【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
↑new ↓old
 
 ただいま、と心の中で呟いて、火影屋敷の玄関扉をそっと開けた。
 イルカがもう寝ていることはチャクラで分かったから、起こさないようにという配慮だった。
 扉を閉めたところで護衛の気配が消える。ここからは屋敷詰めの護衛の担当になるからだ。
 奥に進む途中で、先ほど隠れ家に派遣した影分身の記憶が唐突に流れ込んでくる。良かった、アレは厳重な術をかけて大事に保管されたらしい。
 大事なアレ――イルカのたった一枚の、褌。

 あの褌は俺ですら数えられるほどしかお目にかかったことのない、イルカパンツ収集家の垂涎の逸品だ。
 いわゆる勝負下着なんだろうが、イルカにとっては正装の範疇なのかもしれない。健康的な肌に輝く、目を射るように清らかで真っ白な褌。
 初めて抱き合った時のパンツは記念品として有り難く(勝手に)頂いてあるが、もしかしたらその時も本当は褌を着用したかったんだろうか。むしろその方が嬉しかったのに。
 さすがに一枚しかない褌を頂くのは遠慮していたが、ある情報を耳にしてからその抑圧は解き放たれた。

 『ふぐりおとし』

 これなら念願のイルカの褌を正々堂々とこの手にできる……!
 褌は一旦神社の境内に落とせば厄落としにはなるはずだ。その後はお焚き上げされるんだけど、イルカの……イルカの締めた褌を燃やしてしまうなんてもったいない!
 燃やすくらいなら俺が貰ってもいいはずだ。
 いや、俺が貰うべきだ。
 その確固たる信念と収集欲が合体した今回の計画だったけど、万事うまくいって本当に良かった。

 口元が緩むのを止められないまま、寝室の扉に手をかける。
 ここからは俺たちのプライベートエリアだ。たとえ護衛といえどもこのスペースを覗くことは断じて許さない。俺が居なくてイルカ一人の時もだ。だって、ほら……イルカが寂しくて一人でしちゃうことだってあるかもしれないじゃない?
 今日はさすがにもうぐっすり眠ってるみたいだけど。
 慣れない緊張で疲れたのか、イルカはキングサイズのベッドで大の字になっている。大の字でも真ん中じゃなくて、俺のスペースを空けてくれてるのが嬉しい。胸元までかけた布団から、はだけた浴衣が見えるし……口まで開けて可愛いなぁ。
 大切な愛しい俺の伴侶。
 先ほどとは違う笑みが自然と浮かぶ。
 俺はベッドに腰かけてイルカの胸元を直そうとしたが、その手が止まる。

 あの、さ。
 もしかしてイルカ……今、ノーパンなんじゃない?

 ふぐりおとしから帰ってそのまま寝てるなら、浴衣の下は何も穿いてないんじゃない?
 イルカならきっと厄落としの前に身を清めるだろうから、お風呂に入ってから行ったよね? そして褌を落としてから帰って忍服を浴衣に着替えて、その時にわざわざパンツを引き出しから出して穿くだろうか――いや、穿かない。
 めんどくさがりだからこそ効率化を重視するイルカは、浴室の引き出しにタオル類と下着もしまっているのだ。
 それにイルカはおおらかだから、めんどくさいから明日の朝また着替える時に穿けばいいや、と浴衣だけさっと羽織って布団にもぐり込んだはずだ。
 つまりこの浴衣の下には何一つ身につけていない……!
 思わずカッと目を見開いたけど、もう写輪眼はないし白眼でもないから布団の上からじゃ何も分からない。
 ……それなら確認するしかないよね?
 俺はそっと、本当にそうっと掛け布団を剥いでいった。つい習慣で帯を解こうと腹の辺りに手が伸びてしまったが、慌てて引っ込めると下半身に目をやった。
 大の字になって乱れてると思った浴衣は、期待に反して慎ましく腰回りを覆っている。ならばと布の上から腰骨の辺りに指を一本滑らせた。
 うん、ない。
 下に何かを着用している感触は、指先には伝わってこない。
 自分の推量が当たってたことに満足して一人頷いていると、イルカが身じろぎをした。左足をくの字に曲げたことで、柔らかそうな内腿が露わになってしまっている。
 すると不意にイルカが目を開けた。
 まだ寝惚けているようで、何かをもにょもにょ呟いたかと思うと、また眠ってくれたようだ。俺は優しくおやすみと囁きかけると、下半身の検分に戻った。
 あと一息。
 あともう少し足を開いてくれれば、浴衣ノーパンが拝めるのに……!
 俺はぐぐっと首を下げ、顔を傾けてイルカの魅惑の暗い秘境を覗き込んだ。俺の忍の眼を以てしてもはっきりと視ることのできない、黒々とした俺だけの隠里。黒々と……
 待てよ、この黒さはもしかして、と思ってぐっと顔を寄せたとたん、イルカが曲げていた左足を持ち上げて立てた。
 しまった、と思った時には既に遅く、俺の頭はイルカの両足に挟まれる形で軽く固定されてしまった。
 目の前には念願の秘境がその姿を現している。イルカがさらに動いたことで浴衣の裾が割れ、綺麗にはだけたのだ。
 あぁ、今日はなんて佳き日なんだろう。
 褌を手に入れた上に、浴衣ノーパンを拝めるなんて……!
 などと感慨に耽ってる場合ではない。このままでは据え膳を拝むだけで終わってしまう。
 その据え膳には柔らかく垂れ下がったイルカのイルカが、ふっくらとしたふぐりを枕にして本体と同じように可愛らしく眠っている。
 ふぐりおとしをしたとはいえ、この愛くるしいふぐりを本当に落としてこなくて良かった。
 しみじみと益体も無いことを思いながら眺めていると、熱い思いと共に熱いものが下半身にも兆してきた。それはそうだろう。こんな特等席で、日頃じっくりと鑑賞できないモノを眺めているのだから。
 やはりここは何とかイルカの膝ロックから脱け出し、この据え膳を頂かなくては……! 
 イルカは長年の成果の末、俺の与えるものにとても敏感になっている。例えば足に挟まれてる俺の毛先の刺激にすら、快感を覚えるくらいに。毛髪のコントロールまではさすがに出来ないので、普通に頭を引いたら毛先の感触がイルカを目覚めさせてしまうだろう。それでは据え膳の頂き率が下がってしまう。もっと据え膳を堪能するために、できればイルカにはまだ眠っていてほしい。
 その時イルカが小さく呻いて足を動かした。

 ――今だ!

 俺はその好機を逃さず頭を引いた。その動きで痒みを覚えたのか、イルカが立てた足の内腿をぽりぽりと掻いてまた寝息を立て始めた。俺も寝顔を凝視しながら詰めていた息をそっと吐き、ようやく脱出できたことに安堵する。
 そして改めてイルカの全身に目を滑らせた。
 上から下まで、舐めるように。
 今や浴衣は帯を残して上下ともはだけており、夜目にも艶やかな肌を惜し気もなく夜気に晒している。
 イルカは四十路を迎えてなお、しっとりとした手触りの肌を保持していた。二十代の頃から比べれば張りは失われているが、この艶はホルモンのバランスがとてもいい状態を保っているからだろう。俺の日頃の愛撫に応えてイルカのホルモンが放出されていると思うと、とてもいい気分だ。
 かつて小さな粒だった乳首も散々弄り回したせいで、ほんのりと赤味を帯びたオオスグリのように色付いている。
 今は見えないけども!
 はだけたはずの浴衣は、ちょうどいい所で引っ掛かっているのか、ぎりぎり乳首が見えない位置になってしまっていた。今度はいくら顔を傾けようとも見えない。
 見えないなら、見えるようにすればいいでしょ。
 相変わらず口を半開きにして寝入ってるイルカをじっと見てから、胸元に手を差し入れて帯から生地を少し引っ張り出し衿を広げる。
 色の変わった部分ごと、ふっくらと盛り上がったイルカの乳首。
 これが俺の愛撫に健気に応えて目覚め、その姿を変えていくのだ。
 その様を思い描いて、ぶるりと震えが走る。
 知らず知らず手が伸びて、今はまだその身を埋め眠っている乳首をするりと撫でた。
 イルカはもちろん起きない。
 今度は指先で円を描き、かりりと爪を立ててみる。
 イルカはやっぱり起きない。今日は体力より精神的に疲れているからなのか、いつもより眠りが深い。
 俺は胸に顔を寄せ、ぺろりと舐め上げてからチラリと見上げた。
「ん……」
 イルカは小さな声を上げたきり、まだ起きない。
 だがイルカの乳首はやや目覚めて、俺を呼んでいる気がする。「もっと、もっといつもみたく、して」と。俺はそれに応えるべくちゅっ、ちゅっとキスをし、指先で摘まみ、舌先で先端をこね回す。
 思わず夢中になっているとイルカの手が伸びてくる気配がして、慌てて身を引いた。
 イルカは今度はまさにたった今俺が吸い付いていた所を、ぽりぽりと掻いた。そしてその刺激のせいで、ぷくりと乳首が目覚める。
 俺はその奇跡的な光景を目の当たりにして、ごくりと喉を鳴らした。
 これも一つのセルフプレイではないだろうか。
 そしてイルカ自身はまだ目覚めない。
 俺はだんだん大胆な気分になって、ベッドに乗り上げるともう一ヶ所の目覚めてない部分に目をやった。
 未だ柔らかくふわりとしたふぐりの褥に横たわる、イルカのイルカ。
 そちらにも顔を寄せ、唇を当てる。
 ここだけ自ら熱を発しているかのように熱く、そして柔らかい。そっと持ち上げて口に含むと、まるで俺の口に誂えたかの如くすぽりと収まる。
 俺は舌も唇も動かさず、ただおしゃぶりのように咥えることでイルカの風味を味わった。
 しばらくそうして堪能してから、柔らかいままのモノを口から離す。するとそこから唾液がつうと繋がって、ぽつりとイルカの方で切れた。
 俺の唾液に濡れたイルカが愛おしくて、ちゅっと口付けを落とす。
 ――だがイルカは目覚めない。
 俺はにんまりと笑みを浮かべた。



 いったん体を起こすと六代目と背に入ったマントとベストを脱ぎ捨て、ズボンの前を寛げてすっかり元気になった自分のモノを引っ張り出した。
 色も形も凶悪に変化していて、萎えたままのイルカのと比べると犯罪的なまでに別物だ。
 俺はイルカの片足を跨いで屈み込み、自身を握ってイルカのモノにそっと擦り付けた。涎を垂らしたそれは、まるで獲物を丹念に味見する獣のようだ。
 先端から叢にかけてぬるぬると滑らせていくと、黒い茂みをかき分けて分身の鼻先を突っ込んだ。そこは手や腹以外で触れたことがなかったので、敏感な雁首で探るのは初めてだ。ぞわぞわとした感触を楽しんでいると、不意にイルカの「ぅうん」という呻き声が上がり、ごろりと寝返りをうった。
 跨いでいた片足をさっと引いたが、うっかりしていた。茂みの中の皮膚は意外にも感覚が鋭く、快感を拾いやすい箇所なんだった。
 ふう、と息を吐いてふと見下ろすと、イルカがこちらに背を向けて横向きに体勢を変えていて。
 浴衣がさらにはだけ、大腿部から尻まで丸見えになっていた。
 イルカが両足を前後に少しずらしているので、尻の合間に僅かな隙間が暗がりを作っている。
 ここまで扇情的な姿を見せ付けられて、この俺が黙っていられようか。
 俺は膝立ちでにじり寄ると、魅惑の秘境の裏側、尻と腿の付け根が形作る洞穴にひたりと雁首を宛がった。そして自身のぬめりを借りて、股と両足の間に押し込んでいく。
 イルカの中を圧し広げるのとは、また違った新鮮な感触。
 内側の柔肉よりも硬く、絡みつき蠢くものもないが、腰を進めるにつれていつも手や唇で触れてる場所の形を敏感な先端が捉える。会陰を撫でふぐりを押し上げると、イルカの陰茎がふるりと揺れた。
「………ふ」
 イルカの口からため息のような音が洩れる。
 たまらず片手で尻の肉を割ると、イルカの慎ましい蕾がひそりと眠っている。俺は自分の指を口に入れるとたっぷりと唾液を含ませた。そしてそのすぼまった襞を撫で、入れてくれと乞う。
 すると蕾はきゅっと絞られ、それからゆるりと花開いて俺の指を呑み込んだ。
 何度も探索し、開拓し開発した今は細い道を、慣れた手つきで探り進める。
 熱いと感じるほどの柔肉がざわざわと蠢いて、俺の指を歓迎してくれてるようだ。ゆっくりと抽挿しながら指を増やしていき、曲げたり拡げたりしながら指先で内側の凹凸を撫で、親指の腹で少し伸びた襞を撫で回す。
 その間の視線はイルカの横顔に張り付いたままだ。
 自分の身体に侵入しているものに不快感を感じているのか、それとも馴染んだ感触に眠りの奥底でも快感が目覚めつつあるのか、イルカの眉間にしわが寄り始めた。
 不快感ならば快感を思い出してもらおうと、指と腰を同じペースで動かしながら前にも手を伸ばす。
 項垂れたそれをゆるりと握って全てを同じリズムで動かすと、イルカの腰が誘われるようにゆらゆらと揺れ始めた。手の中のイルカも芯を持ち始め、内側の指先にもふくりと膨らんだ熱の塊の存在が感じられる。
 イルカの半開きの口から洩れる呼吸のペースが上がってきた。
 表情も眠っている人のというよりも、愉悦を覚えるものへと変化してきている。
 イルカ、イルカと心の中で呼びかけながら徐々にスピードを上げていくと、今度は息ではなく、小さいながらも甘い声が上がった。
「……ん、………ぁ」
 まるで俺の呼びかけに応えるようなその声に、たまらず問いかけてしまった。
「――欲しい?」
 イルカは未だ目覚めない。
 だが眠りの浅瀬にいるだろうイルカは、小さく呟いた。
「…………かし、……ん」
 俺はその声が届くと同時に、イルカの中と股の間から指と熱棒を引き抜いた。
 そして膨れ上がった雁首を後孔に宛がい、ぐっと押し挿れる。
 まだ十分に解してなかったのでスムーズにはいかなかったが、先走りのぬめりを利用して小刻みに前後に揺らしながら進めると、一番太い部分がぐぶりと呑み込まれた。
 その衝撃のせいか、イルカの腰が大きく揺れてうっすらと瞼が開いた。
「ぅ、……んぁ……?」
 あえて呼びかけることはしなかった。というか、呼びかける余裕はなかった。
 食いしばった歯の隙間から息が洩れる。
 こめかみに伝うのはきっと汗だ。
 俺はもっと奥深くのイルカを味わいたくて、閉じられていた足の片方を持ち上げ、楔をぐいと打ち込んだ。
「ぁ、は……」
 イルカの背が大きく伸びやかにしなる。
 だがまだ眠りの淵にいるのか、焦点は合わないままに宙を彷徨っていた。
 今はそれでいい。
 意識が目覚めなくても、身体で俺を感じて。
 イルカの内側は眠りを妨げる無粋な侵入者を抱きしめ、幾重にもうねり包み込んでくれている。
 俺はその歓迎に応えるべく抽挿を続けた。
 片肘を突き、イルカの背に寄り添うように横たわると、足をさらに持ち上げて大きなストロークで中をかき混ぜる。
「ン……ふ、ぁ、……っ、んん……」
 イルカは蕩けた声で快楽を享受している。
 いつもより舌っ足らずなのは、寝起きでぼんやりとしている内に身体だけが強制的に目覚めさせられたからだろうか。
 もう起こさないようにという配慮はいらないと、動きに合わせて揺れていた足を落とし、浴衣の帯を手早く解いた。そして肩から老竹色の布を引き下ろすと、むき出しのうなじにきつく吸い付いた。
「ん……まえ、も……さわ、って」
 舌っ足らずな声のおねだりが、イルカの口から零れる。
 普段はおねだりなんて絶対に言わないのに。
 意識の前に身体を快楽で目覚めさせると、こんなにも可愛らしくなるとは……!
「他には? もっとしてほしいこと、ある?」
 いつの間にすっかり形を変えたイルカの雄を手で包み、弄りながら問うと、イルカがゆるりと振り向いた。
「むね、も……。お、ぱいも、すって」
 欲望のままにねだるイルカの眼は、閨の色にとろりと染まっていた。

 獣のような唸りが聞こえたが、たぶん俺の口から出たのだろう。
 そんなことを意識の片隅で思いながら、イルカの身体を仰向けにベッドに縫い付けた。
「ぅあん……っ」
 いったん抜かずに突き入れたままイルカの身体を回したので、乱れて顔の大部分を覆い隠した髪の向こうから甘い悲鳴が上がった。その髪をかき上げて横に流すと、やっと正面からイルカの顔を拝めた。
 切なげで物欲しげな、それでいてまだどこかぼうっとしたイルカの顔。
 髪ごと頭を抱えて覆い被さり、唇を合わせると舌を突っ込む。
 上も下もぐちゃぐちゃにかき回していると、イルカがいやいやをするように首を振って口を外した。
「んぅ、や、……こっちにして」
 そう言って俺の頭を掴んで誘導した先は、イルカの右胸で。
「ん、ごめんね」
 ついイルカの愛らしさに負けてキスを優先してしまった。
 差し出された色付く部分を大きく含むと、満足げなため息が降ってきた。軽く歯を立てて小さな頂を舌先でちろちろとねぶり、強く吸い上げる。
「あ、く……ふ」
 衣擦れの音と共にイルカの腕が俺の頭を抱え込む。
 ざわり、ざわりと蠢いていたイルカの柔肉がぎゅっと収縮して締め上げてきて、思わず呻き声が洩れる。
 胸を弄られるのが好きなのかもと思ってはいたけど、おねだりするほどとは知らなかった。今度からおっぱいもいっぱい可愛がって、慈しんでもっと育てようと誓っていると、イルカの両足が腰に絡み付いた。
「きて、うごいて……カカシさん、いっぱいちょ……だい」
 頭の中のどこかから、ぷつ と音がした気がする。
 それを確かめる暇なんてなかった。
 イルカのいいところを、などと思う余裕もなく、初めてセックスをする若僧のようにひたすらに腰を振って。
「あ、あ、ひ、あ、カカ……さ、んぁっ」
 メトロノームのように刻まれるイルカの善がり声を耳元に流されながら、ただただ腰を振って。
「……ルカ、イルカ……っ」
 二人の間に挟まれた熱棒から、びゅくりと熱い飛沫が跳ねて腹を濡らす。
「ぁ、やだ……もっと……んくぅっ」
 名残惜しそうに達したイルカの震えをきつく抱きしめながら、俺も奥深いところに欲望を叩き放った。


 イルカの身を清めたタオルと共に、ぐちゃぐちゃになってしまった浴衣のなれの果てを洗濯籠に放り込んで寝室に戻ると、イルカはかけてやった布団を蹴り飛ばしていた。
「ちゃんとかけて寝ないと風邪ひくよ?」
 今度は全裸で大の字になっているイルカの傍らに横たわると、肩口と頬にキスを落として抱きしめた。
 蹴り飛ばされて横に丸まってる布団の塊を引き寄せ、二人にかけようとすると胸をぐいと押しのけられる。
「あっついから、あっちいって」
 言われてみれば、先ほど拭ったはずのイルカの額にはまた汗で前髪が張り付いていた。
 半分眠ったまま激しく抱き合ったから、体温が異常に上がってしまったんだろうか。今もほとんど眠ってる状態なのか、口調も態度も子供の寝ぐずりみたいになってしまっている。
 ――あの、厳しくて優しい、みんなの校長先生が。
 俺だけにこんな我儘っ子のような態度を見せてくれるのがたまらなくて、思わず頬が緩んでしまう。
「はいはい、じゃあお布団だけはちゃんとかけてね」
 声に笑みが漏れないよう細心の注意を払って、イルカの額の汗を手で拭い取ってから布団を肩までかけた。それからイルカにくっつかないよう距離を置いて、反対側の布団にもぐり込む。
 俺はイルカの方を向いて横たわったが、イルカはこちらに背を向けてしまったので枕に流れる黒髪しか見えない。それでもいずれ聴こえるだろう寝息を子守唄にしようと目を閉じた。
 だけど予想に反して聴こえてきたのは、がさがさと身じろぎをする音だった。イルカがまた暑くて布団を蹴り飛ばしたかなと思っていると、くぐもった呟きが届いた。
「……なんで遠いんですか」
 ぱちりと目を開けると、掛け布団の縁から目だけを覗かせたイルカがじっと睨んでいる。
 あっち行ってと追いやったのはイルカじゃない、などとは欠片も思わなかった。
 相変わらず寝ぐずり発動中のイルカが、ひたすらに可愛いだけだ。
 でもここでにこにこ笑顔を見せたりしたら、さらに拗ねて今度こそ背を向けたまま寝てしまうだろう。
「ん、ごめんね」
 俺は布団の中をずりずりと移動して、イルカの傍へと寄り添った。
 それでもまだ熱いかと拳一個分の隙間だけ空けて向かい合うと、イルカは俺の胸元に向かって口を尖らせた。
「……うでまくら!」
 はいはい、仰せの通りに。
 にやつきそうになる唇を噛みしめ、イルカの頭の下に腕を通す。
 でもイルカの唇はまだタコになったまま。
「だっこ!」
 あ、抱きしめても良かったんだ。
 俺は枕にしてない方の腕でイルカを抱き寄せ、足も絡めてしっとりとした額にキスを二つ落とした。
「今日はいっぱいおねだりしていいコだったね」
 普段なら、こんなことを言おうものなら赤面して押しのけられてしまうんだけど。
 今夜のイルカはぐずぐずに甘えん坊だから。
 イルカはむふんと満足げな笑みを浮かべると、ようやく目を閉じて俺の脇腹に腕を回し、胸元に顔を埋めた。



 出会った頃のイルカは独りだった。
 大勢の仲間に囲まれてはいたが、独りで生きていた。
 あの頃の時代を思うとそういう人は俺も含めたくさんいたと思うけど、俺が共に過ごしていきたいと乞い願ったのはイルカだけだった。
 それから幾年も共に在り、四十路を迎えてイルカはようやく肩肘張らずに俺に甘えてくれるようになったと思う。
 俺に。俺だけに。
 その特権をこういう形で味わうとは思ってもみなかったけど、どんなイルカを見ても愛おしさは増すばかりだ。

 果たして明日の朝を迎えた時、今夜のことをイルカは覚えているんだろうか。
 厄落としをしたその日にこんなにも可愛らしいイルカを目の当たりにできるなんて、イルカは褌と一緒に何を落としてきたんだろう。まさか俺がイルカの落とした厄を拾ってきたせいで起きた、不可思議なバグじゃないよね……?
 それでも大丈夫、何も問題はない。この先どんな厄がイルカの身に降りかかっても、俺がいるから。
 長年一緒にいて、この頭と身体で理解したことがある。
 イルカと共にいる俺は最強だ。
 いや、イルカがいるからこそ、俺は強くいられる。
 どうにもならない状況でも、イルカが側にいてくれるからどうにかしようと思うんだ。
 昔イルカが俺にくれた言葉。

「俺に必要とされない自分なんて要らないって言うなら、俺は全人生をかけてアンタを必要としますよ。だからアンタは安心して、他の人に必要とされてる自分に気付くことに専念しなさい。それで嫌って言うほど実感すりゃいいんだ。どれだけ自分がみんなに愛されてるのかを」

 ……おかげで実感してるよ。
 どれだけイルカに愛されてるかを、毎日。
 イルカに必要とされてる自分だから、安心して頂に立っていられる。
 イルカに愛されてる自分だから、自分を大事にしようと思える。
 そういうことじゃないって言うだろうけど、俺にはイルカ、イルカが全ての中心で軸なんだ。もうそれは変えられないから許して。
 そして願わくば、これからの時間も共に。
 可愛らしいイルカも、小憎らしいイルカも、大人の魅力に溢れたイルカも、イルカの中にいる全部のイルカを俺に見せて。

 まずは、明日のイルカを。
 規則正しいイルカの寝息と鼓動が俺の体に直に伝わってくる。
 その恐ろしいほどの幸せに身を委ね、祈るようにもう一度額にキスをして、目を閉じた。



                  【完】