ここのところ、先輩の脳内は完全にお花畑だ。ようやくイルカ先生と付き合えるようになったんだから、それは分かるんだけど。
こうやって任務中にまでお花を持ち込まないでほしい。
先輩の天幕に入る時の符丁があまりにも私生活駄々漏れで、いろいろ想像してしまってツラい。
先輩はいいだろうけど、答える方の身にもなって欲しいよ。
くの一なんか白い目で見てる人もいるっていうのに、先輩は全くお構い無しだ。

最初の「海」「豚」くらいならまだ良かった。
海と問われて豚と答えるなんて普通は思い付かないし、符丁としてはむしろいい部類に入る。
でも……

「裸」「エプロン」

「バレンタイン」「チョコプレイ」

「抜かず」「５発」

……とまぁ、最近ではイルカ先生がかなり心配な状況ではある。
妄想なのか現実なのかは知らないし、知りたくもないけど。



でも目下の悩みはそこじゃない。
僕は今、目の前にいる先輩の雑用係りに任命された下忍くんに、本日の符丁を伝えなければならないのだ。
この子はイルカ先生の元生徒だろうか。あとで先生に意味なんか聞かないでくれるといいんだけど。

僕はため息をついて、初めての大役にキラキラした目で僕を見上げる下忍くんに符丁を伝える。

「それじゃ、今日の符丁だけど……」





【完】