【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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あのさ、怖い話してもいいか?
捨てても捨てても戻ってくるんだよ……。
いや、ゴミじゃなくて。生ゴミが何度も戻ってきたらヤバいだろ。なんだよその腐敗臭地獄。笑ってる場合じゃねぇんだって。
あぁ、ぬいぐるみとか人形に近いかもな。そっちの方がまだマシだったかもしれん。
……え、何を捨ててんのかって?
ちょっと詳しく言えないんだけどさ。うん、悪いな。
お祓い? そうか、お祓いなぁ。
効くのかなあの人に……いや何でもない。



最初は普通に捨てただけだった。
ゴミ捨て場に。
はたけカカシを。
上忍に対して不敬だろと思うだろうが、あいつの方がよっぽど傍若無人かつ無礼千万なんだから、ゴミ捨て場に捨てるくらいどうってことはないんだ。
そもそもの出会いからおかしかった。
新しい上忍師との顔合わせで三十分以上も遅刻してきたあいつは、謝りもせず人の顔をじろじろ見ると、いきなり不躾にこう言い放った。

「ふうん、あんたが噂の猛犬先生?」

…………普通な、初対面で言うか?
確かに陰でそう呼ばれてるのは知ってたが、猛犬先生なんてどう考えても蔑称だろうが。
思わず唖然として、上官だというのに噛み付こうと……いや、比喩的な意味でな? 「それは失礼にも程があるでしょう!」って言い返すとか。
そうしたら俺の開けた口にさっと手を突っ込んできたから、つい反射的に噛んじまったんだよ。今度は比喩じゃなく物理的に。
俺の犬歯は鋭い。
猛犬というのは、後ろ半分は事実だからだ。
ぎりぎりで働いた理性と反射神経のおかげで食いちぎらずに済んだが、突っ込まれた人差し指と中指から僅かに流れる血の味が舌に広がる。
ヤバい、人間を噛んじまった。しかも上官を……! と動揺する俺を尻目に、はたけカカシはなんと笑いかけてきた。

「いい歯してる。いい犬の証拠だね」

親指で、ゆっくりと犬歯を撫でながら。
そのにこにこと嬉しそうな笑顔から目を逸らさず、俺は口をそうっと開けて犬歯を抜き、そうっと後ろに下がった。
こいつはヤバい。
動物としての勘がびりびりと訴えかけ、うなじの毛が逆立つ。もし尻尾があったら股に挟んでたかもしれない。もういい成犬なのに。
無意識に小さく唸りながら、相手を刺激しないよう更にそうっと下がって逃げようとすると、伸びてきた手に両頬をがっちりと挟まれた。

「でも毛並みも肌つやもあんまり良くないね。ちゃんと世話してくれる主はいないの? よかったら俺がなろうか?」
「けっこうですっ!」

思わず瞬身まで使って逃げた俺を誰が責められようか。
その日は上忍師への説明は諦め、受付業務を済ませて家に帰った。明日また改めて会わなきゃなぁと、若干憂鬱になりながら。
だが再会の機会は、俺が思っていたより全然早かった。
ドアをノックする音にナルトが夕飯でも食べに来たのかと勢いよく開けたら、そこに立っていたのははたけ上忍だった。

「やっぱり合ってた。イルカ先生の匂いが強いからここかなと思って」

そうにこにこと機嫌よく言っていきなり俺の部屋に上がり込んだはたけ上忍は、俺の作った夕飯を勝手に食べ、俺の風呂に勝手に入り、あろうことか俺のベッドで一緒に寝ようとした。
部屋に上がり込むまでは許せたんだ。
なにしろ里を背負って立つ上忍の、印を結ぶ大事な指に傷を付けてしまったのだ。お茶の一杯でも出して謝るくらいはするべきかと、さすがに思ったからな。
だがなんで初対面の奴と、わざわざ狭いベッドで一緒に寝なきゃならないんだ⁉

「まずはお互いを知らないと。そのためには寝食を共にするのが一番でしょ」

この図々しい一言で俺はぶちギレた。
なんで胡散臭い上忍の一方的な要望に俺が応えなきゃなんねぇんだよ! 俺の共にできる限界はお茶までだ!
風呂上がりに勝手に俺のスウェットを着て布団に潜り込んできたはたけカカシを、俺はチャクラまで使って片手で抱え上げると窓を開けて外に放り投げる。
奴は綺麗な放物線を描いて宙を飛び、電柱の下にあるゴミ捨て場に着地した。

「二度と来んなっ!」

捨て台詞と共にぴしゃんと窓を閉め、その日はムカムカしながら眠りについた。
それから何度も何度も捨ててきたんだが、あいつは何回捨てても次の日の夜には戻ってくる。俺の部屋に。
時には肉を、時には酒を片手に、機嫌よくにこにことしながら。

「そろそろ俺のことも分かってきたでしょ。どう、俺を主にしない?」

そんなもん知るかってんだ。
俺に分かったのは、はたけカカシがとことん理解できない生き物ってことだけだ。
どんなに抵抗しても最後には強引に、確実に俺のベッドに入り込むはたけ上忍を手土産ごと捨てても、なぜか肉や酒はうちの冷蔵庫に収まっている。
さすがに食べ物を粗末にするのはいかんと次の日に調理して、性懲りもなくやってくる奴に提供してやれば貸し借りは無しだ。まぁ、俺も食うし呑むけど。
食事の合間に「今日はナルトがね、サスケを落とそうとした落とし穴に自分で嵌まってね」なんて言われると、つい聞き入ってしまう。
なんだか奴の術中に俺も嵌まってる気がするが、子供たちの話を聞けるのは嬉しい。肉も酒も美味いし。
流されてるようだが、主の契約は別問題だ。
ただ子供たちを介した上忍と中忍の関係だけなら俺だって構わないのに、……ほらな、いつの間にかまたベッドに潜り込んでいる。

「ねぇ、俺を主にしてよ」
「その話はもう終わってるはずです」

布団を剥いでちゃっかり着込んでいる俺のスウェットの上下をすぱん、すぱんと引きはがし、窓を開けて捨てようとするとパンイチのはたけ上忍が不意に真面目な顔をした。

「俺は優しくするよ?」

――俺『は』。
誰と比べてなのか、聞くまでもない。
おおかた前の主のことを誰かに聞いたのだろう。
好奇心で古傷を暴くその無神経さに、今日ははたけ上忍が着てきた支給服を一緒に投げることもせず、パンイチのまま無言で窓の外に放り捨てた。
ぴしゃりと閉めた窓越しにはたけ上忍を見下ろす。
俺の隠さない怒りの眼差しを、ゴミ捨て場に転がった奴は静かに見返していた。
俺はもう一度窓を開けると、印を組んだ。

「水遁、水乱波の術!」

口から噴き出した水流が、はたけ上忍目がけて襲いかかる。
だがしょせんは中忍の技だ。てっきり避けると思ったのに、奴はびしょ濡れで立っていた。
こちらを見上げたまま。
ふざけんなよ。これじゃあんたの方が捨て犬みたいじゃねぇか。そんなんで俺が絆されるとでも思ってんのか。

「二度と来んな!」

そう吠えると、カーテンをシャッと引いて布団に潜り込んだ。