【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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人が素で潜るには深すぎる海の水底。
水上からの光もここまではほとんど届かず、全ての色が深い青に吸収された群青一色の世界。
色とりどりであるはずの珊瑚もここでは色を潜め、本来の鮮やかさを忘れたかの如く暗い色合いになっている。
そこに着物一枚の『人』が、肌を刺すような冷えた水をたいして揺らすこともなく滑るように歩む姿があった。
そのすぐ横を巨大な海亀が横切っていく。
黒髪を高く結い上げ、額の両脇に小ぶりのヘラジカのような薄桃色の珊瑚の角を生やしたその『人』は、海亀に軽く頷くと左右非対称のハサミを持った蟹を踏まないように避け、ある一点を目指して進んで行った。

「……ああ、やっぱり」

ふっくらとした厚みのある唇から呟いた言葉は、ぽこぽこと小さな音を立てた気泡に紛れる。
その黒い瞳を向けた先には、身の丈を遥かに超える昆布の群生地があった。深い青の中にゆらめく昆布の中に、ぼんやりとした鈍銀の海藻が揺らいでいる。
『人』は肉厚な昆布をかき分けて、光の届かぬ海底においても鈍く光る銀の塊を抱き寄せた。
海藻に見えたのは人間の頭だった。
戦人の装備をした全身に太い鎖が巻き付き、本来なら浮かび上がるはずの人間を海底に留めている。
『人』はその人間の顔を両手で挟むと、閉じた瞼の銀色の睫毛までしげしげと眺め入ってから、うっとりとため息をついた。唇からはまたも小さな気泡が、ぽこぽこと水面に向かって浮き上がっていく。

「生け贄なんて捧げられるの、何百年ぶりだろ。それにしても綺麗な人だ……」

人間は息をしていなかった。
肌色は水死者のように真っ白になっているが、腹は膨れ上がってないので沈んで間もないのだろう。色白な肌は元々なのかもしれないと、『人』は人間の体を拘束している鎖を外そうと手をかけた。
するとバチリと鎖が跳ねたので、何かしらの術か呪の痕跡を感じ取る。

「せっかくの生け贄が死体になったら困るんだけどなぁ。こんな綺麗な人間なのにもったいない」

『人』は再び呟くと、指先でその人間の口を覆っている布を下げ、唇をこじ開けて己の息を吹き込んだ。
程なくして人間の口からがぼりと水が吐き出され、銀色の睫毛が僅かに震える。それを確認した『人』が鎖に軽く爪を立てて弾くと、鎖は一旦強く光ってからただの金属に戻った。
どうやら術なり呪なりは無事に解除されたようだ。

「あんた、誰?」

鎖に巻かれたままの美しい男から、突然鋭い声が発せられた。


海神イルカ

その険呑な声を聞いたにも関わらず、『人』はさも嬉しそうに微笑むと、いつの間にか首元に突き付けられたクナイを事も無げに手の甲で払いのける。

「私はここの海神、イルカといいます。あなたは私の生け贄でしょう? こんな綺麗な生け贄なんて本当に嬉しいなぁ」
「生け贄……? 俺が?」
「そう。もう飢えも死も恐れることはないから安心して。捧げられし者よ、あなたの名は?」
「カカシ。だけど俺は生け贄じゃなくて……」

今さらながらカカシは突き付けたクナイにも怯まず、容易く払いのけた目の前の者をまじまじと見つめた。

「ちょっと待って、なんで海中で普通に喋ってるの? それにこの鎖の術、俺でさえ解けなかったのに。あと生け贄ってどういうこと?」

立て続けに問う男にイルカは慈愛の笑みを向けた。

「まだ混乱してるのかな。あなたは地上の民に生け贄として選ばれたんでしょう? ここは生け贄を捧げる聖域だから、海に落とされると自然と辿り着くような仕組みになってるんですよ。鎖にかけられてた呪は海神である私にはたいしたものじゃないし、あなたが喋ったり呼吸できるのも私の息を吹き込んだからです。カカシ、あなたみたいな美しい人間が生け贄で私は本当に嬉しいですよ」

カカシは辺りを見回してから遥か頭上でゆらめく昆布を眺めると、困ったように頭をかこうとして手枷で繋がれたままの両手を見下ろした。

「あー、えっとね、喜んでるところ悪いんだけど俺、生け贄じゃないんだよね」
「生け贄じゃない?」
「俺ね、火の国の木ノ葉って里の忍で、ここには任務で来たの。ちょっとドジっちゃって拘束されたまま船から海に突き落とされたけど、敵さんは『死ねカカシ!』だけで生け贄のことなんて言ってなかったと思うよ?」

そう言ってカカシが手枷を嵌められた手を差し出して見せると、イルカは手枷とカカシの顔を交互に見てからその場に崩れ落ちた。

「生け贄じゃない……せっかくの……何百年ぶりの生け贄かと思……っ」
「えっと、がっかりさせてごめ~んね?」

カカシはイルカの前に膝を着くと、伏せられた顔を覗き込んだ。
するとイルカはガバッと顔を上げて健気な微笑みを浮かべてみせた。

「いえ、おかしいと思ったんです。私のような忘れ去られた神に生け贄なんて……カカシよ、どうぞ地上に帰って、あなたの任務とやらに戻りなさい」
「うーん、そうなんだけど……」

そう呟きながらカカシはしばらくイルカの顔を眺めていたが、不意ににこりと笑った。

「ねぇイルカ、さっき俺のこと『私の生け贄』って言ってたよね」
「ええ、まぁ……」
「それって俺はあんたのものってこと?」
「そうですけど、違うんでしょう?」

話の流れが見えず怪訝な顔のイルカの両手を、戒められたままのカカシの両手が掴む。
それを見下ろしたイルカの眉間に、ぎゅっとしわが寄せられた。

「あの、この手は何でしょうか」

カカシはにこにことしたまま掴んだ手の指を絡め直し、いわゆる恋人繋ぎと呼ばれる繋ぎ方に変えていた。
そして親指でイルカの親指の根元をすりすりと撫でる。

「カカシよ、もう行ってよいのですよ?」
「イルカ、俺、あんたに惚れちゃったみたい」
「……………え?」

咄嗟に身を引いたイルカを、カカシは重ねた指にぐっと力をこめて留める。

「一目惚れっていうの? 俺、イルカの生け贄になりたい」
「何をふざけて……だいたいあなたは任務とやらがあるんでしょう?」
「ふざけてなんかない。お願い、抱かせて?」

軽い口調に反して、驚くほど真剣な目の光がイルカを捉える。

「でも、あなたは生け贄じゃ……待って、抱かせてって、あなた女じゃなかったんですか⁉」
「女? どこから見ても男でしょ、ほら」

目を瞬かせたカカシが、固く盛り上がった腰をぐいと押し付ける。

「ひゃあああ何だこれ離せ! だって私は男神で! 生け贄は当然女だと思うじゃないですか!」
「……それじゃ、イルカは俺を抱くつもりだったの?」

含み笑いをしたカカシは、両手を一振りすると手枷を落としてイルカを抱き寄せた。
そして鼻同士をすり合わせると、群青一色の世界の中で一際黒い光を湛えるイルカの瞳を覗き込む。

「俺はイルカの生け贄だ。あんたに俺の体を捧げるよ」
「カカシ……」
「俺をイルカの中に捧げさせて」

思いがけず真摯な眼差しを向けられ、その美しさにイルカは返すべき言葉を失う。
カカシはイルカの胸元に手を差し入れながら、ゆっくりとイルカを昆布の褥に横たえた。



海流とは関係なく、いつにない激しい昆布の揺れがようやく収まった頃。
海底に広げられたイルカの着物の上に、二人は絡み合ったまま二本のスプーンのように横たわっていた。
イルカの体には、色濃く付けられた所有の証が散らばっている。カカシの背にも幾本かの赤い筋が走っていた。

「神様も人間と同じ体をしてるんだね」
「……逆。人間が神を模して造られたんです」

気怠げな声がカカシの腕の中から上がる。

「そうなんだ。同じ体だったからたぶん大丈夫だとは思うけど、ちゃんと気持ち良かった?」

カカシの問いにイルカはぱっと頬を染めた。

「そんなはしたないこと言えません! それよりもう抜いてくださいっ」
「ん~、やだ」

駄々っ子のような返事をしたカカシが、イルカのうなじに並ぶ鱗をざらりと舐め上げる。

「イルカの中気持ちいい。もっとしたい」
「駄目ですって! あ、またおおきく、するな……ぁあ、んッ」

ゆるゆると腰を揺らめかせ始めたカカシに、イルカの抵抗はあまりにも弱かった。
太股の間の黒い叢にカカシの手が伸びる。
白魚のような指がイルカの神性を忘れさせるかの如く蠢き、淫らな吐息と啼き声が徐々に高まっていった。

「イルカ、好きだよ」

カカシは甘い睦言というより、祈りにも誓いにも聞こえる囁きをイルカのヒレの形をした耳に落とすと、薄桃色の角に唇を寄せて口に含んだ。
二人の遥か頭上で、また昆布が海流に逆らうように揺れ動く。
不規則に揺れる昆布の林の合間を、幾つもの気泡が踊るようにぽこぽこと上がっていった。



――どれだけの時が経ったのか。
イルカはカカシの情愛に溺れながらも、その目に時折浮かぶ憂慮の影を敏感に感じ取っていた。

「カカシよ、もう地上に戻りなさい」

弾かれたように振り返るカカシに、イルカは健気に笑みを形作った。

「あなたはまだ地上にやり残したことがあるのでしょう。潮時なのは分かっているはず」

カカシは唇を噛み締め俯いた。
そしてイルカを抱き寄せ、折れんばかりに強く抱きしめる。

「……離れたくない」

だがイルカには分かっていた。
抱き寄せられたことで見えないカカシの顔が、既に出会った時の戦人のものに戻りつつあることを。

「私は海で、あなたは地上で生きるべき宿命があるのです」
「いやだ」
「あなたと出会えて私はとても幸せでした」
「やめて」
「さあ、お行きなさい、人の子よ」
「イルカ」
「カカシ。縁とは不思議なもの。もし私たちに縁があるなら、また縁の巡ることもあるでしょう」
「いやだ、イルカッ」

ザアッと強い海流がカカシを襲った。
荒波に翻弄され、必死にもがくカカシの耳に届いたのは、イルカの「縁を信じて」という囁きだった。





カカシが目覚めたのは、木ノ葉の病院のベッドの上だった。
心配そうに覗き込む三代目火影のヒルゼンに、カカシはただ「任務は失敗しました。申し訳ありません」とだけ告げる。
ヒルゼンはしばらく無言でいたが、「命あってこそじゃ。今はよく休め」と枕元に何かを置いて立ち去った。
カカシは病室の天井という見慣れた光景を拒むように固く目を閉じていたが、ふと枕元に置かれた物が気になった。
片手を布団から出して枕元を探ると、指先がカツンと何かに当たる。
それは一枚の鱗だった。
親指の爪ほどの大きさの、半透明な鱗。
うなじや背、二の腕、腿の一部を覆っていた、カカシが事あるごとに唇や舌や指で味わっていたイルカの鱗。
窓から差し込む光にかざすと、鱗は虹色のプリズムをカカシの顔に写し出す。
深い群青色の世界では、決して見られなかった光景。

――夢ではなかった。
――夢ではなかったが、夢よりも遠い存在になってしまった。

それからカカシは、休暇の度にあの海を秘かに訪れたが。
幾度イルカの名を呼びながら海の中に潜っても、必ず砂浜に押し戻されてしまうだけ。
カカシの手元に残ったのは、ただ一枚の鱗だけだった。




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