【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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  太陽堂薬局 ~初秋~



 店のドアに取り付けてあるベルがチリリンと鳴って、一人の忍がのっそりと入ってきた。
「いらっしゃいませ」
 いつも通り声をかけたが、おやおやこれは。
 近頃やたらと木の葉商店街に姿を見せるようになったと噂の写輪眼君じゃないか。そういえば夏頃、イルカ先生と買い物に来たこともあったな。あの写輪眼がお一人様一点限りのティッシュを買うとはと驚いた覚えがある。
 もっとも、俺が知ってた頃は写輪眼などは持ってなく、ただのはたけカカシだったが。いや、ただのじゃなかったな。天才って枕詞が常に付いていたし、そう呼ばれるに相応しい子供だった。
 今でこそ俺は薬局の店主などをしているが、昔はアカデミーでなんとはたけと同じクラスだったんだ。
 俺達より年下で入学した時、既にずば抜けた才能を持っていたはたけは、あっという間に五歳で卒業して中忍に昇格しまったが、こっちは六年かかった挙げ句忍にはなれなかった。それで里の薬剤部に勤めたりしていたが、結局は九尾の厄災で亡くなった父の跡を継いでこの薬局の店主におさまった訳だが。
 実力主義の忍社会ではそういうものだと分かってはいても、忍の神にとことん愛されたような銀色の髪がうろうろと売り場をさまようのを見ているとイラッとする。その忍の頂点たる男がこんな辺鄙な薬局にいったい何の用だと眺めていたら、なんとローションとスキンのコーナーで立ち止まり真剣に悩み始めた。
 時間的にもおおかたどっかの女を連れ込んだはいいが、スキンがないことに気付いて慌てて買いに来たとかそんなところだろう。モテる男はいいよな。
 ……それにしても悩み過ぎじゃないか?
 サッと買ってサッと突っ込みに帰れよ目障りだからと更にイライラしたが、仮にも写輪眼殿がそこまで真剣にローションのボトルを両手に悩んでる姿は、薬局の店主としても口を挟まざるを得ない。
「左のローションは滑りはいいんだが、すぐに乾くからあんまりお勧めはできないな」
 ぱっと顔を向けた写輪眼殿が、天の助けとばかりにこちらを見つめている。なんだその捨て犬をちょっと撫でたら、全身で嬉しいって尻尾を振るような顔は。
「そうなの? ローションって初めて買うからよく分からなくて」
 自慢か? そんなもん無くても今まで困らなかったって自慢なのか?
「あのさ、これって男用とかあるのかな」
 ……男用とは。
 マスかく為に使うとか、それにしちゃずいぶんと必死に見えるが、まさか。
「それは自分用じゃなく、相手の男に使うって意味か?」
「あー、うん。ま、そういう感じかな」
 なぜそこで照れる。
 写輪眼の嬉しそうな照れ顔なんてレアにも程があるだろう。しょうがない、乗りかかった舟だと棚からどピンクにハートの乱舞したいかにもなボトルを取って渡した。
「初心者にはこれがいい。無香料、無着色で安心安全の火の国製品。薬剤部で一般的に配布してるのとほぼ同じ成分だ。時間が経っても乾きにくい」
 あの写輪眼を初心者呼ばわりすることに内心暗い喜びを感じていると、他のボトルを戻して俺の渡した物を手にしたはたけはにこりと笑った。
「よく分からなかったから助かったよ。ありがとね、アサヒ君」
「……俺のこと知ってたのか」
 はたけは意外そうな顔で俺を見返した。
「そりゃあね、アカデミーで一緒だったでしょ? スタミナと根性が凄い奴だなって思ってたし」
 まさかこいつの視界に俺が入っていたとは驚きだ。
 しかも忍からドロップアウトしたような俺のことまで、ちゃんと見ていたのか。……そうか。
「必要なのはこれだけか?」
「他に何かいるの?」
「特殊なプレイを望まないなら、とりあえずこれとスキンがあれば大丈夫だ。下手に素人が浣腸して洗浄すると腸を傷付けることもある。事前に丁寧に風呂で洗うだけで十分だ」
 俺ははたけに渡したローションのボトルを奪い返すと、棚から『うすうすピッタリL』を掴んでレジに向かった。
 ローションとスキンを紙袋に入れた上で、太陽堂とプリントされたビニール袋に入れる。
「百八十両」
「ゴムの分は?」
 俺は片頬だけでニヤリと笑みを返した。
「初心者に俺からの激励だ。どうせこれから大量に必要になるだろ? その際はぜひ当店をご贔屓に」
 どんな男だか知らないが、はたけがここまで真剣に悩んで準備をする相手だ。性欲処理などではなく、付き合いも真剣なものなんだろう。ならば今後も利用してもらえる可能性が高いのだから、その為の先行投資と思えば安いもんだ。あとは俺を覚えていたはたけへの気持ちもあるかもしれない。ほんの少しだが。
 はたけはちょっと片目を見開き、それから嬉しげにその目を細めた。




 それ以来、はたけは本当にうちに買い物をしに来るようになった。
 しかも商店街のスタンプカードを片手に。
 飄飄としていながらもモテる嫌味な奴と思っていたが、それは世間の噂のイメージに踊らされていたようだ。
 実際のはたけは律儀にこんなショボい店に来て、喜々としてスタンプカードを出す普通の男だった。
 時々、商店街をアカデミーのイルカ先生と連れ立って買い物をしているのを見かけるので、きっとそういうことなんだろう。僅かながらも二人の順調な交際の一助になった身としては、いつまでもあの微笑ましい光景を見続けていたいと、柄でもないことを願ってしまう。
 まぁ、俺が願うまでもなく順調な交際は続いてるようだが。
 今日も今日とてどピンクのローション二本とLサイズのスキンをレジに置いたはたけが、口布越しにも分かるほど口を尖らせて勢いよく文句を付けている。
「ちょっと、こないだサンプルで貰ったゴム、あれイチゴ味って言ってたけど柄もイチゴだったよ⁉ 全面ファンシーなイチゴ柄で気持ち悪いって言われて萎えたんだけど!」
 まぁ、そうだろうな。どっちかっていうとあれはサンプルというより処分品だ。だいたい男のアレがイチゴ柄になって可愛いとメーカーは本当に思ったんだろうか。それを素直に使っちまうはたけもどうかとは思うが。
「たまにはそういうスパイスも必要なんじゃないか? マンネリ化すると飽きられるかもしれないぞ」
 そう言い返すと、はたけはサッと真顔になった。
「……そうかな、やっぱり特殊プレイもしてみるべきかな」
「そういうのは相手ありきだろう。相談してみたらどうだ」
「うん、いつもありがとね」
 眉間にしわを寄せたはたけは、真剣に悩みながら店を出ていった。
 仮にも忍の誉たる男が、あんなに素直で大丈夫なんだろうか。だがイルカ先生は教師なだけあってしっかり者だから、きっとバランスが取れてうまくいくのだろう。イルカ先生はそれだけでなく、遊び心も持った楽しそうな人だからな。
 俺はつい先日のことを思い出して、レジ下にはたけの目から隠していた、雷の描かれたポップを取り出しながら一人ニヤついた。
 久しぶりにイルカ先生が一人で買い物に来た時のことだ。
 イルカ先生は広告の品のトイレットペーパーと絆創膏と台所用洗剤をレジに置くと、手前の商品台の上をじいっと見つめてから一つ手に取り、「これもお願いします」と一緒に差し出した。
 その商品とは黒いマスクだった。
 今までほとんど売れてなかった黒いマスクを、ふと思い付いて『雷切マスク』と名付けてポップを立て、はたけカカシのなりきりマスクとして売り出してみたのだ。
 これが意外と子供たちに好評で、親に連れられた子供が買ってとねだる。大人用だから子供には少し大きいのだが、それがちょうどはたけのしている口布くらいのサイズになるらしい。時には大人の忍がふざけて買っていくこともある。おかげで大量にあった在庫ももうすぐはけそうで、さすが写輪眼様々のご利益だ。
 イルカ先生もご本人相手のジョークグッズとしてかと思ったが、それにしては目がキラキラとし過ぎていた。あれはこっそり真似てみるパターンかもしれないな。はたけに見付からないよう祈りたいところだが難しいだろう。なにしろイルカ先生にぞっこん惚れ込んでいるせいか、やたらと彼に構いたがるので隠し事は難しいだろうから。商店街を二人で歩いている様子を見れば、それは誰の目にも一目瞭然だ。
 写輪眼とて人の子で、当たり前に恋をして相手に夢中になり、無様な姿を衆目に晒すのだ。
 それがひどく微笑ましく、はたけがいつまでも無様な姿を晒していられるようにと、二人の日常がこのまま穏やかに続くようにと願う。
 その為にもまたローションとうすうすピッタリLを仕入れておかなくては。この分だと雷切マスクも追加した方が良さそうだ。
 俺は信頼に足る木の葉わくわく商店街の太陽堂薬局の店主として、発注伝票を取り出した。