【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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――ここはどこだ?

藍色の薄手のニットにコットンパンツという、人間界を訪れる時のカジュアルな服装をしたカカシは、さりげなく辺りを見回した。
人間界で合ってるような気はするが、イルカのいた時代や地域とは町並みも道行く人の格好もだいぶかけ離れてる。
ごちゃごちゃとした大通りに、魔物と見紛うばかりの異様な風体の人間も混じって普通に歩いている。人間界のはずなのに、行き交う人々(人々?)を見るとむしろ魔界のそれに近い。
そのおかげで、いきなり食べ物屋の脇の露地に現れた自分たちが目立たないのは助かるが。

「…………オビト君」
「あー、ちょっと失敗したみたいだな」

ブルーグレーに変えた両の目で隣のオビラプトゥールを睨み付けると、角だけ消してほぼその姿を変えてない短髪黒髪の男がへらりと笑った。
その手には身の丈ほどの、地味だが高価そうな装飾を施された杖を握っていた。

「イルカにこの杖を持たせたのがまずかったのかもな。とりあえずその、何だっけ……アーメン屋? ってやつを探そうぜ」
「その前にイルカだ。どうやら別の場所に飛ばされたみたいだ」

カカシはもう一度オビラプトゥールを睨むと、辺りをぐるりと見回して空気の匂いを嗅いだ。

「こっちだ。イルカの匂いがする……気がする」



カカシとオビラプトゥール、そしてイルカは、再びイルカの住んでいた町付近に来ようとしていた。
イルカが寝言にまで繰り返し呟く『ラーメン』なる食べ物を食べに来たのだ。
それほどまでに食べたいならその望みを叶えたいと、イルカにべた惚れなカカシはほんの少し悩んだ挙げ句にそれを告げた。一度食べれば城のコックと協力して、今後は魔界の食材で再現することも可能だろうと続けると、イルカは飛び上がって抱き付き大喜びした。
『ラーメン』は日本全国どこにでもあるが、イルカが食べたいという店の『いちらく』とやらは隣町にしかないらしい。
人間の寿命は短いので、あんまり時代がずれてもその『いちらく』は存在しないだろうと、ピンポイントで次元を越える為に仕方なくオビラプトゥールを誘ったのだが。
どう見てもここはイルカの住んでいた地域でも時代でもない。同じ世界線ですらないだろう。前回の訪問では、少なくともこんな一様に制服のようなカーキ色と濃紺の服を着込んで、額に金属のプレートが付いた布を巻く人間がぞろぞろ歩いてはいなかった。
前回の次元を越えた疲労は抜けたと言い切るオビラプトゥールを信用しすぎたのかもしれないと、カカシは隣を歩く男に舌打ちをした。



イルカらしきエナジーを探りつつ大通りを進むと、なんとなく道行く人の視線を感じる。
やはりここでこの格好は目立つのかもしれないと、カカシは足を早めた。

「そんな焦らなくても、子供じゃないんだからイルカは大丈夫だろう」
「うるさい。こんな知らない場所で一人なんて、イルカはきっと不安がってる」

オビラプトゥールとの応酬に紛れて、すれ違う人々が一様に驚き「両目が出てるけどあれは……はたけカカシ?」「ちょっと、顔が見えてるじゃないの!」「あんな変装して何かの任務か?」と呟かれたことにカカシは気付かなかった。
イルカのエナジーが色濃く流れ出てくる『一楽』『ラーメン』の文字が書かれた暖簾のある店先で、カカシの足が止まる。
どうやらイルカは先に目当ての店を見付けたらしいと暖簾越しに中を窺うと、こちらに背を向けてカウンターに座っている、見間違えようのない高く結った黒髪が目に入った。

「イルカ! ここにいたんだ、良かった」

思わず大声を上げてずかずかと店内に入ると、麺を口いっぱいに頬張ったイルカが振り返った。

「イル、カ……?」
「え、カカシさん……ですか、ね?」

イルカ――なぜか外を歩く人々と同じカーキ色と濃紺の服を着て、額に布を巻いた――は、もぐもぐと口を動かして麺を飲み込むと怪訝な顔をした。

「どうしたんですカカシさん、その格好は?」
「イルカ……じゃないみたいだね。失礼、人違いだったようで」

注意深くエナジーを探ると、この地に馴染んだ風体のイルカは別人だった。
全くの別人とは言い難いが、よく見るとイルカよりも少し年上のように思えるし、少なくともカカシの探していたイルカではない。謝罪の言葉と共に店を出ようとすると、その腕をがしりと掴まれる。

「……お前、カカシさんじゃないな。チャクラが違う。その下手くそな変装は何のつもりだ? ちょっと来てもらおうか」

イルカに似た男の、先ほどまでの朗らかな雰囲気が一転して尖ったものになる。カカシの知るイルカには有り得ないその纏う空気に、まるで魔界の戦闘種族のようだとぞくりとした。
それに気付いたのか、隣のオビラプトゥールの気配も剣呑になる。たとえ別人でも、恐らくはパラレルワールドのイルカを傷付けたくなかったカカシは、あえてのんびりと答えた。

「貴方もイルカっていうの? 奇遇だなぁ、俺はイルカを探してるんだよね。貴方が連れてってくれるなら、どこへでも行くよ」

イルカは一瞬毒気を抜かれた顔になったが、すぐに険しい顔付きで真っ直ぐカカシを見た。その顔にイルカの面影を感じて思わず見惚れてしまうが、これは浮気になるんだろうかと慌ててこの場にいないイルカに心の中で言い訳をする。エナジーまで似通ったここのイルカも可愛い……いや魅力的ではあるが、やはり俺のイルカには敵わないなぁなどと思っていると、イルカが掴んでいた腕を離して両手を素早く動かした。
するとキンッと空気が揺れ、何かしら魔法のようなもので二人の周りごと閉じ込められたことに気付いた。
とりあえず抵抗の意思がないと判断されたのか、言葉遣いを改めたイルカがカカシとオビラプトゥールに向かって凛々しい顔で告げる。

「お二人の扱いは私の手には余るので、これからここの里長の所にお連れします。拘束はしませんが、私の側から離れられないよう結界ごと移動するので、くれぐれも抵抗などされませんように」
「大丈夫、俺がイルカを傷付けたり離れる訳ないじゃない」

イルカと同じ顔、同じ声で自分から離れないでと言われたカカシは、つい反射的にそう答えていた。
それを聞いたイルカが、またしても微妙な顔でカカシを見返す。

「それにしてもそっくりだなぁ……カカシさんはそんなこと言わねぇけど」
「さっきからカカシさんカカシさんって、俺に似た男もいるの? イルカはそいつのこと好きなの?」

自分のイルカとは違うイルカに、やや年上に見えることもあってカカシはさん付けで呼んだ。
だがたとえ別人でも、イルカの顔で自分ではない男の名を連呼されるのは面白くない。
それが自分と同じ名前だとしてもと、カカシは不機嫌さを隠さずにイルカに問いかけた。するとイルカはいきなり真っ赤に茹で上がって、カカシの背をバンバンと叩く。

「そそそそそそそんなことアンタに関係ないだろ⁉ 無駄口叩いてないで行くぞ!」
「ふぅん?」
「外界の音やアーメンの匂いもちゃんと通してる……なぁイルカ、これはなかなか凄い結界だな? 俺サマが言うんだから間違いないぞ」

狭い結界の中でやり取りしている二人をよそに、オビラプトゥールは自分の次元魔法とは違う結界の仕組みにしきりに感心していた。
そして人差し指でつつくと、見えない結界に穴を空けてそこに顔を近付けた。

「おっ、穴を空けても破れない! お前、本当にやるな。俺にもちょっと教えてくれよ」
「え、あっ⁉ ちょっと困りますよ、そっちの人! 結界に穴を空けるなんて気軽に何やってやがるんだ!」
「そっちの人じゃない、オビラプトゥール様だ」
「オビ、オビララトル?」
「…………お前もか。もういいよオビで」
「ちょっとイルカさん、そんな奴と仲良くしないで! 里長とやらの所に早く行こう」

カカシはオビラプトゥールの手を掴んでいるイルカを引き剥がすと、そのまま腕を組んで本部棟へとぐいぐい引っ張った。

「アンタ、里長の居場所を知ってるのか? やはり間者か⁉」
「長ってのは、だいたい偉そうに高い所にいるもんでしょ。いいから早く」
「おいイルカ、さっきの手をぱぱっとやったやつ、あれでこの結界が出来るのか?」
「うるさいオビト! お前は近寄るな!」

連行されているはずのカカシがなぜかイルカの腕を引き、一行は大騒ぎしながら『火』と書かれた建物に向かった。




「……で。こいつらがお前の寄越した式にあった、間者ではなさそうだが怪しい二人組か」

五代目が執務机の向こうから、無遠慮に二人をじろじろと眺め回す。
イルカはうんざりとした様子で二人の後ろに立ち、それでも礼は失さないよう五代目を真っ直ぐに見返した。

「間者ではないようですが、なにぶんこちらの男がカカ……はたけ上忍にそっくりでして」
「確かに。と言うかイルカ、お前はカカシの素顔を知ってるのか」

五代目の問いかけにイルカはパッと頬を染めると、「えっ、いやまぁ、それなりに……一緒に呑みに行ったりしてますので」と口ごもる。
その様子を面白そうに眺めていた五代目は、「さて」とカカシとオビラプトゥールの方へ向き直った。

「それで、あなた達は魔界からの来訪者で、『イルカ』と一緒にラーメンを食べに来た。それが済めばここを去るということでいいんですね?」

それに対してカカシは頷く。
里長への謁見場への道すがら、こちらのイルカとオビラプトゥールのやり取りを聞いたところによると、この場所はイルカの住んでいた人間界とは違い、『チャクラ』や『忍術』などむしろ魔界のシステムに近い。
里長に会う前に別室で聞き取り調査をイルカを含む数人の『忍』にされた時に、ならば下手に取り繕うより、素性と目的を正直に話した方が安全だと判断したのだ。
その態度が認められたのかいきなり投獄もされず、五代目と呼ばれる長もたいして警戒することなく話をしている。
と、五代目は「そういうことだ。もうこっちに来てもいいぞ」と宙に向かって声をかけた。
すると室内のごく限定された空間が一瞬歪む気配がして、次の瞬間には二人の男がソファーの向こうに立っていた。

「イルカ!」
「カカシ! 無事だったんだな、良かった!」

はしばみ色の髪にくすんだカーキ色のロングコートを纏ったスケアにそっくりな男に、抱えられるように立っていたのはイルカだった。
イルカはその男の腕を振り払うようにして、カカシの元に駆け寄る。

「一楽に行けるぞと思ったのにおかしな国に来ちゃうし、いきなりスケアのそっくりさんに連れ去られるしでびっくりしたよ。はー、二人に会えて良かったぁ!」

イルカは無邪気に喜んでいるが、カカシには聞き捨てならない情報があった。
スケアのそっくりさんに連れ去られるとは。

「あいつに何もされてない? 大丈夫だった?」

こちらのイルカを見た限りでは、スケアそのものに見えるということは、中身も似てると思った方がいい。
何か怪しげな事をされてないかとイルカを抱き寄せて匂いを嗅ぐと、「やめろよ、こんな所で」と押し退けられたが、イルカ本人と昨夜の名残の自分の匂いしかしないことにホッとする。
チラリとスケアに目線を投げると、にこりと癖のある笑みを返してきた。
それがまた今はカカシの中にいるかつてのスケアに本当に驚くほど似ていて、違うのは目の色くらいだ。もっとも、自分も今は仮の瞳の色だけど、と内心呟いていると、オビラプトゥールが無遠慮にスケアに歩み寄って声をかけた。

「お前もスケアっていうのか。へぇ、面白いな。生意気な顔してやがるが、こっちにはやっぱりカカシもいるのか?」

カカシとスケアを紐付けかねないその問いに、事情を知る綱手とスケアの空気が一瞬張りつめる。
だがそれは気のせいだったかと思うほどにすぐ霧散し、スケアが微笑みかけた。

「あなたもなかなか面白い顔してますね、オビラプトゥールさん、でしたっけ? 変わった杖を持って、しかもお名前まで面白い」

スケアのからかうような口調に、オビラプトゥールは瞬時に逆上して口を大きく開いた。
黒い豪炎とまでは及ばなくとも、人一人を包む程度の紅蓮の炎が上下に覗く牙の間からスケアに向かってごうと吐き出される。
だがその炎は誰に届くこともなく、じゅっと音を立てて大量の水蒸気と共に消えた。

「危ないなぁ。下手な動きをすると、反逆の意思があると思われて魔界に帰れなくなりますよ? ほら」

いつの間に移動したのか、支給服姿のイルカの前に焼け焦げ一つない状態で立つスケアが、五代目の座る机の方に手をかざした。
そこには白地に動物のような模様の面をした忍が四人立っていて、オビラプトゥールに対して警戒心を露わに構えている。
先ほどまでの長閑な空気は一変し、お互いの出方を窺う緊張感が針先のように鋭くなった。
と、カカシに抱えられたパーカー姿のイルカが、炎を遮るために広げられたカカシの常夜色の翼の陰から抜け出し、あわあわと五代目に向かって弁解を始めた。

「あのっ、すみません、オビさんは悪い人じゃないんです! ただちょっと喧嘩っぱやいだけで!」
「イルカ、それ何のフォローにもならないよ……」

イルカを引き戻しながらカカシは呆れたように、だが愛しげに手を結い上げた髪に伸ばして撫でる。
この緊迫した場においてもイルカしか目に入ってないカカシの、そして何一つ自分は悪くないとでも言うようなオビラプトゥールのふてぶてしい態度は、明らかに余裕と秘された力の程を窺わせる。
だがこの緊迫した空気を一瞬でがらりと変えたイルカの一言は、何より強かった。
綱手は肩の力を抜くと椅子にどかりと腰かけ、護衛に向かって手を一振りした。その合図に暗部の姿が掻き消える。

「やれやれ、こちらとしてはさっさとラーメンを食べてお帰り願いたいところだが、騒ぎになっても困るな……スケア、お前がイルカと一緒に行っておやり。ご一行が帰る時はここに顔を出さなくていいから、お前たちがきちんと見届けるんだよ」

それにしても全員が顔どころか中身も似てるとは面白いな、などと苦笑しながら、用は済んだとばかりに五代目はしっしっと片手で追い払うような仕草をした。

「こちらの馬鹿がお騒がせして申し訳ない。ご厚情に感謝します」

カカシは背に広げていた翼を音もなく背に収めると、脱ぎ落としたニットを拾い上げて袖を通す。
そしてオビラプトゥールを一睨みすると、イルカをしっかりと抱き寄せた。
一連の流れに息を詰めていた忍のイルカも、スケアの背後から隣に並んで「すみませんがよろしくお願いします」と挨拶をした――必要以上にスケアの顔を凝視しながら。



「そちらのイルカ君は、イルカ先生よりちょっと若いんですね。先生もこんな感じだったのかなぁ……カワイイ」

忍のイルカと並んで一行を先導するスケアが、愛想よくイルカだけに向かって笑みを向けた。
その小さな呟きはしっかりとカカシの耳に届き、スケアの視線から遮るように体を割り込ませた。

「あの、なんだかすみません、おおごとになっちゃって……」

イルカがカカシの後ろで体を縮こませて謝ると、忍のイルカが自分と同じ顔ににかりと笑顔を向けた。

「気にしないでください! こちらこそせっかく魔界からラーメンを食べに来てくれたのに、いろいろ不自由な思いをさせて申し訳ないです。でも嬉しいなぁ。魔界にまで一楽の素晴らしさが伝わってるなんて!」
「まさかここでも一楽があるなんて嬉しいです! あ、魔界といっても俺は元々人間界にいたから、俺のいた世界にも一楽があって……」

思わず握った拳に、若いイルカも途端に元気になって同調する。
一楽のラーメンの話で盛り上がる二人のイルカをよそに、オビラプトゥールが肩に担いでいた杖先でスケアを差した。

「なぁお前、さっきからじろじろと俺を盗み見やがって何のつもりだ? 俺サマの格好良さに惚れたか?」

オビラプトゥールの戯れ言を軽くいなすかと思いきや、スケアは逆上せて言い返した。

「は? 誰がお前なんかを! 僕が好きなのは……っと失礼」

その不審な様子を見て、万が一にも自分のイルカに不埒な事はさせないと、カカシはますますスケアに対する警戒を強めた。
と同時に、次元は違っても想いを向ける相手は変わらないんだなぁと、一人感慨に耽る。
こちらのスケア――顔からしても恐らくはカカシ本人か、限りなくカカシに近い人物だろう――はイルカと想いも身体も交わしてないようだ。その点では自分が大幅にリードしているようだが、油断はならない。
それは別としてスケアのオビラプトゥールを見る目には、恋情よりも哀切のような感情を感じる。こちらの世界のオビラプトゥールはどうしたのだろうかと思っていると、前を行く二人のイルカが急に駆け出した。どうやら一楽のある場所に戻って来られたらしい。
はしゃいでいる二人の楽しげな背中を微笑ましく見ていると、スケアも全く同じ目を二人に向けていることに気付いた。

「俺のイルカをそういう目で見ないでくれる?」
「お前こそ」

イルカたちをひたりと見つめる眼差しはそのままに、冷えた声でスケアが返す。
だがすぐに決まり悪げにはしばみ色の髪を片手でくしゃりとやると、意外にも縋るような目をカカシに向けた。

「……ねぇ、アンタはどうやってイルカ君と付き合えたの?」

虚を突かれてとっさに返せないでいると、オビラプトゥールが口を挟んできた。

「そんなん好きだから俺のものになれって言えば済む話だろ」
「……これだから童貞は」

カカシの呆れた声とスケアの舌打ちが重なり、思わず顔を見合わせる。

「ま、頑張りなよ」
「……そーね」
「皆さ~ん! こちらが一楽ですよ!」
「カカシ、オビさん、早く早く!」

おかしな連帯感が通って小さく苦笑を交わすところに、暖簾の前で足踏みをする二人のイルカの浮かれた大声が届いた。
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