【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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最果て倉庫さん8周年お祝いです!
猫耳上忍でおめでとうございますーーー!
榊君ははやおさんちの『ミステイクなんて言わせない』シリーズのオリキャラ、みんちゃんは如月の忍猫のお話『俺とイルカ先生(、ときどき忍猫)』のオリキャラです。
(リンク先はそれぞれpixiv)




  可愛いひとって言わせたい




明けの明星が東の空に瞬く頃、イルカのアパートの玄関が音もなくそっと開けられ、そして閉じられた。
一ヶ月近くに及ぶ任務から帰還したカカシが、同棲しているイルカの元に戻ってきたのだ。
下足を脱いで埃っぽい荷物を下ろすと、まずはイルカの寝顔を拝もうと薄暗い居間を通り抜けて寝室に向かおうとした。すると居間の卓袱台がずらされ、大きな物体が転がっているのに気付く。
きっと遅くまで持ち帰りの仕事をしたイルカが、ベッドに行くのが面倒でそのまま寝てしまったのだろう。タオルケットに頭まで包まった子供のような寝方に、カカシは思わず頬を緩めた。
あどけない寝顔を拝む代わりにと、タオルケットの上からそうっと抱きしめかけると、何か違和感と言いようのない不安に襲われる。
それがはっきり形になる前に、にゅうっと伸びてきた両腕に捕まえられた。

「ああんダーリン♡ ただいまエッチなんて激しいんだからぁ♡」

明らかにイルカとは違う声にカカシが身を引こうとすると、ドンッと突き飛ばされる。

「え、……誰⁈ キャアアアアアアアア痴漢! 変態ッ! イヤァァァアアアアアアア」 
「ちょっ、痛っ、お前こそ誰⁈」

カカシはタオルケットをかぶったままバタバタ暴れる塊から必死に逃げようとするが、狭い居間に卓袱台もあってなかなか逃げ切れない。
すると止まらない悲鳴の合間に、愛しいイルカの声が響いた。

「変態め! 覚悟!」

殺意の乗った拳を辛うじて避けると、イルカの背後に回って羽交い締めにして抑え込み、まだ叫び続けているタオルケットの塊から辛うじて距離を取った。

「イルカ先生、俺だよ! カカシ!」
「痴漢がカカシさん⁈」
「誰か助けてぇぇぇぇ犯されるうううううううう!」
「俺は痴漢じゃない! あー、もうお前は黙って! て言うか誰⁈」
「うるせぇぞイルカ!」

隣の部屋から壁をドンッと殴る音と共に罵声が浴びせられる。
タオルケットの塊はようやく暴れるのをやめ、布からひょっこりと顔が出た。

「あら、はたけ上忍だったのね? やぁだ、変態と間違えちゃったわ。キャハッ♡」
「お前は……榊君⁈」

悪気の欠片もなく必殺のラブリー胸キュンポーズを決める榊に、カカシはどっと疲れを覚え、羽交い締めにしたままのイルカにべったりと抱きついた。



「……で? 何で榊君がうちで寝てたの?」

寝起きのまま自宅に帰る榊を見送った二人は、卓袱台を挟んで向かい合っていた。
帰還早々イルカにまで変態やら痴漢呼ばわりされたカカシを前に、イルカは神妙な顔で正座をしている。

「それは……あのですね、あいつが珍しく恋愛相談があるって。いつも俺が聞いてもらってばかりだから、たまには相談に乗ろうかと。それでカカシさんの帰還もまだ先だと思ってたので、うちでゆっくり聞いてたらあいつが寝ちまって、その……すみませんでした!」

ガバっと頭を下げるイルカに慌てたカカシは、隣にすっ飛んで座ってイルカの両手を握った。

「それは全然いいよ! ただね、相手が榊君だからね。また何か貰ったりアドバイスされたり、そういうのは大丈夫?」
「今回はちゃんと何も貰ってないし、アドバイスをしたのは俺だから大丈夫です!」

力強く頷いて返すイルカに、カカシはやっと肩の力が抜けた。
イルカと榊は下忍時代のスリーマンセルの仲間で、今でも親友ということらしい。
心は花の十七歳、身体は男の乙女なオネェという触れ込みの榊は、乙女と言うだけあって恋愛ネタが大好きだ。
今までも度々一方的にイルカの恋愛相談(つまりカカシとの事だ)に乗っているのだが、榊から貰った物やアドバイスの引き起こした結果は、イルカとの仲を逆に危うくしたりヤマトを巻き込んで大騒ぎを起こしたりするものばかりだった。イルカとの馴れ初めもきっかけが榊の惚れ薬なので、あまり強くは言えないのだが。
それでカカシが禁止令を出し、いくら親友とはいえ榊絡みは危ないと自覚があるらしく、イルカも一応気を付けていたようだ。

「カカシさん、お疲れの時にすみませんでした。あと、おかえりなさい。無事帰ってきて良かった……」

そういえばまだおかえりなさいと言われていなかったと、イルカの言葉で気付く。

「うん、ただいま」

先ほど間違って榊を抱きしめかけてしまった口直しに、はにかみながら見つめてくれる恋人をしっかりと両腕に囲い込んだ。



今日はアカデミーと受付だと慌ただしく出ていくイルカを見送ると、一旦仮眠をとる。
中期任務から帰還したカカシは二日の休暇が与えられていた。その実は休暇とは名ばかりの上忍待機所での待機だが、五代目に逆らえるはずもなく昼過ぎに待機所に向かう。
すると本部棟の手前の往来で、薄墨色の髪を結い上げた和服姿の中性的な若者に声をかけられた。

「こんにちは、はたけ上忍。ご無沙汰しております」
「こんにちは……あれ、みんちゃんさん? こんな所で会うなんて珍しいね」
「今日ははたけ上忍にお会いしに参りましたのよ」
「俺に?」

みんちゃんは今は人型に変化しているが、本来は大型猫科動物の忍獣だ。
伝説と謳われた忍猫だったが、今は引退して主の髭右近家の家業を手伝っている。
ちなみにみんちゃんという名は、ちゃんまでが正式名称だ。主の髭右近家当主のセンスだろうが、カカシの忍犬たちも個性的な名前なせいか特に変わってるとは思わなかった。
髭右近家は犬塚家と並ぶ忍獣育成の名門で、同じ忍獣を扱う家同士交流も深い。それでカカシもみんちゃんを見知ってはいたが、個人的な用件は珍しいと頷いて先を促した。

「私ども髭右近家が医療班の方々と、使役獣と人間が兼用できる兵糧丸を共同開発しておりましてね。それではたけ上忍と忍犬の皆様にも試験的に使って頂きたいと、こちらを預かって参りました」

そう言うとみんちゃんは、懐から手のひらサイズの紙包みを取り出して手渡した。
包みを開いてみるとビー玉くらいの焦げ茶色の丸薬が二粒、ころんと転がり出てくる。
一見同じに見える丸薬は、片方は猫の頭だけのシルエットの焼き印が、もう片方には犬の全身のシルエットが押されていた。

「そちらが猫と人間兼用で、こちらが犬と人間兼用だそうです。でも肉食の猫向けと雑食の犬向けという味の違いなので、人間はどちらでも構わないでしょうね」
「人間と犬ってけっこう体格が違うけど、これって適量とかある?」
「そうですねぇ……私が六粒と言われたから、十キロ辺り一粒くらいかと。こちらはサンプルなのでとりあえず一粒ずつですけど、後ほど皆様の分をお届けしますわ」
「え、うちの子全員分? なんだか悪いね、ありがと」

人型のみんちゃんは華奢な印象だから、六十キロというのは本来の姿である大型猫の時の体重での判定だろう。
カカシは申し訳なさそうに礼を言うと、包みを腰のポーチにしまい込んで別れた。
待機所に向かいかけたところで、猫用は忍犬使いの自分には不要なのではと思って振り返ると、みんちゃんの姿はもうない。無柄の薄墨色の被毛をした四脚の獣が屋根の上を軽やかに渡っていくのが視界の端に写ったので、きっと獣型に戻って急ぎ主の元に帰るのだろう。
わざわざ呼び戻さなくても、猫用も人間と兼用なのだから犬用を忍犬の誰かにあげて猫用を自分が食べればいい。
そういえば何も食べずにイルカの部屋を出てきていたなと、ポーチから包みを出して猫のシルエットの方の兵糧丸を口に放り込んだ。
ドッグフードの味見はしたことがあるから、キャットフードも似たようなものだろうと予想したが、肉食の猫用とはいうものの噛み砕いても特に肉らしい味もキャットフードらしい味もしない。兵糧丸特有の軽くパサつく口内に、待機所に行く前にコーヒーを買おうと思いながら本部棟に向かった。



昼過ぎということもあって、上忍待機所は閑散としていた。
窓際のソファーに座ってアイスコーヒーを飲んでいると、見知らぬ若いくノ一たちが連れ立って入ってくる。彼女らはカカシを見ると一瞬目を見開いたが、軽く会釈をして離れた席に座った。
その後もチラチラと視線を寄越してきては小声で話をしているが、カカシは昔から注目されるのに慣れていたので、どうせ適当な噂話だろうと気にせず愛読書を開く。
今日はなんとなく額当てがきつい気がするけど、後で結び直そうかなどと思いながらページをめくっていると、ゲンマがふらりと入ってきた。
ゲンマはカカシを一目見た瞬間、ブハッと吹き出した。いつも咥えている楊枝を吹き飛ばさなかったのはさすがというか、笑いながら近寄ってくるとカカシの頭を指差す。

「カカっさん、それ何すか? ハロウィンにはまだ早いっすよね」
「それって何よ」
「気付いてないんですか⁉ 頭に耳が生えてますよ。何かの動物の」
「え、耳⁈」

カカシが慌てて頭に手をやると、何か柔らかいものがぐにゃりと潰れる感触がした。
手の方の感触は当然だが、恐ろしいことに頭の方の何かも『潰された』感触があって鳥肌が立つ。

「……何よ、これ」
「はたけ上忍、それ猫の耳ですよね?」

先ほどのくノ一の一人が、にこにこしながら近寄ってきた。

「部分変化の術ですか? しっぽは無いんですか? 肉球は?」
「白? ちょっと銀色がかってるかも。可愛い〜」
「あの、さわってみてもいいですか?」

他のくノ一まで目を輝かせながらわらわらと群がってきたので、カカシは急いで待機所を飛び出す。
そこにゲンマの「似合ってますよ」という笑い混じりの声が追いかけてくるが、構ってる暇はなかった。
取り急ぎトイレに飛び込んで鏡をのぞくと、ある。
確かに尖った動物の耳が二つ、ピンと立っている。どうりで額当てがきついはずだ。
若いくノ一が猫と言っていたから猫の耳なのだろう。ハッと気付いて手甲をめくって両手の平を見たが、肉球はなかった。尻にしっぽも。
一番奥の個室の方からカサリと微かな音がして、鏡に写った耳が素早くそちらにレーダーのように向くのを目の当たりにしたカカシは軽い目眩に襲われた。
この冗談みたいな猫耳は、ちゃんと耳として機能しているのだ。
猫耳は本来の耳がある位置から真上にピンと突っ立っていて、拾える音の質からも恐らくは人間のものより格段に性能が良い。
強制的に部分変化をさせる術が勝手に発動する訳もなく、思い当たるのは猫用の兵糧丸しかなかった。
まさかみんちゃんがこんな悪戯を仕掛けてくるとも思えないが、と考え込んで、ふと気付く。
そういえばみんちゃんは兵糧丸を『預かってきた』と言っていた。
カカシはてっきり主の髭右近家からだとばかり思っていたが、もしかして共同開発の医療班からもあり得るのではないか。あの班は常に謎の研究をしていて、その成果を榊がイルカに渡して度々トラブルが起きるのだ。
とにかくみんちゃんに事の次第を尋ねようと、人目を避けるようにトイレからそっと顔を覗かせる。

「あっ、いたわよイルカ! やだぁ、可愛い猫ちゃん♡」

廊下から響く聞き覚えのある甲高い声に、カカシの耳が反射的にペタリと伏せられた。

「カカシさん! こんな所にいたんですね、榊が至急だって探してたんです……よ?」

上忍待機所の方から駆けてきたイルカの目が、カカシの頭に釘付けになる。

「カカシさん、それ……」
「違うよ、これは俺の趣味じゃなくて! いやイルカ先生の猫耳ならぜひ見たいけど!」
「ああん、もう遅かったのね⁈ でもさすがはたけ上忍、猫ちゃんも似合うわぁ♡ これでイルカもいつでもニャンニャンプレイができるわね♡♡」
「さ〜か〜き〜く〜ん。これはどういう事かな?」

はしゃぐ榊にカカシは低い声で問いかけた。
まさかとは思ったが、榊の反応を見ると本当に彼(彼女か?)が原因だったようだ。
本人に注意を向けていたら、忍猫のみんちゃん経由で榊爆弾を持ち込んでくるとは……
もうこれは天災とかそういう、人智の及ばぬ類いなのかもしれない。

「とりあえずここじゃ何だから、どこか静かな所で説明してくれるかな。ね、榊君?」

廊下での騒ぎが届いたのか、待機所から顔を覗かせるゲンマとくノ一達の視線と、さらには絶句したままのイルカの強い視線も感じながら、カカシは榊に引きつった笑みを向けた。



イルカの提案で同じ階にある第三資料室に入ると、逃げられないように榊を壁際の椅子に座らせて、その前に二人が立った。
受付に入っていたはずのイルカまで一緒なのは、榊が受付で「大変よイルカ! はたけ上忍はどこ⁈ 緊急事態なのよーーーっ」と騒いだので、すわ一大事と受付の面々に送り出されてきたらしい。
その緊急事態とは、カカシの頭に生えてきた猫耳なのだが。

「……つまり、個人的に開発したニャンニャンプレイ……じゃなくて、えっと動物の部分変化の丸薬を、兵糧丸のサンプルと間違ってみんちゃんに渡したのを俺が食べたと。そういうことかな?」

♡が乱舞する榊の説明によると、本物の兵糧丸には犬猫両方とも全身のシルエットの焼き印が押されていたらしい。
榊が個人的に開発した丸薬に、どの動物のどこが変化するかという区別をするための印を付けようとした時、たまたま同時期に開発していた兵糧丸の焼き印を流用したせいで今回のミスに繋がったのだそうだ。
カカシの食べた丸薬が猫の頭だけのシルエットだったのは猫耳のみの部分変化用で、全身が変化する丸薬や犬耳のみの丸薬などもあったという。
それをずっと黙って聞いていたイルカが、何かに気付いたようでいきなり口を挟んだ。

「お前、じゃあ昨日の相談ってこれだったのか! やけにカカシさんとのあれ……あー、夜の営みのことを聞きたがると思ったら」
「だぁってぇ、ダーリンとのマンネリ打破にはいつもと違う自分を演出♡ ってすっごく有効でしょ? だからニャンニャンプレイとか新しい戦闘服とか、いろんなアイディアが欲しかったのよ。ほらイルカ、見てよこの可愛らしいはたけ上忍を!」

榊の力強い主張にイルカがカカシに視線を向ける。

「それは……っ、そう、だけど……」

すぐにパッと目を伏せたイルカの、頬がぽぽっと赤く染まる。
それを見たカカシの目がギラリと光った。
そんな様子を榊は目敏く捉え、本人がミステリアスと思っているチェシャ猫のような笑顔を二人に向けた。

「うふふふふふふふふ♡ お姉さんの上忍並みの恋のレーダーキャッチ能力が反応してるわよ! その変化は半日も保たないから安心してプレイしてちょうだい! 私もさっそく今夜ダーリンと試してみなくちゃ♡」

言いたいことを言い切った榊が、椅子から立ち上がると二人の間をサッとすり抜けて資料室を飛び出していった。
カカシはもう榊のことなど眼中になく、口布をゆっくりと下ろしてイルカを覗き込む。

「俺がこんな猫耳なんて……イルカ先生は気持ち悪くないの?」
「気持ち悪い訳ないじゃないですか! すごく似合ってて綺麗で……可愛らしくて良いと思います」

可愛いなんて他の奴に言われたら癇に障るが、イルカに言われるのは照れくさいようなむずむずするような、つまり悪くはなかった。
猫耳を横目でチラチラと窺いながら熱っぽい視線を投げるイルカに、カカシは勝利の予感を得て目を細める。
秘かに印を組み、資料室のドアに簡易結界を張った。
そしてもし全身が猫になっていたら、盛大に喉を鳴らしていただろうという笑みで顔を寄せる。

「先生なら、さわってもいいよ」

イルカの目が期待にパッと輝き、伸ばした指先でおずおずと耳に触れた。

「柔らかくて、あったかい」
「もっとさわって。センセの手、気持ちいい」

そっと撫でていたイルカの手がだんだん大胆になり、ぐにぐにと揉むように両手を動かす。
猫耳の感触に夢中になってるイルカの、うっすらと開いた無防備な唇に喰らいつくと、驚いたイルカが反射的に耳をぎゅっと掴んだ。

「痛っ」
「ごめんなさ……んむっ」

わざと痛がってイルカが怯んだ隙を突き、もっと深いキスを仕掛ける。
そういえば中期任務から戻ってきてから、まだ抱いてなかったと思い出した。
そう、榊が転がり込んでいたせいで。
だがその結果がこの猫耳騒動ならそんな悪くないかもと、イルカの臀部を両手で鷲掴んでグイと引き寄せる。
兆し始めた熱の塊を押し付けられ、カカシの意図が伝わったのだろう。イルカが小さく息を呑んだ。
それを了承と捉えたカカシはお互いのベストのファスナーを一息に下ろし、アンダーの裾からイルカの素肌に手を這わせる。
すると甘いため息混じりに、ふふっという声がイルカの口から漏れた。

「イタズラな猫ちゃんですねぇ」

カカシはイルカと頬を合わせて擦り付けると、耳元で「にゃあん」と甘えた声で鳴いた。



繋がった処からぱちゅ、ぐちゅと湿った音が響く。
それはカカシの耳に文字通り響いて聞こえ、部分変化だというのにしっかりした猫耳の性能に驚いた。
榊も医療忍、その腕は確かということだ。
まぁ、確かだからこそ今までトラブルに繋がるような物をいろいろ作ってきたんだけど、と腰を遣いながら苦笑する。
片足だけ引き抜いたイルカのズボンと下着が、持ち上げた足先で動きに合わせてゆらゆらと揺れていた。
その衣擦れも、いつもより早く打つ鼓動まで、まるでイルカの胸に耳を寄せているかのようにはっきり聞こえる。
ふ、ふ、と荒い息遣いの合間に漏れる「ぁ、きもちい……」という細やかな喘ぎも猫耳は全て拾い上げ、久しぶりに抱き合う一時をより濃厚で鮮やかに感じさせてくれた。
イルカの逞しい両腕がカカシの脇から背にがっしりと回され、アンダーの中に潜り込んだ両手が素肌の上を滑る。

「ん……く、ぅ……も、ぉ」

食いしばった歯の間からほとんど吐息のように漏れた「イく」という言葉に、カカシは腰を打ちつけるスピードを一気に上げた。
イルカの短く切り揃えられた爪が、カカシの背の上を引く音がざりりと聞こえる。

「……っ、は……ぁ」

二人分の弾む鼓動と駆け回った後の犬のような呼吸が混ざり合って、そこに素肌の擦れ合う微かな音が重なった。
淫らで幸せな音の奔流に、カカシは片耳をピピピッと揺らす。
その肩口にもたれていたイルカが片手だけ気怠そうに持ち上げると、その耳をまた包むようにそっと撫でた。
ほとんど無意識なのだろうか。
子供や小動物は撫でたり慈しむものという、反射的な動きなのかもしれない。

──これでしっぽもあったら、もっとイルカ先生のことをいっぱい可愛がれるのになぁ。

イルカの肉厚な手の感触を楽しみながら、ぼんやり考える。
そういえば榊は、マンネリ打破のために動物の部分変化の丸薬を作ったと言っていた。
確かにこれは興奮する、らしい。
今回は自分の頭に生えてしまったから、カカシは視覚で直にその興奮を味わえなかったが、イルカは確実に影響を受けている。普段なら絶対に許してくれない資料室でのセックスと、おまけにカカシのことを「イタズラな猫ちゃん」などと呼んでいたのだから。
ポーチから手拭いを出すと、繋がった処に宛てがいながら己をズルリと引き抜いた。

「ごめんね、ゴム着ける余裕なかった」
「ん……んぅ」

イルカが小さく呻くが、そこに反感ではなく甘さがこもっているのも、今ははっきり感じられる。
ローションなどちゃんとした準備もなく、衝動的に抱いてしまったことを詫びるようにこめかみに唇で触れた。

「……カカシさんが可愛かったからいいです」

カカシの反省の意が伝わったのか、自分もTPOをわきまえず盛ってしまった照れ隠しに口を尖らせたイルカが呟く。

「え? ちょっと、なんでまた固くしてるんですか……ぅあっ」

イルカに可愛いと言われるのはむず痒いが、可愛いと言うイルカはとても可愛らしい。
気持ちはそのまま下半身に直結して、思わず引き抜いたばかりの処にまたばちゅんと突き入れた。
抗議するイルカの内側の肉はカカシを引き入れるようにうねり、包み込んでしゃぶるかのごとく蠢く。
その微かな音も、猫耳は余すことなく拾った。
たいした抵抗もなく受け入れたイルカは、とろりと蕩けた目をカカシのピンと突っ立った耳に向けている。
甘い啼き声の合間に「かかしさん、かわいぃ」と呟きながら。

──榊君にあの丸薬をもっともらおう。

カカシは強く決心した。
生真面目なイルカをここまで変えさせるほどの効果が、猫耳にはあるのだ。
これは絶対に常備しておくべきだ。
今度は全身タイプでもいいかもしれない。
いや、猫耳も犬も全種類だ。

にんまりと口角を上げた横顔は、まさに獲物を前にした獣のようだった。
今のカカシを、みんちゃんをはじめとする髭右近家の猫たちが見たら、鼻にしわを寄せながらこう言っただろう。

「猫になるには可愛らしさが足りない」

と。



【完】