【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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プロットなのにもしかして緻密に書きこみすぎてるんでないの、と不安になっているルナです。
結果的に漫画向けのプロットになっちゃったかな?と思いましたが、お好みに肉付けや味付けをして、小説でも読ませて頂けたらとっても嬉しいです!
皆さんが作品を作りやすいよう、会話の内容は足したり削ったりして頂いて構いません。そのままでも構いません。
皆さんの創作のお役にたてますように!

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 カカシ26歳、イルカ先生22歳(23歳)の設定。

 カカシは今まで任務一筋で、寄ってくる相手を来るもの拒まず去る者追わずでまともな恋をしたことがない。

 任務帰りに受付でイルカ先生に一目惚れをする。


 過酷な忍務でボロボロのカカシに

「任務お疲れ様でした。おかえりなさい、はたけ上忍」

 と、優しく笑い掛けるイルカ先生。
 内心雷に打たれたように初めての恋の坂を転がり落ちていたが、無意識に感情を隠してしまう術が身についてしまっているため、立ち尽くしつつも表情にはおくびにも出さない。
 暫くじっと佇んでいると、部下の一人に声を掛けられる。

「どうされました? はたけ上忍」
「彼は?」

 じっとイルカ先生を見ながら問うカカシ。

「彼?」

 部下は視線の先にイルカ先生を認めて。

「ああ、うみのですか?」
「あの人、うみのって言うの」
「うみのイルカです。中忍で、受付に入ってますが昼はアカデミーで教師をしています。彼が何か?」

 部下にイルカ先生の情報をあれこれ聞く。
 聞いたはいいが、イルカ先生と親しくなりたいと思いつつも、どうしたらいいかさっぱりわからない。
 受付に入りイルカ先生を見掛ける度、恋心を募らせていくカカシ。
 思い余って、本部棟で待機中に、そこにいたアスマに相談を持ち掛ける。

「あのさ、アスマ」
「あ?」
「ちょっと相談なんだけど」
「おまえが俺に? 何だ改まって」

 訝しみつつもカカシの話を聞く気のいいアスマ。

「好きな人が出来たみたいなんだけど」
「誰が」
「俺が」
「ああ!?」

 今まで女性に求められるまま、適当にその場限りの付き合いをしてきて、それが誠実とはかけ離れたものだったことを知っているアスマはカカシの告白に驚く。
 驚きつつも興味をそそられたので、「めんどくせえなぁ」と零しながらも、タバコに火を点け、カカシの話を聞く姿勢をとる。

「で、どこの誰だよ。おまえに目を付けられたその不幸な女は」
「それは秘密。親しくなりたいんだけど、どうしたらいいかな。あと不幸ってなに。失礼な奴だな」
「おまえ、ほんとにアドバイス欲しいと思ってんのか? 漠然とし過ぎてて、どこから助言したらいいかわからん」
「内勤の中忍なんだけど。今まで全然話したことないから。会話の糸口とか見つけらんなくて」
「取り敢えず挨拶でもなんでも、天気の話からとかでもいいからよ、マメに声掛けるようにして、段階踏んで飯に誘ってみたらどうだ。まずはそっからだろ」
「飯に」
「そうだ。いきなり飯に誘っても警戒されるだろうからな。さり気ない会話で少しずつ親近感を持たせて、趣味だとか好きな食いもんだとか、相手の情報を片端からリサーチすんだよ」
「それで?」
「相手のことがある程度わかったら、好きなもの食わせてやったり、プレゼントしてやったりとにかく相手が喜びそうなことをして好感を持たせる。みみっちいもん送るんじゃねえぜ、高級なものの方が良い」
「ウン」
「適当に時間かけて、そんで脈がありそうだってのが見えたら、甘い言葉で口説いてベッドに連れてけ。そこでも相手を喜ばせるのを忘れるな」
「わかった」

 ほんとにわかったのかと若干不安を抱くアスマだったがカカシは腕を組み、感心したように何度か頷いて、イルカ先生と親しくなるための方法をシミュレーションする。

「やってみる」
「おー。頑張れよ」





 忍務を終え、早速イルカ先生の座る受付に並ぶカカシ。
 アスマに言われた通り、天気の話や里の近況、就いた任務の当たり障りない範囲の話などを振りつつ、徐々にイルカ先生の中のカカシの認識を強めて行く。
 その内イルカ先生も、カカシの帰還を楽しみにしているように見えて来た。
 そろそろ頃合いかと、カカシはイルカ先生を食事に誘う。

「イルカ先生。ご苦労様」
「カカシさん! お疲れ様です、御無事の帰還何よりです。おかえりなさい」

 ニコニコしているイルカ先生。
 カカシの顔は能面のようにいつもと変わらぬ仏頂面だが、心中ではイルカ先生の屈託のない可愛い笑顔にメロメロ。

「俺、この後飯食って帰るんですけど、イルカ先生よかったら付き合ってくれませんか?」
「え?」

 イルカ先生は驚いたが、少し考えて、いいですよ。と答えた。

「あと十五分で交代なんです、少しお待たせしてしまうんですが……」
「いいよ、本部棟の門のところで待ってる」
「すみません、急いで向かいますんで」
「ウン」

 仕事を片付けてきたイルカ先生が、イチャパラを片手に門に寄り掛かっているカカシに駆け寄ってくる。パアアと音がしそうな満面の笑顔が眩しいイルカ先生。

「お待たせしました!」
「ウン。じゃ、行こうか」

 歩き出すカカシ。

「あ、店、もう決まってます?」
「ウン。俺がいつも行くとこでいいかな?」
「はい」

 特に何も意識せずカカシについていくイルカ先生。
 歩きながら次第に変わっていく辺りの雰囲気に漸く不安がよぎる。周りは高級割烹の老舗ばかりが立ち並ぶエリア。
 カカシが一店舗の前で立ち止まる。

「ここです」

 木ノ葉で一、二を争う老舗中の老舗。
 イルカ先生がたじろぐ。

「こ、ここですか」
「入りましょう」

 そんなイルカ先生に構わず、出迎えた女将にカカシは案内されるまま慣れた様子で中に入って行く。
 割り勘だと思っているイルカ先生は青褪めて、自分の懐具合を気にしつつも、ここで一人でいきなり帰る訳には行かないので仕方なく意を決し、カカシに続く。
 部屋に通されて女将が引っ込み二人きりになった時、正直者のイルカ先生が自分の手持ちが足りないかもしれないことをカカシに真っ先に打ち明け、申し訳ないが貸してもらえないかと打診する。

「いいよ。俺が出すから」
「いえ、そんなわけには」
「いいから。ここの飯美味いよ。きっとイルカ先生も気に入ると思う」

 そんなわけにはいかないと思いつつ、ここは上司の顔を立てるつもりで奢られることに。
 部屋は離れで調度品や、食事を盛られる器も一級品ばかり。食事も酒も確かに美味いが、極一般的な中間管理職を地で行くイルカ先生はこんな高級料理をいきなり振る舞われることへの恐縮と、カカシとの金銭感覚の差異、生活水準の違いを思い知らされて、外回りの上忍と内勤の中忍の余りの差に感心しつつも少しの劣等感を覚える。
 カカシは始終静かで、イルカ先生が一生懸命話題を振ってもさほど会話盛り上がらない。
 その日は食事を終えてお開きに。
 その日を境に、カカシからの食事の誘いが増える。
 始めは断っていたが、カカシがしつこく誘ってくるので、そう毎回断り続けるのもカカシの体面に関わるかとたまに誘いを受けていたが、毎回割り勘にしようとしても何だかんだで奢られてしまうので

「今度は俺の行きつけに行きませんか?」

 と誘うイルカ先生。

「カカシさんが口布取っても気にならないように、個室がある店にします」

 不承不承、イルカ先生の誘いに応えるカカシ。

 イルカ先生がいつも行っているという大衆居酒屋に向かう。

「イルカ先生はこういう店が好きなの?」
「カカシさんが誘って下さる料亭ほど洗練されたものは出てきませんけど、ここの飯も美味いんですよ」
「ふうん」
「気に入りませんか?」
「俺が連れてく店の方がよくない?」

 カカシはイルカ先生と完全に二人きりの空間で美味い物を食べさせたいだけの軽い気持ちで言ったが、これにカチンとくるイルカ先生。

「残念ながら俺には毎回ああいった場所で飯を食えるような甲斐性はないので」
「俺が出すって言ってるじゃない。アナタは普段食えない美味い物食って、俺もあっちの方が落ち着くし。何が気に入らないの?」

 その言葉に更にカチンとくるイルカ先生。イラッとして思わず嫌味が口を突く。

「そうですか。カカシさんの口には俺みたいな庶民の好む味は合わなかったみたいですね」
「まあ悪くはないけど、良くもないよね」

 カカシは今まで付き合った女は皆高級なものに喜んだし、アスマにもアドバイスされていたので高いものが良いものだと漠然とした価値観しか培われていない。イルカ先生に高いものを奢って好かれたいが逆に神経を逆なでするばかり。

「そうですか、それは失礼しました。でも俺はあんな高級料亭で奢られ続けることの方が落ち着かなくて、食事も楽しみ切れないので、それでは今後飯にはご一緒し兼ねます」
「え」
「失礼します」

 そう言い捨ててバンッと叩きつけるように両を机に置き、帰ってしまうイルカ先生。





 後日、本部棟の中庭で。
 受付の仕事が押して昼飯を食いっぱぐれたイルカ先生が、芝生に寝転んで切なく腹を鳴らしていると、カカシが現れる。
 いきなり目の前に現れたカカシに驚いたが、先日は上司に向かって言い過ぎたかなと、ずっと気になっていた。

「カカシさん」

 と声をかけ、先日の非礼を詫びようとしたところに、カカシから弁当の包みが差し出される。

「この間はごめん。イルカ先生が何を気にしてたのか俺、気付かなくて」
「いえ、俺の方こそついカッとなっちゃって……すみませんでした」

 カカシの殊勝な態度に、罪悪感が湧くイルカ先生。

「昼まだデショ? これ」

 そう言ってイルカ先生に包みを渡すカカシ。

「それじゃ。俺これから任務なんで」
「あ、えっ? カカシさん!」

 イルカ先生の返事を待たず瞬身で消えるカカシ。
 呆気にとられるイルカ先生の正直なお腹がぐーっと鳴る。

 「なんだかなぁ……」と言いつつ包みを開くと、見るからに高級そうな漆塗りの重箱が出てくる。
 先日の口論の経緯が経緯だけに、ひくっと顔を引きつらせるイルカ先生。
 もしかしてこれは嫌みか? と思ってしまう自分を卑屈だと自己嫌悪しつつも、めちゃくちゃ良い匂いのする弁当箱を開ける。
 肉厚ふわふわのうなぎ。
 まぁ、食い物に罪はねえよなとひとりごちて、食い気に勝てない自分にちょっと泣きながら鰻重を掻き込む。


 それから昼時になるとどこからともなく現れるカカシに高級弁当を渡され続けるイルカ先生。カカシが任務の時は職場のデスクに何時の間にか弁当が置かれている。
 何度も断ろうとするが、弁当を一方的に渡すと一瞬で消えてしまうカカシ。
 困り果てながらも食べ物を粗末に出来ないイルカ先生は、毎回綺麗に弁当を平らげて、しみじみ「うまい……」と独り言ち、そんな自分にちょっと泣く。
 カカシは、イルカ先生は単に高級な店が落ち着かなくて苦手なだけだと勘違いしている。


 そんな日が三週間目に入ろうという頃、任務帰りのカカシを捕まえる。

「カカシさん」
「あ、丁度良かった」

 カカシは里の付近で中期の任務にあたっていたが、丁度それが終了し、土産を渡すためにイルカ先生を探していた。

「これ、お土産」
「え?」
「任務先で見付けたから、貴方に」
「こ、これは火影様でも中々手に入らないと言われる幻の名酒!」

 希少価値の高い名酒を差し出すカカシに慌てるイルカ先生。

「そんな、困ります。あ! あの、いつも弁当有難うございます。でも、それもお断りしようと思ってたんです」
「どうして?」
「いつも俺ばかり頂いて、その上こんな土産まで……」
「…………」

 黙り込むカカシに戸惑いながらも、今度は自分にもてなさせて欲しいと提案するイルカ先生。

「あ、あの、カカシさん、明日の夜は何か予定ありますか? 良かったら、今度は俺に御馳走させてください」
「え?」
「大したおもてなしは出来ないんですが、俺の家で夕飯一緒にいかがですか?」
「いいの?」
「ええ、ぜひ」

 イルカ先生は、驚くカカシに笑い掛け、翌日互いの仕事後に待ち合わせる約束をする。





 上忍待機所でアスマと話すカカシ。

「自宅に呼ばれた」
「おお! マジか、順調じゃねえか」
「そうなのかな? 真面目で遠慮しいな人みたいで、任地で買ってきた土産は断られたんだけど」
「バカおまえ、そんな女が夜自宅に上げて手料理振る舞おうなんて脈アリに決まってんだろ」
「そうかな」
「当たり前だろ、何言ってんだ。引くな、押せ。そういう女は奥手で自分からは来ねえ。それが向こうから夜、自宅に来いっつってんだぞ、内心期待してるに決まってんだろうが。いいか、メシ食い終わったらおまえから押し倒せ。形式だけは嫌だと言うかもしれんがそれは単に恥じらってるだけだからな、途中でやめるんじゃねえぞ、最後までいけ。甘い言葉を囁くのも忘れるな」

 人差し指を突き付け熱弁するアスマに頷くカカシ。

「わかった」
「買ってきた土産も持ってけよ。手料理の礼だとでも言っとけ。プレゼントが嬉しくねえ女なんかいねえ」
「わかった。ありがと」
「上手くいったら一杯奢れよ」

 威勢よく笑うアスマに背中を思い切り叩かれるカカシ。





 翌日任務後、カカシはイルカ先生の受付が終わるのを待ち、二人で一緒に帰宅する。
 ベストを脱ぎ、早速台所へ向かうイルカ先生。

「カカシさん、秋刀魚好きって言っていましたよね? 魚屋のおっちゃんがでかくて良い秋刀魚仕入れたって言ってたんで買ってきました。他にもいろいろ出来たらと思ったんですけど、俺料理の腕にはあまり自信がなくて、タラ買ってきたんでタラの鍋にしましょう」
「いいね。じゃあこれ」

 昨日断られた名酒をドンと机に置くカカシ。

「せっかくイルカ先生に買って来たんだし、俺一人で飲むのもつまらないから、今夜一緒に飲みたいと思って」
「カカシさん……」

 カカシの気遣いに胸を熱くするイルカ先生。断りはしたが、幻の名酒を本当は飲んでみたかった。

「腕によりをかけますね! 待っててください!」

 気合を入れて袖を捲り上げ、鼻歌まじりに秋刀魚と鍋の食材に向き合うイルカ先生。

「(冷蔵庫に)材料入り切らねえなー」「エアコン利きづらくなってきたなぁ」
 などと独り言を言いながら、台所でごそごそ支度をする。
 それから出来上がった鍋を二人で囲み、秋刀魚をつつきながら美味い酒をしこたま飲んで、酔いが回って大分気分が良くなったイルカ先生。自宅なこともあり、リラックスして会話もそこそこ弾む。口下手で変な人だけど、カカシさん悪い人じゃないなぁと気も緩む。
 飯を食い終わり、おもむろに立ち上がってイルカ先生に近付くカカシ。イルカ先生がトイレかな? と思っていると、カカシはイルカ先生の傍らに立ち、肩に手を掛けた。
 アスマの助言にならい、そろそろ手を出す頃合いだろうと行動に移るカカシ。

「カカシさん? どうしました?」
「昼間受付やアカデミーで子供たちの相手をしてる時のイルカ先生、素朴で純な感じがして可愛いよね」
「はぁ」

 突然のことに意味が分からず、ポカンと頭にはてなマークを浮かべるイルカ先生。

「そんな貴方がベッドで、どんなふうにいやらしく乱れるのか見てみたい」
「は??」
「イルカ先生」

 イルカの肩を掴み、押し倒すカカシ。
 突然のことに状況が把握できず、狼狽えて抵抗するイルカ先生。圧し掛かって服を脱がせようとして来るカカシに危機感を覚えて暴れ始める。

「ちょ、何して、やめてください! 冗談ですよね? カカシさん!」

 黙々と自分も服を脱ぎだすカカシに恐怖がつのり、のしかかってくるカカシを突き飛ばそうとするもあっけなく両腕を取られ、ワイヤーで一括りに拘束される。

「暴れると怪我するよ」
「やめろ!」
「気持ちよくしてあげるから」

 そう言ってイルカ先生を抱え、敷きっぱなしの万年床に転がすカカシ。
 馬乗りになって衣服を全部剥ぎ、自分も全裸に。嫌がって全力で抵抗するイルカ先生のペニスをきつめに掴み、抵抗を和らげようとする。

「ひっ」

 と思わず上擦った声を上げて恐怖するイルカ先生。
 用意しておいたローションをイルカ先生の股間に垂らし、後ろへ指を突っ込む。
 ビクッと震えるが、貞操の危機に再び全力の抵抗を見せるイルカ先生。
 カカシを蹴り上げようとした足を掴み、そちらもワイヤーで固定するカカシ。

(ちょっとバイオレンスでえっちな、初めての夜の描写をお好みで入れたり入れなかったりしてください)

 嫌がるイルカ先生を押さえつけて無理矢理ことに及んだカカシだが、イルカ先生も徐々にカカシのテクニックに陥落してメロメロになる。最終的には理性を奪われるところまで追いつめられて、カカシの背中に腕を回しながらもっと、と強請ってしまうところまでいったので、カカシはイルカ先生は口では嫌だ嫌だと言いつつも、やはりアスマの言った通り、本当はして欲しかったんだなと勝手に思い込む。






 朝、イルカ先生起床。
 カカシの姿はもう無かった。
 胸や腰回りにしつこく突けられたキスマークを見て、上忍に無理矢理力でねじ伏せられた屈辱と怒りがふつふつと湧いてくる。
 起き上がろうとすると、腰に強烈な痛みが走る。

「ちくしょう……今度会ったらぶん殴ってやる!」

 怒り心頭のイルカ先生。
 痛みに腰を押さえつつも悪態をつきながら切なく出勤。



 上忍待機所でアスマと並んでソファーに腰掛けているカカシ。
 アスマが面白そうに昨晩の様子を探っている。

「よー。どうだった?」
「うまくいったよ」
「おお、やったじゃねえか! イイ感じにいったか」
「うん。お前が言ってた通り始めは嫌だって抵抗したんだけど、強めに押してみた。可愛かったよ」

 抵抗という言葉に若干引っ掛かりつつも、上手くいったみたいだからまあいいか、と聞き流し頷くアスマ。

「控え目な女は多少強引にいかねえと進展はしねえもんだ。晴れて恋人同士になれたわけだな。良かったじゃねえか」
「うん、世話になったね」
「だがな、肝心なのはこれからだぜ」

 カカシに指を突き立てて語るアスマ。

「ほんとに惚れてんだったら、モノにしたからって気を緩めて相手を雑に扱うんじゃねえぞ。プレゼントはマメにしろ。記念日なんてのも大切だ、そういうのを小マメにして相手を飽きさせず気持ちを持たせ続けることが長続きの秘訣だ」
「そうなんだ」
「いやーしかし今まであれだけ他人に執着しなかったお前がなぁ」

 アスマは感慨深げにうんうんと頷く。何だかんだでカカシの恋愛が上手くいけばいいと友人として思っている。

「うまくやれよ」
「うん」
「近々奢れよ」





 任務の為に数日里を空けたカカシは、高級料亭の弁当を手土産にイルカ先生の家に上がり込む。インターホンも慣らさず入って来たカカシにぎょっとするイルカ先生。
 だがすぐに数日前強姦されたことを思い出してカッとなり、カカシに殴りかかる。
 無言ですっとよけるカカシ。

「急にどうしたんです?」
「どうしたもこうしたもあるか! よくもぬけぬけと俺の前に現れたな!」

 冷静に弁当をちゃぶ台に置くカカシに、もう一度殴り掛かるがまたすっとよけられる。

「よけるな!」
「何を興奮してるの」
「一発殴らせろ!」
「何で?」

 米神に青筋を立ててブチ切れるイルカ先生。果敢にももう一度カカシに殴り掛かるが、やはりよけられて後ろから羽交い絞めにされる。

「ちくしょう! 放せ!」
「何を怒ってるんです?」
「はぁ!? わからねえってのか!」

 イルカ先生に怒鳴られて少し考えるカカシ。
 うまくいっていると思い込んでいるのでイルカ先生が怒っている理由がわからない。
 初夜の後、何も言わず任務に出掛けて数日放っておいたことを怒ってるのか、それとも照れ隠しなのか。
 前も随分抵抗したし、もしかしてイルカ先生はMで、今日はこういうプレイがしたいのかな、とピンとくる。

「そっか、こういうのが好きなんだ。ちょっと意外」
「意味わからねえこと言ってんじゃねえ! 放せ!」
「うん、わかった。でもせっかくなら布団でした方が色々無理な体勢も出来るし、いいよね」
「はぁ!?」
「こっちでしよう」
「だから何言って……放せー!」

 暴れるイルカ先生を羽交い絞めにしたままずるずると寝室に引きずって行き、カカシはこの日もイルカ先生の抵抗をものともせず裸に剥いて行為に励む。イルカ先生は激怒しながらも最後はメロメロになってしまい、カカシの誤解は解けないまま関係が続く。





 それからも、昼となく夜となく時間があればイルカ先生の家に押し掛けるカカシ。
 イルカ先生は激怒し続けているが、上忍のカカシをどうしても力では追い払うことが出来ず、殴り掛かってもよけられて苛立ちがつのるだけなので、仕方なく苛々しながらもそのまま放っておくことにする。
 電波な上忍に目を付けられて、里で性処理の道具にされたと思っていたが、その割には家に来る時は必ず手土産を持ってくるし、嫌々ながらも事に及ばれてしまい、足腰が立たなくなった後は腰のマッサージなどもしてくれる。
 カカシはイルカ先生に、金で買うことの出来るあらゆるものを贈る。
 日用品から高級な食器、イルカ先生がずっと憧れていた銘の武器、ブランド物の時計等。
 最近では手が空いていれば家事もするようになって、イルカ先生は心底意味がわからないが、ムカつくのでカカシから与えられるものは遠慮しないで受け取ることにした。



 ある日の昼下がり、ふて寝をしているイルカ先生にカカシがマッサージをしていると、イルカ先生の家のインターホンがぴんぽーんと呑気な音を立てて鳴らされた。

「はーい」

 と返事をして扉を開けるのはカカシ。イルカ先生はふて寝を続けているが、配送業者が二人、明らかに大型の電化製品を運んで家に入ってくる。
 勝手に人の家の大型家電を買い替えたらしき非常識なカカシに驚くイルカ先生。

「な、な……」
「それ、こっちの部屋にお願い」

 驚いているイルカ先生に構わず、勝手に業者を部屋に上げる。カカシの買った家電は一つではなかった。

「なんだそれは!」
「何って、洗濯機だけど」
「そういうことを言ってるんじゃねえ!」
「ドラム式全自動洗濯機」
「そんなことは見ればわかるんだよ! 何で勝手に俺の家の洗濯機を!」
「俺ら職業柄汚れ物多いし、こっちの方が楽でしょ。男二人で溜まりやすいし、これなら風アイロンで洗濯終わった後放っておいても皺にならないよ」
「自分の家に帰れ!」
「あ、それはこっちにお願い」
「なんだこれは!」
「エアコン」
「だからそういうことじゃねえってんだよ!」
「前に効きにくくなってきたって言ってたでしょ」
「サーキュレーション気流、うるおい加湿、その上自動お掃除機能つきだと!?」
「便利そうでしょ?」
「ふざけんな! この部屋何畳だと思ってんだ!」
「空気清浄機能もついてるよ」

 ずんずん家電が入れ替えられている状況をわなわなと震えながら見ているイルカ先生。この頃にはどんなに実力行使で殴り掛かっても絶対にカカシには当たらないことを嫌というほどわかっていたので、成すすべなく見守ることしか出来ない。

「あ、それはそっちの部屋に」
「まだあんのか!」
「冷蔵庫。今ある奴は小さくて買い出ししても入りきらないことあるから」

 ゆうに2メートルはある大家族用の冷蔵庫に買い替えられてしまった。

「だからそれはあんたの食糧が増えたせいだろ! 帰れ! 帰ってくれ!」
「何を怒ってるの。アナタだってちょっと買い出ししてきたら材料入りきらなくて困ってたじゃない」
「いつだよ!」
「初めて飯食わせてくれた時」

 自分でも言ったかどうか忘れた独り言を、よく覚えてんなと呆れるイルカ先生。
 業者が全ての設置を終えて帰って行ったあと、部屋に立ち尽くし、イルカ先生はまだわなわなと震えている。

「どうしたの? 嬉しい?」
「嬉しくねえよ! この部屋何畳だと思ってんだ! こんなでかい家電入れたらただでさえ狭い部屋がもっと狭くなるだろ!」

 部屋を見回し、顎に手を当てて考えるカカシ。

「確かに」
「わかったら返してこい!」
「まあまあ。それよりイルカ先生、そろそろ召集の時間じゃない? これから一週間の里外任務でしょ?」
「そうだよ! いいか、俺が任務行ってる間に何とかしとけよ!」

 ずばっとカカシに向かって指を差し、怒りと混乱で興奮冷めやらぬイルカ先生。
 そんなイルカ先生に再度顎に手をかけ、考え込むカカシ。

「ウン。わかった」
「本当にわかったんだろうな」
「イルカ先生が帰ってくるまでに何とかする」
「絶対だぞ」
「うん」

 やけに素直なカカシに不気味さを感じつつ、召集時間の迫るイルカ先生は「絶対だぞ」と繰り返し念を押し、任務に持って行くための冷水を取り出そうとクリスタルドアの冷蔵庫を開ける。

「真空チルド室じゃねえか!」
「入れてから一週間経ったハムやケーキもそのままの鮮度が保たれるんだって。鮮度や風味、味も落ちないらしいよ。お互に長期の任務が突然入っても、これなら安心でしょ」
「うるせえ!」
「嬉しくないの?」
「うるせえ! 絶対返品してこいよ!」

 ドスドスと忍びらしくない足音を響かせぷりぷりと出掛けて行くイルカ先生。





 一週間の任務が終わり、イルカ先生が帰還する。
 あのイカレた上忍が自宅で待ち構えているかと思うと心底腹立たしいが、出掛ける前の大型家電たちをきちんと返品したか気になっていたのもあり、しぶしぶ自宅に帰る。

「ただいま……」

 疲れた声で扉を開けたが、中を見たイルカ先生はそのまま一度扉を閉める。
 米神を押さえて蹲り、頬を思い切りつねってから、おしっと気合を入れて再びドアノブに手を掛ける。
 案の定、カカシの呑気な声が出迎えた。

「おかえり」
「こ、こ、こ……」
「そんなとこに突っ立ってないで中に入ったら? 荷物置きなよ」

 まるで自宅の様なカカシの言いざまだが、怒りよりも驚愕が勝り、イルカ先生はばっと部屋を飛び出す。
 そして隣の部屋のインターホンを激しく鳴らす。
 ガチャっと扉から出てきたのは何故かカカシ。

「なに?」
「なに? 何だって? それはこっちの台詞だ! 何だ、何したんだ俺の家に!!」
「ああ、隣の部屋が空いてたみたいだから、壁ぶち抜いて広くしてみたんだけど」
「何やってんだ! 追い出したのか! ここに住んでた人を!」
「違うよ、急に引っ越したんだよ。ちゃんと大家にも了承得たし」

 それを聞いて脱兎のごとく飛び出したイルカ先生。そのまま大家の家へ。
 大家の家の扉をドンドンたたく。

「すみません! あの!」
「誰だいこんな時間に……ああ、イルカちゃんかい」
「あの、俺の部屋なんですけど」
「ああ、イルカちゃんの部屋のリフォームね。話を聞いて驚いたけど、丁寧で気のいい上忍さんだねえ。綺麗になった? よかったねえ、いいお友達がいて」
「で、で、でも、隣に住んでた人は……」
「ああ、丁度少し前から引っ越したいって言っててね、空室になって次の募集をかけないとと思ってたんだけど、あの上忍さんが部屋を広くしたいっていうからさ。リフォームの費用は全部もつし三倍の家賃を払うからどうしてもっていうんで。こちらとしても有難い話だよ。気前のいいひとだねぇ」

 ガクリと項垂れるイルカ。とぼとぼとリフォーム済の自宅に戻る。

「おかえり」

 二度目のカカシのおかえりを無視して恐る恐る中に入る。
 部屋を見渡すと、壁紙は張り替えられ、畳はフローリングに、足の長いダイニングテーブルは高級そうな一枚板で削り出された杉の木。万年布団は処分されたのか、ベッドルームらしき部屋には分厚いマットレスのキングサイズのベッドが一つ。
 イルカはへなへなとその場に座り込む。
 確かにボロく、慎ましやかな生活であったが、イルカは自分の過ごす部屋が気に入っていた。
 そんなことには構いもせず、勝手に人の家をリフォームしてしまったカカシに対して怒りは最高潮に。

「どうしてこんな勝手なことをするんだ!」
「だって、部屋が狭いって言ったじゃない」
「俺の布団捨てたのか! 勝手に!」
「敷布団が薄くて背骨を悪くしそうだったから」
「うるせえ! ボロい家で悪かったな! 帰れよ!」
「だから綺麗になったじゃない」
「もういい!」

 怒るイルカ先生は額当てとベストを脱ぎ捨て、ベッドルームの扉を乱暴に開けて閉じこもる。

「イルカ先生」
「入ってくんな! 絶対にだ! 入ってきたら俺がこの家から出てくからな!」

 どんなに怒ってもここまでされてしまったらもう元の部屋に戻すことは出来ないので、投げやりな気持ちでベッドに身を投げ出す。
 ベッドの余りのふかふかさに何故か余計に怒りがつのる。

「何だこのベッドは!」
「シモンズだよ。枕も同じブランド」
「シモンズか! シモンズなのか!」

 高級ベッドメーカーの名前を叫ぶイルカ先生が気になり、寝室の外から声を掛けるカカシ。

「そんなに興奮するほど嬉しい?」
「うるせえんだよ!」

 ボスンと枕に頭を埋め掛け布団を被る。
 カッと目を見開き額に青筋を立てぶるぶる震えるイルカ先生。

「羽毛か! 掛け布団は羽毛なのかー!」

 枕に突っ伏してしばらくカカシに呪詛の言葉を吐き付けていたが、任務帰りの疲れた体を包み込むベッドの余りの寝心地の良さに、何時の間にか快適な眠りを得てしまうイルカ先生。


 それから数日後、本部棟の中庭で話し込むカカシとアスマ。

「よー。同棲生活はどうだ?」
「うーん。よくわかんない」
「あ? 何が?」
「古い家電を新しくしてあげたら、部屋が狭いって言うから倍くらいに広くして、ついでにリフォームもしてみたんだけど、それが気に入らなかったのかな? 最近まともに口利いてくれなくてさ」
「勝手にかぁ? そりゃおまえ、センスが悪かったんじゃねえのか。相手の好みに合わなかったんじゃねえの?」
「ベッドは泣くほど喜んで興奮してくれたみたいなんだけど」
「お、何買った?」
「シモンズの一番良い奴」
「いいじゃねえか」
「でしょ? コミュニケーションとる場所だから快適にしないと。ベッドの中では素直で可愛いのよ。最近余り抵抗もしなくなってきたし」

 やはり抵抗という言葉が何やら引っ掛かるが、まあ喧嘩しつつも上手くやってんだなと把握したアスマ。

「まさかおまえがなぁ……その内身を固めるつもりでもあんのかよ」
「うん。できればそうしたい」

 マジかよ! と驚くアスマ。

「そんならあれだ。もうアレは送ったか?」
「何を?」
「指輪だよ、指輪」

 首を傾げるカカシ。

「そんなの欲しがるかな?」
「バカおめえ、人生を一区切りする儀式だろ。このままなあなあで過ごしていってタイミング逃したらどうすんだ。結婚はまだにしろ、相手への誠意と覚悟、気持ちの証明をするにあたり指輪の効果は絶大だ。相手の女も将来を意識し始めるに違いねえ」
「そういうものかな?」
「そういうもんだ」

 腕を組み、うんうんと頷くアスマ。
 カカシ一人で指輪の購入に行くと、またリフォームの時と同じように相手の趣味にそぐわないものになるかもしれないからと、一緒に選びに行くことを勧める。
 カカシは素直にアスマの言葉に頷き、次の休みに宝飾店に連れて行こうかなという会話をする。
 それをたまたま昼休みで、中庭でカカシに与えられた弁当を食べていたイルカ先生が聞いてしまう。

 聞いていたのはアスマの~
 「まさかおまえがなぁ……その内身を固めるつもりでもあんのかよ」 から、指輪の必要性を語り、「そういうものかな?」「そういうもんだ」
 ~の辺りまで。

 アスマが「相手の女も~」と言っていたので、自分と一緒に生活していたにも関わらず、カカシに付き合っている女がいたのだと勘違いする。
 イルカ先生は、自分はカカシにとって単なる性処理の相手で、後ろめたいことがあるからあれこれ与えてくるのだと思っている。付き合っている女性がいるのに、何故自分のところに来るのかと悩むイルカ先生。
 カカシと自分の関係はカカシに強要されて始まったものであるが、自分の中でもやもやとした感情が消えない。


 先日聞いてしまったカカシとアスマの会話を思い出し、カカシが結婚を決めればこの関係も終わるのだと思うと無意識に傷ついていたが、この時点ではイルカ先生は、自分ではその感情に気付かない。
 カカシに美味い食事を与えられ、快適なベッドを提供され、家事を済まされることにより生活水準と健康度がうなぎ上りでつやつやになっていくが、寂寥と無意識下の心の傷は広がっていく。だがそこに蓋をして、さっさと結婚すればいい、そうすれば自分は解放されて晴れて自由の身だ……と思い込む。





 そんな中で、ある日、自宅のインターホンが鳴らされる。
 カカシが玄関に出て対応しているので、またカカシが勝手に何か買ったのだろうと思い、いつものことだと気にせずふて寝していると、玄関に呼ばれた。
 不承不承出て行くと、いつも訪れる業者とは雰囲気の違う、きっちりと正装したお客が大きなアタッシュケースを広げていた。
 その中には見たこともないような、大きな宝石がついた指輪が幾つも並んでいる。
 業者の訪問だと思っていたが、この日来たのは里一番の有名宝石店の外商だった。

「どれがいい?」

 と、何の前触れもなくイルカ先生に尋ねてくるカカシ。
 走馬灯のように先日のカカシとアスマの会話が蘇る。それと同時にカカシと過ごした日々が駆け巡る。
 まさか自分の女の婚約指輪を自分に選ばせるつもりなのかと、唖然とするイルカ先生。
 状況が把握できず茫然としていると、外商が一際高そうな指輪をカカシに勧める。
 カカシがイルカ先生に「これはどうかな?」と聞いて来たタイミングでイルカ先生は我に返り、感情が爆発してカカシと業者を押し退け裸足で家を飛び出す。

 さすがのカカシも驚いてイルカ先生の後を追うが、イルカ先生は中忍とは思えないスピードで逃げて行く。
 やっとのことで追いついたイルカ先生の腕を掴み

「急に飛び出してどうしたの?」

 と振り向かせると、イルカ先生は泣いてこそいないものの、目と顔を真っ赤にしてカカシを睨み付けた。

「放せ!」
「放せって、裸足じゃないの、そんな格好でどこに行くの」
「どこだっていいだろ! アンタには関係ない!」
「何興奮してるの。落ち着きなさいよ」

 冷静なカカシに、イルカ先生は余計に頭に血が上ってしまう。

「もうアンタの身勝手に付き合えない、勘弁してくれ。これ以上俺を惨めにさせるな!」

 カカシを振り払おうとするが、カカシの力には敵わない。

「ちょっと何を言ってるのかわからないんだけど。そんなに気に入らなかったの?」
「わかんねえのはアンタだろ! 付き合ってる相手がいるのに何で俺のところに来るんだ! 」
「え?」
「恋人への指輪をセフレに選ばせるなんて、アンタって人はとんでもなく無神経な奴だとは思ってたけど、信じらんねえ!」
「ん?」
「勝手に好きなの選んで持って行けばいいだろ! そんでもう二度と俺の前に現れるな! 俺と違って何でも素直に喜ぶんじゃねえのかアンタの彼女なら」
「ねえ、ちょっと待って」
「うるせえさわんな!」
「あの指輪はアンタにだけど?」
「ああ!? 俺にお…………ん?」
「ほんとは一緒に店に行こうと思ってたんだけど、忙しくて中々行けないし、適当に良さそうなもの見繕ってもらって幾つか持ってこさせたんだけど、やっぱり直接店で選んだ方が良かった?」

 咄嗟に意味を理解できず、混乱するイルカ先生。

「俺? 何で……」
「恋人には指輪を送るものなんでしょ?」
「恋人?」
「うん」
「誰が?」
「アンタが」
「俺と、誰が?」
「俺とアンタが」

 スペースキャットの表情になるイルカ先生。

「いつから?」
「いつって、始めから」
「始めって?」
「イルカ先生が飯食わせてくれて、初めて寝た夜から」
「は?」
「え? なに?」
「俺はアンタの性欲処理の相手なんじゃ……」
「何でそうなるの」
「俺が聞きてえよ!」
「だって、ちゃんと口説いたじゃない。昼間受付やアカデミーで子供たちの相手をしてる時の、素朴で純な感じがして可愛いって言ったでしょ? そんな貴方が、ベッドでどんなふうにいやらしく乱れるのか見てみたい、って。始め嫌がる素振りをしてたけど、恥ずかしかったからなんでしょ?」
「そんなわけねえだろ! 突然男に無理矢圧し掛かられて、ありゃ強姦っつうんだ! それにそれは口説いてるんじゃねえ、ただのセクハラだ!」
「えっ……」

 イルカ先生の台詞に内心青褪めるが表情に出せないので、すっと表情が消えるカカシ。

「じゃあ俺とイルカ先生は」
「付き合ってません」
「だって初めての時だって、最後喜んでたじゃない」
「た、確かにその……悪くはなかったけど、好きで抱かれたわけじゃ……」
「じゃあイルカ先生は、俺のこと好きじゃないの?」
「そんなの当たり前……」

 そこまで言い掛けて、無表情のカカシの目からすーっと涙が零れる。
 ギョッとするイルカ先生。

「な、何泣いて……」
「俺のこと好きなわけじゃなかったんだ。今までずっと」

 イルカ先生は無言で涙を流すカカシに焦り、人目についてはまずいのではと辺りをキョロキョロ見回しながら、「とにかく一度家に戻りましょう」と、カカシを家に連れ帰る。


 居間に正座して向き合い、事の顛末を聞くイルカ先生。
 あんなんじゃわかるわけない。そもそもやり方が間違ってるし、順番が違うとカカシを叱る。
 好きな人をいきなり押し倒してはいけません
 相手の話によく耳を傾けること
 やたら高価なものを買い与えるよりも、よく考えて心のこもった贈り物をすること。
 自分の考えていることや気持ちはちゃんと口に出して相手に伝えること。

「でないと貴方の考えてることはさっぱり俺にはわかりません」
「わかった」
「そうですか」
「俺、イルカ先生が好きです」
「それで?」
「俺と付き合ってください」
「そうです、これが適切な順序ってもんです。いきなり体を求めるなんて、そんな野蛮なことをしてはいけません」


 何だかんだでカカシに情が移ってしまっていたことに気付いたイルカ先生は、真っ赤になりながらカカシの告白を受け入れる。
 いつも感情を表情に出せなかったカカシが、心底嬉しそうに笑う。


 後日、カカシが恋人になったイルカ先生をアスマに紹介しに行き、アスマを驚かせる。



~fin~