【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし 
★★いとエロし!
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白玉さん脱稿おめでとう~!&お疲れさま~!!のSSです!
なんと〆切を畑海9から全忍に前倒しすると宣言したので、感服のあまり僭越ながら脱稿のご褒美をお約束しました。

飴と鞭の飴をご所望されたので、飴は『甘いやつがほしいです!あと先生が誰かに優しくされてるのを見るのも好きです!!!』味ですよ~!
あれなタイトルだけど健全です!
ぜひ白玉さんの絵柄で思い浮かべて読んで下さいね~!

白玉さん→pixiv


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はちみつ入りあったかミルク



もうダメだ。
ほんとに今日はダメだ。
そんな日もある。分かってる。
理不尽なことだったり気持ちを腐らせたりなんて事は、生きてれば必ず我が身に降りかかるもんだ。たまたま今日という日にそれが集中しただけじゃないか。
だが一つひとつはたいしたことなくても、今日一日で積み重なっていった重みに俺の足は泥濘に取られたように重くて。
次の一歩を諦めてもうここでしゃがみこんでしまおうかという誘惑に駆られた、その時。

「せーんせ」

俺の気持ちとは対極にあるような、語尾の跳ねる軽い呼びかけ。
振り返ると顔見知りの上忍の、額宛に隠されてない方の青灰色の目に気遣いと労りの滲んだ視線とぶつかった。

「お疲れさまなあなたに、今なら無条件で全力で優しくする上忍をレンタルしますよ~」

はたけカカシ、先生。
よりによって今、よりによってなんで、あんたが。

「……結構です」
「まぁまぁ、そう言わずに」

だって俺、あの時けっこうひどい断り方したよな?
付き合って下さいって、下の立場の奴に真摯な態度で頬まで染めて告白した上官に対して、男同士なんて考えられない、論外だって冷たく切り捨てたよな?
それなのに今、ぼろっちくなった俺に優しくするのかよ。なんだよ人柄出来すぎかよ。

「……なんでですか」
「好きな人が辛そうにしてるのに、黙って見過ごすなんてできる訳ないでしょ」

カカシ先生の両腕が伸びてきて、俺をそっと囲い込む。
今にも倒れ崩れそうだった俺には、逆らう気力も残っていなかった。カカシ先生の支給服のベストはいつの間にか前を開けられ、アンダーを通じて人肌のぬくもりが伝わる。

「俺にすがっちゃってよ。先生に優しくするチャンスを逃させないで。ね?」

甘く甘く、蜂蜜がホットケーキにじゅんわりと沁み込んでいくように。
カカシ先生の声が、俺の体の表面から内側の柔らかい部分まで届いてしまう。

「……こんなのズルいです」
「ズルい男なんですよ~俺は。なにしろ忍だからね」

違う。ズルいのは俺だ。
分かってるのにこの温かさを、甘い腕を突き放すことができない。
大人が子供を甘やかすように何度も何度も優しく背を撫でられて、喉の奥で辛うじて塞き止められていたものがぶわっと溢れ出した。

「ほ、絆されたりなんてしませんよ。今だけです。今ちょっとだけ、……」
「うん、それでいいよ。でもここだと人目があるから」

景色がぐらりと揺らぐ。
気付いたら俺のアパートの居間で、俺は思う存分カカシ先生のアンダーを涙と鼻水でびしょびしょに汚していた。その間もカカシ先生はずっと俺の背や髪を撫で、時折ぽんぽんと叩き、また優しく抱きしめてを飽きもせず繰り返していた。
ようやく俺の嗚咽が落ち着くと、カカシ先生はそっと俺を引き剥がして床に転がっていた箱ティッシュを拾い上げて手渡してくれる。それで鼻をかんで目の周りをごしごし拭いていると、カカシ先生が向かった台所からカチャカチャいう音が響いてきた。
しばらくぼうっと座り込んでいると、カカシ先生が甘くていい匂いを漂わせたマグカップを片手に戻ってくる。

「はい、はちみつミルク。ちょうど固形蜂蜜を持ってたからね~。任務帰りで良かった」
「そんな子供の飲み物なんか……」
「こういう時は酒じゃない方がいいの。さ、冷めない内に飲んで。でも熱いからふーふーしてね」

俺の憎まれ口も気に止めずにこにこしながらマグカップを押し付けてくるので、仕方なく飲んでやるという態度で口を付けた。
勢い余ってがぶりと飲んでしまい、案の定舌を火傷してしまう。

「あぁ、だから気を付けてって!」

慌てて口の中を覗き込むカカシ先生に、俺はおとなしく舌を突き出して見せた。
水、いや氷かと台所に向かおうとする腕を掴んで引き止める。

「こんなの舐めたら治ります」
「舐めたらって、火傷は冷やさなきゃダメでしょ」
「だから、舐めたら治ります」

俺はまた口を開けて舌を突き出した。
意図を汲んだカカシ先生がぴたりと動きを止め、「いや、でも」とおろおろと視線をさまよわせる。「治したくないならもういいです」と舌を引っ込めると、意を決したように両肩を掴まれた。
口布を下ろし、震える舌が俺の舌の表面をさらりとひと舐めして離れる。

「今日だけ。今だけです」
「分かってる」
「次からは氷水を持ってきて下さい。それとはちみつミルクは、寝る前にブランデーをほんのちょっぴり垂らしたのを作って下さい」
「はい。……え? えっ⁉」
「言うまでもないと思いますが、そのあと添い寝もです」
「それって、……イルカ先生?」
「使いっ走りにしようってんじゃないですからね?」

ーー本当は俺だって惹かれてた。
ただ認めたくなかっただけだ。
男同士なんて云々は自分に言い聞かせてた。
可愛い嫁さんと可愛い子供二人に犬を一匹という昔からの夢と、折り合いがなかなか付かなかったのもあるが、何より。
カカシ先生ほどの人に並ぶのは、俺じゃ相応しくないと思ってたから。
でももういいんだ。

「はちみつミルク、好きなんです」

昔、母ちゃんがたまに作ってくれた。夜の任務に出る前に、行かないでとぐずる俺のために。
「ほらイルカ、母ちゃん特製のはちみつ入りあったかミルクだよ」と渡されるそれは、無条件で甘やかされる子供時代の象徴の味で。

「あのね、俺は……好きな人に、はちみつミルクを作ってあげるのが好き」
「じゃあ俺たちぴったりですね」

ただ甘やかされたい時に、ただ甘やかすためだけに現れたカカシ先生。
弱ってる時にはちみつミルクを作ってくれたカカシ先生。
そう、これは絆された訳じゃない。
相応しいとか相応しくないとかの基準で考えるものでもない。
よく分からないけど、ただ、そういう巡り合わせなんだと。

だから今でもカカシ先生は、はちみつミルクを片手に、ベッドで俺を優しく寝かし付けてくれている。
子供の甘さと大人の甘さ、両方を巧みに使い分けながら。



【完】
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