【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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下忍になりたてのイルカは探し物のDランク任務で帰りが遅くなり、近道にと森の中を駆けていた。
木々の隙間から遠く、宵闇にぼわりと桜の木が一本浮かぶ。
まるで、自らが淡い明かりを灯しているかのように。
あまりの美しさについ足を止めてぼんやりと立ち尽くし見つめていると、幹の中ほどの高さに小さな銀色の光が揺らいだ。
何かの動物かとよくよく目を凝らすと、それは子供の頭だった。
すると幹から白い腕が二本伸びて、銀髪を抱え込むように引き寄せる。
人買いに売り飛ばす輩か、他里の忍による拐かしか。
不穏な空気を感じたイルカは道を外れ、桜に向かって走った。

桜の木の下まで来ると、それは見たこともない程の巨木だった。
幹の周囲はイルカが三人いても囲めないくらい太く、見上げると無数の仄白い花びらが視界を覆う。
中ほどに突き出した枝に立つのは、子供というよりは大きく少年から青年に見えた。全身黒装束に白いプロテクター、顔の横にずらしてるのは動物を模した白い面。
――木ノ葉の暗部だ。
そして彼を引き寄せていたのは、桜の花びらに溶けるような薄紅色の着物を纏った女だった。
いや、額に獣の牙のような角が二本生えているところを見ると、異形か魔物というべきかもしれない。
その角を生やした女に向かい、イルカは果敢にもクナイを構え声を上げる。

「その手を離せ!」
「おや、可愛らしい邪魔者よの」

女は深紅の唇を吊り上げ、イルカを見下ろした。
その腕の中に収まっている少年は、虚ろな目をイルカに向けるがすぐに逸らしてしまった。

「そいつは俺の仲間だ。勝手に連れていくな!」

イルカが叫ぶと女は金属音に似た甲高い哄笑を浴びせた。

「この子は一緒に来ると言うた。それは吾(われ)と契約をしたということじゃ。一度に一人、百年に一度の贄」

女の目が吊り上がり、大きく裂けた口からは角と同じ色形の牙がぎらりと光る。
仙界の生き物や魔物、妖との契約は絶対だと、三代目が見せてくれた古い巻物をイルカは思い出した。
ぐっと下唇を噛み締めると、クナイを捨て仁王立ちになる。

「それなら俺を連れていけ。そいつはこれからも里を守る大事な奴だ。子供なら俺が代わりでもいいだろ」

イルカの言葉に少年の肩がひくりと動き、目に僅かな光が宿った。
女はさも愉しげに含み笑う。

「構わぬよ。無垢な子供の魂は善き慰めになる」
「……それは駄目だ」

少年が女の腕の中から顔を上げ、真っ直ぐにイルカを見下ろした。

「あんたは俺が守るべき対象だ。それを交換なんてできるわけないでしょ」
「そんなら俺を守れよ。そんな死んだ魚みたいな目をしてないで!」

少年は面に隠れていない方の右目を真ん丸に見開くと、先ほどの女に劣らず大笑いした。

「何が可笑しいのじゃ」
「うん、ちょっと忘れてたなって。俺が楽な方に逃げたら、守るべきものを守れないってことをね」

少年はひらりと舞うようにイルカの元に降り立った。

「悪いけど帰らせてもらうよ」
「……契約はどうなる」
「あんたも分かってるでしょ。俺は一緒に行くのもいいかもね、としか言ってない」

女の目が忌々しげに細められたが、ふと緩む。

「それでも契約の半分は成されていた。だからお前の魂の半分だけ貰おう」
「待って、だったら俺の半分にしろよ!」

割り込むイルカに、少年がぎょっとして振り返った。

「だからそれじゃ意味ないって言ってるでしょ!」
「半分だけなら別にいいじゃないか! 俺の魂はむくだからいいってあいつも言ってただろ⁉ 若い方がうまいんだよきっと。な、そうだよな!」

女に向かってまくし立てながら木に登ろうとするイルカを、少年が「駄目だって!」と羽交い締めにして必死に止める。

「……もうよい。お前達の結論を待っておったら花も散ろうというもの。ならば二人で半分、それぞれ四分の一ずつじゃ」

女の白い指先が少年とイルカを交互に指す。
すると桜の花びらが二枚、各々の胸に鋭く刺さった。驚いたことに、一枚はイルカの体を通り抜けて。
花びらとは思えないほどの衝撃に、少年はイルカを抱え込んでうずくまる。薄らぐ意識の中、最後に見えたのは消え行く女の姿と、一段と明るさを増したかに見える宵闇に浮かぶ桜だった。





「……で、結局お主らは、朝まで無防備に桜の根元で寝ておったということじゃな?」

二人は木ノ葉病院のベッドで並んで寝かされ、三代目の説教を延々と聞いていた。
桜の根元で目覚めたイルカはあの出来事は夢かとも思ったのだが、鋭い痛みを感じた箇所を覗くと小さな痣ができていた。少年も同じだという。
魂を四分の一取られた代償がこれかと不思議がっていたら、二人ともほとんど歩けなくなっていたのだ。
辛うじてチャクラを練れた少年が式を飛ばし、病院へと運び込まれた。
そこでいろいろ検査を受けたところ、チャクラがごっそり抜かれているとのことだった。
それに不可思議な現象が白眼での検査で確認された。
二人が近付くほど、お互いのチャクラが綺麗に整うのだという。そして妙な波長で引き合ってるとも。
胸の痣以外には特に外傷もなくチャクラ切れに近い状態なだけなのだが、二人を並べておいた方が回復が早いとの判断でこういうことになっているそうだ。

「俺達、死なずに済んだってことですか?」

面を外して横たわっている少年が問いかけると、三代目は小さく唸った。

「ああいうものの言う魂が何を指すのかは、本人しか分からん。聞く訳にもいかんしな。取られたのはチャクラだけで済んだのか、寿命なのか……じゃがの、二人で半分の半分ずつという分け方をしたのは、あやつにも初めてだったんじゃないかの。そのお陰で無事だったとも言えるかもしれん」
「あの人、短気だったよな。もうちょっと待ってたら、ちゃんと話し合いで決まったのにな」

イルカがこそこそと少年に話しかけると、彼は呆れたように見返してきた。

「あのねぇ、そもそもあんたが危険なところに首を突っ込んできたから、こんなことになったんでしょ」
「なんだと⁉ 俺が助けなきゃ、お前は桜の木に呑み込まれるところだったんだぞっ」
「別に頼んでないし」
「この野郎~~~魚の死骸みたいになってたくせに!」
「はぁ⁉ 何よ魚の死骸って! 失礼にも程があるでしょっ」
「喝ーーーーーーーーー!」

三代目の雷に、二人とも横になったまま首を竦める。

「病人が騒ぐでない! だいたいイルカは危険を顧みず同胞に心を寄せ過ぎじゃ。先だっても意識のない暗部を拾おうとして、忍犬に止められたであろうが」
「あれは意識がないから大丈夫だと! ……あれ、そういえばあれも銀髪、いや白髪だったか?」

首を傾げるイルカの隣で、少年がゲホンゴホンとむせた。

「とにかく二人とも静かに養生せい。今後どうなるか分からんが、そのような異形に魅入られて無事じゃったのはひとえに幸運と心得よ」

三代目が病室を出ていくと、二人は顔を見合せた。

「そういえば暗部なのに、顔……」
「今さらもういいよ。名前は言えないけどね」
「だよなぁ。でも名前がないとこれから不便だよな。じゃあ桜でいい?」
「よくない」
「うーん、じゃあシロ……いや、ギン?」
「あのさぁ、センスないって言われない?」
「~~~~っ」

ここでまた言い争うと叱られると、しばらく無言が続いたが。

「なぁなぁ、この胸の痣、やっぱり桜の花びらだよな」
「だろうね」
「なんで付けられたんだと思う?」

二人の心臓の真上には、薄紅色の痣がくっきりと付いていた。
まるで、何かの目印のように。

「さぁね。気になるならあの桜の所に行って聞いてくれば」
「そうだな!」
「あんたホントに馬鹿? 次はもう助けないよ」
「~~~~~~っ、表に出ろ、決闘だ!」
「ハハッ、ろくに起き上がれないのに、しかも暗部の俺と?」

医療忍が飛んできて「病人は静かに!!!」と一喝すると、じろりと睨み付けてから出ていった。

「あんな風に叱られるなんて、恥ずかしくて次はもうここに入院できない……」

憮然と呟く少年に、イルカは少し哀しくなった。
たいして年も違わないのに、彼は最前線あるいは闇の中で戦い、傷付いては入院を繰り返しているのだろう。

「大丈夫だ、次は俺が付き添ってやるから安心しろギン。な?」
「そんな子供みたいなこと絶対やめてよ。いや待って、ギンで確定したの?」
「不満なら自分で考えろよ。暗部サマは頭もいいんだろ?」
「~~~~っ」