【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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カカシが六代目火影として就任することが正式に決まった日、イルカは綱手にあるお願いをした。
以前から願っていた、そしてなかなか頷いてくれなかった、あるお願いを。
「イルカ……本当にいいのかい?」
「はい。もう決めたことですから」
イルカは、カカシの中から自分の記憶を消して欲しいと綱手に頼んでいた。
『うみの中忍はアカデミー教師だ。
カカシの部下とイルカの元教え子たちの、今となっては里の英雄となった子供たちを介しての、それだけの薄い繋がりだった』、と。
そんな記憶を埋め込んでほしいと願ったのだ。
――イルカがカカシの恋人だという記憶の代わりに。
そしてそれは再三のイルカの訴えにより、ようやく受け入れられたのだった。
「辛いのならば、お前の中のカカシの記憶も消してやろうか?」
労るようにそう問いかける綱手に、イルカはゆるりと頭を振って答えた。
「この記憶は俺だけのものです。これさえあれば生きていけます」
そうきっぱりと言って、だが儚く笑うイルカに。
綱手は何も言えずに、その後ろ姿を見送ることしかできなかった。
程なくして、イルカはひっそりと木の葉を後にする。
徐々に軟化していく綱手の態度に、お願いを受け入れてもらえるだろうと確信したイルカは、既に準備を整えていた。
向かった先は、火の国の南東に位置する小さな港町。
生まれた時から離れたことのない木の葉を出て、かつて共にイルカを見に来た港町で、小さな学校の教師になることにしたのだ。
そこは一般の子供達が通う学校だったけれど。
木の葉を出る時に忍者登録も抹消してきた自分には、十分すぎる環境だった。
だんだん潮の匂いが近づいてきて、木立の隙間から海が見えてくる。
深く、濃い紺碧の海。
色違いでなく本来の揃った色になったあの人の瞳も、この海のような色合いをしていたなと思う。
イルカは思わず道を外れ、砂浜に足を踏み入れた。
土や砂利とは違う、木の葉にはない足場の不安定な感触は、二人でここに来た時を鮮明に思い出させた。
「イルカ先生はイルカって名前なんですから、本物のイルカって見たことありますよね?」
そう言うカカシに強引に海に連れてこられて、イルカが来るという浜辺で男二人、何時間も砂浜の上で寝転がってたわいも無い話をした。
イルカのアカデミー時代の悪戯や、カカシが雪山でユキヒョウに出会った時のこと。
天麩羅と混ぜご飯が嫌いなそれぞれの理由。
四季の風の匂いの違い。
忍にならなかったら今頃は何になっていたか。
腹が減ったと言えば、カカシが竹皮に包まれた握り飯を取り出してきて。
「カカシさんが握ったんですか?!」と驚いたら、そんな大袈裟だよと笑われた。
中身が醤油を垂らした秋刀魚のほぐし身だったのには、もっと驚いたけど。そこはシャケだろと笑ったら、拗ねてそのあと宥めるのにちょっと大変だった。
あの時からイルカのおにぎりにも、秋刀魚のほぐし身がバリエーションに加えられたんだった。
時折あがる波しぶきに慌てて身体を起こしては、波間にイルカのヒレが見えないかと二人揃って身を乗り出して。
違ったと言って砂浜に大の字に寝転ぶ。
――人気のない砂浜は、海と空と、カカシとイルカと。
まるで世界から切り取られたかのように、二人だけのものだった。
結局イルカは見れませんでしたねとイルカが言ったら、「俺はたくさん見れたよ」と。
見惚れるような優しい笑顔でイルカを見つめた。
あの時はまさかカカシとこういう関係になるとは思っていなかったけれど、あの人の中では決まっていたのだろう。
生涯の伴侶にしたいと。
……約束を反故にしたのはイルカの方だけど。
だって仕方がないじゃないか。あの強くて美しい人の隣には、冴えない中忍のしかも男の自分が立つなんて、許されるはずがない。
カカシはもうイルカの手の届かない人になってしまったのだ。
いや、初めから分かっていたのだ。あの人と自分が釣り合わないことくらい。
でも――カカシからの熱烈な愛の告白にほだされて、気が付けば片手じゃ足りないくらいの年月を共に過ごしていた。
いつ果てるか分からない命だから。
お互い必死に二人だけの時間を作ろうとしたし、滑稽なくらい相手のことしか見えなくて、つまらないことで嫉妬したり、ケンカして。
バカバカしいくらい互いが大切で、もしも別れる時が来るのだとしたら、それは命の尽きる時だと思っていた。
だけど――
カカシを次期火影にとの声が強まるにつれ、全てが変わってしまった。
上忍と火影では、そもそも有り様が違う。
上忍はどれだけ有名でも一人の忍に過ぎないが、火影は公人だ。木の葉の顔であり、象徴であり、最高権力者なのだ。
それを頭では分かっているつもりだったが、本当の意味で思い知らされたのは、一人の古老の言葉だった。
「イル坊はどうするんだね」
父のイッカクの面倒を見てくれたという元忍の彼は、イルカのことを殊更に可愛がってくれた。
イルカがナルトの担任になった時も、イル坊なら大丈夫だと頷き、静かに見守ってくれた。
カカシと付き合ってることも薄々知っていたんだろうが、忠告めいたことを何も言わなかった。
だけどあの時、イルカの手土産の肉饅頭を縁側で並んで食べながら、初めてイルカに対して意見を口にした。
「はたけカカシは、六代目になるんだろう。火影の隣か後ろか……そこに立つのは火影同様、皆に認められた者でないとならん。イル坊がそうでないと言うのではないぞ。イル坊がいい子だというのは、ワシもみんなもよぉく知っとる。それでもな、相応しさとは一般論に縛られてしまうもんだ。 ……ワシはな、イル坊が辛い思いをするのを見たくないんだよ」
これは頭の固い年寄りの老婆心だと、じじいなのに老婆心だがねと微笑って言っていたが。その目に浮かんだ真剣な懸念に、気づかされたのだ。
その一般論に縛られた相応しさで、カカシに瑕疵が付くと。
あんなにも強く、あんなにも優しく、あんなにも聡明な、誰よりも火影に相応しいあの人が。
隣にイルカが立つことで、ただ一つの、そして最大の瑕疵になるのだと。
だから消えることを決めたのだ。
木の葉からも、あの人の中からも。
ただ姿を消すだけではダメだ。カカシは全力を傾けてイルカを探すだろう。それでは火影業務に支障が出てしまい、本末転倒になってしまう。
ならば、恋人としてのイルカを丸ごと消してしまうまでだ。
そこまで徹底しなければ、きっとカカシはイルカを求めてしまうだろう。自惚れではなく事実として、イルカはそれを知っていた。
「イルカ先生は、俺の愛情の上にふんぞり返ってればいいんだよ。何年かけてでも、それを思い知らせてあげる」
そう宣言したカカシが、イルカの決意を知ったら許すはずがないことは分かっていた。
だから綱手に頼んでイルカに関する記憶を消して貰うことにした。それを完璧に出来るのは、現時点では綱手しかいなかったから。
それはカカシに隠れて散々悩み抜いた上での、苦渋の決断だった。
正しいことをしたとは思ってない。
でも、後悔もない。
あるのはカカシへの想いだけだ。
何もかも切り捨ててこの地へ来た今となっては、二人で過ごした記憶だけが、イルカの唯一の大切なよすがだった。
凪いだ海がぼやけて見えなくなる。
――今日だけは泣くことを赦そう。自分を憐れんでも赦そう。
溢れ、流れ落ちる熱いものをそのままに、よく見えない海を見続けた。
今までも、これからもずっと愛おしいあの人の瞳と、同じ色合いの海を。
ふと気づくと、いつの間にか砂浜に座りこんでいたらしい。少ない荷物を詰めた鞄が、傍らに転がっていた。
イルカは立ち上がると、服についた砂を払い落とした。
切り捨てても、切り捨てたと思っても、尚わだかまる様々な想いを振り払うように。
以前から願っていた、そしてなかなか頷いてくれなかった、あるお願いを。
「イルカ……本当にいいのかい?」
「はい。もう決めたことですから」
イルカは、カカシの中から自分の記憶を消して欲しいと綱手に頼んでいた。
『うみの中忍はアカデミー教師だ。
カカシの部下とイルカの元教え子たちの、今となっては里の英雄となった子供たちを介しての、それだけの薄い繋がりだった』、と。
そんな記憶を埋め込んでほしいと願ったのだ。
――イルカがカカシの恋人だという記憶の代わりに。
そしてそれは再三のイルカの訴えにより、ようやく受け入れられたのだった。
「辛いのならば、お前の中のカカシの記憶も消してやろうか?」
労るようにそう問いかける綱手に、イルカはゆるりと頭を振って答えた。
「この記憶は俺だけのものです。これさえあれば生きていけます」
そうきっぱりと言って、だが儚く笑うイルカに。
綱手は何も言えずに、その後ろ姿を見送ることしかできなかった。
程なくして、イルカはひっそりと木の葉を後にする。
徐々に軟化していく綱手の態度に、お願いを受け入れてもらえるだろうと確信したイルカは、既に準備を整えていた。
向かった先は、火の国の南東に位置する小さな港町。
生まれた時から離れたことのない木の葉を出て、かつて共にイルカを見に来た港町で、小さな学校の教師になることにしたのだ。
そこは一般の子供達が通う学校だったけれど。
木の葉を出る時に忍者登録も抹消してきた自分には、十分すぎる環境だった。
だんだん潮の匂いが近づいてきて、木立の隙間から海が見えてくる。
深く、濃い紺碧の海。
色違いでなく本来の揃った色になったあの人の瞳も、この海のような色合いをしていたなと思う。
イルカは思わず道を外れ、砂浜に足を踏み入れた。
土や砂利とは違う、木の葉にはない足場の不安定な感触は、二人でここに来た時を鮮明に思い出させた。
「イルカ先生はイルカって名前なんですから、本物のイルカって見たことありますよね?」
そう言うカカシに強引に海に連れてこられて、イルカが来るという浜辺で男二人、何時間も砂浜の上で寝転がってたわいも無い話をした。
イルカのアカデミー時代の悪戯や、カカシが雪山でユキヒョウに出会った時のこと。
天麩羅と混ぜご飯が嫌いなそれぞれの理由。
四季の風の匂いの違い。
忍にならなかったら今頃は何になっていたか。
腹が減ったと言えば、カカシが竹皮に包まれた握り飯を取り出してきて。
「カカシさんが握ったんですか?!」と驚いたら、そんな大袈裟だよと笑われた。
中身が醤油を垂らした秋刀魚のほぐし身だったのには、もっと驚いたけど。そこはシャケだろと笑ったら、拗ねてそのあと宥めるのにちょっと大変だった。
あの時からイルカのおにぎりにも、秋刀魚のほぐし身がバリエーションに加えられたんだった。
時折あがる波しぶきに慌てて身体を起こしては、波間にイルカのヒレが見えないかと二人揃って身を乗り出して。
違ったと言って砂浜に大の字に寝転ぶ。
――人気のない砂浜は、海と空と、カカシとイルカと。
まるで世界から切り取られたかのように、二人だけのものだった。
結局イルカは見れませんでしたねとイルカが言ったら、「俺はたくさん見れたよ」と。
見惚れるような優しい笑顔でイルカを見つめた。
あの時はまさかカカシとこういう関係になるとは思っていなかったけれど、あの人の中では決まっていたのだろう。
生涯の伴侶にしたいと。
……約束を反故にしたのはイルカの方だけど。
だって仕方がないじゃないか。あの強くて美しい人の隣には、冴えない中忍のしかも男の自分が立つなんて、許されるはずがない。
カカシはもうイルカの手の届かない人になってしまったのだ。
いや、初めから分かっていたのだ。あの人と自分が釣り合わないことくらい。
でも――カカシからの熱烈な愛の告白にほだされて、気が付けば片手じゃ足りないくらいの年月を共に過ごしていた。
いつ果てるか分からない命だから。
お互い必死に二人だけの時間を作ろうとしたし、滑稽なくらい相手のことしか見えなくて、つまらないことで嫉妬したり、ケンカして。
バカバカしいくらい互いが大切で、もしも別れる時が来るのだとしたら、それは命の尽きる時だと思っていた。
だけど――
カカシを次期火影にとの声が強まるにつれ、全てが変わってしまった。
上忍と火影では、そもそも有り様が違う。
上忍はどれだけ有名でも一人の忍に過ぎないが、火影は公人だ。木の葉の顔であり、象徴であり、最高権力者なのだ。
それを頭では分かっているつもりだったが、本当の意味で思い知らされたのは、一人の古老の言葉だった。
「イル坊はどうするんだね」
父のイッカクの面倒を見てくれたという元忍の彼は、イルカのことを殊更に可愛がってくれた。
イルカがナルトの担任になった時も、イル坊なら大丈夫だと頷き、静かに見守ってくれた。
カカシと付き合ってることも薄々知っていたんだろうが、忠告めいたことを何も言わなかった。
だけどあの時、イルカの手土産の肉饅頭を縁側で並んで食べながら、初めてイルカに対して意見を口にした。
「はたけカカシは、六代目になるんだろう。火影の隣か後ろか……そこに立つのは火影同様、皆に認められた者でないとならん。イル坊がそうでないと言うのではないぞ。イル坊がいい子だというのは、ワシもみんなもよぉく知っとる。それでもな、相応しさとは一般論に縛られてしまうもんだ。 ……ワシはな、イル坊が辛い思いをするのを見たくないんだよ」
これは頭の固い年寄りの老婆心だと、じじいなのに老婆心だがねと微笑って言っていたが。その目に浮かんだ真剣な懸念に、気づかされたのだ。
その一般論に縛られた相応しさで、カカシに瑕疵が付くと。
あんなにも強く、あんなにも優しく、あんなにも聡明な、誰よりも火影に相応しいあの人が。
隣にイルカが立つことで、ただ一つの、そして最大の瑕疵になるのだと。
だから消えることを決めたのだ。
木の葉からも、あの人の中からも。
ただ姿を消すだけではダメだ。カカシは全力を傾けてイルカを探すだろう。それでは火影業務に支障が出てしまい、本末転倒になってしまう。
ならば、恋人としてのイルカを丸ごと消してしまうまでだ。
そこまで徹底しなければ、きっとカカシはイルカを求めてしまうだろう。自惚れではなく事実として、イルカはそれを知っていた。
「イルカ先生は、俺の愛情の上にふんぞり返ってればいいんだよ。何年かけてでも、それを思い知らせてあげる」
そう宣言したカカシが、イルカの決意を知ったら許すはずがないことは分かっていた。
だから綱手に頼んでイルカに関する記憶を消して貰うことにした。それを完璧に出来るのは、現時点では綱手しかいなかったから。
それはカカシに隠れて散々悩み抜いた上での、苦渋の決断だった。
正しいことをしたとは思ってない。
でも、後悔もない。
あるのはカカシへの想いだけだ。
何もかも切り捨ててこの地へ来た今となっては、二人で過ごした記憶だけが、イルカの唯一の大切なよすがだった。
凪いだ海がぼやけて見えなくなる。
――今日だけは泣くことを赦そう。自分を憐れんでも赦そう。
溢れ、流れ落ちる熱いものをそのままに、よく見えない海を見続けた。
今までも、これからもずっと愛おしいあの人の瞳と、同じ色合いの海を。
ふと気づくと、いつの間にか砂浜に座りこんでいたらしい。少ない荷物を詰めた鞄が、傍らに転がっていた。
イルカは立ち上がると、服についた砂を払い落とした。
切り捨てても、切り捨てたと思っても、尚わだかまる様々な想いを振り払うように。
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