ちょっとくらいいいだろ」
 押し問答しているうちに水を流す音が響き、他の男の子が個室から出てきた。
 茶色い髪の男の子は二人の手を掴むと、急いで個室に引っ張りこむ。
「おい、秘密なんだから静かにしろよ」
 個室の鍵をかけて二人の方に向き合うと、ミナミとフサは慌てて両手で口を押さえた。
「まぁいいや、二人ともちょっとこれを見てみろよ」
 茶色い髪の男の子がポケットから小さな巻物を出し、ぱらりと広げると二人に手渡した。
 そこには真新しい墨で、円とその中心に一文字だけが書かれている。
 『眠』と。
「これ、なんてかいてあるんだ?」
 ミナミの問いに男の子は答えず、子供とは思えないスピードで幾つもの印を組んでいく。すると巻物から薄青い煙がふわりと漂い出して、覗き込んでいた二人は急にぐらりと倒れこんだ。
 二人が個室の壁にもたれかかって眠っているのを確認した男の子は、自分の服をめくり上げて腹から札を剥がすと今度は別の印を組む。
 煙が上がった後に現れたのは、二十代半ばの若い男だった。
 男はさらに印を組んで自分の影分身を三体出す。狭い個室の中が大人四人と子供二人でぎゅうぎゅう詰めになったが、その三体は心得たようにすぐ変化の印を組んだ。
 再び煙が上がった後には、ミナミとフサと先ほどの茶色い髪の男の子が現れる。
「急がないとシノ先生に怒られるぞ!」
 フサの姿になった影分身が個室を飛び出すと、他の二人も続いて駆け出していった。
 それを見送った若者は眠っている二人にニヤリと嫌な笑みを向けると、足元に転がった巻物を手に取る。そして今度は腰につけたポーチから二つの小さな人形を取り出した。
 それは黒い布で頭と手足、胴体を象った簡素な人形で、その腹にはそれぞれ白い円の中心に『囚』の一文字が書かれている。
 若者は緊張した面持ちで額に浮かぶ汗を袖で拭い、複雑な印を組み始めた。二十以上の印の最後の辰を組み終わると、眠っているフサとミナミがしゅるんと人形に吸い込まれる。
 二人を吸収した人形は、髪や目や服装などそれぞれの姿に似た見た目に変化していた。
「お前らおとなしくしてろよ。って言っても俺たちの里に戻ったら、文字通り従順な『人形』になっちまうけどな」
 ポーチから風呂敷を取り出して二体の人形をそっと包むと、ポーチに大事そうにしまい込む。そしてもう一度額の汗を拭うと、ふうと息をついた。
「こっちの首尾は上々。さて、あいつらに知らせなきゃな」
 そう呟いた若者は腰のポーチから二枚の紙片を取り出すと、個室から出て窓を開けると式鳥に変えて宙に放った。


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