【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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 木ノ葉の里まであと半刻ほどという森の中、枝を蹴って駆けているところを目掛けて式が飛んできた。
 色は群青。
 猫面に暗部服姿のテンゾウは、スピードを緩めることなくそれを掴むと、中も改めず小さな炎に変える。
 燃やされた式の上げる細い煙が消える頃には、夜明け前の森から人影は消えていた。




 暗部の任務終了後、通常は火影に直接報告する。
 だが火影も一人の人間で二十四時間体制ではないので、不在の時や急を要さない時は、暗部専用の受付で任務のやり取りをすることも多い。群青色の式は、そちらの受付に向かえという指示だ。
 任務終了と帰還の連絡を送ると返ってくる式は、他にも深い緋色と濃い鼠色があり、それぞれ報告する場所が違う。
 今日はこの小部屋か、とテンゾウは本部棟の火影執務室の外側に張り出した、庇のような細いスペースに降り立った。
 群青の受付は執務室の隣だ。
 ここは建物の中側に扉が存在せず、窓からしか出入りできない。廊下からは小部屋があることなど分からないので、執務室の一部として存在する隠し部屋なのだろう。
 テンゾウは姿の見えない警護中の暗部に挨拶代わりに一つ頷くと、鍵のかかってない窓を開けてするりと忍び込んだ。
 そこには窓側に向かって簡素な机と椅子が置いてあり、目元だけを覆う仮面の忍が座っている。

「お疲れ様でした! 報告書をお預かりします」

 いつも通り、薄暗い小部屋には不似合いなほどの明るい声がテンゾウを迎えた。
 半面の忍はここ最近群青色の受付で見かけるようになった男で、恐らくテンゾウと同い年くらいだ。
 その男の暗部面に似た獣の面は下半分がないために表情が丸分かりで、今も何が嬉しいのか笑顔で報告書を受け取っている。
 半面は頭の後ろに白い組紐で結んであり、男の上半分を結い上げた髪紐の黒と重なって、白黒の水引のように垂れ下がっている。テンゾウは実際には使ったことはないが、香典袋みたいだけど暗部の受付にはお似合いだななどとぼんやり眺めていると、不意に半面の顔が上げられた。

「こちらの潜伏中に目印にされたという、屋根裏の梁に貼られた赤い札ですが、何かおかしな事はありましたか?」
「おかしな事、とは?」

 半面のくり抜かれた目の部分の中で、黒い瞳がちらりと横に動く。

「そうですね、……何かおかしな者を見た、とか」

 おかしな物など見た覚えはないと言いかけたテンゾウは、そういえば単独任務だったのに帰路はやけに別の気配を感じた事を思い出した。どれだけチャクラを探っても尾けられてはいなかったので、単に神経過敏になっていただけだと結論付けた事も。

「特にないです」
「……そうですか。それではこちらの報告書は、後ほど三代目にお渡し致しますので。お疲れ様でした!」

 任務完了の言葉に踵を返して窓に向かおうとすると、背後からカタンと硬質な音と焦った息を呑む気配と、腰辺りにバシャリと何か水っぽいものがかかった感触があった。

「わぁ、すみませんすみません!」

 どうやら半面の男が、机の上のグラスを倒してしまったらしい。
 拭く物でも探しているのかキョロキョロしているが、最低限の備品しかないのか見当たらなかったようだ。

「うっかり手が滑って! これ、ただの水なので乾けば大丈夫かと!」
「もう大丈夫です」

 確か、前も似たような事があった。
 前回はペン入れをぶちまけて拾うのを手伝い、その前は慌てて立ち上がったところに躓いたのか、手にしたコップの水をかけられた。こんな粗忽者が暗部専用の受付など務まるんだろうかと、同い年くらいの男が少し心配になる。
 かけられた水からも特に不穏なチャクラや術は感じなかったので、問題なしと判断したテンゾウは窓から出ると朝焼けの中を軽やかに跳んだ。



 このまま真っ直ぐ家に帰るつもりだったが、着替えのため暗部屯所に寄って行くことにした。
 一旦帰ると出直すのが面倒なので、ついでに暗部服や装備の交換と消耗品の補充をしておきたかったのだ。
 待機所に顔を出すと、早朝だというのに馴染みの顔触れが三人ほど、ソファーなどで思い思いに寛いでいる。

「あら久しぶりね、テンゾウ」
「今日も単独か」
「今の時間帯だと別の受付か。どの色だった? 群青の君に会えたか?」

 適当に頷いて挨拶を返していると、聞き覚えのない単語に雉面に顔を向けた。

「群青の君って?」
「知らないのか? 群青色の受付に可愛い子が入っただろ。ほら、黒髪を黒い紐で結んでる」

 さっき受付をしていたのはまさにそういう奴だったが、可愛いとは? とテンゾウは首を捻った。

「確かに群青だったけど、僕が会ったのは同い年くらいの男だから、その『群青の君』じゃないと思うけど」
「その子だよ! お前、運いいなぁ」

 テンゾウは面を上げると、呆れたように雉を見返した。

「可愛いと思うのは個人の趣味だから構わないけど、運がいいって? 僕がさっき水をかけられた事かな?」

 すると辰面がくすくすと笑う。

「そういうドジっ子なところが可愛いんじゃない」
「暗部専用の受付でドジっ子は駄目だと思うけど。向いてないんじゃないかな」

 暗部の任務帰りなんて殺伐とした空気を纏ったままの者がほとんどだ。そこにドジっ子を発揮されても、可愛いどころかキレて暴力を振るわれたり襲われたりしかねない。
 いくら若いからといっても、忍に年齢など通用しないのは常識だ。今さらながら本当に大丈夫なのかと心配になる。

「まぁ、そう言ってやんな。あいつも冗談や嫌がらせでやってる訳じゃないんだ」

 いつの間にいたのか、寅がテンゾウの肩を叩いた。
 寅は普段は火影の護衛チームなので、ほとんど屯所には顔を出さない。珍しいこともあるもんだとその巨体を見上げると、寅はニヤリと笑いかけてきた。

「あいつはお前と年も近いだろ。仲良くしてやってくれ」

 暗部専用の受付の忍となど、任務上のやり取り以外に何を仲良くするというのか。寅が彼を知ってる風なところは気になったが、あんな危なっかしい奴と関わってもろくなことにならないだろうと曖昧に頷いて目を逸らす。
 テンゾウはそのままロッカーに向かうと、着替えて今度こそ自宅に向かった。





 深い眠りから急速に浮上する。
 体はぴくりとも動かず目も開かない、意識だけの目覚め。
 ギシリ、と軋むベッドに、またかとうんざりした。
 仰向けに寝ている左足首のすぐ脇ぎりぎりを、掛け布団の上からギュッと踏みしめる感触。
 いつもは部屋の中をうろつく足音だけなのに、今日はずいぶんと近い。そしてあからさまな視線を感じる。
 今度は右足の脹脛のすぐ脇が踏みしめられた。
 体重を感じさせるように沈むマットレスと、沈んだ分だけ引っ張られる掛け布団にテンゾウは眉を潜めた……つもりだが、実際は体が動かない。
 ――見られている。
 目を開けなくとも、閉じた瞼に視線が突き刺さる。
 また一歩、存在感を誇示するように左膝のすぐ脇が沈んだ。これだけの質量があるのに、生き物の気配は微塵もない。あえて言うならば、強い意思のようなものだけ。
 不意に気配がぐっと近付いた。
 ……そう。例えば、自分の顔のすぐ前に顔を寄せられたような。
 そして唐突に、『目を開けろ』という思いが浮かんだ。
 自分で考えた事ではない。
 まるで頭の中に直接囁きかけるような、声なき声の強制的な指示だ。
 その高圧さが不愉快だったテンゾウは、声らしきものを無視してまた眠りに落ちていった。



 次に目覚めた時は、室内は薄暗くなっていた。
 思っていたより疲れが溜まっていたのか、八時間以上寝ていたようだ。
 そのせいか分からないが、今回はまたずいぶんとリアルな夢を見たものだと上半身を起こすと。

 掛け布団の上に、楕円形の踏まれたような痕跡があった。
 テンゾウの体をぴたりと挟んで。
 左右に、三つ。

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