【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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「あれ、イルカ先生、また食いに来たのかい? 今度はそっくりさんを連れて、ちっと早いが忘年会の一発芸の練習でもしてたのかね?」
「まぁそんなもんです。俺は味噌とんこつに……えっと、皆さんは?」

忍の常連が多いだけあって、異様な一行を気にも止めないテウチを前に、忍のイルカを始めとする五人がずらりと並んで座った。
二人のイルカは迷うことなく味噌とんこつを、カカシとスケアは塩を、オビラプトゥールはあれこれテウチに訊ねた挙げ句、期間限定スペシャル爆弾ラーメンなるものにした。

「爆発するアーメンなんて面白いな。今度うちのコックにも作らせよう」

子供のように身を乗り出しながらテウチの背を見守るオビラプトゥールに、忍のイルカが笑いながら爆弾ラーメンは爆発しそうになるくらい辛いだけで、実際に爆発する訳ではないんだと説明をする。
そこにテウチの威勢の良い「へい、お待ち!」の声がかけられ、次々と並ぶラーメンに五人が目の前の丼に集中した。
カカシが「ホントにスープの中に麺が入ってるんだ……」と感心して呟くと、パーカーを着たイルカが「ラーメンは一つの器にフルコースが詰まった芸術品ですよ!」とすかさずべた褒めする。
スケアが割り箸を二つに割ると、隣に座ったオビラプトゥールがそれに倣って自分の箸を割ったが、どう使うのか悩みながらスケアを横目で窺った。

「魔界には箸の文化はないのかな?」
「馬鹿を言うな。俺サマは食事に真っ先に手を付けるような蛮族じゃないんだ」
「ふぅん? それじゃお先に」

今度はスケアもオビラプトゥールをからかうことなく、割り箸とレンゲを持つとスープを飲み麺を啜り上げた。
オビラプトゥールはチラチラとそれを盗み見ながら、目の前の真っ赤なスープをレンゲで掬い、口に運ぶ。

「うおっ! かっっっら!」

一口で即刻音を上げたオビラプトゥールが、グラスの水をがぶがぶと飲む。

「なんだこりゃ、物凄い辛いってレベルじゃないぞ! これは生き物の食うもんじゃない!」
「兄さん、辛いの苦手だったのか? それは一応子供でも食えるんだがなぁ。ちゃんと俺の説明を聞いてたかい?」
「……どうせ格好いいからって名前だけで決めたんでしょ。まったく、食べかけだけど俺のと交換してやるから黙って食べなよ」

テウチの言葉に、ほとほと呆れたと言うようにカカシが自分の塩ラーメンを押して寄越し、爆弾ラーメンの丼を取り上げた。
その様子をスケアは意外にも優しい眼差しで見ている。
どこか痛みの混じる、懐かしさの籠った眼差しで。

「……なんだよ、お子さま舌で悪かったな」

カカシから塩ラーメンの丼を受け取ったオビラプトゥールが決まり悪げに言うと、スケアはハッと我に返って目の前の彼に意識を戻して薄く微笑んだ。

「いや、そういうところも知り合いに似てるなと思ってね」
「俺サマに似てるのか? ならば相当いい男だな」
「うん……そうね」

二人のやり取りをよそに、カカシは淡々と丼の中身を干していく。

「カカシ、ホントに大丈夫か?」
「うん、平気。て言うかこっちも美味しいね。イルカが寝言にまで言うの分かるよ」
「だろ⁉ 一楽のラーメンは日本一、いや世界一だからな!」

心配そうに覗き込むイルカも、カカシの食べっぷりとその返答にさも嬉しそうに破顔した。
忍の方のイルカも、一人で食べていた時から二杯目だというのにぺろりと平らげると、「はー、うまかった!」と満足げに腹をさする。
そしてカカシの方に顔を向けると、声をかけようとした口があんぐりと開いたままに固まった。

「カカシさん、その……それ、元からありましたっけ?」

恐る恐る差す指はカカシの頭に向けられていた。
その白銀に鈍く光る髪の上には――

「カカシ、角……っ、角が出ちゃってる!」

潜めたつもりのイルカの声は、驚きのあまり後半が地声になってしまっていた。
テウチもスケアの目もカカシの頭にいきなり生えた、緩い曲線を描きながら天を差す山羊のような角に釘付けになっている。

「あー、まずいなイルカ。……脚もだ」

困ったように笑うカカシがカウンターの下から片足を出すと、さっきまで革靴を履いていたはずの足先は見事に裂け、白銀の獣毛に覆われた獣のがっしりした脚へと変貌していた。
それを感心して眺めていたスケアは、忍のイルカがうっとりと「うわぁ、カッケェ……」と呟くのを聞いて顔をしかめる。

「そういう芸は今やらなくていいから、早くしまってくれないかな」
「うるさいな、やれるもんならとっくにやってるよ」

スケアがいかにも不機嫌そうに言い捨てると、カカシも冷たい一瞥と一声を返した。
するとオビラプトゥールが何か思い当たる事があったらしく、ポンと膝を叩いた。

「そういやお前、ウハの実のアレルギーだったな。そのせいじゃないか?」
「ウハの実なんてここにはないでしょ。……いや、もしかして似たような成分の物がラーメンに?」
「ウハの実が何だか知らねぇけど、唐辛子ならたっぷり使ってるぜ。兄さん、唐辛子アレルギーなのかい?」

と心配そうにテウチが唐辛子を差し出して見せながら訊ねると、二人のイルカも不安げな顔でカカシを見つめる。
唐辛子の匂いを嗅いでしかめっ面をしていたカカシは、イルカたちを安心させるようにこりと笑顔を返すと、「たぶんトーガラシ? が原因だろうけど大丈夫、とりあえず幻獣化まではしなさそうだし、具合が悪くなる訳じゃないから」とカカシの顔を覗き込んできたイルカの頬を撫でた。

「でもアレルギーって……どうやったら治るんだ?」
「そうだね、別に放っといてもいいけど、水分をたくさん摂って汗をかいたりして、体からアレルゲンを排出すればより早いかな」

そして更に身を寄せて何かを囁くと、とたんにイルカが真っ赤な顔になる。

「う……分かったよ。じゃあ、もう魔界に帰らなきゃ」
「ごめんね、せっかくこっちに来たのに」
「なんだ、もう帰るのか。せっかくだからもっと見て回りたかったのに」

オビラプトゥールが不満を表明するが、ある意味元凶とも言える者の能天気な発言にカカシは彼を睨み付けた。
だがそれくらいで怯むような男ではなく、「う~ん、また来たいしな。次回のためにマーキングしておくか?」などと呟いている。
その奥で忍のイルカが全員分の支払いを済ませようとする手を、スケアが止めた。

「ここは僕が」
「え、それは駄目ですよ」
「五代目から接待費を預かってるから」
「そうなんですか? じゃあ有り難くご馳走になります!」

イルカとスケアのやり取りを席を立ちながら見守っていたカカシは、こっそり微笑んだ。
こちらの二人は進展が遅そうだが、もしかしてスケアとカカシは別人で、お互い裏で牽制し合ってるのかもしれない。ならば自分はやはりカカシを推したいなどと考え事をしていると、イルカに腕を引かれた。

「カカシ、牙まで生えてきてる。爪も。幻獣化が進んでるみたいだから早く帰ろう」

イルカの囁きで両手を見ると鋭い爪が伸びていて、袖口から覗く部分が白銀の獣毛に覆われ始めていた。このまま幻獣化が進むと翼と竜の尾を持つ獅子の姿になって、ここの長の懸念していた騒ぎになりそうだ。
カカシはイルカの腰に手を回し、オビラプトゥールを顎で促す。
次元の孔が通じている場所をはっきり特定できるのは彼だけだ。オビラプトゥールは杖を肩に担ぎ直すと、「んじゃ、帰るか」とさも残念そうにため息をついた。



魔界へと繋がった次元の孔は、カカシとオビラプトゥールが最初にいた商店街の方だった。
なぜかイルカだけが弾き飛ばされ、たまたまスケアのいたあの長の居室近くに落ちたようだ。
次元の孔は普通の人間には見えないのだが、スケアにはなんとなく違和感程度の感触はあるらしい。

「貴方がたが通った後、こちらで何もする必要はないんですよね?」
「ああ、心配しなくとも自然に消える。じゃあ世話になったな」

オビラプトゥールが先頭に立ち、さっさと通り抜けていく。
カカシとイルカはそこに続き、並び立って見送るスケアとイルカをもう一度振り返った。

「お気を付けて。あの、楽しかったです!」

忍のイルカの声にイルカが「俺もです! お二人ともありがとうございました!」と大きく手を振った。
カカシは笑みを向けたつもりだったが、幻獣化が進んだ顔では牙を剥いたようにしか見えなかったかもしれない。

「イルカさん、付き合うならスケアよりカカシの方が俺はいいと思うよ」

カカシはそれだけ伝えると、まだ名残惜しげに手を振っているイルカの腰を引き寄せながら次元の孔を通り抜ける。
――背後の慌てふためくイルカとスケアの気配を感じながら。





以前と同じようにふわふわとした道を辿りながら魔界に着くと、オビラプトゥールとは軽く挨拶をして別れた。
テンゾウの城に戻ると、半分幻獣化したカカシに驚いたテンゾウが飛んできたが、「大丈夫、ちょっとアレルギーが出ただけ」と説明にもならない言葉で追い払う。
そしてイルカと二人で自室に入ったカカシがベッドに腰かけると、とたんにイルカがもじもじし始めた。

「じゃあ、えっと、それじゃ……その、ほら」

一楽でカカシが囁いたのは、「魔染めをすれば体液の排出が促進されて、イルカの今日の分も済ませられて一石二鳥でしょ」という内容だったのだ。時間的にはまだ余裕があるが、どのみちカカシの体液を摂取しないと人間のイルカの体は腐敗紋に覆われてしまい、最終的には死に至る。
それを分かっていても、自分からはなかなか行動に移せないイルカの初心さが愛しくて。
幻獣化が更に進み、柔らかい白銀の獣毛に覆われ始めた顔で、カカシはクスリと笑って両手を前にかざした。

「見てよ。これじゃ服も脱がせられない。だから今日はイルカが全部やってくれる?」

カカシの手はほとんど獅子の前肢になっており、丸みを帯びた肉厚な指の先端からは鋭い爪が覗いている。イルカはうっと詰まったが、これはカカシのアレルギーを治す為でもあるのだ。
口をぎゅっと引き結び、意を決したようにカカシの前に立つと、彼の着ているニットを頭から一気に引き抜いた。
そしてウエストに手をかけるとファスナーを下げ、膝下から破れたズボンを下着ごと手荒く脱がせる。
そんな扱いにもカカシは終始ご機嫌で、一糸纏わぬ姿でベッドに寝そべった。
露わになった上半身はまだ人型を保っていたが、下半身は腿が太く張りつめて全面が毛に覆われ、ほぼ完全に獣のそれになっていた。
そして中心には、そそりたつ雄の象徴。
獅子の姿だから猫科の動物の性器になるのかと思いきや、そこだけはいつもの見慣れた形状ではあったが、周囲は完全に白銀の獣毛に覆われ、無垢な美しさの中から突き出た赤黒い色合いが余計に淫猥さを主張しているように見える。

「イルカも脱いで」

初めて目の当たりにする幻獣の姿での下半身に釘付けになっていたイルカは、我に返っておずおずとパーカーの裾に手をかける。

「この姿でするのはイルカは嫌? 怖い?」
「そんなんじゃ! ……ただ、ちょっとその……すごいな、って」

いつもはカカシから仕掛けてきて、訳が分からないまま快楽の奔流に流されるだけなので、ちゃんと理性がある状態でカカシの性器を見るのは初めてだ。
『アレ』が自分を翻弄し乱すのだと思うと、同じ男の物なのについまじまじと凝視してしまうイルカだった。
その羞恥を振り切るようにパーカーを脱ぎ捨てると、イルカもベッドに乗り上げてカカシの傍らに座る。

「下も脱いで」

優しい笑みで容赦ない一言を寄越すカカシを、イルカはじとりと横目で睨み付けるが、ラーメンを食べたいという我儘に付き合ってくれた上でのアレルギー反応なので今日は逆らえない。

「水はもっと飲まなくていいのかよ」

半分憎まれ口めいた口調で言いながら、サイドテーブルに置かれた水差しからグラスに水を移して手渡す。

「イルカが飲ませて」

ぱかりと雛鳥のように口を開けて待つカカシの口元にグラスを運ぶと、その手を取られてなぜかイルカが口に飲まされた。
そして両手でイルカの顔を挟むと、咥内に残っていた水を飲む。丁寧に舌まで吸い上げて。

「もっと」

ねだる声はねっとりと甘く、違うものを求めているかのようだ。
事実、カカシが求めているのはイルカの身体という甘露だが。
イルカは今度は水を飲むのではなく、ちゃんと含んでカカシと唇を合わせた。
唇を通って水がイルカからカカシの咥内に流れていく。
口移しだったはずの行為はいつしか深いものになり、顔の角度を変え唾液を絡ませながらカカシの舌は首筋を、そして鎖骨の窪みを味わい始めた。
胸元を滑る手がいつもと違うことに気付いた時には、肉球で胸の尖りを撫でられていた。
指先の繊細で巧みな動きがない代わりに、張りのある肉球とその周囲に生えた柔らかい獣毛の異なる感触が不規則に尖りを責め立てる。

「……っふ、ぅ、……ン」

鼻にかかった甘い吐息が漏れる頃にはその手は脇腹を滑り降り、既に勃ち上がったイルカの昂りを撫で回していた。

「それ、や……ぁ」
「獣の手で気持ちよくなるのは嫌?」
「違、……ぅうんッ」

肉球は掌よりも固く、使い込まれたなめし革のような感触だった。
その両手で熱棒を挟むようにして括れや裏筋を上下に、時には先端を肉球でくるくると撫で回すと、イルカはカカシの首にかじりついて物欲しげに腰を揺らす。

「じゃあもっといやらしいこと、してほしい?」

意地悪く微笑んだカカシが、イルカの耳に舌を這わせながら訊ねると、肩口でイルカがこくこくと頷いた。
溢れた甘淫水でぐっしょりと濡れた肉球が熱棒から陰嚢、会陰を撫でながら辿り、開いたイルカの足の間を更に奥へと滑り進んでぴたりと止まった。

「この先はイルカに自分でしてもらわなきゃ」

その言葉の意味が分からず、イルカは急に止まってしまった動きに不満げに顔を起こした。
とろりと蕩けた黒い瞳が、ぼんやりとカカシの緋色の眼を見つめる。
そこに突然理解の光が宿り、イルカが真っ赤な顔で叫んだ。

「そんなの……っ」

無理に決まってんだろ、という言葉は口からは出なかった。
言い返そうとしたイルカの目に写ったのは、半分獅子の顔をしたカカシで、その手からは鋭い爪が覗いている。
自分が何をしなければならないのかを思い出したイルカは、渋々とサイドテーブルの引き出しからオイルの小瓶を取り出した。

「手の平に出したら両手で包むようにして温めてね。それから指先に纏わせるようにしてお尻の穴に……」
「分かってるよ!」

恥ずかしさのあまり乱暴に遮ると、下唇を噛みながら片手を後ろに回し、言われた通りの手順で指を後孔に沿わせた。
そこを解すことなど、自分でする日が来るとは思ってもみなかったイルカは、今までカカシにされてきたことを思い出しながらゆっくりと中指を押し込んでいく。

「入れるだけじゃダメだよ。前後させながら中を捏ねるように動かして」
「んんっ、く……ぅ」

半身を起こしたカカシを跨いで膝立ちになり、ぎゅっと目を瞑って作業に集中している様子は、恐ろしく扇情的だった。
興奮が面に出ないよう、震えそうになる声をなんとか絞り出したカカシは、言葉で導きながらイルカの萎えかけた雄をまた包んで愛撫し始めた。

「そろそろ指を増やしてみて。……そう、上手だね」

大きく波打つ胸に吸い付きながら、励ますように声をかけ続ける。
三本目の指が入った頃には、イルカは後ろを使った自慰にも似た行為に夢中になっていた。
もう頃合いかと、はっ はっと息を荒げるイルカの腰を引き寄せると、イルカが焦点の合わない目でカカシを見返した。

「ここ。おいで」

限界まで耐えさせられたカカシの雄は物欲しげに涎を垂らし、膨れ上がって静脈が浮き出ている。そこに自分の手を添えて固定すると、心得たイルカが腰の位置を合わせた。
ぬるりとした先端が、指を引き抜いたイルカの柔らかく開いた襞にひたりと当たる。

「イルカ、おいで」

重ねて誘うカカシの声に、しばらく逡巡していたイルカが意を決したように腰を落とした。

「あ、ぁ、あ……ン、あぅ……っ」

最も大きく膨れ上がった部分をぐぶりと呑み込むと、イルカは大きく息をついた。
そのまま自重でずぶずぶと根元近くまで腰を沈ませたところで、カカシはイルカの両膝に手をかけると大きく左右に割り開いた。

「すごい……いい眺め」

薄く伸びた襞がカカシの剛直を包み、ひくひくと蠢いている。
劣情と愛欲にまみれた目でうっとりと眺めていたカカシが、肉厚な指先をそこに伸ばした。
鋭い爪が傷など付けないよう、細心の注意を払って獣毛に覆われた指先で繋がった箇所を撫でる。

「見、るな……っあ、あ、ひう!」

先ほど肉球で嬲ったイルカの熱を、今度は獣毛で丹念に容赦なく撫で回す。
柔らかい刷毛で嬲られるような未知の感覚に、たまらずイルカが腰を揺らした。

「そう、もっと動いて。イルカがいいように動かしてみて」

だらだらと溢れる淫水を塗り付けるように手を動かしながら、カカシが囁きかける。

「で、きな……い、分からな……っ」

甘い悲鳴を上げながらも泣き言を言うと、カカシはイルカの両腕を後ろに突かせて自分の腰の位置を調節した。

「ほら、このまま腰を浅く上下させてみて」
「……こう? ン、あ、あ、……んぁ、っ?」

突然びりりと走り抜けた衝撃に、イルカの身体が跳ねる。
内側の媚肉がうねり、カカシの剛直を絞り上げるようにざわめいた。

「……っく、そこ、イルカの大好きなところでしょ?」
「な、にこれ……ぇあ、は……ゃだとまんな、あ、ひぁ、あ」

イルカが腰を上下する度に、張り出した部分が前立腺をぐりぐりと抉る。
初めて自分の動きが生み出す悦楽を知ったイルカは、無我夢中だった。だが経験の無さゆえか、極みまで登り詰めるにはあと何かが足りなかった。

「……か、し、カカ……っ、も、ちょっとなの、に」

半泣きで訴えると胸をぐいと押され、気付くとイルカは仰向けになっていた。
そこに欲情した獣の顔のカカシが覆い被さってくる。

「偉いね、よく頑張ったよ。あとは俺が」

牙を剥き、荒い息を吐いた獅子の顔を見ても、イルカの胸に広がったのは安堵だった。
両腕を広げてその頭を抱き寄せると、首からなだらかに繋がる獣毛に腕がふかりと埋まる。

「カカシ……はやく」

涙混じりの声で請うと、カカシが低く唸った。
そして一度大きく腰を引くと、ゆっくりと穿つ。
その間隔に合わせイルカの蜜を溶かした悲鳴が徐々に早まり、高まっていく。
激しい動きに振り落とされないよう、イルカは両足を巻き付けて必死にしがみついていたが、一際甲高い悲鳴が上がった後。
汗に濡れた両手足は、力なくシーツに投げ出された。



温もりの中でイルカがふと目覚めると、陶器のような白くすべらかな肌が目の前にあった。
自分を包む腕にも巻き付く足にも、獣毛の感触はない。

「戻ったんだ、良かった……」

その呟きに返されたのは、頭の天辺へのキスだった。

「おかげで早く戻れたよ。ありがとう」

顔を上げると、いつもの緋色の眼がイルカを嬉しげに見つめている。
先ほどまでの幻獣化の名残は一切ない様子に、そして大丈夫とは言われていたがアレルギーの影響もなく元気そうなカカシに、イルカは心底ホッとした。

「ホントにごめんな。もう我儘は言わないから」
「なんで? 俺はもっとイルカのおねだり聞きたいけど」

優しく甘やかす口調にも、イルカは沈んだままだ。
魔物として強大な力を持つカカシでも、こんな些細なことで弱ってしまうのだ。
何も知らなかったとはいえ、自分がその原因を作ってしまった自責の念は消えなかった。今回はアレルギー反応による幻獣化だったから良かったものの、他にも命に関わるような禁忌事項があるかもしれない。
同じような外見でも、人間と魔物は違うのだ。
カカシと共に魔界で生きていくことを決めた覚悟は、まだまだ全然足りなかったのだと目の前に突き付けられた気がしたのだ。

「イルカ、……俺を見てイルカ」

呼び掛けられても後ろめたさに目を伏せたままでいると、いきなり抱きしめられた。
顔や首元に当たるふさふさしたものに違和感を覚え、まさかと引き剥がすと。
顔だけ獅子になったカカシが微笑んでいた。

「カカシ、またアレルギー反応が!」
「これは違うよ。部分的な幻獣化も元々できるの。アレルギーが出ると、その制御が上手くできなくなるだけ」

そう言うとたてがみが消えていき、カカシの顔がゆっくりと人型に戻っていく。

「あのさ、他にもあるのか? その、アレルギーじゃなくても弱点みたいな、火に弱いとかそういうやつ」

不安を滲ませてイルカが訊ねると、カカシが笑い飛ばした。

「火に弱いとかは無いよ。自分の属性ならある程度はコントロールできるからね。弱点は……そうだね、イルカかな」

不意にカカシが真面目な顔になる。

「人の子は俺たち魔物に比べて格段に弱い。イルカを失うのが俺は……一番怖いよ」

イルカは言葉を失った。
魔王とも謳われ秘かに恐れられているカカシが、こんなにも弱々しく、置いてきぼりにされた子供のように恐れている。
――その弱いイルカの、存在一つで。

「だ……大丈夫だよ! 俺はほら、昔っから頑丈っつーか殺しても死なないし!」

勢い余ってがばりと起き上がったイルカを、カカシは目をぱちくりさせながら見上げた。
そして、ふ と微笑うと、起き上がってイルカを抱きしめる。
先ほどよりも強く、強く。

「イルカのそういうところも大好き」
「なんだよ急に。おおお俺だってその、……す、きだからな!」

ストレートな愛情表現はスケアの名残か、いや、元々カカシの性質だったのか。
いきなり真っ直ぐに愛情を向けられると、奥手なイルカは戸惑ってしまう。これでも魔界でスケアの愛情表現にずいぶんと慣らされた方なのだ。

「逞しいイルカも優しいイルカも、ラーメンが大好きなイルカも大好きだよ。ラーメンは今度作ってあげるね。あとさっきみたいなエッチなイルカも大好き。あれもまたやってね」
「ラーメン作ってくれるのか⁉ やった! ……あれはもうやんねぇぞ」

最後の言葉は聞こえたのか、聞こえないふりを決め込んでいるのか、カカシがぐりぐりと頭を擦り付ける。
最初に出会った時も、そういえば大型犬と間違えたなぁなどと思いながら、イルカはカカシの頭を撫でた。
イルカの人間という生き物としての弱さ。
それについて、もっとちゃんと考えなきゃなと片隅で考えながら。



【完】
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