三月三十一日

ゲンマの元にイルカから式がきた。


「明日の昼　猿飛川のほとり　乞うご期待」


ゲンマはニヤ～っと人の悪い笑みを浮かべる。
そうか、今年もやるんだな、イルカ。


去年のエイプリルフールは「子供に大人気の戦隊もの“木の葉レンジャーⅤ”の中の人は、実は中忍が交替でやってるんですよ」とイルカが受付でカカっさんに、写真まで見せてまことしやかに言っていた。
それは前日、イルカと飲んだ時に出たエイプリルフールのネタだったので、俺とライドウとアオバは嘘っぱちと知ってたんだけど。

その後カカっさんがこそこそと木の葉レンジャーⅤの事を聞いて回ってるのを見かけたので、さらに詳しく(嘘を)教えてやったのだ。
ステージでヒーローショーをやってると言ったら先生に内緒で見に行きたいと言うので、もちろん俺も同行を申し出た。
親切ぶって「子供しかいないから変化してった方がいい」とアドバイスしたら、ホントに子供の姿で来たしな。

ステージの最前列で「イルカ先生どれかな、まだ出ないのかな」と食い入るように見つめてるカカっさんは、いつもと別人みたいにギラギラしてて面白かった。
結局イルカが出なかったとガッカリしながら帰ってったけど、まぁ嘘だしな。

あの後イルカが嘘だとバラしたみたいだけど、カカっさんは子供に変化してまでヒーローショーを見に行った事は言えたんだろうか。…言えてないだろうなぁ、嘘だと分かったらなおさら。



イルカは今年もきっと何か考えているに違いない。
せっかくのご招待だ。さっそくライドウとアオバにも声をかけてやろう。

ゲンマはいそいそと本部棟に向かった。