【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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 今日という日を特別にするために、僕はふわふわと駆ける




今日は珍しく僕だけ休みで、イルカさんが出勤していった。

「たまにはのんびりしてくださいよ。一日中寝てるとかちょっと散歩に行くとか、好きに過ごしていいんですよ」

出がけに言われた言葉を反芻してちょっと散歩に出てはみたものの、気付いたら第二十六演習場まで駆けて来てしまって、せっかくだからと暗部式ストレッチで少し体をほぐす。
この演習場は緑が濃く、小さな川まで流れているので、ついでに水を浴びて軽く汗も流した。
木陰で大の字に転がって目を閉じてみるけど、眠気は訪れそうにない。
でも代わりに夕べのイルカさんの笑顔が浮かんで、僕まで自然と微笑んでしまう。

「あ~あ、俺も明日休み取れたら良かったのに。帰りケーキ買ってきますからね、楽しみにしててくださいね!」

実は僕はケーキにそこまで思い入れはないのだけど、イルカさんが嬉しそうだから好きになった。昨日、急に。
あの後もやれ胡桃の入ったチョコレートケーキがいいか、それとも定番のショートケーキにするかとものすごい悩んでいて、どれがいいか聞かれたけどもっとイルカさんの悩んでる顔を見ていたくて「うーん、どれがいいかな」と少し意地悪を言ってしまった。本当なら即答して悩みを終わらせてあげるべきだったのに。

「メシもな〜! たいしたもん作れねぇし、やっぱ食いに行きますかね。でもケーキ持ってウロウロする訳にいかねぇし、一旦帰ってケーキ置いてから出るか……でもそれも面倒だよな……あ、いやヤマトさんの為の手間を惜しんでるんじゃなく!」

独り言のような、僕に相談しているような。
不思議な話し方をしていたけど、わくわくとソワソワの入り混じった空気は僕にも伝染したらしい。


──そう、今日は僕の誕生日なんだ。付き合ってから初めての。


この「付き合ってから初めての」というのは、イルカさんが何度も繰り返していた言い方だ。
どうやら誕生日という特別な日を、さらに特別にする効果があるらしい。
僕にとっては誕生日なんて、忍者登録書などの公的書類に記入する為に覚えておくべき情報の一つに過ぎないのだけど、イルカさんにとっては違うみたいだ。
そういえばサクラも前に「もうすぐサスケくんの誕生日ね……」って里抜けしたサスケの誕生日のことを呟いてたし、自分のというより大切な人の誕生日が特別なんだろう。

大切な人。
イルカさんにとって、僕が。

またソワソワと落ち着かなくなって、思わず体のバネを利用して一気に立ち上がる。
そうだ、結局夕飯はどうするか決まらなかったから、僕が作ろう。これから買い物して、イルカさんには式で連絡しておけばいいだろう。
そうと決まったら何を作ろうか。
イルカさんの好きな唐揚げとクリームシチューと。子供舌なんですよねって照れ臭そうに笑ってたけど、その笑顔にふと子供の頃の面影が見えた気がして嬉しかった。そうだ、こないだめちゃくちゃ美味いと褒められた豆腐のナッツ和えもまた作ろうか。
シチューだと今日も暑いからキツいけど、エアコンがあれば大丈夫かな。そうするとイルカさんのアパートより僕の家かなぁ。
……いろいろ書いてたら、式というより手紙みたいになっちゃったな。まぁいいか。
よし、それじゃスーパー木の葉に寄って買い物だ。
あっ、家だとあれを隠しておかなきゃ。
イルカさんちのベッドサイドに、いろいろ置ける所があると便利だなって思ったんだよね。
いろいろってほら、いろいろする時に必要ないろいろをしまっておける引き出しとか付いてる、ちょっとした小さめのサイドテーブルとかね。
それを僕が作ってプレゼントしたら喜ぶかなって。
前に玄関の棚の上に置いておく鍵とかの小物入れを作ってあげたら、すごく喜んでくれたし。

「うっわぁヤマトさんって器用なんですねぇ! しかもこの木、ヤマトさんの体の一部みたいなもんじゃないですか。それを俺の身近に置いておけるのって何かこう、良いですよね。へへっ」

そんな可愛いことを言われたら、木分身を常時イルカさんの家に置いておきたくなるからやめてほしい。
さすがに引かれるだろうからやらないけど。
本音としては、いつも僕自身がイルカさんのそばにいたい。
僕もイルカさんを感じられる何かが欲しい。

あ、誕生日プレゼントこれにしよう。
何か欲しい物ないですかって聞かれて、ずっと出なかった答。
正確には、イルカさんという欲しいものが僕にはもうあるから、それ以外が思い付かなかった。
そのまま伝えたら、こっちが心配になるくらい真っ赤になってたな。

「それは……! まぁ、俺はもうヤマトさんのものですけど! でもそれを言うならヤマトさんも俺のものですけど⁈」

うん。僕はもうイルカさんのものなんだ。
だからイルカさんのために美味しいご飯を作る。僕の誕生日に。
さぁ、急いで木の葉スーパーに行こう!
シチューと唐揚げの材料を買おう!
豆腐のナッツ和えの材料とビールも忘れずに!
なんだかまた足が早くなって、駆けてるみたいだ。
駆けてるというより、ふわふわ浮いてるみたいだ。
ふわふわ、ふわふわ。
こんな気持ちになるのは初めてだ。

だって今日は僕の誕生日。
イルカさんと付き合ってから初めての、特別な。
ね。




【完】