【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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イルカとシラスの生まれた日
その日、うみの家の居間は朝からピリピリと張りつめた空気が充満していた。
「イッカクよ。一家の主がそのように落ち着きなく歩き回るものではないぞ」
「いやしかしな、お産なんて初めてで……」
「我が里から腕利きの産婆を連れてきておるのじゃ。種は違えど同じ猫の仔、大丈夫に決まっておる。じゃから壁や天井まで歩き回るのはやめい! お主の方がよほど妖に見ゆるぞ」
すると後ろに控えていた羅黒が、羅刹丸にそっと耳打ちした。
「……三日月殿、尾が」
イッカクと羅刹丸がくるりと振り返ると、胡座をかいている羅刹丸の着物の裾からたっぷりとした白い尾が飛び出していて、ばさばさと畳を叩いていた。
「なんだ、羅刹丸も落ち着かないんじゃねぇか」
「うむぅ……儂とて人猫の仔は初めてじゃ。まだ産まれんのかのう」
そこに閉じられた襖の向こうから、か細くもしっかりとした仔猫の鳴き声が聞こえてきた。しばらくしてから襖が開き、「産まれたよ、おめでとさん! 元気な雄の三毛だね」と産婆が顔を出した。
「コハリっっ!」
イッカクと羅刹丸が先を争って寝室に飛び込み、羅黒は部屋の外からそっと覗きこむ。
そこにはやつれながらも頬を輝かせ、笑みを浮かべた浴衣姿のコハリが横たわっていて、その胸の上に小さな三毛の仔猫がぺたりと乗っていた。
にぃぃ にぃぃ にぃぃ
まだ眼も開かず、申し訳程度の耳が両脇に付いた仔猫は、必死に頭を上げて鳴いている。
「コハリ……よく頑張った、ありがとう!」
イッカクはたまらず男泣きしながら、恐る恐る仔猫に手を伸ばした。するとまだしっとりとした仔猫は、そちらに顔を向けてにぃぃ にぃぃと甲高い声で鳴いた。
「ふふ、あなたがお父ちゃんって分かるのかしら」
「おうおう、なんと……かわゆい仔じゃのう」
「おめでとう御座いますコハリ様、イッカク様」
春から夏に移ろうとする日の朝、うみの家に誕生した三毛の仔は『イルカ』と名付けられた。
それから三年後――
仔猫の姿で産まれたイルカは、この頃には三色の体毛も薄れて消え、耳とヒゲと尻尾を残すのみとなっていた。
人猫の仔は成長と共に人の姿になるのだが、イルカはまだ完全な人の姿になっていなかった。そのため里の子供たちと遊ばせる訳にもいかず、忙しい両親に代わって毎日羅刹丸や羅黒が遊んでやっていた。
うみの家は里の中心からはだいぶ離れた場所にあり、近隣の家もない。
人猫族は人の姿をしているとはいえ人外の生き物であり、特に仔は猫の姿の期間が数年あるため、家の周囲には人目を遮るような結界を羅刹丸が張っている。
この事を知っているのは、三代目火影のみであった。
ヒルゼンはお忍びで既に何度かうみの家を訪れ、イルカに土産を持ってきては一緒に遊び、夫妻や羅刹丸とも話をして帰っていった。
羅刹丸のことを「らっちゃ、らっちゃ」と呼んで片時も離れなかったイルカは、最近ようやく人の言葉を話せるようになっていた。
半人半猫なせいか、なかなか上手く言葉を発せられないイルカを心配していたコハリだったが。誰にも相談することもできず、たどたどしくも会話ができるようになってからは、一人胸の内で安堵していた。
「らしぇつまるぅ、またとなりの犬をたおしにいこうよ!」
「またあの大きな犬のところか。一昨日も相撲で負けたばかりではないか」
「きょうこそ、じぇったいかつの!」
「そうじゃな、一昨日も惜しいところじゃった」
そう言い合いながらイルカと羅刹丸は庭を飛び出し、木々の間を跳ぶように駆けていった。
「お昼は置いとくからね! 大きな怪我しないように気を付けるのよ!」
任務に出る支度をしていたコハリは二人を見送ると、ふうとため息をついた。
隣の犬といっても、林と丘を越えた所にある家の放し飼いにされた犬だ。今のイルカの遊び相手は、羅刹丸とその犬だけ。たまに羅黒が相手をしてくれるが、同い年の子供はいない。
人里に住む人猫族の定めではあるが、普通の子供らしい生活を送らせてやれないことをコハリは申し訳なく思う。
(羅刹丸がいてくれて、本当に良かった……)
それから柱の時計を見て、コハリも慌ててリュックを背負って飛び出した。
広い庭の垣根からぴょこりぴょこりと、黒い結い髪の天辺と三毛の耳、そして白銀の逆立った耳のような髪とが覗いている。
『となりの犬』のいる庭には色々な種類の犬が数匹いて、追いかけっこをしたり昼寝をしたりと思い思いに過ごしていた。
「今日はどんな作戦で行くのじゃ?」
「えっとね、父ちゃんがね、あたまをさげてドカーンっていけって!」
「そうか、それは理に適っとるの。今日もあの一番大きな犬にするのかの?」
「うん! それでね、しょうぶにかったら、いうかのこぶんにするんだ!」
それを聞いた羅刹丸は、うむと頷いた。
その一番大きな犬は、イルカと比べると小山ほどの大きさの黒い犬だった。イルカどころか、その辺の大人でもまず勝てないだろう。
だが群れの中でも一番大きな犬を相手に挑むイルカの気概が、羅刹丸には微笑ましくもあり嬉しくもあった。
イルカは倒すと言っているが、犬の方は全く気にしてないようだった。もう十五回目の挑戦になるのだが、毎回イルカが一方的にぶつかったり叩いたりするだけで、犬は片目をうっすら開けてイルカを認めると、また閉じてしまうのだ。
羅刹丸は周囲の気配を探った。
この家はいつも人気がない……というより、家から漂うのは『人』の気配ではなかった。だがそれは羅刹丸にとっては些細なことだ。イルカが楽しく遊ぶのを邪魔しなければ、その他のことは全て些細なことだった。
イルカは既に庭に入り込み、大きな犬の十メートルほど手前で、猫が獲物を狙う時のように尻を揺らしながら体を低く構えている。
と、「しょうぶだっ!」と叫んで犬に向かって毬のように飛び出した。
イッカクに言われた通り、頭を低くした姿勢のまま犬の顔に向かい、たっぷりとした頬の辺りに勢いよくぶつかったのだが。イルカの渾身の突進は犬の頬をぶるんと揺らしただけで、イルカの方が反動で後ろに引っくり返ってころころと転がってしまった。
すると犬はのっそりと立ち上がり、鼻先でイルカを転がして仰向けにさせると、べろりと顔を舐めた。イルカはぐうっと歯を食いしばり、への字口でしばらく耐えていたのだが。
「……っく、ぐぅ、ふうううううう」
負けた相手に労られたことが悔しかったのか、顔を真っ赤にして必死に泣くのを堪えていた。
だが果敢にも再戦をと立ち上がろうとしたところで、羅刹丸は遠くに家人の気配を二つ感じとった。イルカの元に一跳びして素早く小さな体をすくい上げると、犬に向かって「今日はここまでじゃ。また来ようぞ」と言い置き、林の中へと跳んだ。
程なくして、任務帰りであろうリュックを背負った白銀の髪の親子連れが、裏木戸から庭の中へと入っていった。
「みんなただいま……あれ、また猫の気配がする」
「近所の猫がいつもうちの犬たちのところに遊びに来てくれてるみたいだね」
「そうなの? オレも一回会ってみたいな。猫って柔らかくて不思議な生き物だよね」
「はは、猫は人見知りだから難しいんじゃないかな。さぁ、荷物を置いて昼ごはんにしようか」
長い髪を後ろで一括りにした父親の方は、家の中に入る前にくるりと振り返り、林の方を見やると小さく頭を下げた。
「……フン、犬のくせに敏い奴じゃ」
イルカを抱えて林の中で身を潜めていた羅刹丸は、小さく吐き捨てるように呟いた。
「え、なんていったの?」
「いや、今日は一旦家に戻って昼にしようかの。コハリがおむらいすを作っておったぞ」
「ホントに?! いうか、母ちゃんのおむらいしゅ、だいしゅき!」
イルカは羅刹丸の腕から抜け出すと、林の中を駆け出していった。
「これイルカ、慌てるでない。午後は昼寝をしてから無花果を採りに行こうぞ」
「らしぇつまるぅ、はやくしないと、ぜんぶたべちゃうよー!」
どうやら犬に負けたことは一時的に忘れてくれたようだ。
「やれやれ、ほんに元気な子じゃの」
羅刹丸は安堵の笑みを浮かべると猫の姿に身を変え、身軽に木々の合間を縫っていくイルカの後を追っていった。
夕方イッカクが家に帰ると、ちょうどイルカと羅刹丸が風呂から上がったところだった。
「おかえり父ちゃん!」
尻尾をぴんと立てたイルカが、頭にタオルを巻いただけの裸ん坊でイッカクに飛び付く。
「おう、ただいま。今日はよく遊んだみたいだなぁ」
そのとたんイルカは昼間の一方的な戦いを思い出したらしく、目に見えて暗い顔になった。立ち上がっていた尻尾も、しゅんと項垂れたように落ちる。
「なんだぁ、またお隣のワンコロに負けちまったのか?」
イッカクが畳み掛けたので、とうとうイルカはわんわんと泣き出してしまった。
「と、父ちゃんのいうとおりにした、ひぃっく、のに、まけ、うぇっ、まけたぁぁああああ」
浴衣姿の羅刹丸が、バスタオルを手に浴室から出てきてイルカに巻き付ける。
「そう言うでないイッカクよ、イルカはよく戦っておった。あれは見事なタックルじゃったよ」
「そうかそうか、よく頑張ったなぁイルカ。父ちゃんも見たかったよ。……そうだ、今日は土産があるぞ!」
なおもしゃくり上げるイルカに焦ったイッカクは、リュックからビニールに包まれた物を取り出した。
「木の葉じゃちょっとお目にかかれない珍しいもんだぞ。さぁ、これで晩飯にしような」
「ほう、この匂いは……生の魚ではないか。ほんに珍しいのう、儂も楽しみじゃ」
羅刹丸が大好物の匂いを嗅ぎ付けて目を細めた。
「だろ? ここじゃなかなか手に入らないからなぁ。これのために部隊の尻を叩いて急いで帰ってきたんだぞ」
気を良くしたイッカクが、玄関先でしゃがみこんで包みを開け始めた。イルカも泣くのを忘れ、興味津々でイッカクの手元を覗きこむ。
「これは……なんじゃ、シラスではないか」
中身を見た羅刹丸が、がっかりして肩を落とした。
「そう言うなよ、これをポン酢とわさびで食うとすっげぇ美味いんだぞ?!」
「シラス?」
イルカは目を真ん丸に見開いて、ヒゲを前に倒してじいっとシラスを見つめた。
小さな一塊になったそれは、よくよく見ると小さな小さな目が粒々とあって。
半透明な身が夏のさざめく川面のように、きらきらと光り輝いていた。
「シラス!」
「そうじゃな、餌にもならぬ雑魚じゃよ」
「シラス! きれぇだねぇ……らしぇつまるみたいに、きらきらしてるねぇ」
「なっ、儂みたいにじゃと?!」
羅刹丸がぎょっとしてイルカを見ると、イッカクがワハハと馬鹿笑いをして生シラスを羅刹丸の髪の所に持ち上げ、並べて見せた。
「そういや似てるな! 羅刹丸の毛並みの色にそっくりじゃねぇか、ほら」
「儂をそんな雑魚と……っ!」
羅刹丸は反論しようとしたが、イルカがあまりにも熱意の籠った目で見つめてくるので、それ以上何も言い返せなかった。
その後の夕飯でも、食卓に並べられた生シラスを、イルカはうっとりと眺めていた。
イッカクに「早く食わねぇと傷んじまうぞ」と言われ、しぶしぶと口に運んだのだが。
「んんん! シラス! ぷちぷち!」
初めて食べる生のシラスの感触を、イルカは体を弾ませながら全身で味わっていた。
「シラスってしゅごいね! こんなにきらきらでおいしいなんて、しゅごいね、らしぇつまる!」
「だろ? 羅刹丸みたいに綺麗で、しかも美味い。生シラスは最高だよ。なぁ、羅刹丸!」
親子二人でシラスと自分の名を並べて絶賛する様子に、羅刹丸は苦い笑みを浮かべることしかできなかった。
だがさすがの大妖も、この後我が身に降りかかる更なる事態を見通すことまではできなかったようだ。
次の日の朝――
羅刹丸が目覚めると、夜中任務から帰っていたらしきコハリに、イルカは昨夜のことを興奮しながら語っていた。
「……でね、シラスがしゅごいきらきらでね、らしぇつまるなんだよ!」
「それは母ちゃんも見たかったわ……あら羅刹丸、おはよう」
コハリの言葉でイルカがくるりと振り返った。
「あっ、シラス! おはよー! きらきら!」
羅刹丸はびきりと固まった。
「シラ、ス……? それは儂のことかの……?」
辛うじて『ら』だけは残っているが。
らしぇつまるの面影が微塵もないその呼び名に、万が一の希望を抱いて羅刹丸はイルカに問いかけた。だがイルカはそんな羅刹丸の動揺などお構いなしに、一番と描かれた服をコハリに被せられながらはしゃいでいる。
「シラス、犬たおしにいこうよ~! きょうは、じぇったいかつ!!」
雑魚と言い放っていた魚の名前で呼ばれ、固まったままの羅刹丸にコハリは苦笑した。
「あー、イルカには羅刹丸よりシラスの方が言いやすいからだと思うわよ? ねぇイルカ、相手が本当に嫌がってることはしちゃダメって、いつも言ってるよね。羅刹丸にシラスって呼んでもいいか聞いてみなさい?」
するとイルカは真ん丸な黒い目で、不安げにじいっと羅刹丸を見上げた。
「……シラスは、いや?」
「うっ、むうぅ……嫌ではない、ぞ」
「しょっか! シラスきらきらだもんね!」
ぱぁっと顔を輝かせて喜ぶイルカに、実は嫌だなどと言えるものではなかった。
それに言葉の拙い今だけのこと、と羅刹丸は己に言い聞かせた。
まさかそれが定着し、二十年経っても呼ばれるばかりか、忍猫の名として登録されるとは夢にも思わずに。
そして腹立たしいことこの上なくも、犬使いにもシラスと呼ばれる破目になろうとは、この時の羅刹丸には全く予測のつかない未来だった。
********
「……それでシラスって名前になったんですか」
「はい、当時は生のシラスなんて木の葉では珍しかったですからね。ホントに綺麗で、俺もう感動しちゃって!」
二人で囲む食卓には、カカシの作ったアスパラの肉巻きやロールキャベツを押し退けて、生シラスの小鉢がメインのおかずよろしく真ん中に陣取っていた。
この日はカカシが自宅で夕食を振る舞うことになったのだが、イルカが手土産にと「魚屋でいいもの買ってきました!」と差し出したのが生シラスだったのだ。
せっかく小姑のいない夜なのに、とカカシは一瞬渋い顔になったが。ふとシラスの名の由来が気になって訊ねてみたのだ。
「じゃあ、イッカクさんの土産が饅頭だったら、シラスにはならなかったのか」
「あはは、そうですね! マンジュウはさすがに羅刹丸が可哀想ですよ」
マンジュウもシラスもカカシには大差ないように思えたのだが。
イルカの価値観がそう言わせるならば、カカシに異論はなかった。それにシラスの由来と、そう呼ぶと不愉快になる理由が分かったのは思わぬ収穫だった。今後は何かの折々に生シラスを手土産にイルカの家を訪ねようと、空になった小鉢を前にカカシは秘かにほくそ笑んだ。
「そういえばイルカ先生って、子供時代は半人半猫だったんだね」
同じ人外でも違いは色々あるものなんだな、とカカシは感心していた。
だが記憶にないだけかもしれない。自分はどうだったのだろうかとも思う……もう訊ねられる人もいないのだが。
「ホントに小さい頃の話で、俺もぼんやりとしか覚えてなかったんですけど。羅刹丸がこないだ話してくれたんですよ、仔猫の頃のお主はいかにも腕白らしい、体に見合わぬ立派なヒゲじゃったって。他にも、産まれた時はそれは可愛らしい三毛の仔猫じゃったとか。だからやっぱり記憶違いじゃなかったみたいで」
イルカの幼い頃の記憶には、ところどころ猫のようなものが混ざっていた。頭の上の方にある耳を足で掻いたり、自分の尻尾を抱えて毛繕いをしたり。
まさか自分が人猫族などとは思ってもみなかったので、誰かが面白がって猫に変化させたのか、猫と遊んだ時の記憶と混ざったのかと思っていたのだが。
血を飲みたがる体質にばかり気を取られていたが、昼間だけ眼鏡が必要なことといい、思い返せば自分はだいぶ人から外れている。忍の里には血継限界など変わった外見や特性の者が多かったので、あまり深く考えなかったが。
両親が木の葉を住処と定めたのはそういう理由もあったのではないかと、イルカは思いを馳せた。
「可愛かっただろうねぇ。俺も見たかったなぁ」
カカシがうっとりと目を細めてイルカを見つめた。
「……猫の姿と猫耳尻尾の姿はもう見てるじゃないですか」
ビールのグラスを干したイルカが、口を尖らせて横目でカカシを見る。
「う~ん、でもねぇ、ヒゲまであるのは見たことないなぁ」
そう言うとカカシはニヤリとして、素早く印を組んだ。
「うわ、えっ? ちょっと何するんですか!」
イルカの所にぼふんと上がった煙が晴れると、そこには――
「ほぉら、やっぱり可愛い♪」
白地に茶の猫耳とすらりとした尻尾、それに立派な猫のヒゲまでご丁寧に生やしたイルカの姿に、カカシはご満悦で抱き付く。
「だって羅刹丸だけがこんな可愛い姿を知ってるなんてズルいじゃない。俺だってイルカ先生の全部を見たいよ」
そう言いながらイルカのヒゲの根元にキスをして、唇で挟むと毛先まで滑らせた。右手はというと、ズボンの中から引っ張り出した尻尾の根元を緩く握り、先端までゆっくりと撫で上げる……まるで、閨を思わせる手付きで。
「あ、カカシさん、そこは……ンっ」
イルカのヒゲがふるふると震え、カカシの口元をくすぐる。
「ふふ、この姿だと感じる所が増えるのかな? いろいろ確かめてみなきゃ……ね?」
カカシは既に力の抜け始めたイルカの身体を、抱えるようにしながらベッドへと連れていった。
途中でお互いの服を、閨への道標のように落としながら。
実は子供の頃にお隣同士だったと二人が気付くのは、しばらく後のことになる。
イルカがカカシを連れて、生家を訪れる時。
イルカは林と丘を越えて何度も戦いを挑みに行ったのがカカシの家の忍犬だったことを、カカシは自宅の庭に遊びに来ていた近所の猫がイルカと羅刹丸だったことをようやく知って、二人の縁の深さに驚くのだった。
――そして羅刹丸がそれを知っていながら黙っていたことも察して、カカシは地団駄を踏むのだが。
でもそれはまた、別のお話。
今この時はお互いの番を全身で感じ、味わうことだけに集中して蜜の時間を過ごすのだ。
二人のための夜は、あまりにも短くて。
【完】