【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old
カカシさんの家を出たその足で本部棟の庶務に向かうと、二人分の里外外出の申請を取り消し、買い物をしてから自宅に戻った。
せっかくのいい天気なので、溜まってた洗濯をやっつけて部屋もついでに片付け、掃除もして一息つく。
すると卓袱台の上のガイドブックが目に入った。
こないだカカシさんに「他にも行きたい所があったら教えてね」と渡された物だ。
その本は渡された時すでにあちこち角が折られ、マーカーで印が付けられていたので、俺はそこだけざっとチェックしただけだった。こんなに楽しみにしてるなら、カカシさんの希望を優先したいと思ったのだ。
――なんだかんだ言って、俺も今日は楽しみにしてたんだよな。
水族館に行って、次はどこに行こうかと話そうと思ってたことを思い出す。カカシさんはすごく落ち込んでたみたいだけど、また今度行けばいいことだ。
俺はガイドブックを本棚にしまうと、いい機会だからとそのうちやろうと思っていたアカデミーの資料を卓袱台に広げた。
ふと気付くと、部屋の中がだいぶ暗くなっていた。
資料のまとめに夢中になって時間が経つのを忘れてしまってたらしい。途中でカップラーメンを昼飯に食べたことは覚えてるんだが、それ以降はずっと集中してたみたいだ。とりあえず洗濯物をしまおうと立ち上がると、窓をこつこつと叩く音がした。
カカシさんの式だ。
窓を開けると白い鳥がひらりと舞い込み、手の上で紙片に変わる。
もう大丈夫です
今日は本当にごめんなさい
良かった、回復したみたいだな。
俺はその紙片を丁寧に畳むとメモ帳を破り取り、『元気になったようで安心しました。それではまた今度』としたためて式に変え、宵闇の中へと飛ばした。
それからさすがに晩飯もカップラーメンはまずかろうと急いで買い物に行き、適当に買いだめして飯も作って風呂に入る。
風呂上がりにTシャツとスウェットズボン姿になると、なんだかんだ普通の休日になっちまったなぁと冷蔵庫から発泡酒を取り出して一気に半分くらい空けたら、また馴染みの感覚を察知した。
まさかチャクラ切れで寝込んでたヤツがと思ったけど、だが俺は知っている。
カカシさんがどれだけ今日を楽しみにしていたかを。
カカシさんがどれだけ俺に執着してるかを。
俺は窓をカラリと開け放った。
「カカシさん」
「はい」
ほらな。
つーか思ったより遠かったな。
カカシさんの声はずっと遠くの屋根の方から聞こえた。
「ちょっとこっちに来て下さいよ。これじゃ俺が一人言を言ってる怪しい奴じゃないですか」
返事がない。
でも次の瞬間には室内の俺のやや後方に、初めからそこにいたかのような佇まいでカカシさんが立っていた。
支給服のアンダーとズボンだけの姿で、風呂にも入ってきたのか心なしか髪がしんなりしている。
だが顔色はだいぶ良くなり、隈も消えていた。
「もう大丈夫なんですか? あぁ、顔色も戻りましたね。晩飯もちゃんと食いました?」
俺が顔に触れようとして伸ばした手は空を切った。
カカシさんがまたすいと避けたのだ。まったく、どんだけシャイなんだよ。
「………………」
ん、何か言ったか?
「………………………………手」
「手?」
「………………………………………………つなぎたかっ………………」
あぁ、デートでか。
って長ぇぇええええよ! どんだけ引っ張るんだよ!!!
つーか、たった今俺の手を避けただろうが! それで手を繋ぎたいって、上忍の恋心の難易度が高すぎて理解不能だわ!
そこでカカシさんが額宛をしてないことに気付いた。
緋色の写輪眼が収められているという左目は閉じられているが、なんだか右目も赤いように見える。
「カカシさん」
「はい」
もういい加減このやり取りも慣れたな。
「もしかして、泣いてたんですか?」
カカシさんは棒のように突っ立ったまま答えない。
だが、不意にその顔が少し歪められた。
「……ごめんね。先生のこと、好きすぎてごめん。でも……だからムリ。やっぱりイルカ先生とはお付き合いできない」
「…………は?」
唐突に言い出した言葉の意味が分からなくて、俺はぽかんと口を開けたままカカシさんを見返した。
カカシさんはそんな俺に、痛みを我慢するような歪んだ笑みを向けて続けた。
「俺はね、イルカ先生……あなたのために生きたい。でも忍としての俺は里にこの身を捧げてるでしょ。だからせめて気持ちだけでも先生に全て捧げたいけど、結局それも叶わない。だって今までもこれからも、骨の髄まで俺は忍だから。一番大切な愛してる人との初デートを血塗れにして倒れて台無しにしちゃうような、ろくでなしの男だから。だから……」
カカシさんは俯き、自分の広げた両手を見下ろした。
いつもと違い手甲に覆われてないその手の平はとても無防備に思え、わずかに震えているようにも見える。
「……俺は一番大切な人ほど、この手で大切にしてあげられない」
顔を上げたカカシさんの頬に、つうと一筋の涙が流れ落ちる。
――ああ、俺は間違ってた。
カカシさんは捨てられた仔犬なんかじゃなかった。
ずっとそう思ってたけど、それは俺だけに対して見せる顔だった。そんな当たり前のことを、分かっていたのに分かってなかった。
カカシさんは……はたけカカシは仲間を背負い、里を背負ってただ一頭で戦う、孤高の狼だ。
その狼はいつも、いつでもぎりぎりの崖っぷちに爪先立って、震えながら俺を見つめていたんだ。何年も、何年もずっと。
数多の血に濡れた己の手を俺に向かって伸ばしていいのかと、絶えず自問しながら。
「………カカシさん」
「はい」
俺はカカシさんの名にありったけの気持ちをこめて呼ぶと、その手を取った。
多くの忍が武器を振るって敵を殺傷する中、カカシさんはこの手で直接相手の体を貫いて屠るという。
敬意と恐れのもとに最強の突きと謳われる雷切は、そんな風に相手の命を直に体感し奪うものなのだ。
優しくて感受性の強いこの人にこそ、最もふさわしくないほど直接的に。
「俺は、あなたの手が好きです」
そう言って白くすらりと伸びた指に口づける。
するとびくりと震えた手が引っ込められそうになるが、ぎゅっと握って留めた。
「あなたの手は守る手だ。攻撃することで誰かを守る、強くて優しい綺麗な手だ。俺はそんな手を持つあなたのことが、好きです」
そして呆然としてるカカシさんの口布を下ろすと、キスをしようと顔を寄せた。
が、寸前でカカシさんがさっと飛び退く。
避けんなよ!
初キスなんだからおとなしくされとけよ!
カカシさんは寝室の中まで一気に飛んだ上、あろうことか天井に張り付いてこちらを窺ってる。
なんなんだ、その野良猫レベルの警戒心は。
俺からキスしちゃダメだってのか。
まぁ、おおかた別れるべきだとか何とか悩んでるけど、それでも離れられないみたいな葛藤の着地点が天井だったんだろうけど。
そっちがその気なら俺にも考えがある。自慢じゃないが手のかかる子供の扱いにはちょっとばかり自信があるからな。
俺は寝室に入ると風呂上がりに着ていたTシャツの裾に手をかけ、おもむろに引き上げた。
「ちょっと、何してるの?」
そして天井の焦ったカカシさんの顔に向かって、脱いだTシャツを投げ付ける。
「見れば分かるでしょう。服を脱いでるんですよ」
次はズボンだ。
スウェットを下げて足から引き抜くと、これも天井に向かって投げ付ける。
「ちょっ、わわ、やめてよイルカ先生!」
そう言いながらもカカシさんの視線は俺から離れないし、投げ付けた衣類は全て大事に抱えている。
だろうな。どんだけ悩もうがアンタは根っからのストーカーだ。
俺限定の。
目の前でストリップを始めた俺を置いて逃げ去るなんて、絶対にできないはずだ。
俺は最後の砦のパンツに手をかけ、一気に脱ぐとカカシさんの顔に向かって投げ付けた。
「あっ、先生のパンツ……っ」
限りなく悲鳴に近い声を上げて、カカシさんが落っこちた。
チャクラが乱れて天井に張り付いていられなくなったんだろう。ざまぁみろ。
べちゃりと床に潰れたカカシさんは、それでも俺の衣類を大事そうに抱えていたが、俺は大股に二歩で近付き腕組みをして見下ろした。
「さてカカシさん、ヤりましょうか」
「……え?」
さっきの悲愴な表情は抜け、いつもの顔に近くなったカカシさんの胸ぐらを掴んで持ち上げると、ベッドにとりゃっと投げる。
上忍様とは思えないほど無様に転がったのを追いかけ、俺も狭いシングルベッドに乗り上げるとカカシさんの服をすぱん、すぱんと脱がせてパンイチにした。今回は血塗れじゃないから簡単だ。
カカシさんは顔中をハテナにして、混乱しきった顔で俺を見返した。
「やるって、なに、……え?」
「ヤるって言ったら決まってるでしょう。セックスですよ」
カカシさんがひっと息を呑む。
俺を追いかけ回す前は、千の寝業を持つ男とか言われてたはずなんだが。これじゃカカシさんの方が花も恥じらう処女みたいじゃないか。
まぁ、花は恥じらわないだろうけど、俺は間違いなく処女だけどな。
それでも今のこいつに必要なことは分かる。
具体的なやり方はよく分からんけど。
「アンタはね、そうやって頭ばっかりで考えるから、そんなおかしな結論を出すんですよ。俺たちに必要なのは話し合いじゃなくて距離を縮めることです。それにはセックスが一番手っ取り早い。さぁ、どっちが上になりますか?」
「あ、えっ? なに……上?」
「カカシさんが上ですね」
今のは混乱したおうむ返しの「上」だとは思うが、面倒なのでカカシさんが上と答えたことにする。
俺は安心させるよう、にかっと笑いかけるとカカシさんの顔を両手で掴み、今度こそキスをした。
ぶちゅっ、ぶちゅっと唇を合わせながら、頬から首筋へ手を滑らせてなめらかな肌の感触を楽しんでいると、目を真ん丸に見開いたままのカカシさんの硬直が不意に解ける。
「イルカ先生……ホントにいいの?」
「いいって何がですか。俺が下になることですか?」
今は俺がマウント取ってるけどな。
ここから先は正直どうしたらいいか分からん。
でも裸の付き合いが大事だってガイ先生も言ってたし、とりあえずこうやってキスしただけでも大進歩じゃないだろうか。
そもそも本当に俺の体で勃つのかなどと思っていると、視界がぐるんと回った。
そしてカカシさんがすっぽんぽんの俺の股間に、自分の腰をぐいと押し付けてくる。
「セックスするって、俺のこれを先生の中に入れるんだよ? ……ホントにいいの?」
そこはすでに硬くなっていて、それを実感したとたん急に今の状況が恥ずかしくなってきた。
「あー、えっと、……入りますかね?」
へへっと力なく笑うと、カカシさんが俺の首元にがっくりと頭を落とした。
しばらくすると熱い吐息が首筋にかかり、ねろりと舐められる。
舌はゆっくりと耳まで這い上がってきて、低く掠れた声が舌と共に押し込まれた。
「……やだって言ってもやめないよ」
今まで聞いたことのないカカシさんの声に、背筋がぞくりとした。
カカシさんの手がさっきの俺と同じように頬から首筋へと辿るが、触れられた所が薄皮一枚下の神経を根こそぎ叩き起こしたかのようにひりひりする。
そして俺を見るその眼は。
「俺を先生の中に受け入れて……身体の中で俺を感じて? 今だけ、今の俺の全部を、イルカ先生にあげるから」
ひたむきに純粋に獲物を喰らおうとしている、獣の雄の眼だった。
ふッ、はッ、と鋭く切りつめられた息遣いが、お互いの口から漏れている。
今度は俺の方が潰れたカエルみたいに両足をがばっと開き、ベッドの上で仰向けに引っくり返っていた。人生で一度もしたことがないような間抜けな格好で、俺はカカシさんに貫かれていた。
苦しくて、みっともなくて。
だがこれは限りなく正しいことだと思えるのはなぜだろう。
その時ずりゅッと引いたカカシさんのモノに内臓が持ってかれそうで、思わず呻き声を上げてしまった。
「つらい? ごめんね」
そう言うカカシさんは、熱に浮かされたように頬を赤くしていて。
片方だけ開いた目もとろんとなっていて、凄絶なほどに綺麗だった。
「アンタ……んとに、きれぇ……だな」
重怠い腕を伸ばして胸に触れると、カカシさんがひくんと揺れた。
汗ばんだ肌はしっとりとして、上気したせいか薄桃色に染まっている。
これが。
この体に収めたモノも何かもかもが。
この人の全てが、今は俺だけのものなんだ。
胸がいっぱいになって言葉もなくただ見つめていると、動きを止め俺を見返したカカシさんの顔が不意に歪む。
そして急に激しく腰を振り始めた。
俺を壊すような勢いでがんがん突き上げる合間に、しゃがれた声と水滴が降ってくる。
「せんせ……」
「せんせの全部もちょうだい」
「……ううん、全部じゃなくていいから」
「すき。せんせぇ、だいすき」
「イルカせんせ、だいすきだよ、どうしよう」
カカシさんがぼたぼたと大粒の涙を降らせ、泣きじゃくりながら容赦なく腰を振る。
泣きたいのは俺の方だと思いながらも、なんとか両腕を伸ばし両足で抱え込み、必死にしがみついた。
あんあん言う合間にカカシさん、カカシさんと馬鹿みたいに繰り返してた。
もしかしたらあんあんじゃなくて、俺もわんわん泣いてたのかもしれない。
痛いとか気持ちいいとか、そういうことはあんまり気にならなかった。
ただただ、やっとカカシさんに近付けたなと、もう絶対に離さないぞと、ひたすら必死にしがみついていた。
そういう訳で俺はカカシさんとAもBもCも、なんならHもIも経験しちゃったんじゃないか? ってことをヤっちまった。
目覚めた時はがっちりと抱き込まれていて、身動きもままならなかった。
間近で寝顔を眺めていると、なんだかまた胸がいっぱいになってきてぎゅうっと抱き付きたい衝動に駆られたが、いかんせん上忍の拘束はレベルが違う。なんとか片腕を引っこ抜いて髪を触ろうとしたら、伸ばした手の人差し指の関節部分にくっきりと歯型が付いていてぎょっとした。
そういえばカカシさんに俺のをしゃぶられてる時に、あまりにも気持ちよくて変な声が出そうで指を噛んで堪えたような気がする。
とたんに色々されたことが記憶の底から芋づる式に引っ張り出されそうになって、うぐぐぬぬと呻いてしまった。
「せんせ、おはよ。可愛い顔してどうしたの?」
「ひょわい!」
いつの間に目覚めたのか、カカシさんがぽわんとした目で俺を見つめていた。
だがその目は昨夜泣きじゃくったせいか、ずいぶんと腫れぼったくなっている。
てことは俺もか? カカシさんはそんな顔でも綺麗だし可愛いけど、俺はすっげぇ不細工になってるんじゃないだろうか。
俺はとっさにカカシさんの胸に顔を埋めた。
くそう、なんかいい匂いまでするな。
「せんせ、痛いの? 昨日はムリさせちゃったけど大丈夫?」
ああ痛いよ心がな!
同じ男なのにこの仕上がりの差は何なんだよ!
だがカカシさんがおろおろし始めたので、また変な方向にネガティブになられても困るなと思い、顔を埋めたままぎゅうっと抱き付いた。
「おはようございます、えっと、大丈夫です」
「そう、良かった。でも朝ごはんは俺に作らせて。俺は待機だけどイルカ先生は受付でしょ? 今日は休む?」
「いや行きま……イテッ! うぐぅ……」
そうだよ今日は日曜だけど受付だったと起き上がろうとしたが、あまりの激痛にあえなくベッドに沈んだ。
急に動いたせいか腰が、はっきり言うと尻が痛い。いや全身痛い。
今まで使ったことのない筋肉を活用したからか、内腿やら腰回りやら変な所がびっくりするほど痛い。
日頃の鍛練不足かと反省したが、こんな鍛練はしたことがないんだから当たり前だ。
「ああイルカ先生、大丈夫? 痛み止め使う? 待って俺いいの持ってるから今持ってこさせるね!」
カカシさんが慌てて起き上がると、巻物も無しで口寄せの印を組み始めた。
ぼふんと煙が上がり、こないだとは違う忍犬が現れる。
その犬に指示するためにこちらに向けたカカシさんの背を見て、驚きのあまり髪が逆立ったかと思った。
カカシさんの綺麗な背中には、猫に引っ掻かれたような傷がびっしりと付いていた。
きっと昨夜必死にしがみついた時に、無意識に付けてしまったんだろう。
ヤバいヤバいとあわあわしたが、カカシさんは気付いてないみたいだから早く、今すぐ治って消えてくれと背中に向かって念じる。というか俺が消えたい。
俺の思いが通じやしないかと、傷痕をじいっと睨み付けていたが。
――こんな風にアンタの人生に爪痕を残すのも悪くないかもな。
ふと、そんな思いがよぎる。
カカシさんは知らないだろうが、俺は一度自分のになったもんは、なかなか捨てられない性質なんだ。
アンタの執着心もたいしたものだけど、俺だって負けてないと思う。
「すぐ来るからね、もうちょっとだけ待っててね」
悲愴な顔でカカシさんがくるりと振り返った。
そしてしばらく俺をじっと見つめていたかと思うと、不意に目元を和らげる。
「ふふ……イルカ先生がこんなに近い」
伸ばした手が俺の頬を撫でた。
指の背で優しく、愛しげに。
俺は目を閉じ、饒舌な手から伝わる想いに身を任せる。
カカシさんが何か呟いたみたいだが、小さすぎてよく聞き取れなかった。
でもたぶん。
たぶん愛を告げる言葉だった気がするので、似たようなことを俺も小さく呟き返した。
そして唐突に腹の底から理解する。
――そうか。こういう気持ちを愛って言うんだな。
するとふわりと、それから力をこめて抱きしめられた。
その衝撃で体のあちこちがまた痛むけど、これはそう、なんだか幸せな痛みだ。
俺はその痛みをも余さず味わい噛みしめるように、カカシさんを抱き返した。
【完】
せっかくのいい天気なので、溜まってた洗濯をやっつけて部屋もついでに片付け、掃除もして一息つく。
すると卓袱台の上のガイドブックが目に入った。
こないだカカシさんに「他にも行きたい所があったら教えてね」と渡された物だ。
その本は渡された時すでにあちこち角が折られ、マーカーで印が付けられていたので、俺はそこだけざっとチェックしただけだった。こんなに楽しみにしてるなら、カカシさんの希望を優先したいと思ったのだ。
――なんだかんだ言って、俺も今日は楽しみにしてたんだよな。
水族館に行って、次はどこに行こうかと話そうと思ってたことを思い出す。カカシさんはすごく落ち込んでたみたいだけど、また今度行けばいいことだ。
俺はガイドブックを本棚にしまうと、いい機会だからとそのうちやろうと思っていたアカデミーの資料を卓袱台に広げた。
ふと気付くと、部屋の中がだいぶ暗くなっていた。
資料のまとめに夢中になって時間が経つのを忘れてしまってたらしい。途中でカップラーメンを昼飯に食べたことは覚えてるんだが、それ以降はずっと集中してたみたいだ。とりあえず洗濯物をしまおうと立ち上がると、窓をこつこつと叩く音がした。
カカシさんの式だ。
窓を開けると白い鳥がひらりと舞い込み、手の上で紙片に変わる。
もう大丈夫です
今日は本当にごめんなさい
良かった、回復したみたいだな。
俺はその紙片を丁寧に畳むとメモ帳を破り取り、『元気になったようで安心しました。それではまた今度』としたためて式に変え、宵闇の中へと飛ばした。
それからさすがに晩飯もカップラーメンはまずかろうと急いで買い物に行き、適当に買いだめして飯も作って風呂に入る。
風呂上がりにTシャツとスウェットズボン姿になると、なんだかんだ普通の休日になっちまったなぁと冷蔵庫から発泡酒を取り出して一気に半分くらい空けたら、また馴染みの感覚を察知した。
まさかチャクラ切れで寝込んでたヤツがと思ったけど、だが俺は知っている。
カカシさんがどれだけ今日を楽しみにしていたかを。
カカシさんがどれだけ俺に執着してるかを。
俺は窓をカラリと開け放った。
「カカシさん」
「はい」
ほらな。
つーか思ったより遠かったな。
カカシさんの声はずっと遠くの屋根の方から聞こえた。
「ちょっとこっちに来て下さいよ。これじゃ俺が一人言を言ってる怪しい奴じゃないですか」
返事がない。
でも次の瞬間には室内の俺のやや後方に、初めからそこにいたかのような佇まいでカカシさんが立っていた。
支給服のアンダーとズボンだけの姿で、風呂にも入ってきたのか心なしか髪がしんなりしている。
だが顔色はだいぶ良くなり、隈も消えていた。
「もう大丈夫なんですか? あぁ、顔色も戻りましたね。晩飯もちゃんと食いました?」
俺が顔に触れようとして伸ばした手は空を切った。
カカシさんがまたすいと避けたのだ。まったく、どんだけシャイなんだよ。
「………………」
ん、何か言ったか?
「………………………………手」
「手?」
「………………………………………………つなぎたかっ………………」
あぁ、デートでか。
って長ぇぇええええよ! どんだけ引っ張るんだよ!!!
つーか、たった今俺の手を避けただろうが! それで手を繋ぎたいって、上忍の恋心の難易度が高すぎて理解不能だわ!
そこでカカシさんが額宛をしてないことに気付いた。
緋色の写輪眼が収められているという左目は閉じられているが、なんだか右目も赤いように見える。
「カカシさん」
「はい」
もういい加減このやり取りも慣れたな。
「もしかして、泣いてたんですか?」
カカシさんは棒のように突っ立ったまま答えない。
だが、不意にその顔が少し歪められた。
「……ごめんね。先生のこと、好きすぎてごめん。でも……だからムリ。やっぱりイルカ先生とはお付き合いできない」
「…………は?」
唐突に言い出した言葉の意味が分からなくて、俺はぽかんと口を開けたままカカシさんを見返した。
カカシさんはそんな俺に、痛みを我慢するような歪んだ笑みを向けて続けた。
「俺はね、イルカ先生……あなたのために生きたい。でも忍としての俺は里にこの身を捧げてるでしょ。だからせめて気持ちだけでも先生に全て捧げたいけど、結局それも叶わない。だって今までもこれからも、骨の髄まで俺は忍だから。一番大切な愛してる人との初デートを血塗れにして倒れて台無しにしちゃうような、ろくでなしの男だから。だから……」
カカシさんは俯き、自分の広げた両手を見下ろした。
いつもと違い手甲に覆われてないその手の平はとても無防備に思え、わずかに震えているようにも見える。
「……俺は一番大切な人ほど、この手で大切にしてあげられない」
顔を上げたカカシさんの頬に、つうと一筋の涙が流れ落ちる。
――ああ、俺は間違ってた。
カカシさんは捨てられた仔犬なんかじゃなかった。
ずっとそう思ってたけど、それは俺だけに対して見せる顔だった。そんな当たり前のことを、分かっていたのに分かってなかった。
カカシさんは……はたけカカシは仲間を背負い、里を背負ってただ一頭で戦う、孤高の狼だ。
その狼はいつも、いつでもぎりぎりの崖っぷちに爪先立って、震えながら俺を見つめていたんだ。何年も、何年もずっと。
数多の血に濡れた己の手を俺に向かって伸ばしていいのかと、絶えず自問しながら。
「………カカシさん」
「はい」
俺はカカシさんの名にありったけの気持ちをこめて呼ぶと、その手を取った。
多くの忍が武器を振るって敵を殺傷する中、カカシさんはこの手で直接相手の体を貫いて屠るという。
敬意と恐れのもとに最強の突きと謳われる雷切は、そんな風に相手の命を直に体感し奪うものなのだ。
優しくて感受性の強いこの人にこそ、最もふさわしくないほど直接的に。
「俺は、あなたの手が好きです」
そう言って白くすらりと伸びた指に口づける。
するとびくりと震えた手が引っ込められそうになるが、ぎゅっと握って留めた。
「あなたの手は守る手だ。攻撃することで誰かを守る、強くて優しい綺麗な手だ。俺はそんな手を持つあなたのことが、好きです」
そして呆然としてるカカシさんの口布を下ろすと、キスをしようと顔を寄せた。
が、寸前でカカシさんがさっと飛び退く。
避けんなよ!
初キスなんだからおとなしくされとけよ!
カカシさんは寝室の中まで一気に飛んだ上、あろうことか天井に張り付いてこちらを窺ってる。
なんなんだ、その野良猫レベルの警戒心は。
俺からキスしちゃダメだってのか。
まぁ、おおかた別れるべきだとか何とか悩んでるけど、それでも離れられないみたいな葛藤の着地点が天井だったんだろうけど。
そっちがその気なら俺にも考えがある。自慢じゃないが手のかかる子供の扱いにはちょっとばかり自信があるからな。
俺は寝室に入ると風呂上がりに着ていたTシャツの裾に手をかけ、おもむろに引き上げた。
「ちょっと、何してるの?」
そして天井の焦ったカカシさんの顔に向かって、脱いだTシャツを投げ付ける。
「見れば分かるでしょう。服を脱いでるんですよ」
次はズボンだ。
スウェットを下げて足から引き抜くと、これも天井に向かって投げ付ける。
「ちょっ、わわ、やめてよイルカ先生!」
そう言いながらもカカシさんの視線は俺から離れないし、投げ付けた衣類は全て大事に抱えている。
だろうな。どんだけ悩もうがアンタは根っからのストーカーだ。
俺限定の。
目の前でストリップを始めた俺を置いて逃げ去るなんて、絶対にできないはずだ。
俺は最後の砦のパンツに手をかけ、一気に脱ぐとカカシさんの顔に向かって投げ付けた。
「あっ、先生のパンツ……っ」
限りなく悲鳴に近い声を上げて、カカシさんが落っこちた。
チャクラが乱れて天井に張り付いていられなくなったんだろう。ざまぁみろ。
べちゃりと床に潰れたカカシさんは、それでも俺の衣類を大事そうに抱えていたが、俺は大股に二歩で近付き腕組みをして見下ろした。
「さてカカシさん、ヤりましょうか」
「……え?」
さっきの悲愴な表情は抜け、いつもの顔に近くなったカカシさんの胸ぐらを掴んで持ち上げると、ベッドにとりゃっと投げる。
上忍様とは思えないほど無様に転がったのを追いかけ、俺も狭いシングルベッドに乗り上げるとカカシさんの服をすぱん、すぱんと脱がせてパンイチにした。今回は血塗れじゃないから簡単だ。
カカシさんは顔中をハテナにして、混乱しきった顔で俺を見返した。
「やるって、なに、……え?」
「ヤるって言ったら決まってるでしょう。セックスですよ」
カカシさんがひっと息を呑む。
俺を追いかけ回す前は、千の寝業を持つ男とか言われてたはずなんだが。これじゃカカシさんの方が花も恥じらう処女みたいじゃないか。
まぁ、花は恥じらわないだろうけど、俺は間違いなく処女だけどな。
それでも今のこいつに必要なことは分かる。
具体的なやり方はよく分からんけど。
「アンタはね、そうやって頭ばっかりで考えるから、そんなおかしな結論を出すんですよ。俺たちに必要なのは話し合いじゃなくて距離を縮めることです。それにはセックスが一番手っ取り早い。さぁ、どっちが上になりますか?」
「あ、えっ? なに……上?」
「カカシさんが上ですね」
今のは混乱したおうむ返しの「上」だとは思うが、面倒なのでカカシさんが上と答えたことにする。
俺は安心させるよう、にかっと笑いかけるとカカシさんの顔を両手で掴み、今度こそキスをした。
ぶちゅっ、ぶちゅっと唇を合わせながら、頬から首筋へ手を滑らせてなめらかな肌の感触を楽しんでいると、目を真ん丸に見開いたままのカカシさんの硬直が不意に解ける。
「イルカ先生……ホントにいいの?」
「いいって何がですか。俺が下になることですか?」
今は俺がマウント取ってるけどな。
ここから先は正直どうしたらいいか分からん。
でも裸の付き合いが大事だってガイ先生も言ってたし、とりあえずこうやってキスしただけでも大進歩じゃないだろうか。
そもそも本当に俺の体で勃つのかなどと思っていると、視界がぐるんと回った。
そしてカカシさんがすっぽんぽんの俺の股間に、自分の腰をぐいと押し付けてくる。
「セックスするって、俺のこれを先生の中に入れるんだよ? ……ホントにいいの?」
そこはすでに硬くなっていて、それを実感したとたん急に今の状況が恥ずかしくなってきた。
「あー、えっと、……入りますかね?」
へへっと力なく笑うと、カカシさんが俺の首元にがっくりと頭を落とした。
しばらくすると熱い吐息が首筋にかかり、ねろりと舐められる。
舌はゆっくりと耳まで這い上がってきて、低く掠れた声が舌と共に押し込まれた。
「……やだって言ってもやめないよ」
今まで聞いたことのないカカシさんの声に、背筋がぞくりとした。
カカシさんの手がさっきの俺と同じように頬から首筋へと辿るが、触れられた所が薄皮一枚下の神経を根こそぎ叩き起こしたかのようにひりひりする。
そして俺を見るその眼は。
「俺を先生の中に受け入れて……身体の中で俺を感じて? 今だけ、今の俺の全部を、イルカ先生にあげるから」
ひたむきに純粋に獲物を喰らおうとしている、獣の雄の眼だった。
ふッ、はッ、と鋭く切りつめられた息遣いが、お互いの口から漏れている。
今度は俺の方が潰れたカエルみたいに両足をがばっと開き、ベッドの上で仰向けに引っくり返っていた。人生で一度もしたことがないような間抜けな格好で、俺はカカシさんに貫かれていた。
苦しくて、みっともなくて。
だがこれは限りなく正しいことだと思えるのはなぜだろう。
その時ずりゅッと引いたカカシさんのモノに内臓が持ってかれそうで、思わず呻き声を上げてしまった。
「つらい? ごめんね」
そう言うカカシさんは、熱に浮かされたように頬を赤くしていて。
片方だけ開いた目もとろんとなっていて、凄絶なほどに綺麗だった。
「アンタ……んとに、きれぇ……だな」
重怠い腕を伸ばして胸に触れると、カカシさんがひくんと揺れた。
汗ばんだ肌はしっとりとして、上気したせいか薄桃色に染まっている。
これが。
この体に収めたモノも何かもかもが。
この人の全てが、今は俺だけのものなんだ。
胸がいっぱいになって言葉もなくただ見つめていると、動きを止め俺を見返したカカシさんの顔が不意に歪む。
そして急に激しく腰を振り始めた。
俺を壊すような勢いでがんがん突き上げる合間に、しゃがれた声と水滴が降ってくる。
「せんせ……」
「せんせの全部もちょうだい」
「……ううん、全部じゃなくていいから」
「すき。せんせぇ、だいすき」
「イルカせんせ、だいすきだよ、どうしよう」
カカシさんがぼたぼたと大粒の涙を降らせ、泣きじゃくりながら容赦なく腰を振る。
泣きたいのは俺の方だと思いながらも、なんとか両腕を伸ばし両足で抱え込み、必死にしがみついた。
あんあん言う合間にカカシさん、カカシさんと馬鹿みたいに繰り返してた。
もしかしたらあんあんじゃなくて、俺もわんわん泣いてたのかもしれない。
痛いとか気持ちいいとか、そういうことはあんまり気にならなかった。
ただただ、やっとカカシさんに近付けたなと、もう絶対に離さないぞと、ひたすら必死にしがみついていた。
そういう訳で俺はカカシさんとAもBもCも、なんならHもIも経験しちゃったんじゃないか? ってことをヤっちまった。
目覚めた時はがっちりと抱き込まれていて、身動きもままならなかった。
間近で寝顔を眺めていると、なんだかまた胸がいっぱいになってきてぎゅうっと抱き付きたい衝動に駆られたが、いかんせん上忍の拘束はレベルが違う。なんとか片腕を引っこ抜いて髪を触ろうとしたら、伸ばした手の人差し指の関節部分にくっきりと歯型が付いていてぎょっとした。
そういえばカカシさんに俺のをしゃぶられてる時に、あまりにも気持ちよくて変な声が出そうで指を噛んで堪えたような気がする。
とたんに色々されたことが記憶の底から芋づる式に引っ張り出されそうになって、うぐぐぬぬと呻いてしまった。
「せんせ、おはよ。可愛い顔してどうしたの?」
「ひょわい!」
いつの間に目覚めたのか、カカシさんがぽわんとした目で俺を見つめていた。
だがその目は昨夜泣きじゃくったせいか、ずいぶんと腫れぼったくなっている。
てことは俺もか? カカシさんはそんな顔でも綺麗だし可愛いけど、俺はすっげぇ不細工になってるんじゃないだろうか。
俺はとっさにカカシさんの胸に顔を埋めた。
くそう、なんかいい匂いまでするな。
「せんせ、痛いの? 昨日はムリさせちゃったけど大丈夫?」
ああ痛いよ心がな!
同じ男なのにこの仕上がりの差は何なんだよ!
だがカカシさんがおろおろし始めたので、また変な方向にネガティブになられても困るなと思い、顔を埋めたままぎゅうっと抱き付いた。
「おはようございます、えっと、大丈夫です」
「そう、良かった。でも朝ごはんは俺に作らせて。俺は待機だけどイルカ先生は受付でしょ? 今日は休む?」
「いや行きま……イテッ! うぐぅ……」
そうだよ今日は日曜だけど受付だったと起き上がろうとしたが、あまりの激痛にあえなくベッドに沈んだ。
急に動いたせいか腰が、はっきり言うと尻が痛い。いや全身痛い。
今まで使ったことのない筋肉を活用したからか、内腿やら腰回りやら変な所がびっくりするほど痛い。
日頃の鍛練不足かと反省したが、こんな鍛練はしたことがないんだから当たり前だ。
「ああイルカ先生、大丈夫? 痛み止め使う? 待って俺いいの持ってるから今持ってこさせるね!」
カカシさんが慌てて起き上がると、巻物も無しで口寄せの印を組み始めた。
ぼふんと煙が上がり、こないだとは違う忍犬が現れる。
その犬に指示するためにこちらに向けたカカシさんの背を見て、驚きのあまり髪が逆立ったかと思った。
カカシさんの綺麗な背中には、猫に引っ掻かれたような傷がびっしりと付いていた。
きっと昨夜必死にしがみついた時に、無意識に付けてしまったんだろう。
ヤバいヤバいとあわあわしたが、カカシさんは気付いてないみたいだから早く、今すぐ治って消えてくれと背中に向かって念じる。というか俺が消えたい。
俺の思いが通じやしないかと、傷痕をじいっと睨み付けていたが。
――こんな風にアンタの人生に爪痕を残すのも悪くないかもな。
ふと、そんな思いがよぎる。
カカシさんは知らないだろうが、俺は一度自分のになったもんは、なかなか捨てられない性質なんだ。
アンタの執着心もたいしたものだけど、俺だって負けてないと思う。
「すぐ来るからね、もうちょっとだけ待っててね」
悲愴な顔でカカシさんがくるりと振り返った。
そしてしばらく俺をじっと見つめていたかと思うと、不意に目元を和らげる。
「ふふ……イルカ先生がこんなに近い」
伸ばした手が俺の頬を撫でた。
指の背で優しく、愛しげに。
俺は目を閉じ、饒舌な手から伝わる想いに身を任せる。
カカシさんが何か呟いたみたいだが、小さすぎてよく聞き取れなかった。
でもたぶん。
たぶん愛を告げる言葉だった気がするので、似たようなことを俺も小さく呟き返した。
そして唐突に腹の底から理解する。
――そうか。こういう気持ちを愛って言うんだな。
するとふわりと、それから力をこめて抱きしめられた。
その衝撃で体のあちこちがまた痛むけど、これはそう、なんだか幸せな痛みだ。
俺はその痛みをも余さず味わい噛みしめるように、カカシさんを抱き返した。
【完】
スポンサードリンク