【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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――頭が痛い。
ほとんど食わずにあれだけ呑んだんだから当たり前だ。
最後の方はほぼ記憶が吹っ飛んでるのに、ちゃんとベッドで寝ていたことにびっくりだ。
そういえばあいつは結局どうしたんだろう。俺が泥酔したのをこれ幸いと、てっきり布団に潜り込んでると思ったのに。それか、俺が今までやってきたようにゴミ捨て場に捨てられるか。
昨夜はなんとなく、うっすらとだが誰かに背負われた覚えがある。はたけ上忍が連れ帰ってくれたんだろうか。
だがその感覚はもっと小さな背中だった気もするし、聞こえた声も子供のものだったような……。

「俺、イルカの主になれるように頑張って上忍になるから」

はたけ上忍はもう上忍だ。
それに俺のことを馴れ馴れしく呼び捨てなんてしない。そんなことしやがったら、それこそぶっ飛ばしてやる。
うん、やっぱりあれは夢だな。
今日は確か七班は自主練だったはず。はたけ上忍は任務でも入ったんだろう。
後で差し入れがてら、あいつらの顔でも見に行こうと思うと気分が上がる。差し入れはアイスにするかジュースにするか、それとも弁当でも買ってってやろうかとうきうきしながら支度をした。



受付に入ると既にぱらぱらと列ができていて、夜勤担当と慌てて引き継ぎをしてから席に着く。
ただでさえこの時期は上忍師のチームができて通常の任務に出られる上忍が足りないのに、最近はやたら諜報関連の任務が増えてさらに人手不足だ。
何か水面下で進行中なのかと思うが、俺たち内勤はひたすら自分の仕事をしっかりやるしか里に貢献できない。
どこか歯痒い気持ちで書類から顔を上げると、列の後方にありえない顔を見付けて思わず腰が浮いた。

「マスタ……いや、ウツボ上忍……っ」

とっさのことで、つい昔の習慣でマスターと呼びかけるところだった。
名を呼ばれて後ろの忍と話していたウツボ上忍が振り返る。
そしてサッと辺りを見回すとずかずか歩いてきて、俺の前に立って依頼書を受け取っていたくノ一を押しのけた。

「イルカじゃねぇか。ずいぶん久しぶりだなぁ、え?」
「……ご無沙汰をしております。ご帰還されてたんですね」

ウツボ上忍は例の件で、無期限で遠方の警備を任命されていたはず。三代目は部下と狗人を足止め役に使い捨てるような下衆には厳しいのだ。
だが今は人手不足だから、貴重な上忍ということでその任を解かれて帰還したのかもしれない。
――まさか、また主従契約を結ぶ訳じゃないよな?
それを思うだけで体が反射的に固まる。
突然の再会に混乱した頭でぐるぐると考えていると、ウツボ上忍が机に片肘を突き、ぐいと顔を近付けてきた。

「こんな所に座ってて、新しい主に尻尾を振りに行かなくていいのか? あぁ、今はアカデミーでセンセーやってるんだってな、猛・犬・先・生」
「申し訳ありませんが、皆さんの迷惑になるのできちんと列に並んでください。私用でしたら後ほど改めて伺いますので」

理不尽な要求をする者に対する対応が、受付の習いで出たことにほっとする。

「んあぁ⁉ ずいぶん偉そうな口を利くようになったもんだな?」

激昂する男の態度で逆に落ち着くことができた。
改めて見ると、かつて主だった男は普通の忍だった。
――昔はもっと大きくガタイのいい上忍で、絶対的な存在だったのに。
それにここまで横柄で粗野じゃなかった。少なくとも人前では。
五年の懲罰任務で人間性まで変わってしまったのか、それとも地がこうだったことに俺が気付かなかっただけか。

「私の言葉がお気に障ったのでしたら申し訳ありません。ですが、ここは里の顔である受付です。上忍の貴方がそのような態度をとられるのは、里のイメージダウンに繋がるのでご遠慮ください。皆さんが見ておられます」

俺の言葉で周囲の目を思い出したらしい。
すぐ後ろでは、彼が押しのけたくノ一が厳しい視線を向けている。
ウツボ上忍はチッと舌打ちをすると、踵を返して受付を出ていった。

「大変失礼しました、嵯峨上忍」
「ちょっと、何なのあれ? ずいぶん感じ悪い奴ね」
「……昔は立派な方だったんですよ」

少なくとも俺はそう思っていた。
立派なマスターだと。
気遣わしげなくノ一に受付用の穏やかな笑みを向けると、業務を再開した。



結局昼過ぎまで受付が忙しく、七班の差し入れは弁当じゃなくておやつのアイスとジュースになった。
自分の遅い昼メシのおにぎりを取り出しながら、「早い者勝ちだ、好きなのを取れよ!」とアイスとジュース三個ずつを高く放り投げる。
いち早く反応したのはやはりサスケで、ナルトを足掛かりに高くジャンプするとイチゴミルクとカフェオレバーを掴んだ。
サクラが潰れたナルトを横目に、自由落下に入ったフルーツミックスとゴリゴリ君メロンソーダを素早く取る。
起き上がろうとしたナルトの前に、季節限定ピーチソーダとチョコソフトがぼとりと落ちた。

「あーっ、俺もゴリゴリ君が良かったってばよ!」
「いつまでも転がってるからでしょ」
「でもサクラちゃんならいいってば。それにピーチソーダは限定だもんね! サスケってば焦って見逃してやんの」

ニシシと笑ったナルトがソーダのプルタブを引くと、中身が勢いよく噴き上がった。

「うわわわ、何だこれ!」
「放り投げられてるんだから当たり前だろうが、ウスラトンカチ」

サスケがニヤリと笑いながらイチゴミルクを飲んだ。
イチゴミルクはそこまで好きじゃないだろうに、サクラがフルーツミックスが好きなことを知った上で選んだのだろう。なんだかんだ優しい子なのだ。
半分以下に減ってしまったピーチソーダをちびちび飲むナルトに、ちょっと悪戯が過ぎたかと自分の飲みかけのコーヒー牛乳を指し出そうとすると。

「ちょっと待てば良かったのに、まったくナルトは考えなしなんだから。ほら、これ」
「イチゴミルクはあんまり好きじゃないから、残りはやる」
「うお、サンキューだってば!」

……びっくりした。
まさかサクラどころかサスケまで、自分の飲みかけをあげるなんて。
しかもナルトが意地を張るでもなく、素直にもらっている。
アカデミー時代はケンカばかりで、ここまでお互いを思いやることなどなかったはずだ。サクラもサスケ君サスケ君で、ナルトとはあんまり深く関わってなかったのに。

「お前ら、ずいぶん仲良くなったなぁ」
「「「そんなんじゃない」ってばよ!」わよ!」
「ははっ、息もぴったりじゃないか」

照れ隠しなのか、サスケが「修業の続きだ」と消えてしまった。
こんな風に三人を変えてしまうなんて。

「……はたけ上忍はいい先生なんだな」

残った二人に言うでもなく呟くと、サクラとナルトにものすごい剣幕ではたけ上忍の愚痴を聞かされた。



その後少しだけ七班の自主練を見てやって、アカデミーの雑務やら受付の手伝いをしてたらだいぶ遅くなってしまった。
アカデミーで夜食の出前にありつけたから腹は減ってないし、子供たちの成長を目の当たりにできて嬉しかったし、あいつは任務で今夜は一人を満喫できるしで、ちょっと浮かれてたんだと思う。
部屋に帰って風呂を沸かそうと風呂場に向かうと。
そこで後ろから引き倒された。

「散々俺を待たせたってのに、ずいぶんご機嫌だな」
「マス……ウツボ上忍⁉」

てっきりはたけ上忍かと思ったのに、俺を見下ろしているのはウツボ上忍だった。
最近、部屋に誰かがいる気配に慣れすぎて油断してた。

「昼間は偉そうに説教してくれたじゃないか」

さすが上忍なだけはあって、両手はまとめて片手で掴まれ腿の上に乗られて、完全にマウントを取られてしまっている。

「ご無沙汰してます。お話でしたらお茶でも淹れましょうか」

震えるだろうと思った声は、なんとかしっかり出せた。
ウツボ上忍はやけにぎらついた目をしてるので、落ち着かせようとゆっくり声をかける。
だが、返ってきたのは歪んだ笑みだった。

「出来損ないの狗だけあって、媚びるのが上手いな。そうやって三代目やカカシにも取り入ったのか」
「私はそんな事していません! しかもはたけ上忍とは何の関係も……」
「黙れ」

空いていた片手で首を絞め上げられた。
意識が落ちる手前ぎりぎりのところで止めるのは、さすが上忍というべきか。
三代目のことはまだしも、ここでなぜ奴の名前が出てくるのか本当に分からない。だがここでさらに言い返すのはまずいと苦しい息の中ウツボ上忍を見返すと、憎々しげに底光りする目とぶつかった。

「じゃあなんで奴がお前を気にかけるんだ? 『イルカに手を出したら生きてることを後悔させてあげるよ』なんて、わざわざ俺に牽制しに来たんだぞ。お前が尻尾振って奴に頼んだんだろっ!」
「ち、が……俺は、誰とも、契約して、な……」

なんとか声を絞り出すと、ウツボ上忍の顔が奇妙に和らいだ。
そして首を掴んだ手を離して、俺のアンダーを首元から引き裂いた。

「だよな、首輪してねぇもんなぁ。……なぁ、まだ俺の狗でいたいから新しい主を決めてなかったんだろ? 飼い犬のおいたを許すのは主の務めだ。もう一度飼ってやるからな。ほら、おとなしく腹を見せろ」

こいつは何を言っているのか。
……俺をあんなに簡単に捨てたくせに。
まさか本当に再契約を結ぼうとしてるなんて、あまりの厚かましさに反吐が出そうだ。
俺の嫌悪の表情が見えているのかいないのか、ウツボ上忍は俺のベストの前を乱暴に開くと、アンダーをめくり上げた。

「やめろ! 嫌だ! 俺はもう誰の狗にもならないんだっ」

身をよじっても何の抵抗にもならない。
上忍と中忍の絶対的な力量の差を見せつけられた上、勝手に主従契約を結ばれてしまうなんて。
悔しい。
狗はこんなにも弱い。
いや、俺が弱いのがいけないのか。
かつての主にどうしても強く反抗できない、弱い俺が。
ウツボ上忍が腰のポーチから赤い首輪を取り出す――自らのチャクラを込めた、主の証の首輪を。
せめてもの拒絶を示すために牙を剥いて低く唸る。
だがウツボ上忍は喜々として首輪を俺の首に宛てがった。

「ほうら、前と同じ赤い首輪だぞ。昔はあんなに喜んでたじゃないか」
「それはあんたが主になってくれたからだ! 俺は……俺は信じてた! あんたが迎えに来てくれるのを!」

ウツボ上忍の目に陰が宿る。
思わず無い尻尾を股に挟みたくなるような、暗い暗い陰が。

「……お前は待ってなかった。救援なんか呼びやがって。俺の命令を聞かなかったのはお前だ。今度こそしっかり躾直してやるからな」

嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
あんな絶望をもう二度としたくない。俺の忠誠心を踏みにじられ、狗人に生まれたことを来る日も来る日も後悔するような、あんな思いはもう……

「嫌だぁ!」
「イルカっ!」

ふと、体が軽くなる。
同時に風呂場の脱衣所の外で、何か大きなものが壁にぶつかる音が響く。
マウントを取っていたウツボ上忍は消えていた。
代わりに俺の前に立っているのは。
はたけ上忍だった。