【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old (カテゴリ内↓new ↑old)
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old (カテゴリ内↓new ↑old)
カカシはイルカの任務の詳細を検討し、あうんの門を出た所で八忍犬全てを口寄せした。
忍犬たちもイルカのことは知ってるので話は早い。簡単に事情を説明すると、忍犬たちは扇形に広がってイルカの痕跡を捜しに散っていった。
イルカとのタイムラグはほぼ丸一日。
行き先は木の葉の北に位置する火の国の都にある、忍刀も扱う刀鍛冶となっているが、間違いなく嘘だ。だが追跡を想定してるだろうから、それをかわすため、あえてその方向に向かったかもしれない。全くの逆方向かもしれない。優秀なイルカのことだから、幾つものフェイクを残してるかもしれない……そんな余裕があれば、だが。
捜索において最初の一手は重要だ。確実を期すために、カカシは初めから総力戦で臨む態勢にしたかった。
そこでふと思い付いて、羅刹丸にこれから捜索に出る旨を記した式を飛ばした。イルカの情報を教えてくれたし、何よりも養い親として気を揉んでいるだろう。もしかしたら既に捜しに出てるかもしれないが。
早くもグルコから痕跡発見の合図の遠吠えが、遠くから短く響く。
カカシはその場へと向かうと、地面に残ったイルカのチャクラを感じ取った。どうやらフェイクではないようだ。だが樹上を渡ったのではなく地面に残った弱々しいチャクラと、フェイクを工作する余裕の無さを思うと焦燥感が募る。
――焦るな。焦りは禁物だ。
カカシは己れに言い聞かせた。集まってきた忍犬たちが、カカシの指示でまた扇形に散っていく。遠回りなようだがこの方式が一番確実に痕跡を捉えられる。弱っていても、相手は歴代火影の懐刀と言われたイルカなのだ。
忍犬たちと駆けながら、カカシは先ほどの羅刹丸とのやり取りを思い出していた。
羅刹丸は「貴様への想いを甘く見ていた」と言っていた。「イルカが貴様への気持ちに殉ずる」とも。
そして何よりも「番を見つけ儀式をするまでは、他人の体液を摂取せねば衰弱して死に至る」の言葉。
ということは、番を見つけて儀式をすれば、先生は体液を摂取しなくてもよくなるのだ。
だけどイルカ先生は、人猫族の女の誘惑を退けた。羅刹丸の言いようだと、恐らくは番を宛がわれることも断っている。そして俺が抱いた後は、番を見つけてもいないのに羅刹丸からの吸血を拒絶していた。
――これはもしかして。
もしかして、イルカ先生が俺と番になりたいから、羅刹丸の体液を拒んでいる、という意味ではないのだろうか。
あぁ、
そんな、
まさか……!
こんな時だというのに、カカシは胸に広がる期待と興奮を抑えきれなかった。
だからといって、イルカの発情につけこんで強姦してしまったという事実は決して消えないが。
――イルカ先生
無理やり身体を開かれ苦痛に叫んでいたイルカの、痛ましい姿が脳裡にはっきりと浮かんで、カカシは思わず呻き声をあげた。傍らを走るパックンが不審げな顔で見上げてきたので、カカシは「ごめん、なんでもないよ」と謝り、考え事に戻った。
イルカ先生には誠心誠意、謝らなければならない。今頃は冷静になり、憎しみや嫌悪感しか残ってないかもしれないが。
それでもイルカ先生の気持ちが自分にあるかもしれないという歓びは、全く減ずることはなかった。
だがとにかく先生を見つけなければ、確かめることもできない。自分の畜生にも劣る行為を詫びることも。
そしてそれがただの性欲ではなく、イルカ先生への愛情からだと、イルカ先生を心底抱きたかったからだと伝えなければ。
――イルカ先生
あなたは必ず俺が見つけ出す
だからお願いそんな簡単に捨てないで
俺の何よりも大切なあなたの命を……!
イルカの痕跡を辿り、八忍犬と何度も扇形の陣形を繰り返す。途中で気休めのようなフェイクが二ヶ所あったが、やはり鍛冶屋のある都の方角には向かってなかったようだ。
だいぶ火の国を南下してきた所で、シバの対象発見の合図が聞こえてきた。
瞬身でシバの所に到着すると、シバは発見の興奮もなく、むしろ自信なさげに報告をしてきた。
「この先の洞窟にイルカがいる……と思うんだよね。なんかイルカに他の生き物の気配が混じってる……猫、かなぁ? とにかくちょっと変なんだ。でもイルカなのは間違いないよ」
捜索の得意なシバが言うのだから、間違いはないだろう。
だが――他の生き物の気配が「混じってる」? 羅刹丸が先にイルカ先生を見付けたのだろうか。
……まさか。
「イルカ先生……!!」
カカシは慌ててシバに見張りと他の忍犬たちへの伝言を頼んだ。そして洞窟の入り口に張られた結界を力ずくで押し破ると、大声でその名を呼びながら中に飛び込んだ。
イルカの敏感な耳が、自分を呼ぶ声を捉えた。
――カカシ、さん?
だがイルカはそれをすぐに打ち消した。
里抜けが発覚したからといって、こんなに早く見つかるはずがない。しかも木の葉で最も有能で多忙な男が、わざわざ中忍を捕らえにくる訳がないし、綱手がそれを許さないだろう。
その時もう一度、今度ははっきりと自分の名が聞こえた。カカシの声で。そしてカカシの気配も同時に、物凄いスピードでイルカのいる洞窟の奥まで向かってきている。
(あぁ、やっぱりカカシさんだ! なんであの人が……でも今は逃げなきゃ。隠れてやり過ごさないと)
イルカは震える四肢に力を入れて立ち上がった。
と、目の前に人の立つ気配がした。
イルカが顔を上げると、そこには何度も姿を思い浮かべ、声を反芻した――
「……イルカ先生、だよね」
(イヤだ……見ないで! 人ではなくなってしまった、あさましい獣の俺を……見るな!!)
逃げようとしたイルカの胴体をカカシが優しく掬い上げ、ベストの前を開けた胸に抱き入れる。
「お願い、逃げないで……こんなに弱って、可哀想に……。イルカ先生にずっと会いたかったんだよ。会って謝りたかったんだ」
カカシがパサついたイルカの三色まだらの毛並みを撫でさすり、顎に触れ、唇を寄せて語りかける。
そのあまりの気持ちよさに、イルカは我知らず喉をごろごろと鳴らしていた。
「……ごめんね、イルカ先生が発情して辛い思いしてた時に、俺は……酷いことしたよね。いくらでも謝るよ、謝りたいんだ。それで俺の気持ちも聞いて欲しいの。許してくれなくても、受け入れてくれなくても。だからまずは一緒に里に帰ろう?」
カカシの言葉に、イルカは絶望的な気持ちになった。
発情のことを知ってるなんて……。
恐らく羅刹丸がイルカの秘密を打ち明け、頼み込んだのだろう。イルカを里に連れ帰ってくれと。そしてできることならイルカの番になってやってくれと。
(そんな紛い物の優しさなんて……俺が欲しいのは、そんな憐れみじゃない!)
イルカは牙を剥き出し、カカシの鼻先でシャアアアっと威嚇した。
するとカカシは今にも泣き出しそうな、子供のように頼りなげな顔でイルカを見返した。
「イルカ先生、やっぱり俺が嫌い? 憎い? 先生の弱みにつけこんでケダモノのように犯したから? ……そうだよね、恐かったよね。ごめんね、本当にごめんなさい……」
(違う、カカシさん、それは違う! 俺が、俺の方がカカシさんを欲しがったんだ! 発情したからって、よりにもよって大好きなカカシさんを、俺が欲望のままに襲って……!)
カカシの思い違いに驚いたイルカは、思わずカカシの胸にすがりついていた。
アンダーを掴んだつもりの前肢からは、ニュッと伸びた爪がカカシの肌に食い込み――
(血、だ……カカシさんの、血の、匂い……!)
未だ発情の収まってないイルカは、カカシの血の匂いにぐらりと眩暈を覚える。
だがここでカカシの血を貪ったら前回の二の舞だ。それでは何のために里抜けまでして、独り覚悟の上でここまでやってきたのか分からない。
イルカは必死にもがいて逃げようとしたが、その動きが余計にカカシの手や腕に傷を増やしていった。
鼻腔に充満する血の匂いにイルカは、にぎゃぁ と苦しげに鳴き声をあげた。
「どうしたのイルカ先生! 苦しいの?」
暴れるイルカを落とすまいと、カカシは胸の中に抱え込んだ。するとますます血の匂いが増して、イルカはぎゅっと丸めた身体に顔を埋め、ぶるぶると震えた。
この時になってカカシは、ようやくイルカの毛を汚す自分の血に気付いた。
「血……そうか、血を飲みたいんだよね? 羅刹丸のじゃなくて俺の血が欲しいの? イルカ先生お願い、俺の血を飲んで……」
カカシはイルカを抱えたまましゃがみこみ、すっぱりと傷口の開いた腕をイルカの顔の辺りに差し出す。
それでも頑として動かないイルカに、カカシはゆっくりと語りかけた。
「……俺はイルカ先生が猫のままでも全然構わないよ。……ううん、それって、すごくいいかも。今までの仕事は出来ないから、受付で他のヤツに笑顔を向けることもなくなるよね。それで先生とずっと一緒にいられる。一緒に暮らして、毎日イルカ先生と過ごせるなんて、すっごく嬉しいな。……あぁ、俺の忍猫として契約しちゃおうか。そうしたら、猫のイルカ先生とずうっと一緒だよね……」
カカシがうっとりと唄うように奏でる言葉の羅列は、とても甘美で。
イルカが思ったような、羅刹丸に頼まれて言わされているような感じは全く無かった。
(……信じても、いいんだろうか)
――カカシさんを。
俺の秘密を知った上で、一人でここまで追いかけてきてくれた、彼を。
「あぁでも、イルカ先生がイヤなら、もちろん俺のところに来てくれなくていいの。ちゃんと元気で笑っててくれれば、それで。猫でも人でもどっちでもいいんだ。イルカ先生がイルカ先生で、幸せでいてくれればもういい。……だからね、お願い。俺の血を飲んで。あんな酷いことした俺の血なんか飲みたくないだろうけど、それでも俺は……憎まれたままでもいいから、先生には生きててほしいんだよ……」
真摯なカカシの言葉に、イルカは顔を上げた。
――憎んでなんかいない。今だってカカシさんの気持ちが、身体が、何もかも全てが欲しくてたまらない。
そういえば俺は、一度だってきちんと自分の気持ちを伝えたことがなかった。恋心を自覚してからもカカシさんの気持ちを決めつけて、独りよがりな思い込みのまま、独りでここまで来てしまった。
カカシさんは俺のために、一人でここまで来てくれたのに。
伝えなきゃ。
俺もカカシさんみたいに、ちゃんと自分の気持ちを。
そのためには……
イルカは恐る恐るカカシの腕の傷口に顔を寄せ、ピンク色の舌をそっと出した。
忍犬たちもイルカのことは知ってるので話は早い。簡単に事情を説明すると、忍犬たちは扇形に広がってイルカの痕跡を捜しに散っていった。
イルカとのタイムラグはほぼ丸一日。
行き先は木の葉の北に位置する火の国の都にある、忍刀も扱う刀鍛冶となっているが、間違いなく嘘だ。だが追跡を想定してるだろうから、それをかわすため、あえてその方向に向かったかもしれない。全くの逆方向かもしれない。優秀なイルカのことだから、幾つものフェイクを残してるかもしれない……そんな余裕があれば、だが。
捜索において最初の一手は重要だ。確実を期すために、カカシは初めから総力戦で臨む態勢にしたかった。
そこでふと思い付いて、羅刹丸にこれから捜索に出る旨を記した式を飛ばした。イルカの情報を教えてくれたし、何よりも養い親として気を揉んでいるだろう。もしかしたら既に捜しに出てるかもしれないが。
早くもグルコから痕跡発見の合図の遠吠えが、遠くから短く響く。
カカシはその場へと向かうと、地面に残ったイルカのチャクラを感じ取った。どうやらフェイクではないようだ。だが樹上を渡ったのではなく地面に残った弱々しいチャクラと、フェイクを工作する余裕の無さを思うと焦燥感が募る。
――焦るな。焦りは禁物だ。
カカシは己れに言い聞かせた。集まってきた忍犬たちが、カカシの指示でまた扇形に散っていく。遠回りなようだがこの方式が一番確実に痕跡を捉えられる。弱っていても、相手は歴代火影の懐刀と言われたイルカなのだ。
忍犬たちと駆けながら、カカシは先ほどの羅刹丸とのやり取りを思い出していた。
羅刹丸は「貴様への想いを甘く見ていた」と言っていた。「イルカが貴様への気持ちに殉ずる」とも。
そして何よりも「番を見つけ儀式をするまでは、他人の体液を摂取せねば衰弱して死に至る」の言葉。
ということは、番を見つけて儀式をすれば、先生は体液を摂取しなくてもよくなるのだ。
だけどイルカ先生は、人猫族の女の誘惑を退けた。羅刹丸の言いようだと、恐らくは番を宛がわれることも断っている。そして俺が抱いた後は、番を見つけてもいないのに羅刹丸からの吸血を拒絶していた。
――これはもしかして。
もしかして、イルカ先生が俺と番になりたいから、羅刹丸の体液を拒んでいる、という意味ではないのだろうか。
あぁ、
そんな、
まさか……!
こんな時だというのに、カカシは胸に広がる期待と興奮を抑えきれなかった。
だからといって、イルカの発情につけこんで強姦してしまったという事実は決して消えないが。
――イルカ先生
無理やり身体を開かれ苦痛に叫んでいたイルカの、痛ましい姿が脳裡にはっきりと浮かんで、カカシは思わず呻き声をあげた。傍らを走るパックンが不審げな顔で見上げてきたので、カカシは「ごめん、なんでもないよ」と謝り、考え事に戻った。
イルカ先生には誠心誠意、謝らなければならない。今頃は冷静になり、憎しみや嫌悪感しか残ってないかもしれないが。
それでもイルカ先生の気持ちが自分にあるかもしれないという歓びは、全く減ずることはなかった。
だがとにかく先生を見つけなければ、確かめることもできない。自分の畜生にも劣る行為を詫びることも。
そしてそれがただの性欲ではなく、イルカ先生への愛情からだと、イルカ先生を心底抱きたかったからだと伝えなければ。
――イルカ先生
あなたは必ず俺が見つけ出す
だからお願いそんな簡単に捨てないで
俺の何よりも大切なあなたの命を……!
イルカの痕跡を辿り、八忍犬と何度も扇形の陣形を繰り返す。途中で気休めのようなフェイクが二ヶ所あったが、やはり鍛冶屋のある都の方角には向かってなかったようだ。
だいぶ火の国を南下してきた所で、シバの対象発見の合図が聞こえてきた。
瞬身でシバの所に到着すると、シバは発見の興奮もなく、むしろ自信なさげに報告をしてきた。
「この先の洞窟にイルカがいる……と思うんだよね。なんかイルカに他の生き物の気配が混じってる……猫、かなぁ? とにかくちょっと変なんだ。でもイルカなのは間違いないよ」
捜索の得意なシバが言うのだから、間違いはないだろう。
だが――他の生き物の気配が「混じってる」? 羅刹丸が先にイルカ先生を見付けたのだろうか。
……まさか。
「イルカ先生……!!」
カカシは慌ててシバに見張りと他の忍犬たちへの伝言を頼んだ。そして洞窟の入り口に張られた結界を力ずくで押し破ると、大声でその名を呼びながら中に飛び込んだ。
イルカの敏感な耳が、自分を呼ぶ声を捉えた。
――カカシ、さん?
だがイルカはそれをすぐに打ち消した。
里抜けが発覚したからといって、こんなに早く見つかるはずがない。しかも木の葉で最も有能で多忙な男が、わざわざ中忍を捕らえにくる訳がないし、綱手がそれを許さないだろう。
その時もう一度、今度ははっきりと自分の名が聞こえた。カカシの声で。そしてカカシの気配も同時に、物凄いスピードでイルカのいる洞窟の奥まで向かってきている。
(あぁ、やっぱりカカシさんだ! なんであの人が……でも今は逃げなきゃ。隠れてやり過ごさないと)
イルカは震える四肢に力を入れて立ち上がった。
と、目の前に人の立つ気配がした。
イルカが顔を上げると、そこには何度も姿を思い浮かべ、声を反芻した――
「……イルカ先生、だよね」
(イヤだ……見ないで! 人ではなくなってしまった、あさましい獣の俺を……見るな!!)
逃げようとしたイルカの胴体をカカシが優しく掬い上げ、ベストの前を開けた胸に抱き入れる。
「お願い、逃げないで……こんなに弱って、可哀想に……。イルカ先生にずっと会いたかったんだよ。会って謝りたかったんだ」
カカシがパサついたイルカの三色まだらの毛並みを撫でさすり、顎に触れ、唇を寄せて語りかける。
そのあまりの気持ちよさに、イルカは我知らず喉をごろごろと鳴らしていた。
「……ごめんね、イルカ先生が発情して辛い思いしてた時に、俺は……酷いことしたよね。いくらでも謝るよ、謝りたいんだ。それで俺の気持ちも聞いて欲しいの。許してくれなくても、受け入れてくれなくても。だからまずは一緒に里に帰ろう?」
カカシの言葉に、イルカは絶望的な気持ちになった。
発情のことを知ってるなんて……。
恐らく羅刹丸がイルカの秘密を打ち明け、頼み込んだのだろう。イルカを里に連れ帰ってくれと。そしてできることならイルカの番になってやってくれと。
(そんな紛い物の優しさなんて……俺が欲しいのは、そんな憐れみじゃない!)
イルカは牙を剥き出し、カカシの鼻先でシャアアアっと威嚇した。
するとカカシは今にも泣き出しそうな、子供のように頼りなげな顔でイルカを見返した。
「イルカ先生、やっぱり俺が嫌い? 憎い? 先生の弱みにつけこんでケダモノのように犯したから? ……そうだよね、恐かったよね。ごめんね、本当にごめんなさい……」
(違う、カカシさん、それは違う! 俺が、俺の方がカカシさんを欲しがったんだ! 発情したからって、よりにもよって大好きなカカシさんを、俺が欲望のままに襲って……!)
カカシの思い違いに驚いたイルカは、思わずカカシの胸にすがりついていた。
アンダーを掴んだつもりの前肢からは、ニュッと伸びた爪がカカシの肌に食い込み――
(血、だ……カカシさんの、血の、匂い……!)
未だ発情の収まってないイルカは、カカシの血の匂いにぐらりと眩暈を覚える。
だがここでカカシの血を貪ったら前回の二の舞だ。それでは何のために里抜けまでして、独り覚悟の上でここまでやってきたのか分からない。
イルカは必死にもがいて逃げようとしたが、その動きが余計にカカシの手や腕に傷を増やしていった。
鼻腔に充満する血の匂いにイルカは、にぎゃぁ と苦しげに鳴き声をあげた。
「どうしたのイルカ先生! 苦しいの?」
暴れるイルカを落とすまいと、カカシは胸の中に抱え込んだ。するとますます血の匂いが増して、イルカはぎゅっと丸めた身体に顔を埋め、ぶるぶると震えた。
この時になってカカシは、ようやくイルカの毛を汚す自分の血に気付いた。
「血……そうか、血を飲みたいんだよね? 羅刹丸のじゃなくて俺の血が欲しいの? イルカ先生お願い、俺の血を飲んで……」
カカシはイルカを抱えたまましゃがみこみ、すっぱりと傷口の開いた腕をイルカの顔の辺りに差し出す。
それでも頑として動かないイルカに、カカシはゆっくりと語りかけた。
「……俺はイルカ先生が猫のままでも全然構わないよ。……ううん、それって、すごくいいかも。今までの仕事は出来ないから、受付で他のヤツに笑顔を向けることもなくなるよね。それで先生とずっと一緒にいられる。一緒に暮らして、毎日イルカ先生と過ごせるなんて、すっごく嬉しいな。……あぁ、俺の忍猫として契約しちゃおうか。そうしたら、猫のイルカ先生とずうっと一緒だよね……」
カカシがうっとりと唄うように奏でる言葉の羅列は、とても甘美で。
イルカが思ったような、羅刹丸に頼まれて言わされているような感じは全く無かった。
(……信じても、いいんだろうか)
――カカシさんを。
俺の秘密を知った上で、一人でここまで追いかけてきてくれた、彼を。
「あぁでも、イルカ先生がイヤなら、もちろん俺のところに来てくれなくていいの。ちゃんと元気で笑っててくれれば、それで。猫でも人でもどっちでもいいんだ。イルカ先生がイルカ先生で、幸せでいてくれればもういい。……だからね、お願い。俺の血を飲んで。あんな酷いことした俺の血なんか飲みたくないだろうけど、それでも俺は……憎まれたままでもいいから、先生には生きててほしいんだよ……」
真摯なカカシの言葉に、イルカは顔を上げた。
――憎んでなんかいない。今だってカカシさんの気持ちが、身体が、何もかも全てが欲しくてたまらない。
そういえば俺は、一度だってきちんと自分の気持ちを伝えたことがなかった。恋心を自覚してからもカカシさんの気持ちを決めつけて、独りよがりな思い込みのまま、独りでここまで来てしまった。
カカシさんは俺のために、一人でここまで来てくれたのに。
伝えなきゃ。
俺もカカシさんみたいに、ちゃんと自分の気持ちを。
そのためには……
イルカは恐る恐るカカシの腕の傷口に顔を寄せ、ピンク色の舌をそっと出した。
スポンサードリンク