【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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※こちらは『地下室の姫神様』の続編2です。
未読でも読めますが、先に本編と続編1を読んだ方が世界観が分かりやすいかと思います。

本編  『地下室の姫神様』

続編1 『おころん様♡の置き土産』






『うみのイルカ! 神無月の夜宴を開くから巫女舞をよろしくね! あ、はたけカカシも連れてきてもいいわよ!』





……なんだか変な夢を見た気がする。
夢にしちゃリアルだったが、やけにはしゃいだ女の子の声でわめき立てられたってイメージしかない。
だいたい男の俺に巫女舞とか訳分からんだろ。
よし、また寝よう。と寝返りを打とうとしたら、がっしりと拘束するかのように俺を囲い込んでるカカシさんの腕と足に気付いて諦めた。
もしかしたらこの窮屈な体勢のせいかもしれんな、とぼんやり考える。
今日は二人揃っての休みだ。もったいないから、もうちょっと寝て……



「……という訳なんですよ」

目玉焼きを白飯に乗せて醤油をかけながら、今朝方見たおかしな夢を説明する。
昨日からカカシさんの家に泊まりに来てたから、朝食担当はカカシさんだ。俺が作るとだいたい昨日の残り物に白飯だけなのに、まめなカカシさんは味噌汁とか卵料理とか、よく分からんけど旨いたれのかかった茹で野菜とかいろいろ作ってくれる。有り難いなぁ。

「巫女舞ねぇ……。その女の子? 俺たち二人を呼び捨てのフルネームで呼んでたの?」
「はい、そんな風に呼ぶのなんて、この里にはおころん様♡しかいない……あっ」

食卓に沈黙が落ちる。
おころん様♡とは、もぐらを眷族にしている土の姫神様だ。
おかしな術だか何だかでカカシさんの秘密の地下室に俺を放り込んだんだけど、そのおかげで付き合えたんだから、俺たちにとっては縁結びの神様みたいなもんだ。
去年はそのお礼参りに行ったら俺に憑依して、その影響か男の俺に母乳が出るようになっちまったけど一時の事だったし、二人でその状況を楽しんだようなもんだからあんまり文句は言えないんだが。

「……あの姫神様、また何か企んでるのかね」
「企んでるなんて失礼でしょう。でも、確かに今度は何でしょうね」
「神無月の巫女舞ねぇ。ま、単なる夢だし何のことやらだし、ほっといていいんじゃない? 今日は紅葉狩りと薬草採りに行くんでしょ」
「そうですよね! せっかくのいい天気だし、麓の茶屋で団子でも買って行きましょう」

ただの夢で朝から無駄に悩んでもしょうがないよな!
すっきりとした気分で朝食を終え、薬草採り用の籠を背負ってカカシさんと家を出ると。
家の前の道の中央が、小さくぼこりと盛り上がった。
――あ、こういうの見たことある。
二人で見守っていると、小さな山から薄茶色の生き物が顔を出した。
カカシさんがとっさに俺を守るように前に出ると、いつの間にか手にしたクナイを構えたが。
胸元まで地上に出てきた生き物は仔犬くらいの大きさで、薄茶色の被毛に鼻がきゅっと突き出し、その惚けた愛らしい外見を裏切るような鋭い爪が土の上に置かれている。
あー、こいつはもぐらだ。
あの時と全くおんなじ状況で、俺は既におころん様♡の企みに巻き込まれてることを受け入れた。

「こいつは……もぐら?」

カカシさんが気の抜けた声を上げる。
そういえばカカシさんは、里の中でこいつと会うのは初めてかもしれない。

「あのですね、最初カカシさんの家に案内してくれたの、こいつだったんですよ。いや、多分違う個体だろうけど、前もこうやって出てきて連れてってくれたんです」
「え、じゃあ今度はどこに連れてかれるの?」
「さぁ……でも何か目的があって現れたんじゃないかと。今日はどうしたんだ?」

もぐらの前にしゃがみ込んで問いかけると、もぐらはサッと穴の中に引っ込んでしまった。
もしかして神様のお使いに話しかけちゃ駄目だったのか? いやでも前回も話しかけたしなぁと穴を覗き込むと、何か大きな塊が飛び出した。

「うぶっ⁉」
「イルカ先生⁉」

まんまと顔で受け止めてしまったがそれは柔らかく、驚いただけで怪我はなかったので、また戦闘態勢になるカカシさんを抑えて飛び出した物を確認する。
飛び出してきたのは四角く平たい風呂敷包みで、広げてみると白い単と深いえんじ色の袴、純白の足袋、そして大名の姫君が着けるようなじゃらじゃらした髪飾りやら、たくさんの鈴が付いた扇子みたいな物が出てきた。
何だこれ、とカカシさんと顔を見合わせていると、穴からぴょこりともぐらが顔を出して、夢で聞いた声がまた聞こえてくる。
といっても耳からじゃなく直接頭の中に響く感覚で、恐らくは山中一族の心伝身の術みたいなもんだが。

『うみのイルカ、これを着てあたしの宴にふさわしく、ちゃんとオシャレで可愛くて綺麗な巫女になるのよ。だっさい格好やメイクで来たら罰を当てるからね!』
「……え? これ、俺が着るんですか⁉」
「巫女舞なんてイルカ先生を見世物にするようなこと、できる訳ないでしょ! 俺がやる!」

もぐらに食ってかかる勢いのカカシさんに、仮にも神様のお使いにダメだろ! と袖を強く引くと、もぐらがまた喋り出した。いや、もぐらが喋ってる訳ないんだが、そうとしか見えないんだよこれが。

『はたけカカシ、お前はダメよ』
「なんでよ。イルカ先生がいいなら、同じ男の俺でもいいでしょ」
『分かってないわねぇ。お前は陽、うみのイルカは陰。巫女舞は陰の者が舞うものでしょ。とにかく巫女舞はうみのイルカよ。それじゃ今夜うちに来てね。あと供物も大歓迎よ♡』

言いたいことだけ言うと、もぐらはヒュッと穴に潜って消えてしまった。

「あっ、ちょっと待って!」

カカシさんが後を追うつもりなのか、土遁の印を組み始めたので慌てて止める。

「無理ですよカカシさん、おころん様♡の言う事だからきっともう決定事項です」

顔を上げたカカシさんの眉尻が下がっている。
休日で額当てもしてないせいか、困り果てたって表情が丸分かりで可愛い。思わず慰めるように頭をぽんぽんと撫でてしまった。

「それにしても巫女舞か……いや、舞よりメイクが問題だよな。男のままでいいのか?」
「先生はなんでそんな簡単にこの状況を受け入れてんの⁉」
「いや、神様の言うことですからね。カカシさんもおころん様♡の強引さは知ってるでしょう」
「あ~~~、まぁね」

二人でしばし沈黙すると、同時にため息をついた。

「薬草採りはまた今度ですね」
「夜宴じゃ紅葉も見られないかねぇ」
「でも神様の夜宴に混ぜてもらえるなんて、なかなかないですよね。じゃあ支度してきます」
「支度って着替えて化粧? 女装するってこと? そんなプレイ誰にも見せたくないんだけど」

背負ってた籠を置きに家に戻ろうとしたら、何を勘違いしたのかカカシさんが険呑なチャクラをまとい始めた。
だいたいプレイって何だよ。母乳プレイだけでもあれだったってのに、女装プレイまでやりたいのかこの人は。
つい呆れた眼差しを送ってしまったらしく、カカシさんが口布の下で口を尖らせる。

「別にやらしい気持ちだけじゃないよ。どんなイルカ先生でも俺だけが知ってたいの」

女装の何が不満なんだか、サンダルを脱いで奥の部屋に向かう後をカカシさんがぶつぶつ言いながらついてくる。
あー、そういえばいろんな格好した俺の写真を具現化して、スケベなことをする術を開発したくらいの変わった人だもんな。大きな声じゃ言えないが、上忍ってやっぱり変な人が多いよな。

「でも先生、何も女装なんてしなくても、普通に変化すればいいんじゃない?」
「おころん様はメイクって言ってましたからね、多分変化じゃダメなんでしょう。一応、神様の言う通りにした方がいいのかなと」
「そうすると変装になるのかな。イルカ先生は変装もできるんでしょ?」
「そりゃアカデミーの教師だから一通りは。でもオシャレで可愛くて綺麗かぁ。それはちょっと自信ねぇな……、あ!」

いいことを思い付いたと立ち止まったら、背負ってた籠ごとカカシさんにぶつかってしまった。
尻餅をついたカカシさんに、謝りながら手を持って引き上げる。上忍ともあろう人が、俺に関しては本当にポンコツになるよなぁ。

「知り合いに変装の達人がいるんですよ。そいつに頼みます」
「まさか女?」
「えーっと、女ではないんですけど、男、かなぁ」
「何それ」

あいつは女じゃないけど、男とも言い切れない。
百聞は一見に如かずっていうし、見てから判断してもらおうと、あいつ――闇夜(あんや)に式を飛ばした。



闇夜から『今なら時間あるわよ』という返答が来て、二人で本部棟に赴いた。
装備研究開発部と札の付いているドアを開けると、満面の笑みの男、いや格好だけなら女が立っている。
今日は珍しく可愛らしい格好で、ストロベリーブロンドのふわふわ頭に、白地に真っ赤な苺の総柄のワンピースだ。本来柔らかい胸で膨らむべき胸元は、がっしりとした筋肉で盛り上がっている。
ミニ丈の裾から伸びる赤銅色の筋肉質な足には膝上までの白いロングブーツを履いていて、カカシさんが見上げるほどの身長になっていた。

「ようこそ装備研究開発部へ♡ 仕事以外でイルカがアタシを頼るなんて珍しいじゃない。それでこちらのいい男は……あらやだ、はたけ上忍じゃないの!」

闇夜が胸の前で両手をぎゅっと握りしめたせいか、二の腕の筋肉がばきばきと盛り上がって、フリルに縁取られた半袖の布がはち切れそうになっている。
唖然としていたカカシさんがようやく立ち直って、「どーも、うちのイルカがいつもお世話になってます」と爆弾発言をした。
思わず口をふさごうとしたが、闇夜の歓声に吹き飛ばされる。

「うちのイルカ! キャアーーーーッ! うちの! イルカ! やだもうはたけ上忍ったら男殺しのイケメン素敵ィーーー!」

興奮した闇夜が苺の付いた爪をひらめかせてキャーキャー叫び、バッサバッサと羽ばたかせたつけ睫毛が今にも目玉ごと飛んでっちまいそうだ。

「闇夜、もういいだろ。早速で悪いが、今日は俺にこれが似合うような、えーっと『オシャレで可愛くて綺麗な巫女』にしてほしいんだ。変化無しの変装で」

手にした風呂敷包みを広げて見せると、とたんに闇夜の顔がきりりと引き締まる。
どきつく派手ではあるが浅黒い地肌を活かしたメイクはやっぱりプロなだけあって、孔雀みたいな目元も透明感のある赤い唇も完璧な調和で、マッチョで背も高い闇夜を不思議と魅力的なものに見せていた。

「ふぅん、男巫女の巫女舞の装束ってとこね。相当上質だけど最近の物じゃないわ……で、これを使ってイルカをパーフェクトな男巫女に仕上げたらいいのね?」
「一目で分かるなんて、さすが装備部のエースだな。男の俺が巫女なんておかしいけどよろしくな」

すると闇夜が出来の悪い生徒をたしなめるように、ちっちっと舌を鳴らした。

「あら、男巫女はちゃんと正式に存在するのよ。れっきとした神職なんだから。それにしても男巫女ねぇ……スピリチュアルかつジェンダーフリーな美しさでイルカのチアフルな魅力を残しつつ、神事に対応できるようなファンタスティックなメイクね。これは稀に見る難題よ。腕が鳴るわぁ!」

スイッチの入った闇夜が、また訳の分からん呪文を早口で唱え始める。
さっきから圧倒されっぱなしだったのか、ずっと黙っていたカカシさんが急に口を挟んできた。

「イルカ先生の巫女装束、絶対似合うと思うんだよね」
「でしょうでしょう⁉ 任せてちょうだい。装備部のダークナイトフェアリーの名にかけて、神様も惑わせるほどの男巫女に仕上げてみせるわ」

ダークナイトフェアリーって、何だそのアカデミーの男子が付けたような二つ名は……。
今まで聞いたこともないから思いつきで名乗ったのかもしれないが、そういえばカカシさんだって幾つも持ってるし、二つ名は優秀な忍の証なんだろうか。
俺も何か付けてみようかなぁ。でも必殺技なんてねぇし、ドルフィン何とかじゃ可愛らしすぎるしなぁ。
などとぼんやり現実逃避してたら、二人がかりでいきなり服をひん剥かれた。

「うわ! 着替えくらい自分でやるよ!」
「ダメに決まってるでしょ! 着物はちゃんと着付けないとダサくなるのよっ」
「下着は俺が着替えさせるから」

足元にしゃがんでせっせとパンツを脱がしてるけど、カカシさん⁉ いつの間に闇夜とタッグを組んだんだよ!
逆らおうにもあれよあれよと子供のように着替えさせられて、あっという間に巫女装束姿になってしまった。
女物かと思ってた着物は裄丈も着丈もぴったりで、闇夜の言う通り男巫女用の装束だったようだ。
そのまま大きな鏡の前の椅子に座らせられ、首周りに布を巻かれると今度は結っていた髪を解かれる。
よく分からんスプレーを吹きかけ、丁寧にブラシで梳かしながら、闇夜が鏡の中の俺を品定めでもするように見つめた。

「うーん、せっかくだから生花を使いたいわね」
「俺が買ってくる。どんな?」
「そうね、小さくて可愛らしくて清楚で可憐な花……スイートアリッサムかクジャクアスターか、原種の白い野薔薇でもいいわね」
「りょーかい」

カカシさんの姿が消えたけど、まさか上忍をお使いに出したのか⁉
ドアの方を向こうと首を回したら、闇夜が頭を掴んで正面に固定する。

「おとなしくして動かないでちょうだい。アタシの仕事の邪魔をするなら、ただじゃおかないわよ」

ものすごい迫力で凄まれたが、いやその仕事を頼んだの俺!
そんな突っ込みすら許されるような雰囲気じゃなく、おとなしく頷いてじっとする。
教師に叱られた子供みたいで、これじゃいつもと反対の立場だなと昔を懐かしんでるうちに、よく分からんクリームやら粉やらを顔から首まで塗りたくられて真っ白お化けみたいになった。

「これが暗闇から出てきたら驚かれないか?」
「あら、男巫女になるのは昼間じゃないの⁉ 昼と夜じゃメイクも違うのよ。じゃあちょっとコンセプトを変えなきゃ!」

並べたメイク道具をカチャカチャと入れ替える闇夜に、そういうもんなのかと感心する。
確かに昼と夜じゃ使う暗器もトラップも違うもんな。これを言ったら「そんな物騒な物と一緒にしないでちょうだい!」って怒られそうで、しっかり口を閉じた。

「そうよ、口もだけど目も閉じて」

俺が言いそうなことはお見通しって訳か。
きゅっと目尻を引っ張られて冷たい筆先の当たる感覚に、俺の知ってる女装とずいぶん違うなぁと思っていると、「次は目を開けて」「目だけで上を見て。そうよ、そんな感じ」「口を薄く開いて」と次々と指示が飛ぶ。
この時点で鏡の中に写っているのは、もう既に知らない女性だ。
真っ白だった肌はさっきより地肌の色に寄せられ、眉は柔らかい曲線に整えられ、目元に紅を引かれて唇も赤く染まり、目尻の下からこめかみにかけてキラキラした小さな石が幾つも並んでいる。

「……すごいな」
「でしょう? 夜なら淡い光や人工の光に映えるように、強めに色を乗せるのよ。目元のストーンもミステリアスな光でいいでしょ」

いつも怖いと言われる俺の三白眼が、神秘的な眼差しで鏡の中から見返してくる。
瞬きをするとまつげの先の小さな粒々がキラキラと光を落として、目元に不思議な陰影を作り上げていた。
その間にも俺の髪型がどんどん変わっていく。
器用な手先が一束を取ってはねじり、キラキラする紐を編み込んで細いピンで留められる。
闇夜のテクニックにすっかり見とれていると、ドアが開いてカカシさんが戻ってきた。

「とりあえず言われた花は全部揃えて……っ」

言葉を途切らせたカカシさんに何事かと振り返ろうとして、また闇夜に頭をがしりと固定された。

「……すごい。本当に綺麗だよイルカ先生……」

花を持ったまま斜め後ろに立ったカカシさんが、うっとりと鏡の中の俺を見つめている。
確かにすごい出来だが、俺には花を抱えて目元を仄赤く染めているカカシさんの方がよっぽど綺麗に見えるけどなぁ。

「女じゃないけど男にも見えない。中性的で神秘的で可憐だけど同時に艶やかで……こんなの誰にも見せたくない……っ!」
「ふふふっ。本人は分かってないけど、イルカは変装のポテンシャルが高いのよ。どんな格好でも違和感なく最大のパフォーマンスを発揮できるから、きっと諜報や草に向いてるでしょうね」
「それはダメ。イルカ先生をこの里から出すなんて絶対ダメ」

言い合ってる間にも闇夜の手は止まらず、短く切った花が髪のあちこちに散らされて、最後にじゃらじゃらとした髪飾りが冠のように乗せられた。

「さ、完成よ」
「……闇夜、こんな素晴らしいイルカ先生を見せてくれてありがとう。このお礼に好きなものを何でも言ってくれ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」

ごそごそと相談している二人は面倒なのでほっといて、着てきた服などを手早くまとめて風呂敷に包む。

「ちょっとイルカ、そんながさつに動かないでちょうだい! 巫女舞ならまだしも、その装束で大股開いてしゃがむなんてアタシへの侮辱よっ」
「片付けなんて俺がやるから!」

めんどくせぇ。
アスマさんの口癖が思わず出そうになるが、確かに夜宴の前に着崩しちゃまずいだろうと、カカシさんの厚意に甘えることにする。まぁ、純粋な厚意じゃないだろうが。
風呂敷を持ったカカシさんと一緒に闇夜に礼を言って装備部を出たが、闇夜は最後まで疑り深く俺の挙動を見張ってて、こっそりと笑いを隠した。
外に出るとお日様はもう南中から傾きかけていて、意外にも時間をくったようだ。
あっという間だった気がするが、あれだけのクオリティーの女装に仕上げるにはやっぱり時間がかかるんだろう。
だがこのままおころん様♡の所に向かうにはちょっと早い。

「どうしますかね、一旦家に戻ります?」
「うーん、土公転(おころ)神社までけっこうあるから、あんまりのんびりはしてらんないかなぁ。供物の酒も仕入れてった方がいいし。ま、とりあえずそのまま街中をうろつくのはまずいでしょ」

風呂敷を片手に持ち替えたカカシさんが、もう一方の手だけで印を組む。
するとぼふんという馴染みのある音と共に、俺がいつもの支給服姿になった。
通常仕様に変化するのも何かおかしな感じだが、確かに男巫女装束じゃ目立ち過ぎるもんな。

「ありがとうございます」
「イルカ先生のこんな艶姿を誰にも見せる訳にいかないからね」

にっこりと穏やかな笑みを返されたが、目が笑ってない。
カカシさんの審美眼と独占欲には常々疑問を持ってるが、今は有り難いので黙っておく。
歩きながらあれこれ相談した結果、適当な店で軽く腹ごしらえをしてから酒屋に寄って供物を買って土公転神社に向かうことにした。

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