【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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カカシは、とても素敵な恋の理想がありました。
それは美しくて触れられないほど。
カカシは、出かける時はいつも、理想の本を持って出かけました。
にわか雨のような恋もありましたが、本気の恋はしないのでした。







「なぁなぁ、カカシ先生がいつも読んでるそれ、何の本だってばよ?」

今日の七班の任務は亡くなった当主の遺産整理のお手伝いだった。
故人は書籍や巻物の収集家でもあったので、三つの蔵を占める膨大な収集品のうち、子供たちが触れても支障のない二つの蔵の中身を状態別に分けていた。
帰り道、埃にまみれた三人と少し距離をおいて俺が本を片手に歩いていると、ナルトが後ろを振り返った。散々書籍や巻物に振り回されたせいか、やや忌々しげに俺の手元の本を睨み付けている。

「なーに睨んでるのよ。本に罪はないでしょ」
「だって本なんてつまんねぇもん、一回読めば十分じゃんか。それをなんであんないっぱい集めたり先生みたいに何度も読むのか、さっぱり分かんねぇ!」

ナルトの素直な言い様に、俺は口布の下で苦笑した。

「お前ねぇ……本当に良いものは手元に置いときたいでしょ。ま、この本はお前たちみたいな半人前じゃ、到底理解できない聖典みたいなもんかな」

するとナルトが俄然興味を示した。

「せいてんって、すんげぇ忍術の?! 見せてくれってば!」
「バカナルト! あれは忍術の本なんかじゃないわよっ」
「じゃあ何の本だってば?」
「うっっっっ、そ……れはサスケくんに聞いて!」
「なっ! サクラ?!」
「サスケは半人前だから分かんねぇんだろ~」
「なんだとこの万年ドベっっ!」

ナルトの一言でいつものように取っ組み合いが始まる。
それでも俺たちから遅れをとらず進んでいるのは、いったいどういう仕組みになっているんだろうかと、首を傾げながらページをめくった。
その手がふと止まる。
もしかしたら、あの先生なら知ってるかもしれない。
この子たちの元担任で受付にもよく座っている、もっさりしたこれといって特徴のない、あの中忍先生。何か魚みたいな名前だった気がする。顔面のどこかに傷痕もあったと思うが、顔に傷のある忍など珍しくもない。現に俺にもあるし。

……ま、いいか。
それよりこの恋情の滴るような美しい文章を、もっと味わおう。
上忍師になる前はターゲット到着の待ち時間や、僅かな休息時間しか読める余裕がなかった。戦闘中に斬られたり燃やされたり血塗れになったことも、数えきれないほどあった。そのために携帯用を常時十冊はストックしてあるから、この本に気を取られて戦闘が疎かになるようなことは無かったが。
世の中には忍術や秘術や歴史だけではなく、こんなにも素晴らしい書が存在するのだ。
男と女のめくるめく愛の物語。
愛を謳歌する者たちの、生と性に満ち溢れた輝ける書。
性欲処理とは対極にある、俺が知ってる恋らしきものとも全く別物の、桃源郷を写し描いたかのような類い稀なる……理想の恋愛の本。

子供たちの監督は面倒だけど、じっくり読むことができるようになったのだけは本当に有り難い。
とうとうクナイまで持ち出したサスケをちらりと見ると、俺はサクラの白い目をものともせず、お気に入りのページに戻った。



受付で報告書を受理してもらうと解散を言い渡し、その足で上忍待機所へと向かう。
ナルトが「イルカ先生がいないってばよ」としょぼくれてたので、件の中忍先生の名前を思い出した。だがきっと記憶のどこにも引っ掛からず、また何て名前だっけと思うのだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、待機所の手前の片隅で揉めてる女たちがいた。
開いた巻物を間に何か言い合いをしているが、金髪の方が優位に立っているようで、黒髪を結い上げた方の腰が明らかに引けている。

「どうせまた薬剤部にサンプルを取ってこいって無理やり頼まれたんでしょ? だからそれは気にしないでって言ってるじゃない」
「そう言われましても、その……」

弱々しくも低い声を聞いて、黒髪の方が男だったことに気付く。
よく見ると金髪の方は見知った特上だった。確か体のあちこちに仕込んだ薬物と閨房術を組み合わせたスタイルの忍だ。そして男の方は――

「ねぇイルカ、ちゃんとハッキリ言って。どうして欲しいの?」

そう、イルカだ。
ナルトが会いたがっていたイルカ先生だ。
だが俺は人物よりも話の内容に気を引かれて、とっさに気配を断って諜報の体勢をとった。そして懐に大事に仕舞われた聖典の中でも、最も心に響く一節を思い浮かべる。
目の前では二人のやり取りが続いていて、イルカ先生が巻物を差し出した。

「えっと、ここを舐めて下さい」
「ここね。じゃあちょっと貸して」

そう言うと金髪の女は、怪しげな笑みを浮かべて。
イルカの巻物を持った方の手を取ると、自分の口元まで持ち上げてイルカ先生の手の甲をべろりと舐めた。

「ひゃあ! ちちち違いますよっ、この巻物の円の中です!」
「ふふっ、びっくりした?」
「意地悪しないで下さい……もう」

二人の交わす言葉の数々に、何よりもイルカ先生の口から紡がれる言葉に、俺は目を見開いた。額宛に隠した写輪眼までも、思わず。
多少の誤差はあるが、まるでその聖典から抜け出たような、いや音声と映像がある分、遥かに生々しいやり取りが繰り広げられていたからだ。



「言って、どうして欲しいの?」
「あ……舐めて」
「ん……どこ舐めて欲しいのかな?ここかな?」
「あっ、そこ……やっ」
「嘘つき。大好きなくせに」
「意地悪……しないで……もう」

   ・
   ・
   ・


イルカ先生の言葉もだが、何よりもその表情が。
仕草が。

(…………見つけ、た)

心臓が跳ね回り、胸から飛び出してしまうんじゃないかと半ば本気で恐れ、胸を押さえた。
開いた口はカラカラに渇き、いまだ瞬きを忘れた両目で、目の前の男を凝と見つめる。
チャクラが写輪眼に集まり始めたのを感じ、慌てて左目を閉じたが。自分の気配まで漏れそうになってきたので、瞬身の印を切ると俺はその場から逃げ出した。



――まさか理想の恋人を体現しているのが、男だったとは。
さすがにそこまでは見通せなかったと、本の入っている懐の上を押さえた。
瞬身で飛んだ自宅で、ふわふわとした足取りのままベッドに腰かけた。そのまま思考までふわふわとイルカ先生を思い浮かべる。

ためらいながらも自分の望みを乗せる、ふっくらとした唇。
相手にそれを伝えようとする、掬い上げるような目線。
恥じらいからうっすらと桃色に染まる頬。
ひたりと相手を見つめる、黒目がちの潤んだ眼差し。

それらは全てに於いて虚飾が無かった。
媚びも相手におもねるものも無く、ただ彼の内側から滲み出る清廉な色気だけがそこにあった。
いうなれば精神的処女性を持つ者だけが放てる、まっさらな色艶。
どんなにいやらしくはしたない言葉を言おうとも、それさえあれば決して下品にはなり得ない。
そんな稀有な人間がこんな身近にいたとは……。
その奇跡を思うと、性別なんて些末なことだ。

イルカ先生。

……イルカ先生。

あの目線の先に立つのは、俺でありたかった。
「意地悪しないで……」と甘く言われたかった。
俺の名を呼び、ただ俺だけを見つめてほしかった。

理想の恋を描いた本で俺が思い描いていた理想の恋人は、イルカ先生という形で俺の人生に降って現れた。

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