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カカシが六代目火影として就任することが決まった日、イルカは綱手にあるお願いをする。
「本当にいいのかい？」
「はい。もう決めたことですから」
イルカはカカシの中から自分の記憶を消して欲しいと綱手に頼んでいた。
「辛いのならば、お前の中のカカシの記憶も消してやろうか？」
そう問いかける綱手にイルカは頭を振って答える。
「この記憶は俺だけのものです。これさえあれば生きていけます」
そう言って儚く笑うイルカに綱手は何も言えずに、その後ろ姿を見送る。

イルカはカカシの就任式を待たずに木の葉を後にする。
向かう先は火の国の南東に位置する小さな港町。
だんだん潮の匂いが近づいてきて、木立の隙間から海が見えてくる。
あの人の瞳もこの海のような色をしていたなと思う。
「イルカ先生はイルカって名前なんですから、本物のイルカって見たことありますよね？」
そう言うカカシに強引に海に連れてこられて、イルカが来るって言う浜辺で、二人で何時間も砂浜の上で寝転がって、たわいも無い話をした。
あの時はまさかカカシとこういう関係（恋人同士）になるとは思っていなかったけれど、あの人の中では決まっていたのだろう。
生涯の伴侶にしたいと。
約束を反故にしたのはイルカの方だけど。
だって仕方がないじゃないか。あの強くて美しい人の隣には、冴えない中忍のしかも男の自分が立つなんて、許されるはずがない。
カカシはもうイルカの手の届かない人になってしまったのだ。
いや、初めから分かっていたのだ。あの人と自分が釣り合わないことくらい。
でも――カカシからの熱烈な愛の告白にほだされて、気が付けば片手じゃ足りないくらいの年月を共に過ごしていた。
いつ果てるか分からない命だから。
お互い必死に二人だけの時間を作ろうとしたし、滑稽なくらい相手のことしか見えなくて、つまらないことで嫉妬したり、ケンカして。
バカバカしいくらい互いが大切で、もしも別れる時が来るのだとしたら、それは命の尽きる時だと思っていた。

カカシが六代目になると決まった時、イルカはもうカカシを解放しようと思った。
木の葉を出て、かつて共にイルカを見に来た港町の小さな学校の教師になることにしたのだ。
そこは一般の子供達が通う学校だったけれど。
木の葉を出る時忍者登録も抹消してきた。
カカシはイルカの決意を知ったら、許すはずがないことは分かっていたから、綱手に頼んでイルカに関する記憶を消して貰うことにした。

港町の学校に赴任して数週間。
風の噂でカカシが無事六代目に就任したことを知る。
新しい学校での生活は、まだ慣れていないけど、これから時間をかけていけば慣れると思う。カカシがいない生活にも。
そんなある日の放課後、一人の銀髪の子供がイルカの所へやって来て、なくしてしまったものを探しているという。
「先生、お願い、先生も一緒に探して」
教室の中を探しても、廊下や、昇降口、校庭まで探しても子供の捜し物は見つからない。
「これだけ探しても見つからないなんて、お前の探しているものはどんなものなんだ？」
問いかけるイルカに子供は泣き笑いを浮かべて。
「あなただよ。イルカ先生」
あなただけが足らなかった。俺の記憶の中で――
子供の姿はいつの間にかカカシになっていて。
「まさか……」
カカシの姿を信じられない思いで見つめるイルカを、カカシは抱きしめて。
「やっと見つけた。アナタがいなくなった日からずっと探していたんだよ」
「そんな……だって記憶を消したはずじゃ」
「馬鹿だね。記憶を消したぐらいで、忘れられるような人だったら、初めから好きにならないよ」
「カカシさん……」
「さ、帰るよ。忍者登録も復帰させておいたし、アカデミーへの復職も決まっているから」
そう言ってにぃって笑う男は何処までもふてぶてしくて。
そうだった。この人はこういう人だった。
「一体いくら貢いだんですか？綱手さまに」
「ん～ま～賭場をまるまる一つ買えるくらいは貢いだかな？」
冷や汗をかくカカシに、これはもっと大きな貸しを作られたなと思う。
「……記憶を消すって、どうして分かったんですか？」
「ん、まぁ。あなたならそうするかなと。それよりも、俺は怒っているんだ～よ？なんで俺に内緒でいなくなったの？」
「内緒にしないとあなた怒るでしょう？だから内緒にしたんですよ」
「そういうとこ、イルカ先生のそういうとこ、俺は嫌い。なんで相談してくれないの？何でも自分の中で決めちゃって、俺が手を回しておかなかったら、本当に記憶を抹消するつもりだったでしょ？自分の」
その言葉にぎくりとするイルカ。
「万が一、万が一ですけど……カカシさんの記憶が戻った時には、その時こそ俺の中のカカシさんの記憶を消して下さい」
カカシの記憶が戻るようなことがあったら、その時は自分の中の記憶を消して欲しいとイルカは綱手に頼んでいた。

「もう諦めな。あなたはこの先一生俺だけのものなの」
ああ、この人はなんて傲慢で、潔い。
「忘れるなんて許さない。許してやらない。傷つけ合うのも、舐め合うのも、アンタだけがいい」
イルカを抱くカカシの腕は震えていて。
この人を今こうさせているのは自分なのだ。
「もう逃がさない」
カカシの唇が有無を言わさずイルカの口を捕らえてしまう。
そのままカカシの宿泊している宿に瞬身で連れ込まれて、エロエロターイム。
もう好きなだけやっちゃって下さい。

「あなたが何を危惧しているかは分かりますけど、まぁ見ていなさい」
事後ピロートーク。
「俺が火影になった以上は、古き悪しき慣習は徹底的に排除するからね！その為にはまず俺達が示さないと」
そう言ってカカシが枕元から取り出したのはシンプルな指輪で。
「受け取ってくれるよね」
「カカシさん……」
恭しくイルカの左手の薬指に指輪をはめるカカシだったが
「あれ？」
サイズが小さくて第一関節より先に入らない。
「おっかしいなぁ」
買った時サイズを間違えたんだな～って思うイルカはニコニコ笑いながら、「カカシさんの気持ちだけで嬉しいですよ」と答えるのだが。
「もしかして、太ったでしょ！イルカ先生、木の葉出てから鍛錬怠ってたでしょ。絶対そうだ！」
「はぁ？何俺のせいにしてるんだ。アンタがサイズ間違ったんだろ！」
「間違えません。この俺が、あなたの身体の事ならナニのサイズまで知り尽くした俺が、間違うはずありません！」
イルカのグーパンチが炸裂する。
「ひどぉ……愛って耐えることなのね」
「もう、アンタって人は」
イルカ呆れながらも口にする。
「俺がいなきゃダメじゃないか。仕方がないからずっと側にいてやるよ」

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このプロットはスピッツの「愛の言葉」って曲聞きながら考えたんだよ～そのイメージでてると良いんだけど。

カカシとイルカがイルカを見に海に行ったエピソードは、二人の回想みたいな感じで、お話膨らませて貰えると嬉しいよ。
子供と一緒に捜し物する場面も、ゆう本゜さんの好きなだけお話膨らまして下さい。

カカシさんの火影就任前のエピソードのお話って、いろんな方が書いてるし、目新しくもないんだけど、ゆう本゜さんならすてきなハートフルストーリーになると思うよ。


【感想】

素敵なお話ですよ！王道！
はやお先生が提供してくれたプロットは、さすがの王道！
もうこれだけで完成でいいんじゃないかな～
ていうか、ええっ！この王道ハートフルラブストーリーを私が書くの？！
で…………きるかな～_:(´ཀ`」 ∠):_

と、恐る恐る書き始めたけど。
美しい世界観が完成されてたので、すらすら書けました。
苦労したのは、いかにこの綺麗な世界観を壊さないように、でも綺麗な表現を使うことに酔わないようにってところです。
ただ、エロがね。
如月のエロは即物的で情緒ゼロなんだΣ(´□｀;)
そこだけなかなか上手く納得のいくものが書けなくて、時間かかっちゃったよ…

スピッツの『愛の言葉』は知らなかったけど、プロットの世界観を壊さないよう、ある程度固まってから聴いたんですよね。
煙の中から声がする部分は、歌詞から浮かんだシーンですよ♪

こういう王道ラブストーリーって、一人じゃムリ！
まず設定が思いつかん(；´_ゝ`)
おかげさまで如月のラインナップには有り得ないほど、綺麗なお話を書けました♪
もうホントにはやお先生のお力ですわ～

人のプロットで書かせてもらうのって、新鮮で楽しいです♪
はやお先生もそう言ってたので、またやろうぜ！