【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old



……………。


――あつい。


なんだか昨日もこうやって目覚めた気がする、とイルカはうっすらと目を開けた。
ひどい夢を見たような気もする。
魔界とか、角の生えた魔物とかにヤられるとか――そう、ちょうど目の前にあるこんな感じの……

「うわっ!」

驚いたイルカは飛び起きようとしたが、前後から巻き付いた手足に阻まれてそれは叶わなかった。
暑いと思ったら、二人の人に挟まれて寝ていたようだ。
心臓をばくばくとさせながら目の前の裸の男をじいっと見てみると、確かに見覚えがある。
明らかに外国人であろう透けるような色白の肌に、閉じた左の目蓋には縦に走る傷痕。こちら側の目は、確か真っ赤なカラーコンタクトをしてたような気がする。それに銀髪からにょきりと生えた、とてもリアルなヤギのような一本の角。

――まさか本物を付けてるんじゃないよな?

イルカは手を伸ばし、そっと触れてみた。
堅くて石を触ってるような感触は、偽物とは思えない。爪を軽く立てると、かり、と硬質な音が小さく鳴った。掌に当たるふわふわの髪とは対照的で、それがなおさらリアルに感じられる。
その髪をかき分けてみると、驚くことに角は頭皮から直接生えていた。
まだ夢を見てるのかもと根元を凝視していると、突然ノックの音が響き、イルカは慌てて手を引っ込めた。
するとギイッと両開きの扉が開いて、一人の少年が入ってきた。

「おはようございます、カカシ様……とスケア様もご一緒でしたか。それに、う~ん……冴えない人間さん?」
「冴えなくなんかないでしょサイ! 取り消して!」

イルカの背後に張り付いていた誰かががばりと起き上がり、巻き付いていた手足が外れた。

「失礼致しました。訂正してお詫び申し上げます、スケア様。冴えなくない人間さんですね」

冴えない、冴えなくないと評されているのは、たぶん自分のことだろうとイルカは判断した。
目の前の男は、冴えないとはとても言えないほどに整った顔立ちをしている……目を閉じていてさえも。
そして背後で異を唱えてくれた男も、見上げると記憶通りおかしなメイクはしてたが、同じように綺麗な顔だった。
――ということは。
人間と呼ばれる生物は、この場に自分一人ということになる。
なぜなら部屋に入ってきた若干失礼な物言いの少年の頭にも、捻れた羊のような小さな角が二本あるからだ。

「……イルカだ。イルカと呼べ、サイ」

目の前の男、カカシが唸りながら目を擦った。
だが起きるのかと思ったら、また健やかな寝息を立ててしまった。
そうだ、俺ももう一度寝よう、これはやっぱり夢に違いないとイルカも二度寝を決め込もうとしたら、後ろからぐいと抱き起こされ頬に音を立ててキスをされた。

「おはよう、僕のイルカ。体調はもういいかな? 今日は一緒に散歩に行こうか。僕が魔界を案内してあげるからね♪」
「魔界って……これは俺の夢なんだろ? 俺もう一回寝るからさ、散歩はまた今度な。今日はバイトも夕方からだし」

するとサイがつかつかと窓際に向かい、重たそうな深紅のベルベットのカーテンを開いた。

「本日のバイトは諦めて下さい、イルカ様。貴方がここから人間界に到着するのは、本日中どころかどの時代になるかも分かりませんので」

開かれたカーテンの向こうには、手摺のある半円形の広いバルコニーにつながる窓があった。
その窓の向こうを人のような姿をした小さな生き物が数人、極彩色の翼を羽ばたかせて横切っていく。大木の古びて捻くれた枝が、それを叩き落とそうと大きく枝先を振り回している。そして遠くには翼の生えた大トカゲのような生き物が――あれはまさか、竜だろうか――ゆったりと飛び去っていった。

窓の外には、イルカがファンタジー映画でしか見たことがないような、幻想的で不思議な光景が広がっていた。



「カカシ様が朝食を召し上がるなんて珍しいですね。今日は雪でも降るのでしょうか」

サイが追加で持ってこさせた朝食の給仕をしながら、独り言のように呟く。
イルカとスケア、そしてカカシは、先ほどのバルコニーで朝食をとっていた。
とりあえずここは自分の知っている世界ではないとイルカは納得はしたが、どんな世界でも腹は減る。
サイに朝食を勧められ、どんな物が出てくるかも分からないままにイルカは「お願いします」と返事をしていた。
部屋にワゴンで運び込まれた朝食は、案に反してごく普通に見えた。
ごく普通というより、かりっかりに焼かれたベーコンのようなものと、ふわっふわのオムレツのようなものと、パリッパリのデニッシュのようなパンと、何かのジュースのようなものにコーヒーのようなものが並ぶ朝食は、イルカが普段食べている物よりは格段に良いものに見えた。
スケアの「せっかくイルカも元気になったんだから、外で景色を眺めながら食べようよ」という誘いで、イルカはスケアが勝手に漁ったクローゼットから出した少し小さめのカカシの服を着せられ、バルコニーに引きずられて来ていた。
なぜか寝ていたはずのカカシまでくっついてきて、上半身裸で寝ぼけ眼で席に着いている。
アイアンのテーブルの上に並べられた何かのようなものは全てイルカの知っている味と同じだったし、というより格段に美味しかったし、外の景色も空気も綺麗だ。
パンのお代わりをサイから貰いつつもりもりとたいらげるイルカは、目の前の悪魔風の仮装パレードのような面子に早くも見慣れて馴染みつつあった。

「……色々聞きたいことはあるんだけど」
「うん、何でも聞いて? 今でも散歩の時でもいつでも。イルカの声、ずっと聞いていたい」

スケアの明け透けな好意が恥ずかしくて、イルカは言葉に詰まった。
イルカはなんとなくでも昨夜のことは覚えていた。彼の好意があったからこそ、自分が助けられたのだということも。
とたんにその後の行為の事まで浮かんできて、イルカは顔を真っ赤にして「わあああ! あああああ!」と叫んでガタンと立ち上がった。
その声でぱちりと目を開けたカカシが、怪訝な顔でイルカを見上げる。
スケアは優雅に椅子を引いて立ち上がり、イルカの側に寄り添って肩と腰に手を回して囁いた。

「そんな声でも可愛いけど、ちょっと落ち着こうね」

間近に響くスケアの甘い声は嫌でも昨夜の狂態を思い出させ。
ますますイルカはパニックになって思わずスケアの手を振り払い、「さわるなっ!」と叫んで突き飛ばしてしまった。
サイが手にしたコーヒーポットを持って華麗に飛び退き、スケアは見事に尻餅をついた。

「あ……」
「イルカは強いなぁ。僕に尻餅をつかせるなんて、この第十五階層の魔物にもなかなか居ないよ」

スケアがバルコニーの床に座ったまま、にこにこと返す。
イルカは申し訳なくなって、スケアを立ち上がらせようと手を差しのべた。するとスケアはぐいとその手を引き寄せ、「捕まえた♪」と腕の中に囲いこんだ。
そしてイルカの顔を両手で挟み、朝の挨拶とは言い難い熱烈なキスをする。

「んむぐぐぐ」
「スケア様、愛情を表現するのは構いませんが、ここでおっぱじめないで下さいね」

その様子を見ていたサイが、無表情な笑顔で辛辣に切り捨てた。
ここまでぼんやりとコーヒーを啜っていたカカシの顔が、不意に険しくなる。
程なく寝室の方が騒がしくなり、二人の男がもつれるようにして部屋に飛び込んできた。

「ですから! カカシ様はまだお支度が整ってないって言ってるでしょうが!」
「カカシは俺サマと会うのにお支度なんか要らないんだよ! 邪魔するとサラマンダーの餌にするぞテンゾウ!」
「オビラプトゥール様こそ大賢樹の養分にして差し上げますよっ」
「貴様! カカシを囲い込んでるからって偉そうな口を利くなよ、格下のくせに……よぉ、カカシ」

オビラプトゥールと呼ばれた男が、テンゾウに腕と長衣の背布を引っ張られながらバルコニーに出てきた。
膝下まであるマオカラーの暗褐色の長衣の表面は、動く度に小さな火の粉がパチパチと爆ぜている。そんな服を素手で掴んでテンゾウという人は火傷しないんだろうかと、イルカはまじまじと見つめてしまった。
騒動の中でカカシはというと、いまだコーヒーカップを持ったままぼんやりと座っている。

「今日はずいぶんとたくさんのお友達に囲まれてるなぁ、カカシ。俺に倒されて墓に埋まる前にお別れの宴か?」

そう言いながらもオビラプトゥールは、チラリともカカシから視線を外さなかった。
まるで、一瞬でも隙を見せたらおしまいだとでもいうように。

「お前と違って友達は少ないからね。大事にしてるんだよ、オビト」
「その名前で呼ぶな!!」

オビラプトゥールが吼える。
すると大きく開いた口から鋭い牙が覗き、一瞬だけ火を吹いた。
イルカがヒッと息を呑んでびくりと身をすくませると、抱きかかえていたスケアが安心させるようにぽんぽんとイルカの腕を叩いた。
そこでオビラプトゥールが初めてスケアを、というよりスケアの腕の中で縮こまるイルカを見た。

「なんだコイツ……人間か? お前の新しい玩具なのか? 魂を削ってお人形遊びをするだけじゃ飽き足らずに」
「そんなんじゃな~いよ、俺には玩具なんて要らないんだ。お前と違ってね、可愛い可愛いオビトちゃん」
「だから幼名で呼ぶなっつってんだろうがっ!」

カカシのからかうような言葉に、オビラプトゥールの全身から焔が吹き上がった。
テンゾウは腕で顔を庇いながら、サイを片腕に抱えて飛び退いた。
イルカも思わずスケアの胸にすがり付く。
だがスケアは全く動じずに「大丈夫だからね、顔を上げて僕だけを見て」とイルカの頬に手を当てた。
イルカが恐る恐る首を回すと、座っていたはずのカカシがいつの間にかオビラプトゥールとの間に立ちはだかっていた。
――いや、正確にはその場に立ち上がったカカシの半裸の背から漆黒の翼が片翼だけ広がり、イルカとスケアの姿をオビラプトゥールの焔と視線から遮っていた。

「……ほぉう。そんなにそのペットが可愛いのかな?」

翼の向こうから、面白い物を見付けた子供のように弾んだ声がする。
するとテンゾウの怒りのこもった声が続いた。

「いい加減になさって下さいオビラプトゥール様。カカシ様は今は爵位がないとはいえ、本来は侯爵たりえる悪魔……いえ、御父君のサクモ公爵を超えて魔王でもおかしくはない御方。あまりにも不敬が過ぎ……」
「テンゾウ」

カカシの低い声がテンゾウの言葉を遮る。
それはたった一言なのに威圧的で、テンゾウの口をつぐませるのに十分な『支配者たる力』を持っていた。
寸前までからかうような口調だったオビラプトゥールでさえも、たじろいで焔を収め、じり、と無意識に一歩足を引いてしまった。

バサリと音を立て、カカシの片翼が折り畳まれて背に消える。

「だいたい他人の領地に来るのに手土産の一つもないの? だからオビトはモテないんだよ」

先ほどまでの重苦しい空気が霧散し、カカシの口調は茫洋としたものに戻っていた。

「て、手土産なんかお前に持ってくるわけないだろうが! 俺はお前と違ってクール路線で売ってるんだ! 断じてモテないんじゃない!」

オビトがまた吼えたが、今度は口から焔を吐き出さなかった。
そしてチラリとイルカを見ると、「決着を付けるのは今度にしてやるよ、じゃあな」と子供のような捨て台詞を吐き、カカシの寝室を大股に抜けると部屋を出ていった。

「はぁ~。オビラプトゥール様もいい加減諦めてくれませんかね」

テンゾウがやれやれと頭を振ると、サイが「今日は被害が少なかったですね」と相槌を打ちながらテーブルの上を片付け始めた。
イルカがまだ呆然としてると、スケアが抱きかかえて立ち上がらせる。

「びっくりさせてゴメンね。オビトはカカシの幼馴染みで、悪い奴じゃないんだけど昔からカカシに勝ちたくてしょうがないんだよ。戦うまでもないのに、バカだよねぇ」
「カカシが勝つってこと?」

するとカカシが興味なさそうにぼそりと呟いた。

「逆。オビトが勝つに決まってるんだよ」
「え、でも……」

先ほどのオビトの様子は、明らかにカカシを警戒していた。一瞬でも油断したら終わりだとでもいうように。
テンゾウという男も言っていた。
『今は爵位がないけど、本来は魔王でもおかしくはない』と。
魔界での肩書とかシステムは分からなかったが、イルカにはこの場で最も力を持っているのはカカシのように思えて首を傾げる。
イルカは目の前のぼんやりと座っているカカシを見た。
さっき広げて庇ってくれた翼は、跡形もなく消えている。
この一本角を生やし、獣のような脚をした片目の紅い魔物の青年は、いったい何者なんだろうか。
イルカは初めてカカシ自身に興味を持って、彼を見つめた。
助けてくれたとはいえ夕べ散々恥ずかしい目にあわされ、なんとなく存在を無視するような態度をとっていたイルカだが。
だがこれだけはやっぱり伝えておかなければならないと、拳をぐっと握る。

「あの……ありがとう、な。……いろいろと」

するとカカシは顔をついと上げてイルカを見ると。
一瞬、魂を覗くかのようにイルカの目を凝視し――無言で中庭へと視線を逸らした。
その気まずい沈黙をスケアは気にも留めず、明るい声で容易く破る。

「さぁイルカ、散歩に行こうよ。テンゾウに部屋を用意させたから、そこで着替えてきてね。テンゾウ、案内してあげて」
「かしこまりました」

スケアはイルカの肩を抱いてくるりと回転させると、バルコニーからそっと押しやった。



テンゾウの後についてイルカが連れて来られたのは、カカシの寝室から三部屋離れた所だった。
こちらは片開きの扉で中もこじんまりとしてはいるが、それでもイルカの生活していた部屋の数倍はありそうな豪奢な雰囲気だ。
黒と真紅を基調としたカカシの寝室とは違い、重厚な造りではあってもモスグリーンをベースにしたごく一般的なインテリア。ベッドやソファーの傍らには大きな観葉植物も置かれていて、落ち着いた部屋にイルカはホッとした。
テンゾウは壁際に置かれたチェストとクローゼットを開け、てきぱきと衣類をソファーの上に並べていく。

「こちらはサスケに用意させたのですが、たぶんサイズは大丈夫でしょう。スケア様が人間の衣類をお好みなので、色々揃えてあって良かったです」
「サスケ?」

先ほど給仕してくれたのは、確かサイと言っていたはずだ。

「サスケもサイもボクの使い魔ですよ。申し遅れましたが、領主のテンゾウです。ここはボクの城なので、部屋も衣類もどうぞご自由にお使い下さい」

そう言うとテンゾウは恭しく頭を下げてから、「どうぞお着替えを」と促した。
イルカは礼を言ってから、とりあえずと借りたカカシの服を脱いでソファーの上から深い藍色のニットを手に取る。

「……カカシ様はずいぶんとイルカ様に執着してるんですね」

間近に聞こえるテンゾウの声で振り返ると、先ほどまでソファーを挟んで反対側にいたはずの彼が、すぐ後ろに立っていた。
まるでたった一歩で距離を詰めてきたかのように。
テンゾウの言う執着の意味が分からなくてイルカが怪訝な顔で見返すと、つ、と背に指を這わせる感触があった。

「ここに所有の印が付いてますよ。……ここにも」

テンゾウの指が、うなじの下の辺りから左の肩甲骨に滑っていく。
所有の印という言葉になおも怪訝な顔のイルカを見て、テンゾウはうっすらと微笑んだ。

「人間の言葉で言うと……キスマーク、でしたか」

キスマーク、と復唱したイルカの顔がぶわっと赤く染まる。
ハッと気付いて自分の体を見下ろすと、前面の右胸と臍のそばにもそれは散っていた。

「えっ、だってそれは救命行為で! すっ、スケアかもしれないし!」
「スケア様のも混じってますが、これはカカシ様ですよ。僅かに残ったエナジーで分かります」
「痛っ」

テンゾウの爪がイルカの肩甲骨に強く立てられた。

「スケア様と……あのカカシ様が、これほどまで貴方に執着するのは何故なんでしょうね?」

テンゾウの口調に不穏なものを感じ、とっさに逃げようとしたイルカにテンゾウが人差し指を向けた。
するとソファーの傍らの観葉植物がシュルシュルと枝を伸ばし、イルカの身体に巻き付いた。

「うわっ、ちょっとテンゾウさん? 何を……」
「もしかすると、同じ事をしてみたら分かるかもしれませんね?」
「同じ事って、……ぅあ?」

なおも枝を伸ばし、増やし続ける観葉植物がイルカの手足を拘束しながら、ソファーへと縫い止めるように巻き付く。
さらに細い蔓のような枝はイルカの素肌を這い回り、まだ脱いでいなかった下着の中までも入り込んできた。そして中で横たわっているイルカの性器に触れると、明確な意図を持ってざわざわと擦り上げるように蠢き始めた。

「テンゾウさん! やめ、……っあ」

夕べの狂態をまだ覚えているのか、イルカの身体はすぐに快楽を拾い始めた。
蔓の先端で刺激された胸の尖りはぷくりと立ち上がり、項垂れていた肉茎も芯を持って緩く下着を押し上げる。臍の周りや内腿を撫でられ、陰嚢を柔らかく揉まれ、イルカの口からは荒い息と掠れた声しか出せなくなっていた。
くびれに巻き付き小さな葉を震わせる蔓は、溢れ出した蜜を辿って小孔へと侵入していく。

「んあっ? やめろ、そこは……ひうっ」

柔らかい新芽が一枚、また一枚と形を変えて小孔に吸い込まれていった。
その度にイルカは腰を突き上げ、啼き声を上げながら快楽にも似た未知の痛みに全身を震わせる。
その様子をテンゾウは光のない黒い双眸でじっと観察していたが、すっと手を伸ばすとイルカのあごを掴んで口を開けさせた。

「なるほど、いい声ではありますね。誘う表情も淫魔にも劣らない。ですがそれだけじゃないでしょう? やはり交合してみないと分からないのかな……」

最後の方は独り言のように呟くと、おもむろにイルカの下着を引き下ろした。
そして蔓の群がる奥の割れ目に指を這わせようとした、その時。

「好奇心を満たそうとするのはそこまでにしといてね、テンゾウ。じゃないと殺しちゃうかも」

いつの間にかテンゾウの脇に立っていたスケアが、イルカの脚の間に伸ばされた手を掴んでいる。
スケアは笑みを浮かべていたが、掴んだ部分は指が食い込み、白く色が変わっていた。

「……スケア様でしたか、これは失礼を。てっきりカカシ様がいらっしゃると思っていたのですが」

テンゾウも口元だけの穏やかな笑みを返し、速やかに身を引く。
同時にイルカに絡み付いていた蔓や枝も、全て本体の観葉植物へと戻っていった。
テンゾウは何事もなかったかのようにイルカが脱ぎ落としたカカシの衣類を拾うと、開いたままの扉へ向かった。そこで振り返ると、ソファーで横たわっているイルカに声をかけてきた。

「あぁ、イルカ様。その鉢植えはボクが命じない限りは、ただの植物ですから安心して下さいね。それでは失礼致します」

それをスケアは苛立ち半分、容認半分といった体で見送ると、まだイルカの体液で濡れている観葉植物の枝を引きちぎって舐めた。
それからソファーの空いてる場所に腰かけ、イルカを見下ろした。
その咎めるような視線に、忘我の縁にいたイルカは我に返ってソファーに散らばっていた衣類を引き寄せる。

「あの……助けてくれてありがとう。スケアには助けられてばかりだよな」
「う~ん、イルカはどうも隙が多いね?」

――イルカは隙が多いんだから気を付けろよ

不意に昔から言われ続けてきたミズキの言葉が蘇り、イルカはカッとなった。

「隙が多いって! 俺は何もしてない! さっきのもテンゾウさんが無理やり!」
「さっきの『も』? ふぅん、身に覚えがあるんだ。でも自覚はないみたいだけど、イルカは無意識に僕たち魔物を誘うんだよ。魔物だけじゃないのかな? そうやって美味しそうな匂いをふりまいてさ。……やっぱり仮にでも所有印を付けておきたいなぁ」

そう言うとスケアはイルカの顔を両手で挟み、いきなり深く口づけてきた。
スケアの長い舌が口腔を犯すようにぐちゅぐちゅと蠢く。
最初はスケアの胸を押し返して抵抗していたイルカは、なぜかすぐに力を抜いて身を任せてしまった。口の端から溢れる唾液もそのままに、とろりとした顔でスケアの傍若無人な舌を受け入れている。
ぼんやりした頭の片隅で浮かんだ「あれ、なんで……?」という疑問に気付いたのか、スケアが顔を離して苦笑した。

「あのね、僕はインキュバスだって言ったでしょ? 淫魔の体液には即効性の催淫作用があるの。じゃなきゃ人間の精なんて簡単に貰えないじゃない」
「さいいんさよう? ……っ!」

言葉の意味に思い至ったイルカが正気付いたのを見て、スケアは自分の親指の腹を咬んで血を溢れさせ、「ちょっとこれをしゃぶってて」とイルカの口に突っ込んだ。
イルカは一瞬目を見開いたが、すぐに先ほどよりも蕩けた状態になり、スケアの親指をちゅくちゅくとしゃぶり始めた。
そしてイルカの目の焦点が合わなくなったところを見計らって、スケアがイルカの右目の下に爪を立てる。
その爪をゆっくりと横に引くと鼻筋を横切る一直線の傷が残され、血の滴が細く滲んできた。

「んっ……ふ、ぁ」

愉悦に染まっていたイルカが痛みを感じたのか、甘さに棘を含んだ声を上げてスケアを軽く睨みつける。

「これで仮だけど、イルカは僕のって印が付いたからね。その辺の輩に手は出せないよ」

スケアは満足げに微笑むと、「うん、いいコだったね」とイルカを褒め、血の浮かんだ傷にねっとりと舌を這わせた。



スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。