【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old
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うふ……うふふふふふふ
むふふふふふふ
この一週間で何度目か分からない忍び笑いが、俺の口から自然と零れる。
口からといっても、口布で覆われてるからバレないだろうと思ってたけど。イベント関連の資料を確認していたシカマルから、これまた何度目か分からない胡乱な目を向けられた。
「……浮かれる気持ちは分かりますけどね。ちゃんと仕事しないと、あさっては影分身にイルカ先生のエスコートを頼むことになりますよ、『火影サマ』」
優秀な秘書官は『火影サマ』の扱い方も困るくらい優秀だ。
イルカ先生ほどじゃないけどね。
一日火影がイルカ先生に決定してから、俺はずっとニヤニヤが止まらなかった。
なにしろ公然と一日同伴できるのだ!
二十五日の当日は、揃いの衣装に身を包んだ二十人の担ぎ手が担ぐ御輿(テンゾ……ヤマト作)に乗って、里内を練り歩く。それから一日火影のスピーチと、握手&撮影会。その後は打ち上げとして実行委員会との慰労会。
その間中、ずーーーーっと六代目火影が付き添うことになっている。
これってなんだか……伴侶みたいじゃない?
本当は現火影が同伴するのは慰労会だけだったんだけど、イルカ先生に決まったと同時に、イベントの全てに俺も同伴することをゴリ押したんだ。
――その分の仕事のしわ寄せが、今こうして押し寄せてる訳だけど。
ところで装備部の中には一部の上忍、暗部、そして火影の衣装や装備品を一手に担う特別装備部、通称「特装部」という部署が存在する。
装備は忍具と並んで特に機密に関わる部分が多いので、あまり一般には知られていない。
実は秘かにその特装部と相談して、イルカ先生の衣装を検討していたのだ。
これも本来は六代目の衣装の予定だった。
お揃いも捨てがたかったが、俺と間違われてマヌケな暗殺者に狙われてもイヤだしなぁと考え直し、やっぱり黒髪つながりで初代様風かなぁとか、和の国のたっつけ袴もいいよね~♪とか、いろいろ考えてたのに!
イルカ先生の「もったいないから」の一言でバッサリ切り捨てられ、結局三代目の衣装を借りてくることになってしまった。
特装部にストックがまだあるそうなので、紅を通して猿飛家に三代目の火影衣装の使用許可を打診してもらおうとしたら、その場で「あら、いいわよ。イルカちゃんの火影、楽しみにしてるわ」とあっさり許可が出てしまった。
そんな安請け合いして大丈夫か? と思ったけど、本当に特装部に話が通っていた。
あいつ、すでに猿飛家を牛耳ってるんじゃないの?
三代目とはサイズが違うのでお直しが必要かと思ったら、「適当にアレンジして着るから大丈夫です!」とイルカ先生にこれまた爽やかに却下され。
試着の時に検討して決まったのは、忍服のズボンだけを穿き脚絆を巻いて、その上から着物を着ると帯に挟み込んで裾をさばきやすくする着方だった。
ちなみに着物の下には鎖帷子。
安全のためにこれだけは譲れないと先生に泣き落と…頼み込んで着てもらうが、もちろんそれだけではない。
合わせからのぞく網目越しのチラリズム!!!
これぞ男のロマンだ~よね。
そしてこんなにエロ可愛いイルカ先生を、この俺が黙って見てるはずないって分かってるよね?
「ダメですよ! 三代目の大事な衣装が……あ、汚れちゃ……」
これは火影衣装を汚さなければオッケーと解釈して、手早く鎖帷子とパンツだけにひん剥いてから美味しく頂きました。
鎖帷子プレイ………最高。
当日は朝から快晴で暑いくらいだった。
いつものように高い位置で結い上げると笠が被れないので、イルカ先生は珍しく髪を下ろしている。火影衣装をまとった先生は、誰にも見せたくないほど凛々しい。
ぼーっと突っ立って見惚れてると、執務室の中でてきぱきと動いていたイルカ先生が声をかけてきた。
「御輿の出立は本部棟前ですよね。ほら、アンタも笠をちゃんと被って」
「センセー、準備はできたか? おおっ、似合うじゃんか!」
「ナルト! お前も法被と褌が似合ってるぞ。すっかりガタイよくなっちまって!」
「へへっ、まぁな!」
一日火影はお祭りみたいなものなので、担ぎ手兼護衛のナルトの「揃いの法被を着ようぜ!」の一言で、背に木ノ葉と染め抜いた法被を着ることになった。
昔のナルトなら「俺も火影衣装着たいってばよ!」と騒いだだろうが、最近はむやみに火影になると言わなくなっている。きっと色んな経験をして、火影を背負う重みを知ったんだろう。
こんなところでもナルトの精神的成長が見られて嬉しく思う。
門の前に付けられた御輿の回りには、知った顔ばかりがたむろっていた。
「おうイルカ、いや火影サマだったな。大変お似合いでいらっしゃいますよ!」
「もう、ゲンマさんまでやめて下さいよ~。それなりに緊張してるんですからね!」
「大丈夫ですよ火影イルカ様! 本当に似合ってます!」
「はは……ありがとう、リー君」
「さあて、そろそろ行くってばよ! そぉれっと!」
ナルトの掛け声で御輿がぐんと持ち上がり、拍手に見送られて里内を祭りのように練り歩いた。
イルカ先生は「絶対ナルトだと思ってたのに……俺なんかが一日火影になっても盛り上がらないんじゃないですか? 誰も見に来なかったらどうしよう」と何度もブツブツ呟いていたけど。
ナルトを抜いてぶっちぎり一位は伊達じゃなかった。
露店の並ぶ沿道には人波が続き、火影イルカ様と書かれたうちわを盛んに振っていた。
そして子供たちや元生徒らしきくの一たちが、「イルカせんせー!」「キャ~! こっち向いて~!」などとアイドルみたいな黄色い声を投げかけてくる。
中には野太い声も混じっていて、「うおおおおおイルカちゃあああん!」等の声援も飛び交ってるもんだから、内心穏やかではいられなかった。
そんな俺の不機嫌に気づいたイルカ先生が、訝しげに問いかけてきた。
「カカシさん、どうしたんですか? そんな厳しい顔をして。腹でも痛いんですか?」
「腹っていうか胸がモヤモヤするっていうか、燃やしてやろうかっていうか」
「はあ? 何言ってるんですか。最近とんでもなく忙しかったからな……もうすぐ会場に着きますからね、撮影会の間は休んでて下さいね」
とイルカ先生が一瞬、ぎゅっと手を握ってくれた。
とたんに機嫌が急上昇したから、イルカ先生ってスゴい。
昔から歴代火影の腰巾着とかご機嫌取りなんて言うヤツもいたけど。こんな簡単に歴代火影を上手にあやせる人なんかいないよ? ま、そういうくだらない事を言うクズは、俺が秘密裡に処理してきたけどね。
火影のマントは袖もたっぷりとしている。
二人とも同じマントだから周りからはよく見えないだろうと、繋いだ手をチャクラまで使って離れないようにした。そこからイベント会場までは、周囲に振ってない方の手を離そうとするイルカ先生と俺との、秘かな攻防戦となった。
御輿を担いでる奴らが皆ニヤニヤしてたことは、笑顔の陰で必死に戦うイルカ先生にはナイショにしておいた。じゃないと御輿から飛び降りて脱走しちゃうからね。
そうこうしてるうちに、イベント会場となったアカデミーの校庭に到着した。
アカデミーは一見普通の学校に見えるけど、実は里でも三本の指に入るほど警備の万全な場所だ。今も人目につかないよう、暗部を始めとする上忍たちで厳戒体制が敷かれている。
イルカ先生がスピーチのために朝礼台に上がった。
さすがに慣れているのか、火影の衣装と相まって堂々とした立ち姿で。
格好いいなぁ……! と思わず惚れ直してしまう。
「この度の一日火影総選挙では、たくさんの投票をありがとうございました。私のような一介の中忍がこのような大役をと、実は今も少し足が震えております。この衣装は懐かしく感じられる方も多いことと思われますが、有り難くも三代目のものをお借り致しました。三代目がよく仰っていたのは……」
生徒もたくさんいるせいか、スピーチは火の意志をメインとした子供にも分かりやすい内容だった。
中には強く頷いたり涙ぐんでいる者もいて、俺なんかよりよっぽど火影の適性があると思う。里に君臨するのではなく、寄り添う火影。
単なる熱血教師じゃなくことは、イルカ先生の周りにいた者は皆知っている。政治的手腕も大したものだし、駆け引きだってお手のものだ。冗談抜きで火影の笠を被る能力がある人なのだ。ただ、先生の最大にして最良の資質が決定的に向いていないだけなんだ。
慈愛の人――。
火影としての冷徹な判断が必要な場面で、この人は責任感からそれを下すだろう。だがその判断を下した己をひどく責めるだろう。
その繰り返しが、いずれこの人を苛み削っていく。
誰もがそれを知っているからこそ、イルカ先生を上に戴こうとしない……イルカ先生には、いつもあの笑顔でいてほしいから。
今回ナルトを抑えて一位になったのは、そんな理由だったのだと俺は思っている。
「一日限りの火影ならば……」「一日限りでもいい、イルカ先生の火影姿を見てみたかった」という、皆の心に沈んだ日頃の思いが。
盛大な拍手に送られ、先生が会釈しながら台から降りた。
すると握手&撮影会のために、子供たちがカメラを手にわっと集まってくる。
「せんせーいっしょに写真撮って!」
「わたしも、わたしも撮る!」
「ほらほら順番だろ? ちゃんと一列に並べよ」
護衛の者たちが秘かに目を光らせる中、イルカ先生が子供たちを上手に捌きながら撮影会が始まった。
親子連れの小さなアカデミー生の後ろでおとなしく順番待ちをしてるのは、元生徒たちか。
だが熾烈な争いがあったことは、親たちと元生徒たちを見れば一目瞭然だ。先着十名の枠を勝ち取るために、撮影にふさわしくないほど皆薄汚れてしまっている。
忍術の使用は禁止されているから、純粋に知力・体力・時の運での勝負だったのだろう。普通に一般人も混じってるけど、忍の里に住んでいるから対処法を知っているのか? ハンデでもあったんだろうか。
サクラも一般家庭の出自だし、一般人ホントに侮れないねぇ、などと眺めていたら、「カカシさま、んも一緒に」とイルカ先生に手招きされた。
いまだに様付けが直らないのはしょうがないとしても、カカシさまんって誰よ。どうせなら「カカシさまぁん♥」と甘えてほしい。
一通り撮影が済んで本部棟に一旦戻ろうとしたら、棟の入り口でサクラとヒナタが俺の脇をすり抜けてイルカ先生の方へ駆け寄った。
「イルカ先生、私たちとも撮って! 一般の人と順番を争うなんて、粉々にしちゃいそうでできないわよ、もう! だからお願い!」
「あの、ナルトくんに絶対に撮っといてって頼まれたので……」
そうだった。大本命だったナルトは落選して警備に駆り出されてるから、この輪の中には入れないんだった。ナルトはさぞかし悔しい思いをしているはずだ。
サクラもきっとサスケに送ってやるのだろう。イルカ先生もそれに気づいたのか、ちょっと切なそうな顔をしてから頷いていた。それを微笑ましく見守っていると、サクラから声がかかる。
「カカシせ…火影様! ハイ、これでお願いね!」
「あ、私の分もお願いします……」
と手渡されたのは、二台のカメラで。
え、キミタチ火影を撮影係に使っちゃうの?!
もちろんそんな反論が許されるはずもなく、「ちょっとカカシ先生! 私たちズルしてるんだからぼさっとしてないで早くして!」とサクラにどやされた。気が急くあまり口調が昔に戻ってるよサクラ……ヒナタもその殺気だった目をやめてねお願い。白眼じゃなくても怖いから。
まぁでもズルって自覚はあるのねと、イルカ先生と顔を見合わせて苦笑しながら、ハイハイとカメラを向けた。ま、撮影の腕にはちょっと自信があるしね。
イルカ先生は教師の顔になって、にかっと笑顔になっている。サクラもヒナタも、まるで子供のような満面の笑顔だ。
何度かシャッターを切っていると、見かねた護衛係のイビキが撮影係を代わってくれたので、四人でも撮った。貴重な顔ぶれの写真だから、あとで二人に焼き増ししてもらおう、絶対。
それにしてもイビキ、法被と褌が似合いすぎだろ……。
むふふふふふふ
この一週間で何度目か分からない忍び笑いが、俺の口から自然と零れる。
口からといっても、口布で覆われてるからバレないだろうと思ってたけど。イベント関連の資料を確認していたシカマルから、これまた何度目か分からない胡乱な目を向けられた。
「……浮かれる気持ちは分かりますけどね。ちゃんと仕事しないと、あさっては影分身にイルカ先生のエスコートを頼むことになりますよ、『火影サマ』」
優秀な秘書官は『火影サマ』の扱い方も困るくらい優秀だ。
イルカ先生ほどじゃないけどね。
一日火影がイルカ先生に決定してから、俺はずっとニヤニヤが止まらなかった。
なにしろ公然と一日同伴できるのだ!
二十五日の当日は、揃いの衣装に身を包んだ二十人の担ぎ手が担ぐ御輿(テンゾ……ヤマト作)に乗って、里内を練り歩く。それから一日火影のスピーチと、握手&撮影会。その後は打ち上げとして実行委員会との慰労会。
その間中、ずーーーーっと六代目火影が付き添うことになっている。
これってなんだか……伴侶みたいじゃない?
本当は現火影が同伴するのは慰労会だけだったんだけど、イルカ先生に決まったと同時に、イベントの全てに俺も同伴することをゴリ押したんだ。
――その分の仕事のしわ寄せが、今こうして押し寄せてる訳だけど。
ところで装備部の中には一部の上忍、暗部、そして火影の衣装や装備品を一手に担う特別装備部、通称「特装部」という部署が存在する。
装備は忍具と並んで特に機密に関わる部分が多いので、あまり一般には知られていない。
実は秘かにその特装部と相談して、イルカ先生の衣装を検討していたのだ。
これも本来は六代目の衣装の予定だった。
お揃いも捨てがたかったが、俺と間違われてマヌケな暗殺者に狙われてもイヤだしなぁと考え直し、やっぱり黒髪つながりで初代様風かなぁとか、和の国のたっつけ袴もいいよね~♪とか、いろいろ考えてたのに!
イルカ先生の「もったいないから」の一言でバッサリ切り捨てられ、結局三代目の衣装を借りてくることになってしまった。
特装部にストックがまだあるそうなので、紅を通して猿飛家に三代目の火影衣装の使用許可を打診してもらおうとしたら、その場で「あら、いいわよ。イルカちゃんの火影、楽しみにしてるわ」とあっさり許可が出てしまった。
そんな安請け合いして大丈夫か? と思ったけど、本当に特装部に話が通っていた。
あいつ、すでに猿飛家を牛耳ってるんじゃないの?
三代目とはサイズが違うのでお直しが必要かと思ったら、「適当にアレンジして着るから大丈夫です!」とイルカ先生にこれまた爽やかに却下され。
試着の時に検討して決まったのは、忍服のズボンだけを穿き脚絆を巻いて、その上から着物を着ると帯に挟み込んで裾をさばきやすくする着方だった。
ちなみに着物の下には鎖帷子。
安全のためにこれだけは譲れないと先生に泣き落と…頼み込んで着てもらうが、もちろんそれだけではない。
合わせからのぞく網目越しのチラリズム!!!
これぞ男のロマンだ~よね。
そしてこんなにエロ可愛いイルカ先生を、この俺が黙って見てるはずないって分かってるよね?
「ダメですよ! 三代目の大事な衣装が……あ、汚れちゃ……」
これは火影衣装を汚さなければオッケーと解釈して、手早く鎖帷子とパンツだけにひん剥いてから美味しく頂きました。
鎖帷子プレイ………最高。
当日は朝から快晴で暑いくらいだった。
いつものように高い位置で結い上げると笠が被れないので、イルカ先生は珍しく髪を下ろしている。火影衣装をまとった先生は、誰にも見せたくないほど凛々しい。
ぼーっと突っ立って見惚れてると、執務室の中でてきぱきと動いていたイルカ先生が声をかけてきた。
「御輿の出立は本部棟前ですよね。ほら、アンタも笠をちゃんと被って」
「センセー、準備はできたか? おおっ、似合うじゃんか!」
「ナルト! お前も法被と褌が似合ってるぞ。すっかりガタイよくなっちまって!」
「へへっ、まぁな!」
一日火影はお祭りみたいなものなので、担ぎ手兼護衛のナルトの「揃いの法被を着ようぜ!」の一言で、背に木ノ葉と染め抜いた法被を着ることになった。
昔のナルトなら「俺も火影衣装着たいってばよ!」と騒いだだろうが、最近はむやみに火影になると言わなくなっている。きっと色んな経験をして、火影を背負う重みを知ったんだろう。
こんなところでもナルトの精神的成長が見られて嬉しく思う。
門の前に付けられた御輿の回りには、知った顔ばかりがたむろっていた。
「おうイルカ、いや火影サマだったな。大変お似合いでいらっしゃいますよ!」
「もう、ゲンマさんまでやめて下さいよ~。それなりに緊張してるんですからね!」
「大丈夫ですよ火影イルカ様! 本当に似合ってます!」
「はは……ありがとう、リー君」
「さあて、そろそろ行くってばよ! そぉれっと!」
ナルトの掛け声で御輿がぐんと持ち上がり、拍手に見送られて里内を祭りのように練り歩いた。
イルカ先生は「絶対ナルトだと思ってたのに……俺なんかが一日火影になっても盛り上がらないんじゃないですか? 誰も見に来なかったらどうしよう」と何度もブツブツ呟いていたけど。
ナルトを抜いてぶっちぎり一位は伊達じゃなかった。
露店の並ぶ沿道には人波が続き、火影イルカ様と書かれたうちわを盛んに振っていた。
そして子供たちや元生徒らしきくの一たちが、「イルカせんせー!」「キャ~! こっち向いて~!」などとアイドルみたいな黄色い声を投げかけてくる。
中には野太い声も混じっていて、「うおおおおおイルカちゃあああん!」等の声援も飛び交ってるもんだから、内心穏やかではいられなかった。
そんな俺の不機嫌に気づいたイルカ先生が、訝しげに問いかけてきた。
「カカシさん、どうしたんですか? そんな厳しい顔をして。腹でも痛いんですか?」
「腹っていうか胸がモヤモヤするっていうか、燃やしてやろうかっていうか」
「はあ? 何言ってるんですか。最近とんでもなく忙しかったからな……もうすぐ会場に着きますからね、撮影会の間は休んでて下さいね」
とイルカ先生が一瞬、ぎゅっと手を握ってくれた。
とたんに機嫌が急上昇したから、イルカ先生ってスゴい。
昔から歴代火影の腰巾着とかご機嫌取りなんて言うヤツもいたけど。こんな簡単に歴代火影を上手にあやせる人なんかいないよ? ま、そういうくだらない事を言うクズは、俺が秘密裡に処理してきたけどね。
火影のマントは袖もたっぷりとしている。
二人とも同じマントだから周りからはよく見えないだろうと、繋いだ手をチャクラまで使って離れないようにした。そこからイベント会場までは、周囲に振ってない方の手を離そうとするイルカ先生と俺との、秘かな攻防戦となった。
御輿を担いでる奴らが皆ニヤニヤしてたことは、笑顔の陰で必死に戦うイルカ先生にはナイショにしておいた。じゃないと御輿から飛び降りて脱走しちゃうからね。
そうこうしてるうちに、イベント会場となったアカデミーの校庭に到着した。
アカデミーは一見普通の学校に見えるけど、実は里でも三本の指に入るほど警備の万全な場所だ。今も人目につかないよう、暗部を始めとする上忍たちで厳戒体制が敷かれている。
イルカ先生がスピーチのために朝礼台に上がった。
さすがに慣れているのか、火影の衣装と相まって堂々とした立ち姿で。
格好いいなぁ……! と思わず惚れ直してしまう。
「この度の一日火影総選挙では、たくさんの投票をありがとうございました。私のような一介の中忍がこのような大役をと、実は今も少し足が震えております。この衣装は懐かしく感じられる方も多いことと思われますが、有り難くも三代目のものをお借り致しました。三代目がよく仰っていたのは……」
生徒もたくさんいるせいか、スピーチは火の意志をメインとした子供にも分かりやすい内容だった。
中には強く頷いたり涙ぐんでいる者もいて、俺なんかよりよっぽど火影の適性があると思う。里に君臨するのではなく、寄り添う火影。
単なる熱血教師じゃなくことは、イルカ先生の周りにいた者は皆知っている。政治的手腕も大したものだし、駆け引きだってお手のものだ。冗談抜きで火影の笠を被る能力がある人なのだ。ただ、先生の最大にして最良の資質が決定的に向いていないだけなんだ。
慈愛の人――。
火影としての冷徹な判断が必要な場面で、この人は責任感からそれを下すだろう。だがその判断を下した己をひどく責めるだろう。
その繰り返しが、いずれこの人を苛み削っていく。
誰もがそれを知っているからこそ、イルカ先生を上に戴こうとしない……イルカ先生には、いつもあの笑顔でいてほしいから。
今回ナルトを抑えて一位になったのは、そんな理由だったのだと俺は思っている。
「一日限りの火影ならば……」「一日限りでもいい、イルカ先生の火影姿を見てみたかった」という、皆の心に沈んだ日頃の思いが。
盛大な拍手に送られ、先生が会釈しながら台から降りた。
すると握手&撮影会のために、子供たちがカメラを手にわっと集まってくる。
「せんせーいっしょに写真撮って!」
「わたしも、わたしも撮る!」
「ほらほら順番だろ? ちゃんと一列に並べよ」
護衛の者たちが秘かに目を光らせる中、イルカ先生が子供たちを上手に捌きながら撮影会が始まった。
親子連れの小さなアカデミー生の後ろでおとなしく順番待ちをしてるのは、元生徒たちか。
だが熾烈な争いがあったことは、親たちと元生徒たちを見れば一目瞭然だ。先着十名の枠を勝ち取るために、撮影にふさわしくないほど皆薄汚れてしまっている。
忍術の使用は禁止されているから、純粋に知力・体力・時の運での勝負だったのだろう。普通に一般人も混じってるけど、忍の里に住んでいるから対処法を知っているのか? ハンデでもあったんだろうか。
サクラも一般家庭の出自だし、一般人ホントに侮れないねぇ、などと眺めていたら、「カカシさま、んも一緒に」とイルカ先生に手招きされた。
いまだに様付けが直らないのはしょうがないとしても、カカシさまんって誰よ。どうせなら「カカシさまぁん♥」と甘えてほしい。
一通り撮影が済んで本部棟に一旦戻ろうとしたら、棟の入り口でサクラとヒナタが俺の脇をすり抜けてイルカ先生の方へ駆け寄った。
「イルカ先生、私たちとも撮って! 一般の人と順番を争うなんて、粉々にしちゃいそうでできないわよ、もう! だからお願い!」
「あの、ナルトくんに絶対に撮っといてって頼まれたので……」
そうだった。大本命だったナルトは落選して警備に駆り出されてるから、この輪の中には入れないんだった。ナルトはさぞかし悔しい思いをしているはずだ。
サクラもきっとサスケに送ってやるのだろう。イルカ先生もそれに気づいたのか、ちょっと切なそうな顔をしてから頷いていた。それを微笑ましく見守っていると、サクラから声がかかる。
「カカシせ…火影様! ハイ、これでお願いね!」
「あ、私の分もお願いします……」
と手渡されたのは、二台のカメラで。
え、キミタチ火影を撮影係に使っちゃうの?!
もちろんそんな反論が許されるはずもなく、「ちょっとカカシ先生! 私たちズルしてるんだからぼさっとしてないで早くして!」とサクラにどやされた。気が急くあまり口調が昔に戻ってるよサクラ……ヒナタもその殺気だった目をやめてねお願い。白眼じゃなくても怖いから。
まぁでもズルって自覚はあるのねと、イルカ先生と顔を見合わせて苦笑しながら、ハイハイとカメラを向けた。ま、撮影の腕にはちょっと自信があるしね。
イルカ先生は教師の顔になって、にかっと笑顔になっている。サクラもヒナタも、まるで子供のような満面の笑顔だ。
何度かシャッターを切っていると、見かねた護衛係のイビキが撮影係を代わってくれたので、四人でも撮った。貴重な顔ぶれの写真だから、あとで二人に焼き増ししてもらおう、絶対。
それにしてもイビキ、法被と褌が似合いすぎだろ……。
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