【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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「よし、三人全員集まったな」
 腕を組んで豊満な胸をぐいと押し上げた綱手が、執務机の前に並んだ面々を睨みつける。
 緊急呼び出しをかけられたのはカカシ、ヤマト、ナルト。
 と、その横に並び立つイルカ。
 三人が集合した時、イルカは既に綱手の斜め前に立っていた。そして「三人全員」という綱手の言葉。つまり、イルカは呼び出しに含まれてないということになる。するとこの件はイルカ絡みかと、カカシとヤマトは内心で怪訝に思っていた。三人だけなら何らかの任務、しかも相当な難易度のものだろうが、それにイルカが関わる理由が思いつかない。
 ということは。
「イルカ先生からの依頼か、この面子でイルカ先生の護衛ですか?」
 ヤマトが先んじて切り込むと、ナルトの顔があからさまに喜色に溢れた。
「ある意味イルカからの依頼ではあるが、護衛するには遅すぎたな」
「どういう事ですか」
 綱手の返しに上忍二人が眉を潜めてイルカを見る。カカシはイルカの身に害が及ぼされた後だと判断したらしく、なぜ恋人である自分が知らされていないのかとその声が尖っていた。
「あぁ、違う違う。イルカ自身は無事だよ。ただ、犯人はお前たちの誰かだと思ってるんだがね」
「「「犯人?!」」」
 見事に揃った三人に、綱手が改めて厳しい目を向ける。
「すっとぼけんのもいい加減にしな! お前たちの誰かがイルカのパンツを盗んだんだろっ」
「パン……」
「…………ツ?」
 カカシとヤマトが息の合ったところを見せると、綱手はしばらく二人の顔を探るように見つめてから、じろりとナルトを見た。
「お前だけ反応が無かったな。まさかとは思うがナルト、盗んだのか?」
「ち、違うってばよ! そんなイルカ先生のパンツなんて俺が欲しい訳ないじゃんか! 犯人はカカシ先生だろ?!」
 部下から指を差され、カカシが今は色の揃った両目を大きく見開いた。
「なんで俺がイルカ先生のパンツなんて盗らなきゃなんないのよ、恋人だよ?!」
 その反論は全員の白い目に見返され、執務室に虚しく響く。
「……この三人の中に犯人がいるなら一番疑わしいのは先輩ですね。ですが、我々三人というのは確実な情報なんですか?」
 ヤマトがどこか困ったような顔つきのイルカに視線を投げると、イルカは「俺も疑いたくはないんですけど……」と肩を落として口を開いた。
 イルカの説明によると、守秘義務があるので詳しい事は言えないのだが、とある任務でイルカは自らの下着――パンツにある依頼品を縫い隠した。任務は無事終了して帰還したところ、それを直接手渡すべき綱手が病院からの呼び出しで不在、今日は戻らないとのことだったのでそのまま自宅に帰った。
 朝改めて綱手の元に赴こうとして、脱いでリュックに突っ込んでおいたパンツからその依頼品を取りだそうとしたところ、パンツ自体が消えていたのだ。
 帰宅してから今朝までに会ったのは三人のみ。
 つまりカカシ、ヤマト、ナルトである。
 イルカが帰宅して装備を解いてから風呂に入ろうとしていると、まずナルトがやってきた。
 ナルトはカカシがいないことを知って「一楽に行こうぜ」と誘うが、イルカはこの時点で依頼品を縫い込んだパンツを脱いで腰巻きタオル一枚の姿だった。さすがに一旦脱いだパンツを穿き直す気にもなれず、かといって依頼品を放置して外出できるほど無責任でもない。
 結局入浴は後回しにして着替えだけすると、脱いだパンツを居間に放り出してあったリュックに突っ込み、ナルトと自宅で夕飯を食べることにした。
「げっ、イルカ先生ってば脱いだパンツ洗濯してなかったのか? ダメじゃん、汚ねぇな!」
「洗ったら依頼品が破れちまうんだよ! お前が来たから依頼品を取り出す暇も洗濯する暇もなかったんだ、しょうがないだろ!」
 顔を赤くするイルカに、意外と綺麗好きなナルトがススッと距離をおく。
「洗濯云々はいいからナルト、その時にこっそりパンツを盗んだんじゃないのか?」
 苛立たしげにコツコツと机を叩きながら綱手が遮った。
「だーかーらー! 俺が先生のパンツなんか欲しがる訳ねぇってば! だいたいパンツなんて見なかったってばよ」
 ナルトが言うことも尤もだと頷いた綱手は、今度はヤマトに矛先を向ける。
「ならお前か」
「ヒエッ、そんなはずないでしょう! 僕は先輩を探してちょっと立ち寄っただけです! 僕だってイルカ先生のパンツなんかいりませんよっ」
 焦るヤマトに、隣から絶対零度の視線と殺気のこもったチャクラが突き刺さる。
「そんなこと言ってお前、まさか横恋慕してたんじゃないだろうな」
「違いますよ! 万が一恋したとしても、イルカ先生のパンツも誰のパンツも僕は欲しくなりません!」
「万に一つも可能性があるの?!」
「言葉のあやですよ! そういう意味じゃなくて、先輩みたいに恋人のパンツなんか欲しがらないって言いたかったんです!」
「なんかってどういう意味よ。イルカ先生のパンツに価値はないって言いたいの?!」
 不毛な言い争いを始めた元暗部と現役暗部コンビに、綱手とイルカとナルトが生温い視線を送った。だが一見いつも通りに見えるこの言い争いも、どちらかが(九割九分カカシだが)犯行を誤魔化すためとも思える。
「……分かったから黙りな。二人が違うと言うならカカシ、お前しかいないな」
「俺は夜更けに帰って風呂入って、すぐイルカ先生の隣で寝ましたよ。脱ぎたてパンツなんて見付けたら放っとく訳ないでしょう!」
「だから見付けてポケットに突っ込んだんじゃないのか?」
「依頼品が縫い込まれてるって分かった時点でそれだけ渡してますよ。俺が欲しいのはイルカ先生のパンツだけですからね」
 カカシの悪びれもしない変態的発言は、だからこそ説得力があった。綱手も「それもそうか」と呟くと腕を組み直す。
「よし、誰も自首しないなら、これから三人の自宅及び隠れ家の家宅捜索だ」
 綱手の頷きで暗部が六名、四人の背後に立った。
「俺たちの家を全部? 本気ですか……?」
「後ろめたいことがないなら協力できるだろう。嫌なら今すぐパンツを出しな!」
「だから俺じゃねぇってばよ!」
 一人叫ぶナルトをよそに、カカシとヤマトは何とも複雑な顔をした。自宅ならまだしも、隠れ家まで捜されるなど前代未聞だ。イルカが請け負った依頼品はそれほど重要な物なのだろうか――たとえ捜索対象がパンツだとしても。
 とにかく見付かるまでは解放されそうにないと、カカシとヤマトはため息をついた。



 暗部は三人それぞれに二名ずつついて、まずは各自宅へと足を向ける。
 イルカはどうするべきか迷ったが、一応まだ大本命だと思われるカカシに付き添えと綱手から命ぜられ、四人でカカシの自宅へと向かった。
「あの……すみません、俺のせいで」
 いかにも申し訳なさそうなイルカに、カカシは不機嫌な様子を隠さなかった。
「まったく、俺が容疑者じゃなきゃ自分で犯人を見付けたいよ。イルカ先生のパンツを盗むなんて絶対に許さん。しかも脱ぎたてほやほやの生パンツを……っ」
 カカシの謎の言葉に、潜んでついてきているはずの暗部からも戸惑いの声が上がる。
「生パンツ」
「生……?」
「カカシさんは隠れ家が多そうだから急ぎましょうね」
 これについて暗部と議論をしてほしくないイルカは、早急にカカシの自宅に辿り着くために足を早めた。



 自宅として里に登録してある上忍寮の方は、イルカも久しぶりに入る。
 暗部一人がカカシの見張り役としてすぐ隣に付き添い、もう一人とイルカが室内の捜索を行うことになった。
「うみの中忍、パンツとはどのような?」
 辰面の暗部が至って事務的に尋ねると、カカシから上官然と遮られる。
「その質問はうみの中忍への不敬に当たる。具体的な質問はせず、捜索だけに集中しろ」
 暗部二人は反射的に「はっ」と返してから面を見合わせた。当人のイルカですら、暗部が中忍に不敬……? しかもパンツの詳細も分からずどうやって探せと? としょっぱい顔になったが、暗部の上下関係はよほど厳格なのか二人から疑問の声は上がらない。結局パンツの特徴を知っている自分がメインで探さなければならないのかとため息をつくと、カカシが箪笥を指した。
「俺のは全部そこに入ってる。それと違うのがうみの中忍のパンツと判断しろ」
 辰面が箪笥の引き出しを上から開けていくと、二番目に黒ばかりのアンダーや下着類が入っていた。
「あーっ、ちょっと待ってください! そこは俺が探すので!」
 慌てて引き出しの前に体をねじ込むイルカに、辰面が勢いに圧されて身を引いた。
 カカシが入院した時、衣類などを箪笥から荷物に詰めて持っていくのは、付き合い始めてからずっとイルカの役目だったのだ。
「カカシさんの下着を他の人には見せたくないので、すみません」
「イルカ先生……!」
 酉面がぴたりと張り付いていたはずなのに、気付くとカカシがイルカを抱きしめている。
「こ、恋人の下着を見せたくないのはあんただけじゃないんですよっ」
 照れるあまり早口になるイルカを、でれでれとやに下がったカカシがぎゅうぎゅうと抱きしめて頬ずりをしていた。その隣では辰面が淡々と壁や床の隠し扉を探している。酉面はそうっとカカシに近付いたが、二人の抱擁は止まないどころかカカシの両手がイルカの尻を揉んでいるので目のやり場に困った。かといって容疑者の両手から目を離す訳にもいかず、無の心でカカシの手で形を変える尻を見続けた。
「……お前、イルカ先生の尻を見たな」
 挙句の果てにイルカの肩越しにぎらりと睨まれ、酉面は今すぐ本来の暗部らしい任務に出たいと切に願う。
 するとその願いが暗部の神様にでも届いたか、一枚の式が窓の外に飛んできた。辰面がそれを取って広げると、イルカに面を向ける。
「ヤマトの所に不審なパンツが出たから、うみの中忍に確認をお願いしたいそうだ」



「だーかーらー違うんだって!」
 四人がヤマトの自宅(カカシの二階下)に到着すると、封印札付きのワイヤーでぐるぐる巻きにされたヤマトが床で転がっていた。
「テンゾウ貴様……! やっぱりお前だったのか!」
 カカシがみの虫ヤマトに駆け寄ると、思い切り蹴り飛ばす。
 ちょうど腹の辺りを蹴られたヤマトは、部屋の隅までごろごろと転がっていった上にまだ勢いが止まず、壁にぶつかってごろごろと転がり戻ってきた。
 足元のみの虫ヤマトをイルカが汚物でも見るような目で見下ろしていると、卯面が手にしたピンクの塊を差し出して問いかける。
「うみの中忍の下着はこちらで間違いないでしょうか」
 面越しでも明らかな女性の声が若干引いているようだ。
 それもそのはず、そのピンクの塊は広げるとほとんど布面積の無いに等しい、両脇がリボン結びになったどピンクのTバックだった。
「うわわわぁ違いますよっ」
 払いのけるようにして飛ばしたピンクのパンツを、カカシが拾い上げるとしげしげと見つめる。
「テンゾウ、こんなのが趣味なの? センスないねぇ」 
「だからそれは去年の暗部忘年会のビンゴで当たったやつなんですって! 酉! お前もいただろ?!」
「………………べろんべろんだったから覚えてない」
「あーーーーっ、この役立たず!」
 ガシッと低い音が床近くから聞こえる。酉がヤマトを蹴ったようだが、誰も一顧だにしない。
「ねぇセンセ、今度こういうのも穿いてみない?」
「ええっ、嫌ですよ! あ、でもカカシさんなら似合うんじゃないかなぁ」
「俺? そうかなぁ、でも先生が言うなら穿いてみちゃおっかな」
「ぜひ! カカシさんって色白だから、こういう可愛らしいピンクが似合うと思うんですよね。リボンほどくのは俺にやらせてくださいね」
「もう~~~! イルカ先生のえっち!」
 どピンクの塊を手にいちゃつく二人をよそに、暗部四人は面を突き合わせてひそひそと相談を始めた。
「なぁ、こっちと交替してくれよ。先輩の隠れ家なんて行きたくねぇよ」
「嫌だね。俺はまだ生きていたい」
「私だっていやよ。この鬱陶しいイチャイチャをレディーの私にずっと見せる気?!」
「テンゾ……じゃないヤマト、お前が行けよ」
「そうだよヤマト、お前なら大丈夫だ。カカシ先輩の愛の鞭も慣れてるだろ」
 みの虫のまま放置されていたヤマトは、とんでもない飛び火に慌てて拘束を解いて立ち上がった。
「冗談じゃないよ、僕だって生きてたいよ! せっかく大戦で生き延びたのに、童貞のまま先輩に殺されるなんてごめんだっ」
 ヤマトの爆弾発言に室内がしんと静まり返る。
 気まずい沈黙が続く中、イルカだけが輝く眼差しをヤマトに向けた。
「ヤマトさん……あなたもだったんですかっ!」
「まさかイルカ先生、あなたも?」
 どピンクのパンツ片手に駆け寄ろうとしたイルカの腰を、カカシが掬うようにして止めた。
「はーいそこまで。テンゾウはどうでもいいけど、イルカ先生のピュアなヴァージンは永遠にとっといてくれないの? イルカ先生はずっと俺のものだって約束してくれたじゃない……」
「もちろん俺はカカシさんのものですよ! あなたもずっと俺のものなんですよね?」
「当たり前じゃない。ねぇイルカせんせ、誓いのキスして?」
 再びいちゃつき出した二人に背を向け、今度こそ担当容疑者を交換してもらおうと悪あがきをする二人とヤマト、そしてヤマト担当の二人が睨み合っていると、また式が飛んできた。
「あら、ナルトの所は終わったみたい。あの子は隠れ家なんてまだ持ってないでしょうしね」
「それじゃナルトは?! もちろん潔白ですよね?」
 カカシを引きはがして問いかけるイルカに、卯面が静かに答えた。
「グレーよ。ズボンのポケットからパンツが発見されたって」



 再び執務室で綱手の前に勢揃いする中、ナルトは腰回りをロープで巻かれて申面の腰に繋がれていた。
 両手両足とも自由なのは、ナルトに拘束など無駄だから形だけでもということだろうか。ナルトは猿回しの猿のようにぴょんぴょん飛び跳ね、綱手に向かって無実を主張している。
「だからパンツ盗んだんじゃねぇんだってば! 卓袱台に水零しちまって台拭きが見当たらなくってさ、リュックからぱっと取って拭いただけなんだって!」
「いい加減黙れナルト! ちょうどいいところに戻ったなイルカ。このパンツがお前の紛失したものか? ほれナルト、さっきのやつを見せてやれ」
 ナルトがポケットから取り出したのは、一面に美味しそうなパンの模様が描かれた布だった。洗濯してないと知ったせいか、二本の指先でできる限り布に触れないようつまんでいるパンツを見てイルカは大きく頷いた。
「それです! ナルト、まさかお前が……なんで俺のパンツ盗んだんだ?」
「違うって! 卓袱台を拭いた後うっかりポケットに入れちまったんだよ。だってハンカチか手拭いだと思ったんだってば! こんな模様のパンツなんかあると思わねぇじゃんよ~」
「うるさい! パン柄のパンツってところが洒落が効いてるだろ! 子供には分からんオシャレなんだよっ」
 イルカの主張は誰からも同意が得られなかった。
 暗部の動物を模した面々すら、心なしか困惑顔に見える。
 それに気付いたイルカは、ゴホンと咳払いをしてパン柄のパンツを引ったくると、クナイの先でウエストの部分の縫い目を解いた。そして綺麗に折り畳まれた小さな紙切れを取り出し、恭しく綱手に差し出す。
「大変遅くなりましたが、こちらが依頼の品です」
「うむ、ご苦労だったな。それでは解散」
 綱手の素っ気ない言葉に皆が絶句する。
「なんだお前たち、もう戻っていいぞ」
 そそくさと引き出しにしまい込もうとした紙切れを、カカシがサッと奪い取って広げる。
「和の国の富くじ。やっぱりねぇ、この金色の縁取りの紙に見覚えがあったんですよ。ここの富くじは当選金額が高いので有名でしたかねぇ」
「綱手のばあちゃん、そんなもんのせいで俺たちを疑ったのかよ!」
「つまり僕たちは、富くじを探すために隠れ家の情報まで提供させられたということですか?」
 ナルトはともかく、カカシとヤマトの憤慨も頷けるだろう。隠れ家は隠してあるからこそだ。その在処を知られたならば、また一から探して様々な仕掛けを施さなければならない。隠れ家に適した物件など、狭い木ノ葉で幾つも見付けるのはそうたやすいことではないのだ。
 もっとも、隠れ家に行く前に呼び出されたのでその必要はないのだが、機を見るに敏な二人は黙っている。それを知っている暗部の面々も当然黙っていた。
「和の国の富くじを買って来いという依頼でもありました? まさか私用でここまで大騒ぎにしたはずがないですよねぇ、五代目火影様?」
 わざわざ里長の呼称を使って畳みかけるカカシに、綱手がぐっと詰まる。助けを求めるようにイルカの方を見たが、これはフォローのしようがない。内勤のイルカを里から出すために、非公式とは言え依頼書を作ってしまったからだ。それを見れば依頼人が綱手だとすぐにバレてしまう。
「皆さんお忙しいのに、お手を煩わせて申し訳ありませんでした!」
 イルカが頭を下げたが、謝ってほしいのは違う人物だと全員が綱手を見る。イルカを除く総勢九名の静かだが強い視線の圧に耐え切れず、綱手はとうとう口を開いた。
「ああもう分かったよっ、悪かったな!」
「それだけですか? 俺たちの時間は安くないですよ」
 カカシの高圧的な言い様にも里の稼ぎ頭二人、今や英雄となったナルトも含めると三人と、さらに暗部六人まで私用で動かしたのは事実なので、綱手は唸るだけで言い返せなかった。
「復興でいろいろと厳しいご時世ですからねぇ。さすがに正当な報酬とまでは言いませんが、全員に何らかの見返りがあって然るべきじゃないでしょうかねぇ。……たとえば、個々の裁量で使える白紙の休暇届けとか。五代目の捺印済みの」
 大きく出たカカシに、全員がハッと息を呑む。
 さすが暗部の元総隊長、そして次期火影だけはある見事な交渉術だと内心喝采を送っていると、綱手がガタッと引き出しを開けた。
「~~~っ、分かったよ! ほら全員分の休暇届けだ。持ってけドロボー!」
 ダンダンダンと立て続けに火影印を押すと、バッとばらまく。それを歓声と共に掴み取ると、カカシとイルカを除く全員が前言を撤回される前にと蜘蛛の子を散らすように消えた。
「……で、なんでまだ残ってるんだ?」
 疲れ切った綱手の問いかけに、カカシは右手をずいと突き出した。
「イルカ先生の分もです」
「えっ、俺はダメですよ! もう正当な報酬は発生してるんですから」
 するとカカシはイルカに向き直ってにっこりと微笑みかけた。
「それは富くじを買いに行った分でしょ? 今回の件を口外しないっていう見返りがまだじゃない。それに先生は下着を大勢の目に晒されたんだよ? その分の慰謝料は必要なんじゃないかなぁ。そうですよね、五代目?」
 くるりと振り返ったカカシの目は笑っていない。
 そこでイルカは気付いた。
 カカシが本当に怒っているのは、自分たちを私用で動かしたことなどではない。イルカの判断でパンツに縫い込んだとは言え、結果的に綱手の指示した捜索方法でパンツを衆目に晒したことが何よりも許せないのだ。
 綱手もそのことに思い至ったらしい。
「あー、うん、……それについてはすまなかったね、イルカ」
 謝罪はイルカに向けているが、その気まずげな視線はカカシにも向けられた。
 だがカカシの手は引っ込まない。
 綱手は渋々とまた引き出しを開けると、もう一枚休暇届けを出し印を押して差し出した。カカシではなくイルカに手渡したのはせめてもの抵抗だろうが、カカシは満面の笑みで手を引っ込めてイルカの手を引くと、「それでは御前失礼」と執務室から出ていった。



「あー、もう、カカシさんってばあんな強気に出ちゃって! 本当にドキドキしましたよ」
 本部棟を出たところでイルカが胸を押さえる。
「いーのいーの、あれだけの面子を私用で使うなんて、火影として示しが付かないでしょ。ちょっとは反省してもらわなきゃ」
「まぁ、それはそうですけど……俺も止めようと思えば止められたんだから、やっぱり申し訳ない気がします。それに、その……疑っちまってすみません!」
 あの場にいた全員が、カカシがパンツを盗んだ犯人だと思っていた。
 もちろんイルカもで、正攻法で問い詰めても絶対に尻尾を出さないだろうと、早々に綱手にパンツの消失を申告したのだった。
 それがまさかのナルトが犯人、しかも思い込みとうっかりでという何とも間抜けな結果になったので、カカシにはかなり悪いことをしたと落ち込んでいる。
「ま、おかげで白紙の休暇届けも貰えたし、結果オーライでしょ、ね? どうしようかなぁ、今度温泉でも行こっか」
「カカシさん……!」
 仮にも恋人なのに犯人だと疑っていたイルカをおおらかに許すカカシに、イルカは感動のあまり抱きついた。
 そんなイルカを抱き止め、困ったように眉を下げて笑うカカシだが。

 ――そのポケットにはパン柄のパンツが潜んでいる。

 綱手が休暇届けをばらまいた時、全員の目がそちらに集中した一瞬の隙を突いてパンツをポケットに突っ込んだのだ。
 最近はイルカも警戒して、なかなか生パンツを入手するのが難しくなっている。それが今回はまだ洗濯してない上、里外任務を共にしてイルカエキスがたっぷり染み込んだレア中のレアな生パンツだ。そんなお宝を前に、カカシが黙って指をくわえて見てるだけなど有り得ない。
 もう一度言う。
 あの場にいた全員が、カカシが犯人だと思っていた。
 だが、カカシだけは違うと知っていた。
 その時からカカシの目的は、イルカの生パンツを手にすることになっていたのだ。
 全員分の休暇届けはそのおまけみたいなものだったが、おかげでイルカも惚れ直してくれたみたいだし、とほくそ笑む。
「温泉かぁ、楽しみですね! 今すぐは無理だけど、いつか行きましょうね!」
 和の国もいい温泉がいっぱいあったんですよ、と繋いだ手を嬉しげに大きく振るイルカに相槌を打ちながら、カカシは笑顔の裏でヤマトが持っていたどピンクのパンツに思いを馳せる。
 あれと同じものを『二枚』買ってこようと。
 一枚はイルカの希望通り、自分が穿くが。
 もう一枚はもちろん。

「……そうだね、楽しみだねぇ」




【完】