【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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ぼふんと上がった煙の晴れたあと、カカシさんの姿はもう消えていた。
残るのは床に散らばった数枚の木の葉だけ。
俺はパックンさんと顔を見合わせた。

「カカシさん、やっぱり勝手にここを出てったこと怒ってるのかな……」
「いや、そうではない。まさかお主が戻ってくると思ってなかったのじゃろうな。不甲斐ない主ですまんのう」
「そんな、とんでもないです!」

もともとは俺が許しも得ずにここを飛び出してしまったのが原因だ。
しかも首輪まで壊してしまった。これはカカシさんの信頼を得るための大事な物だったのに。
一楽のラーメンの匂いで一時的に錯乱してしまったとはいえ、これは重大な過失だ。これが任務かどうか分からないが、もし本当に任務だったとしたら営倉入りもんだろう。カカシさんといるとどうも甘えが出てしまうようで、つい我欲を優先してしまった。

「……イルカよ、もう帰っても良いぞ」
「それはまずいですよパックンさん!」
「なに、お主を置いて勝手にここを放棄したのはカカシじゃ。文句も言わんじゃろうて。ほれ、ちょっと首輪をワシに見せてみよ」

言われるがままに頭を下げると、パックンさんが前肢で首輪に触れた。
パチッと音がして「これでもう首輪は外れるぞ」の言葉に、試しに革ベルトを弄ってみるとピンがバックルから簡単に外れ、首輪はぽとりと床に落ちてしまった。
久しぶりに何も着けてない首はスースーして、なんだか心許ない気がする。

「忘れ物のないようにな。何か持って帰る荷物があれば手伝うぞ?」

そう言われても、ほとんど拉致同然でここに連れてこられたから、自分の荷物なんて何一つない。
あると言えば巻物から作ったミニサイズの俺の分身くらいだったが、それはカカシさんが持ってってしまった。

「いえ、何も……何もないんです。あの、パックンさん! またカカシさんと会えますよね?」
「なんじゃ、藪から棒に。受付でもどこでも普通に会えるじゃろうが。気を付けて帰れよ」

パックンさんはそう言いながらも目を逸らしている。
言い様のない不安が胸に渦巻いたが、今はここにいてもカカシさんが戻ることはないだろう。
俺は未練がましく床に落ちた首輪を拾い上げ、それだけを持ってこの部屋を後にした。



それから一週間経っても、案の定カカシさんとは会えていない。
それとなく受付の同僚に聞いてみたが、普通に受付に顔を出しているようなので、俺のいない時を見計らって現れているのだろう。
――やっぱり避けられている。
信頼を裏切ってしまった俺なんかとは、もう顔も合わせたくないんだろうか。
それでも誠心誠意の謝罪だけはしたくて、ともするとネガティブに沈みそうになる気持ちをなんとか奮い立たせた。
帰り道をとぼとぼ歩いていると、突然お馴染みの感覚が襲ってきて立ち止まる。
これは影分身の戻ってきた時特有のものだが、覚えがなくて戸惑っている内に記憶が流れ込み始めた。いつもよりぼんやりとして断片的な感覚しかないが、そこでカカシさんの持ってったミニサイズの俺に思い当たる。
全ての記憶が統合されると、耐えきれずその場にしゃがみこんでしまった。
カカシさん、あんたって人は……。
熱くなる頬を誤魔化すためにぱんぱんと叩くと、よろよろと立ち上がった。
まずはカカシさんに会わなくては。それで自己満足かもしれないがとにかく謝りたい。それから一つ、聞いてみなきゃならないこともできてしまった。
だがあの地下室以外にカカシさんの家は知らないし、カカシさんが俺を避けてる以上、あそこに行っても会える確率はゼロに近い。
地下室で毎日待つしかないのかなぁとあの場所に思いを馳せてるうち、俺は一つの案を思い付いた。

その翌日。
善は急げということで受付に入ってから一段落すると、一枚の白紙を持ってきて文面を筆で書き付け、いつも持ち歩いていた例の首輪を鞄から取り出してある術をかけた。
すると一連の動きを眺めていた受付の隣に座る同僚が、好奇心に負けたのか口を挟んできた。

「さっきから何やってんだよイルカ」
「悪いけどこれを壁に貼らせてもらえないか?」
「構わねぇけど落とし物か? そこの遺失物入れの上にでも貼っときゃ目立つんじゃねぇか」
「おう、そうするわ。サンキューな」

俺は席を立つと、アドバイスされた通り壁際にある机の遺失物入れの上に、目立つように貼り紙をした。
そこに書いてあるのは【落とし物】のでっかい文字と、テープで軽く貼り付けられた首輪。

「ずいぶんでっかい首輪だなぁ。大型犬のかね?」
「あぁ……たぶんな」

大型で、しかもとびっきりの美人で、怖がりで一人で眠ることもできないような、そして……とても繊細で寂しがり屋の忍だ。



それから数日間は全く動きがなかった。
カカシさんは任務に出てることも、俺が受付にいる間は来ないことも分かってはいたが、壁に貼られたままの首輪を何度も見てしまった。
そして今日。
受付に入って真っ先に貼り紙が消えていることに気付いた。

「なぁ、あの首輪の付いた貼り紙はどうした?」
「あれならまだ……あれ? ねぇな。落とし主が持ってったのかな?」
「そうだな、きっと」

俺は今日は残業できないことをあらかじめ同僚に伝えておいた。



勤務時間が終わると同時に鞄を引っかけて受付を飛び出し、外に出てからある印を組む。
すると、ぼうっと細いチャクラ糸が浮かび上がって見えた。
これは追跡術の一つで、物や人にこの術をかけておくと印を組んだ時に対象が辿った道にチャクラ糸が可視化されるのだ。何より重要で便利なのが、術をかけた側のすぐ先の分しかチャクラ糸が反応しないから、相手に気付かれないよう追跡できるところだ。対象が気付いた時には、すぐ近くまで辿り着いてるって寸法だ。
カカシさんほどの忍を誤魔化せるとは思えないが、少なくとも接近はできるし会いたいという強い意思は伝わる。上手くいけば。逃げられなければ。
もしもばかりの危うい手段だったが、上忍相手に正面から勝負しても勝てっこないので、これで駄目だったら五代目に頼もうと思いながらチャクラ糸を辿る。
早足でしばらくチャクラ糸を辿っていると、上忍寮らしき場所の前に立った。らしきというのは、中忍寮より遥かに立派だが似たような造りの建物だったからだ。
チャクラ糸は最上階の端の扉の前で途切れていた。
これがミスディレクションじゃないなら、カカシさんは今この中にいる。
俺は息を一つ吸い込んでノックをし、名を呼ぼうとした。
するといきなり扉が開き、カカシさんが顔を出して「入って」と一言告げると背中を向けて奥へと行ってしまった。
歓迎はされてないみたいだけど、少なくとも拒絶はされてない。ほっとして後に続くと、カカシさんが窓際に立っている。
こちらを向かないまま「何?」と短く問われ、俺はまず勢いよく頭を下げた。

「先日は勝手に首輪を外して脱走して本当に申し訳ありませんでした! それから今日も、首輪に細工をして後を尾けてすみません!」
「細工のことは分かってたからいいよ。それだけ?」
「いえ、あと勝手ながら一つ、お訊ねとお願いしたいことが」

相変わらずこちらを見ないカカシさんの肩が小さく揺れる。

「カカシさんが持っていった俺のミニ分身が、先日解術されました」
「……うん」
「カカシさん、任務にも連れてったんですね」
「……うん」
「毎日一緒に過ごしてたんですね」
「……」
「ミニサイズの俺と一緒に飯食って、一緒に風呂入って、一緒に寝てたんですね」
「だから何? あれは元々俺の巻物でしょ。小さいイルカ先生の所有権は俺にあると思うけど」

早口に反論してきたが、カカシさんはまだこちらを向いてくれない。
さっきも首輪の細工のことはいいって言ってくれたが、脱走については触れてもくれなかった。やっぱりもう信頼を取り戻すのは難しいのかと怯みそうになるが、それでもこうして話は聞いてくれている。
それにもう一つ。
確信とまではいかないが、俺にはある推測があった。

「あのミニサイズの俺が戻ってきた時、ぼんやりとだけど記憶が流れ込んできたんです。それで俺、カカシさんが俺をあの部屋に連れてった理由が分かった気がするんです。なんとなくだけど」

カカシさんが初めて振り返った。
それも勢いよく。

「カカシさんは……」

瞬きもせず、食い入るようにカカシさんが俺を見つめている。
今にも逃げ出したいような、でも何かを期待するような相反する顔で。
その期待に応えられるかどうか、ここが正念場だぞうみのイルカ!
俺は大きく息を吸い込んだ。

「カカシさんは寂しがり屋で怖がりだから、ずっと一緒にいられる気のおけない同居人が欲しかったんですよね、世話係じゃなくて。だから俺をあの地下室に連れてったんですよね?」


「…………」
「…………」
「…………」
「……そうですよね?」
「………………………」

だめ押ししてみたがカカシさんは何も答えず、とうとうがくりと首を前に倒してしまった。
――あれ、違ったのか?
いやでも合ってると思ったんだがなぁ。

「………イルカ先生は、さ。俺が寂しがり屋で怖がりだから先生を監禁したと思ってるの? ホントにそれだけで?」

カカシさんが俯いたまま問いかけてきた。
つーか監禁って、やっぱりあれは任務じゃなかったのか。
……………。

「……えええ⁉ 俺ってやっぱり監禁されてたんですか⁉」
「そこから⁉」
「いやだって地下室だけど快適だったし、閉じ込められてはいたけど一楽に行けないこと以外は特に不満はなかったし、そりゃ首輪に鎖も付いてたけど、寂しがり屋を拗らせたのと不信の表れだと思ってましたし。あとあれは任務か、それに近い何かだと思ってましたから」

カカシさんがハアッとため息をついた。

「それについては俺も謝りますよ。任務を匂わせた部分もあるしね。だけどね、今イルカ先生が思ってたことが全部違うなら、なんで監禁なんてしたと思う?」
「それは……えっと、うーん、趣味とか?」
「プレイならともかく、そんな趣味あるわけないでしょ! イルカ先生を独り占めしたいからに決まってるじゃない!」

俺を、独り占めしたい。
カカシさんが。

「なんでですか?」
「あああもう! イルカ先生のことが大好きだからだよっ」
「んぐっ!」

カカシさんの顔がぼやけるくらい近くにある。
唇には柔らかいものがぶにゅっと押し付けられてるし、何よりも俺は抱きしめられていた。
カカシさんに。
俺のことが。
大好きだから。
カカシさんがオレノことをダイスキダカラ。

突然いろんなことが起こりすぎて頭が機能停止していると、カカシさんの顔が離れた。

「……こういうことも、もっとやらしいこともイルカ先生としたいと俺は思ってるの。だから監禁したの。ねぇ、今のキスは嫌だった? 俺のこと気持ち悪い?」

そうやって具体的に聞いてくれると、機能停止した俺の頭でも答えやすい。

「嫌じゃなかったし、気持ち悪いなんて思いませんでした」
「ホントに?」
「はい、だってミニサイズの俺ともしてましたよね? おやすみのちゅうって」
「ぅえっ、あっ、そんなはっきり記憶が残ってたの⁉」
「はい。あとはぼんやりとあったかいとか、美味しいとか」

そう。
ミニサイズの影分身のチャクラが切れて解術された時、そこだけは鮮明な記憶が流れ込んできたのだ。
他は風呂でいい気持ちだなとか、カカシさんの作ってくれたメシがうまいくらいのぼんやりしたものだったのだが。
寝る前に「イルカ先生おやすみ」とちゅってしてくれるのは、とても優しくて温もりが嬉しくて。
その気持ちが強かったのか、はっきりと覚えていた。

「あの、それは勝手にごめんなさ……」

カカシさんが口を押さえて真っ赤になっている。
そんなところにまで心臓がこう、なんか、ぎゅっと握り潰されたような感じがして。
そんなカカシさんを見てもう一つ、思い出したことがあった。

「謝らないで下さい。俺は……ミニサイズの俺が羨ましかったんです。カカシさんにあんなに優しくしてもらってずるいって思いました。地下室では一緒に生活してて楽しかったけど、俺にあんな顔してくれたことはなかったのに、って」
「イルカ先生、それって俺のこと……好きって」
「それは分かりません」

カカシさんの顔が、さっきから俺の言葉でころころと変わる。
この人ってこんなに表情が豊かな人だったんだなぁ。
そりゃ口布で隠してた方が無難だよなぁ。
俺はもっと見ていたいけど。
がっかりした顔があまりにも可愛くて、思わず頭を撫でてやりたい衝動が湧き上がったがなんとか堪えた。

「でも、カカシさんのことをもっと見ていたいし、知りたいし、かわい……いえ、良いなぁとは思います。だから俺のお願いはこれです」

俺は鞄から例の首輪を取り出した。
そしてカカシさんにずいっと差し出す。

「これはお返しします。それで改めて俺と、その……一緒に暮らしませんか?」

ひゅっと息を呑む音がした。
カカシさんの顔がみるみる内に真っ赤に染まり、鯉みたいに口をぱくぱくさせると――

ばたんと倒れてしまった。





あれから俺はそのままカカシさん家で一緒に住むことになった。
カカシさんは俺の家の方が良かったみたいだが、任務に出る際にいろいろ準備が必要なカカシさんがいちいち上忍寮に装備を取りに行くのも時間のロスだし、俺の家にはそんな荷物の入る余地がないと断ったのだ。
俺もまぁ荷物の多い方だから、カカシさんの小綺麗な部屋はたちまち所帯染みてしまったけど、カカシさんは嬉しそうだから良しとしよう。
そこは良しとできるんだが。

カカシさんは毎日ふわふわと幸せそうで、ちゅうもぎゅうもしてるけど、あの時言ってた『もっとやらしいこと』の気配が微塵もない。
確かに、一緒に暮らしませんかと言っただけで息が止まって倒れちまうような人には、やらしいことなんてハードルが高いのかもしれないけどな。もう三ヶ月だぞ三ヶ月。
俺があの首輪を付ければ、少しは服従とか上下関係を意識して強気な行動に移せるんだろうかなどと考えてしまう。いっそのこと地下室で暮らしてもいいかもしれない。あそこには総檜風呂もあるし。
と、そこではたと気付いた。

俺、カカシさんに好きってまだ言ってなかった!

あー、だからか⁉
悪いことしたなと、慌てて風呂に入ってるカカシさんのところに向かう。
扉を開けるとカカシさんは湯船に浸かっていたので、「カカシさん、好きですよ!」とはっきり伝えた。
ワァンと俺の声が風呂場に反響する中、カカシさんは目を真ん丸にして何か言おうと口をぱくぱくとさせ。

湯船にぶくぶくと沈んでしまった。

――うん、もうな、俺が夜這いするしかねぇな。
一緒のベッドに寝てるけど。
カカシさんがこんなに手のかかる人とは思いもしなかった。
いきなり人を拉致って監禁したり、こっちが脱走したら脱走で返してくるし、好意を伝える度に息を詰まらせるし。
カカシさんを湯船から引き上げるとバスタオルで体を拭い、よっこらせと抱き上げてベッドに運ぶ。
風邪を引かないようにとパンツを穿かせようとしたところで、ふと悪戯心が湧いてきた。
本体と同じようにくったりとしてる、カカシさんのご立派なカカシさんをまじまじと観察してから感心して、「カカシさん、大好きですよ」と耳元に囁き。
それをぎゅっと握った。



まぁ、その後のことは秘密だ。
いわゆる秘め事ってやつだからな。
ちょっと腰が痛ェけど、そんな感じで俺たちは毎日幸せにしてる。
首輪も鎖も地下室も必要ないくらい、お互いに囚われてるよ。
ただなぁ。
地下室の総檜風呂はやっぱり恋しいんだよなぁ。
……また監禁してくれって、カカシさんに頼もうかな。



【完】
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