【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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『今日も木の葉は平和です…たぶん』シリーズでの時系列順に並べ直したので、pixivとは掲載順が変わってます。
どちらかを選びなさい ★★

ゴミをまとめて捨てようとしたら、文面を表にしてクシャッと丸められた用紙が目に入った。
正確には、『アカ  教員各    ルエンザ予防 種のお』だけど、内容は見るまでもなく予想はつく。
だけど、なんで下の申込み部分が残ったままなんだ?もしかしてイルカ先生、間違って捨てちゃったのか?
俺はそれを拾い上げると、机の上で丁寧にシワを伸ばしながら先生に声をかけた。

「イルカ先生~、予防接種の申込み用紙、間違って捨てちゃっ」

とんでもないスピードで般若みたいな顔をした先生が洗濯洗剤のボトルを持ったまま飛んで来て、俺の手から用紙を奪い取る……までには及ばなかった。
とっさに数多の戦場をくぐり抜けてきた戦忍としての勘が働いたのだ。これを渡してはいけない、と。

「あー、すいませんね~。俺ってば間違って捨てちゃったのか~。最近残業続きだったから疲れてんな~ハハハ~」

今にもテヘっと言いそうにおちゃめなイルカ先生を演じてるが、俺は騙されない。
というか残業続きって、アカデミーの運動会も終わって一段落って昨日言ってただろうが! それで散々イチャイチャな夜を過ごしてあんあん言ってただろうが!
俺の警戒レーダーが唸りを上げて回り出した。

「これ、木の葉病院に直接持ってってもいいんだ~よね? 俺が書いとくからさ、今日病院に寄って出してくるね」
「いやぁ、御多忙な上忍殿にそんな雑用お願いできませんよ~。大丈夫です! 俺が自分でアカデミーの医務室に持って行きます!」

きりっとキメ顔で用紙を取り返そうと右手を差し出すが、目に力が入り過ぎている。
やっぱり間違いない。イルカ先生、もしかして――

「する気がないでしょ、予防接種」

差し出した右手がびくりとする。
両目がバタフライでバチャバチャと泳ぎ出した。
結い上げて露になったこめかみにひとすじ、つうーっと汗が流れる。

「先生、あのさ……注射、怖いの?」

あ、逃げた。





「イーーーヤーーーだぁぁーーーぁぁあああ!!!」

布団で簀巻きにした先生を、よっこらせと肩に担ぐ。
あんまりにも暴れるから拘束用のワイヤーじゃ危なくて、布団でぐるぐる巻きにしてからワイヤーで縛ったのだ。捕まえて簀巻きにするまで一時間もかかってしまった。
元暗部隊長の俺をここまで手こずらせるなんて、まったくどれだけ注射が怖いんだか。

「いい加減にしなさい! そんなに嫌がるなら注射と雷切どっちがいいの?! ちゃんと注射しないような悪い子は雷切です!」
「雷切でお願いします!」

間髪いれずイルカ先生が即答する。
いや雷切でって、チクッどころじゃないからね? どかんと大穴開いちゃうからね? もうちょっと考えて答えようよ……って先生、希望が見えた! みたいなキラキラした目で見ないでくんない?
雷切なんか食らったら希望もクソもないからね?

「あんたねぇ、仮にもアカデミー教師でしょ? それが注射を怖がって受けないなんて、子供たちに示しがつかないよね。去年まではどうしてたの?」
「…………去年までは、ちゃんと受けてましたっ」

駄々っ子みたいに口を尖らせて、ぷいっと顔を逸らす。
何よそれ、可愛いじゃないの。でもダ~メ。注射はしてもらいますからね!
さすがに簀巻きで病院の受付に持ってくのはイルカ先生が可哀想なので、さてどうするかと考え、俺は先生を担いで片手で瞬身の印を切った。





簀巻きを担いでいきなり現れた俺に、木の葉病院の処置室はちょっとざわめいた。
だが簡単に事情を説明すると、空いてるベッドにイルカ先生を転がしておくことを快諾してくれる。
こんな事態をあっさり受け入れるなんて、捕獲連行されるヤツはけっこう多いんだろうか。まぁ、大抵は子供だろうけど。
先生は観念したのか場所をわきまえてるのか、すっかりおとなしくなって、簀巻きのままベッドの上で黙ってじっとしている。

「じゃあ先生、受付で申込みしてくるから、お利口さんに待っててね」
「………て下さい」
「え、何?」
「ナマズ先生に注射をお願いして下さい。ナマズ先生の注射はあんまり痛くないんです。……お願い、カカシさん」

布団の中から覗いた黒目がうるうると俺を見つめる。
ぐううっ、その上目遣いは反則でしょ!
でももう諦めたみたいだし、それくらいのワガママなら聞いてあげたい。だってあんなに嫌がってたし、滅多にない先生からのおねだりだし!
通りかかった看護師さんにナマズ先生って? と尋ねると、「ナマズ……ふふっ、河津先生ですね。今は外来を持ってないので、内科の医局にいらっしゃいますよ」と教えてくれた。
お礼ついでにその医局の場所を聞いてイルカ先生の方を振り返ると、布団の中に潜っていて黒い尻尾しか見えない。

「じゃあナマ……河津先生を呼んでくるから、ちょっと待っててね」

先生の反応はないけど、ちゃんと聞こえただろう。
俺は頭というか尻尾というかを撫でて、布団の上からぽんぽんと叩くと、医局へと向かった。



通路を進み、階段をどんどん上がってまた通路を進むと、突き当たりに内科医局室の札があった。
病院にはしょっちゅうお世話になってるけど、こんな部屋があることは知らなかったなぁと思いながらノックすると、すぐに「入りなさい」と返事があった。
ごちゃついた中には数人の医者らしき人がいたが、河津先生はすぐ分かった。
ナマズめいた平たい容貌に、ナマズみたいな髭を垂らして、ナマズのようなずんぐりした体型をしているのだ。

(これ、わざとだよね? ナマズ先生って呼ばれて開き直ったのかな)

笑いを噛み殺し、真面目くさった顔で「お忙しいところ申し訳ない。私、はたけと申しますが、うみのイルカの付き添いで参りまして……」と口上を述べてる最中に、ナマズ先生は笑いながら手を振って遮った。

「さっき処置室から連絡があったから話は聞いとるよ。イルカだろう。まったく、成りはでかいのに、昔と全然変わっとらんな」

そして一服していたソファーから立ち上がると俺を見上げ、「君はカカシ君だろう。世話をかけてすまんな。じゃあ行こうか」と医局から連れ立って行くことになった。




「あの~、イルカ先生をよくご存知のようですが、彼は毎年予防接種の度にこんな大騒ぎを?」

するとナマズ先生は小さなボタンのような目を細め、歩きながら遠くを見つめる。

「そうだな、予防接種全般や注射でな。子供の頃は本当に苦労させられたもんだ。親御さんもよく、君みたいに簀巻きにして持って来てたよ。院内を逃げ回ってトイレに立て籠ったり、他の子を身代わりにしたり。イッカクさんが壁に蜘蛛の巣みたいにワイヤーで張り付けて、脚立に登って注射したこともあったなぁ」

イルカ先生は簀巻き来院の常連だったのか。
先生のご両親と同じ思考ルートを辿ってワイヤー簀巻きに落ち着いたのかなと思うと、なんだか感慨深いものがある。
……あれ? でもご両親が亡くなった時、イルカ先生はまだ十歳だったはずだ。その後は誰が連れてきたのだろうか。まさか三代目とか?
そんな顔色を読んだのか、ナマズ先生が答えをくれた。

「あの厄災の後は、逃げずにちゃんと受けに来とるよ。子供の頃から一昨年も去年もずっと。毎年、一人でな」
「そうなんですか? じゃあ、なんでまた急に今年は逃げ始めたんだろう……」

しかも、いい歳した大人になってからの、本当に今更。
累積した恐怖心がとうとう爆発したんだろうか。
俺が首を傾げていると、ナマズ先生がにやりと笑って俺を見た。

「答えは君が持っとるんじゃないかな」
「俺が……ですか?」
「私は世間話にはとんと疎いが、断言できるぞ。カカシ君は、ちょうど一年前はイルカと付き合っておらんかったろう。或いは付き合い始めかな」
「は、えっ? まぁ、その通りですが……それと何の関係が?」

ナマズ先生が急に足を止めたので、つられて俺も立ち止まる。
すると先生がしげしげと俺を見上げた。

「あの子にも、また甘えて我儘を言えるような相手ができた、ということじゃないのかな? ご両親のように、家族のように」

胸にドン、と衝撃を食らった気がした。
喉の奥が詰まって、息を吸えばいいのか、吐き出せばいいのか分からなくなる。

「おや、気が付かなかったのかね? 有名な写輪眼のカカシ君も、存外自分のことには鈍いとみえるな」

そしてホッホッホッと笑いながら、ナマズ先生は先に歩き出してしまった。
その写輪眼のカカシに、特大特効の一撃を食らわせたことは、全く気にも留めずに。
俺はゆっくりと震える息を吸って、吐いた。
こみ上げてきたものは、なんとか治まってくれたらしい。念のため右目を軽く擦ると、ナマズ先生を追いかけて足を早めた。



処置室の前に来ると、ナマズ先生が中の様子を一瞥して片眉を上げ、俺に話しかけた。

「どうやらまた鬼ごっこの再開らしいぞ」

まだイルカ先生を転がしておいたベッドも見てないのに、はっきり宣言する。
慌ててカーテンをシャッと開けると、確かにそこはもぬけの殻だった。布団はだらりとベッドの上から垂れ下がり、ワイヤーが蛇のように床に落ちている。
やられた……!
封印の術が甘かったんだろうか。イルカ先生を侮ってた訳ではないけど、注射から逃げたいという必死さを舐めていた。
俺は忍犬たちを呼び出すと、イルカ先生を探して捕獲するように頼んだ。ゆめゆめ油断するなと言い含めて。
それにしても、さっきも僅かにしか出てない俺の顔色を読んだことといい、イルカ先生の逃走を見抜いたことといい、ナマズ先生はただ者ではない。ベテランの医者というのは、洞察力にも優れているんだろうか。
そしてやれやれという顔で苦笑しているナマズ先生を振り返る。

「あの~、ナマ……河津先生、ひとつお願いがあるんですが……」




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