【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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(熱い……苦しい……)

ぼんやりと霞む視界の中には、白地にまだらの毛色の混じった獣の前肢がある。
ここに辿り着いたとたん、あまりの苦しさにイルカは倒れ込むように眠りについた。そして途切れた意識を取り戻した時には、その身体は既に人としての形態を手放していたのだ。
発情したままで熱が籠り、更に吸血を拒んだイルカの身体は衰弱しきり、とうとう猫になってしまっていた――あれほど人で在りたいと願っていたのに。
だが力なく投げ出された自分の手だった物を眺めながらも、心はカカシのことで満たされていた。

「イルカ……、あぁ、イルカ……!」

上擦った声でイルカの名を耳に注ぎ入れながら、カカシは何度も何度もイルカを貫き、穿ち、果てた。
それは身体の隅々まで刻まれた、とても甘美な記憶。
例えこの先人に戻ることがなくても、イルカはこの記憶さえあればもう十分幸せだった。
いずれその記憶すら無くなり、ただの猫になってしまっても。
その先にあるのが死だったとしても。

(カカシさん……)

そう呟いたはずの声は、にゃぁ、と弱々しく暗がりに溶けた。





テンゾウと別れたカカシは、一目散にイルカのアパートに向かった。
あの日。
カカシが思うままにイルカを抱き尽くした日。
何度目か分からないほどの吐精のあと、欲望にぎらついていたイルカの目に、ふと微かな理性の光が宿った。するとイルカは蒼白になり、カカシが止める間もなく瞬身で消えてしまったのだ。

(きっと、俺のことが怖かったんだ。媚薬さえ抜けてしまえば、あの時の俺はケダモノ同然だったことに気付いたはず……)

カカシの足がやや鈍る。
先日は羅刹丸に追い返され、イルカへの引け目もあって引き退がってしまったが。今日は何としてでも会って、自分の非道な行いを詫びたかった。
そしてその上で自分の気持ちを伝えよう。愛してるからといって決して許される行為ではなかったが、許されなくても、他に愛する人がいたとしても、イルカへの想いは揺らがないと。もう無かったことにも、消すこともできないと、それだけははっきり伝えたい。
逸る気持ちのままに、カカシは駆けるスピードを上げた。


アパートの正面に立つと、カカシは大きく深呼吸をしてから一段、一段と階段を上った。その間にも威嚇するような気が……忍猫のシラスなのか、或いは羅刹丸なのか、判然としない気がカカシへと押し寄せてくる。どちらにせよ、やはりイルカよりも先に感づいたようだ。ドアの前まで来ると威圧的な気は怒気をも孕み、ますます重くなる。
ノックをしようと腕を持ち上げた途端、カカシは吹っ飛んだ。
アパートの二階の柵を越えたカカシの身体は、強大な圧に押され尚も宙を飛ぶ。その圧になんとか逆らいながら空中で受け身の体勢を取ったが、アパートと道路を挟んだ向かいの塀にぶつかって落ちてしまった。
無様に地に伏したカカシの目に、裸足の足が見える。

「……あれだけ言ったのに、まだ諦めなんだか」

カカシが顔を上げると、憤怒の形相の羅刹丸が立っていた。立ち上がらないまでも、せめて起き上がろうともがいたが、地面に縫い付けられたかのように動けない。

「イルカは貴様には金輪際会わせぬ。さっさと尻尾を巻いてどこぞにでも去るがよい……儂の忍耐が切れて貴様を殺さぬうちにな」

カカシを見下ろす左右色違いの目は、瞳孔が縦に細く引き絞られて冥い輝きを放っていた。白銀の髪はゆらりと逆立ち、その全身からは幾つもの静電気のような青白い小さな光が弾け、鋭い気が周囲に渦巻いている。カカシを圧し潰す力は更に強くなり、羅刹丸の言葉に嘘がないことをカカシは悟った。
だが、それでも――

「イルカ、せんせに……言わなきゃ、ならな……ことが、ある……っ。まず、謝って……」
「黙れっ! 謝罪など要らぬわ!!」
「か、は……っ」

カカシの肺から酸素が叩き出された。
羅刹丸の怒気に身の危険を感じたカカシは、ここでようやくチャクラで身体を覆う必要性に気付く。それでも羅刹丸の気が圧迫してくるが、少なくともなんとか両腕を踏ん張って起き上がることはできた。

「俺はどうしても、イルカ先生に会わなきゃならない。会って、顔を見て、俺のしたことを謝りたい。その上で、先生のことがとても大切な存在だと……愛してると伝えたい」
「大切な? ……フン、それは貴様が護るべきこの里よりもか?」
「そうだ」

間髪入れず即答したカカシに、羅刹丸はピクリと片眉を上げた。

「儂が何も知らぬと思うなよ、犬使い。貴様は木の葉を守護する人犬族の末裔じゃろう。なのにその使命を捨て、イルカへの想いに殉ずると言うのか?」
「イルカ先生はここの人たちを、木の葉の里を慈しんでいる。俺はそんなイルカ先生を知っているし、信じている。その先生の心を、志を、俺は護りたい。ならばそれは里を守護すると同義だ。でも先生が里を捨てると言うのなら、俺も躊躇わない。イルカ先生は俺の……全てだ」

いまだ剣呑な光を放つ羅刹丸の眼を、カカシは真摯に見つめて言い切った。
宵闇に沈み始めた往来で、二人の睨み合いが続く。

――と、羅刹丸の眼から光が消えた。
縦に細くなっていた瞳孔も丸く戻り、カカシに重くのし掛かっていたものも霧散した。

「……犬畜生のくせに、口だけはよく回る。しかも誰が聞いてるとも分からぬ天下の道で、ようもそこまで言うたな。ほんに犬らしく思慮の浅い奴じゃ」

そう言い捨てると羅刹丸はくるりと背を向け、アパートの二階の柵に、重力を全く感じさせない動きでひらりと跳び上がった。
そして開け放したままだったドアの前に立つと、振り返らずカカシに声をかけた。

「ついてこい……貴様に話がある」



すっかり暗くなった家の中を、羅刹丸は灯りも点けずにすいすいと奥の寝室に向かった。
カカシも玄関で下足を脱いでから、その後に続く。
部屋に入る前は緊張したが、イルカの気配はどこにも感じられなかった。事件の残務処理で今日もアカデミーだけのはずだが、残業だろうかと首をひねっていると、羅刹丸はどかりとベッドに腰掛けて片足だけで胡座をかいた。そして前の畳を顎で指し、座れと促す。
カカシは大人しく羅刹丸の前に座ったが、恋敵に対して正座をするのも癪なので、同じように片膝を立てて胡座をかく。
羅刹丸はそんなカカシを見下ろしていたが、しばらくして口を開いた。

「以前より貴様が儂らを観察してたのは分かっておった。害もないと放っておいたのが間違いじゃったな」

(……以前、より?)

羅刹丸とイルカを観察したのは、先日の背後の窓からの一回きりのはずだ。
カカシが見上げて視線で問うと、羅刹丸は片頬を歪めて嘲笑った。

「優秀な犬使い殿も、そこまでは見通せなんだか。この姿なら分かるかの?」

そう言うと、羅刹丸の姿がぐにゃりと歪んだ。白くぼんやりした塊になったかと思うと、ベッドの上にはあの白い猫の姿があった。
忍猫として常にイルカに寄り添い、カカシを威嚇していたあの――

「シラス?! あんた、シラスだったの!」
「その名で呼ぶなっ! 貴様にだけはその名で呼ばれとうないわ!!」

全身の毛を逆立て、尻尾を膨らませてシラスがシャーッと威嚇する。
だがいくら怒りを表そうとも、猫の姿では先ほどまでの威厳は感じられなかった。それがシラスにも伝わったのか、すぐに人型に戻ってしまった。

「貴様も既に察していようが……儂は人間ではない」

唐突に羅刹丸が自らの正体を暴露する。
怪しいとは思っていたが、こうもはっきり明言されたことにカカシは驚いた。
だが面には出さずに、余計な口を挟まず黙って聞く姿勢をとった。

「儂は貴様ら人間の言う妖じゃ。木の葉隠れの里などというものが出来るより遥か昔から生きておるな。……人間などにも全く興味はなかったのじゃが、数十年前か……とある事情で弱った時に、うみの夫妻に救われての。それ以来、ここ木の葉の里に住み着いておる」

羅刹丸はふいと視線を投げ、カカシを越えて窓の外を、もっと遠くを見るような顔をした。

「夫妻に産まれたイルカはたいそう可愛うてのぅ。猫の姿の儂をシラスと名付けたのも幼きイルカじゃった。二人が無謀にも九尾に立ち向かい……はかなくなった時は、儂がイルカを必ず立派な人猫族の男に育て上げると誓ったものじゃ。そして最も相応しい番を、儂が見つけて添わせてやろうとな。あんな何処の者とも知れぬ同族の女などではなく」

――あの女?
それはともかく、羅刹丸の思い出話は、衝撃的な内容をも伝えてきた。
イルカが人猫族という、人外の種族だということを。

(ジンビョウ……人猫か? 先生が俺と同じ、人外……!?)

カカシはとっさに何から聞けばいいのか分からず、口を開けてはみたが言葉は出てこなかった。
そんなカカシを見て、羅刹丸が嘲笑う。

「いくら仲が良いとはいえ、しょせんその程度よ。イルカの秘密の一つも教えてもらっておらぬ。イルカが人猫族ということも……番を見つけ儀式をするまでは、他人の体液を摂取せねば衰弱して死に至るということも」

カカシの脳裡に突如、イルカと羅刹丸のあの淫靡な吸血行為が甦る。
――イルカが涙ながらに信じてほしいと願ったあの行為には、そんな切実な理由があったのか!
だが今はそれよりも。

「……なぜだ? なぜ今、その秘密を俺に教える?」

イルカの秘密も衝撃的だったが、それ以上に羅刹丸の目的がカカシには分からなかった。こんな重大な秘密を暴露するからには、それに見合った、或いはそれ以上に匹敵する何かをさせようとしているはずだ。
なにしろ相手はカカシを毛嫌いどころか、今や殺したいほど憎んでいる羅刹丸なのだから。
だがイルカへの贖罪を求めているカカシには、怯むどころか望むところだった……イルカのためならば。
カカシは答を待ったが、羅刹丸から返ってきたのはまたもや怒りだった。

「そんな儂のイルカを……大切な掌中の珠を貴様は……貴様はあのように畜生の如く犯しおって……!」

カカシは自らの非道な行為を思い出させられ、恥じ俯いて両の拳を握りしめた。
そのカカシの様子を羅刹丸はじっと見下ろしていたが、ぽつりと吐き出した。

「イルカは泣いておったぞ……あれからずっと」

握りしめたカカシの拳がぶるぶると震え、爪が掌に食い込んだ。
だがカカシをやり込めたはずの羅刹丸の顔は、苦渋に満ちたものに変わる。

「イルカは貴様と……いや、貴様に犯されてから、一度も血を飲んでおらぬ。いずれ衰弱に耐えきれず折れると思うておったが……貴様への気持ちを甘く見ておった。このままではいずれ……」

カカシはハッと顔を上げた。

「俺への、気持ち……? いや、それよりもイルカ先生は? 今はアカデミーじゃないの?」
「イルカは昨夜から指名任務で一人で里外に出ておる。じゃが儂の古妖と、養い親としての両方の勘が告げておるのじゃ……イルカは貴様への想いに殉ずる気でおるのではないか、と」




――イルカ先生の命が危ない……!
部屋を飛び出したカカシは、先ず任務の詳細を確かめるべく綱手の元へ向かった。
羅刹丸から突き付けられた事実はどれも衝撃的で、カカシは混乱の渦に巻き込まれそうになる。だが何よりも、衰弱したイルカが死ぬかもしれないという恐怖が心臓を鷲掴みにした。
先ほどの羅刹丸の「イルカの貴様への気持ち」の言葉も詳しく問い詰めたかったが、今はイルカの安否の確認が最優先だ。
それに……その言葉の意味は羅刹丸などではなく、イルカ自身の口から聞きたかった。

指名任務でもイルカ一人が受けるなら、本来はせいぜいBランクだろう。だが今はまだ吸血事件の残務処理で、イルカの勤務状況は綱手が把握しているはずだ。
外はもう夜だったが、火影の執務室に居なければ私邸にも乗り込むつもりだった。
だがノックもそこそこに執務室に入ると、はたして綱手がまだ在室していた。

「なんだ、カカシか。いきなり何の用だ。吸血事件の犯人なら、まだ取り調べ中だぞ」

カカシはイルカの任務の詳細を訊ねようとして、ふと思い付いた。
吸血事件――吸血。そして全裸でイルカ先生の傍らに倒れていた事件の犯人の、女。

「あの女の目的はなんだったんですか」
「あぁ、あの女はどうやら発情して、大量の血を必要としていたようだね。中にはそういう種族の奴もいるんだよ」
《……イルカ先生みたいに、ですか》

護衛の暗部達に聞かれないよう、カカシは僅かな唇の動きだけで綱手に問いかけた。
綱手がじろりとカカシを見る。
そして完全な人払いを命じると、里長の顔でカカシと正面から向き合った。

「お前……何を、どこまで知っている?」
「イルカ先生が人猫族で、吸血事件に関わりがあったということを」

事件に関わりがあったというのはカカシの推測であり、ハッタリだ。だがほぼ確信に近いハッタリだった。
羅刹丸が言っていた『あの同族の女』とは、事件の犯人のことだったのだろう。同じ種族の者同士が同じ場所で倒れていたのだから、間違いなく関係がある。
それにあの時イルカは「毒でも盛られたか」の問いに首を振っていた。
――あれはもしかして、イルカ先生も発情していたんだとしたら? それなら先生のあの恥態も頷ける。……それに俺がまんまとつけこんでしまったのか。
またしても強烈な罪悪感の波に呑まれそうになるが、長年の忍の習性でそれをねじ伏せ、頭を切り替える。
そこで不意に、カカシが綱手に吸血事件の調査を命じられた時のことが甦った。

「お前達に命じた意味は分かっているな?カカシ」

お前『達』。
――そういうことか。綱手様は俺とイルカ先生と、二人の人外に命じたのね。
いや、むしろ調査のメインは吸血行為の知識的にイルカ先生だ。俺は忍と人犬族の両方の能力を買われた、実働要員と先生のガードに過ぎなかったんだろう。
あの最後の「カカシ」の言葉はきっと、イルカ先生が調査に参入する理由をクローズアップさせないためのフェイクだったんだ。

一瞬で弾き出した様々な答はカカシをひどく動揺させた。だがそれを面には一切表さず、無表情の裏に覆い隠す。今はそこを追及してる場合じゃない。それよりも……
カカシがイルカの任務について聞こうとすると、綱手の方から切り出してきた。

「実はあの事件の後、イルカが急速に弱っていってな。事件の影響かとも思って心配してたんだが……昨日急にイルカを指名した巻物の運搬任務が入った。近場だし、危険性も無さそうだから行かせたんだが、先ほどイズモが報告にきた。……イルカの指名任務は、偽装の可能性があると」
「偽装って、あの女に仲間がいたんですか? イルカ先生をおびき出す為に、そんなことまで……」
「いや、そうじゃない。偽装工作をしたのはイルカ自身だ。自分で自分に指名任務を依頼したらしい。まぁ、イルカならそれくらいは簡単だろう」

アカデミーと兼任とはいえ、受付業務を日頃からこなしてるイルカには、確かに任務依頼の偽装工作など朝飯前だ。だが、そこまでして里を出たかったとしたら、羅刹丸の勘が正しかったことになる。
――事態は深刻だ。
カカシの眉間にきつく皺が寄った。

「何か思い当たるふしがあるようだな。それは急激なイルカの衰弱と関係があるのかい?」
「理由は言えません……が、俺にも関係があると思います。なので綱手様、イルカ先生の捜索を俺にさせて下さい」

里抜けも疑われる状況とはいえ、明確な理由もなく、いち中忍を上忍が捜索するのは異例中の異例だ。だがまさかここで、「俺がイルカ先生を強姦したから」などと里長に言えるはずもない……イルカの名誉のために。
カカシはポーカーフェイスもかなぐり捨て、執務机に両手をついて身を乗り出した。

「お願いします! 俺が行かないと、恐らく先生は連れ戻せない……!」

綱手は動じることもなく、厳しい目でじっとカカシを見返した。
――数秒にも数分にも思われる、緊迫した睨み合いの時が過ぎる。
と、その顔が里長から綱手へと戻った。

「あの子のことは私だって心配してんだよ。ただでさえ普通の状態じゃないのに、あんな無茶をして……」
「……! じゃあ」
「ただし! お前の自己指名任務としてだ。里としても表立った捜索はできんから、任務自体は極秘にしておく。イズモにも口外無用と釘を刺してあるしな。最もあの心配そうな様子じゃ、そんな必要もなかっただろうがね。カカシ……必ずイルカを連れ帰っておいで」
「御意……ありがとうございます綱手様。イルカ先生は必ず、俺が」


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