【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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 入り口の方からバサバサと音がしたと思うと、背の黒い翼を折り畳みながらカカシがやってきた。
「ああ、良かった。体はもう大丈夫?」
 開口一番に心配そうに訊ねられ、イルカは今日一日カカシに世話をされていたことを思い出した。
「うん、おかげで元気になったよ。評議会はどうだった?」
 とたんに渋い顔になったカカシの翼が消える。
 いつも思うのだが、あの翼の仕組みはどうなっているのかとイルカは起き上がりながら、傍らに座ったカカシの白くて筋肉質な背を覗きこんだ。すると消えかかってはいるが幾筋かの赤いみみず腫れが目に入り、首を傾げる。だがすぐにそれが昨夜自分が付けたものだと思い当たり、慌てて目を逸らした。
「あいつらの言うことは毎回同じだよ。魔王になるべきだの一点張り。それよりツナデの所にいるなんて驚いたよ。どこか齧られたりしなかった? イルカは美味しそうだからね」
 イルカは冗談かと思って笑おうとしたら、カカシが真顔なのに気が付いた。
「……人を喰うのか?」
「ツナデはハーピーだからね。獰猛な肉食だけど、あの人は肉より酒かもしれないな」
「そういえばでっかいジョッキでがぶがぶ呑んでたな。ハーピーの森の酒だっけ? すっげぇ美味かったよ」
「ハーピーの森の酒を? あれはハーピーしか呑めないって言われてる幻の銘酒だよ! イルカはずいぶん気に入られたんだね……」
 カカシは眉間に皺を寄せると、いきなりイルカの顔を両手で掴んで荒々しく口づけてきた。
 魔物の長い舌が口の中を這い回り、敏感な上顎をざらりと舐め上げ舌を絡めとる。抗議しようとしたイルカの目がたちまちとろりと蕩け、押し戻そうとしていた両腕がカカシの胸にしがみついた。
 しばらくイルカを堪能していたカカシが、は と息をつくと、振り切るように「……これ以上はダメ。早く城に帰ろう」と呟きイルカを抱え上げた。
 するとぼんやりと曇っていたイルカの目に光が戻り、慌ててカカシを引き止めた。
「待って! 俺、カカシの父ちゃんに会いたい!」
「俺の父さんに? どうしたの急に」
 イルカを抱え上げたまま、カカシが怪訝な顔を返す。
「勝手に聞いちゃって悪かったけど、ツナデさんに聞いたんだ。サクモさんは今でも眠ってるんだろ? 俺、カカシの父ちゃんに言いたいことがあるんだ」
「今から? ……しかも父さんは眠ってるのに?」
 イルカは強く頷いた。
「眠ってたって聴こえるだろ? お願いだよカカシ」
 ひたりと見つめるイルカの眼差しに負けて、カカシはしぶしぶ首を縦に振った。
 そして洞穴の出口に向かいかけて立ち止まり、屈んで深紅の敷き布を取り上げてイルカに手渡した。
「夜は寒いからこれを借りていこう。父さんの城はオビトの所よりさらに深い第二十六階層なんだ。幻獣化するから俺に乗って。クロは俺についてきてね」
 そう言うとイルカを降ろし、獅子のキメラへと姿を変えた。



 イルカを乗せてクロを従えたカカシは、境界の坑を幾つも抜けてオビラプトゥールのいる階層を通り過ぎ、第二十六階層のサクモの城に辿り着いた。
 一帯は深い霧に覆われて鬱々と薄暗く、イルカのイメージしていた本来の魔界らしい光景だった。
「ずいぶん寂しい所なんだな……ここでカカシの父ちゃんが眠ってるの?」
 カカシはイルカが背から降りると人型になり、クロに適当に待つよう声をかけてからイルカの肩を抱いて城の中へと促す。
「元々はここまで暗くはなかったかな。父さんが眠りについてからはずっとこんな感じだよ」
 城の正面の大扉の前に立つと、カカシの胸元の小さな牙のペンダントがぽうっと光り、重い音を立てて扉がひとりでに開いた。
 入ってすぐの吹き抜けの大広間の中心には、濃鼠色の着物のような服をまとった老人が立っていて深々と頭を下げていた。
「おかえりなさいませカカシ坊ちゃま」
「……ヒルゼン。もうここはいいと何度も言ってるでしょ。お前も使い魔じゃなく立派な魔物なんだから、自分の領地に帰りなよ。あと坊ちゃまはホントにやめて……」
「ここにサクモ様が眠る限りは、このヒルゼンめを追い出す訳には参りませぬぞ。それからカカシ坊ちゃまは、永遠にヒルゼンめの坊ちゃまでございますよ。そちらはイルカ様でございますね」
 頭を上げたヒルゼンが、いかにも頑固者らしい皺の中で微笑んだ。
 カカシは頭をがりがりとかくと、少し照れ臭そうにイルカを押し出した。
「この人はイルカ。俺の、恋人。急に決まったのに、なんで俺たちが来ることが分かってたの?」
 ヒルゼンはイルカにも深々と頭を下げると、じっと見つめてからひとり頷いた。
「なるほどご立派な青年でございますな。カカシ坊ちゃまをどうぞよろしくお願い致しますぞ」
 いきなり親密な会話の中に放り込まれ、目を白黒させながら眺めていたイルカは慌てて挨拶を返した。
「あのっ、はじめまして、カカシ坊ちゃまの恋人です! よろしくお願いします!」
 それを聞いたカカシが、抑えた呻き声を上げてから笑い出した。
 ヒルゼンは特に気にした風もなく再度微笑み、体を避けて道を示す。
「お二人はサクモ様にお会いに来られたのでございましたな。僭越ながらヒルゼンめの先見の水晶で拝見させて頂きましたぞ。ささ、どうぞサクモ様の元へ」

 ヒルゼンを残し二人は螺旋階段を上って、最上階へ辿り着いた。
 窓一つないそこは高い天井の円形の大広間で、装飾を施されたエンタシス式の柱が部屋より一回り小さい円を描いて何本も立っていた。
 薄暗い広間の中央には、ぽつんと石像がある。
 イルカが物珍しげに見回していると、カカシがそれを指した。
「あの石像が父さんだよ」
 イルカは驚いて目を凝らした。
 カカシに導かれて広間の中央に歩み寄ると、カカシと同じくらいの高さの白灰色の石像が、ややうつむき加減の自らを抱きしめるような姿で台座もなく立っている。
「眠ってるって言うから、てっきりベッドか何かで横になってるかと思ってた……」
 目を見開いたまま、一人言のようにイルカが呟く。
「あの朝は父さんが居ないって城の者が騒いでね。探し回ってここで石像になってるのを、俺が見付けたんだよ。これは魔法で眠ってるから誰も起こせないんだ。目覚めさせ方も分からないし……父さんが望んでこうしたんだから、無理に目覚めさせるつもりもないんだ」
 石像を見ながら淡々と説明するカカシにイルカは腹の底から何かが沸き上がってくるのを感じたが、うまく言葉にできずそれを噛みしめるに留まり。ただただカカシの手をとって、ぎゅっと握りしめた。
 そしてそのまま一歩踏み出し、石像に向かってぺこりと頭を下げると声を張り上げた。
「はじめまして、海野イルカです! カカシさんとお付き合いさせて頂いてます! よろしくお願いします!」
 突然大声で挨拶をしたイルカをカカシは驚きの目で見つめていたが、柔らかい笑みを小さく浮かべると隣に並んだ。
 イルカは頭を上げると、石像の虚ろな目を真っ直ぐ見ながら言葉を続ける。
「俺は人間だし、ここにも来たばかりで、色々と至らないところも多いかと思います。でも俺はカカシと一緒にいたいから魔界に来ました。俺は……カカシのことが大事です。きっとお義父さんと同じような気持ちで大切です。カカシを幸せにしたいし、二人で幸せになりたいし、そのために俺は……カカシを守って、ここでずっと一緒に生きていきたい。だから……」
 イルカは大きく息を吸い、再び頭を下げた。
「どうか、息子さんを俺に下さいっ!」
 真摯なイルカの声の名残が、広間の空間に漂って吸い込まれた。
「…………イル、カ……」
 カカシはイルカの結い上げた髪を見つめながら、繋いだままの手をぎゅっと握り返す。
 しばらくその姿勢でいたイルカが頭を上げると、振り返ってにかりと笑った。
「俺さ、ツナデさんの話を聞いて色々考えたんだ。なんで魔物になりたいのか、魔物になったとしてどう生きていきたいのかって、頭じゃなくて胸に聞いてさ。そしたら、やっぱりカカシと一緒にいたいが真っ先に出てくんのな。……でも、それだけじゃ嫌なんだよ」
 そしてサクモの白灰色の顔に目を向ける。
「俺はカカシやみんなに守られて生きていくだけじゃ嫌なんだ。俺だって守りたい。みんなやお義父さんやお義母さんみたいに、カカシを守ってここで生きていきたい。そりゃカカシが強いのは分かってるけどさ、それでもご両親はカカシを守っただろ?」
「それで死んじゃったら意味がない! そこまでして俺は……俺のことなんか守ってほしくなかった!」
 血を吐くような悲痛な叫びを上げ、カカシはイルカの手を振り払った。
 だがイルカはその目に強い光を宿し、臆することなくカカシを見返す。
「……だから俺は魔物になりたい。人間より魔物の方が遥かに強いんだろ? それなら俺がカカシを守れて、なおかつ生き残る可能性が格段に上がる。カカシ、俺はどんな形でもお前に悲しい思いをさせたくないんだ。俺がカカシと一緒に幸せになりたいっていうのは、そういうことなんだ」
 その言葉を聞いたカカシの緋色の双眸が揺らいだ。
 何度か聞いたはずの『カカシと一緒にいたい』というイルカの覚悟が、ここまで強く深いものだとは思ってもみなかったのだ。
「ダメだよ……そんなこと、ああ、そんな……」
 カカシがよろけるように後ずさるとイルカが抱き止め、背に手を回して力強く抱きしめた。
「大事にされることを怖がるなよ。カカシはただ受け取ってくれればいいだけだから。それじゃ嫌なら、俺のことも守ってくれればいいだろ?」
 見開いたカカシの目から、涙が溢れる。
 そのことに気付かないままに、カカシは首を横に振り続けた。
 その時、石像の胸元に小さな光が宿った。
 光は徐々に輝きを増していき、それに気付いて振り返った二人の顔を明るく照らしたかと思うと、突然広間が真っ白に染まるほどの強烈な光を放った。
 あまりの眩しさに二人が腕をかざすと、光の放出は唐突に止んだ。
「何、この光は……父さん?」
 何事も無かったかのように静かに佇む石像を見ると、一ヶ所だけ白灰色でなくなった部分があった。
 カカシが石像に近付くと、それはサクモの胸元に下がっていた円柱形のペンダントだった。手に取って見ると、黒い石の内部には落雷のように白い模様が入っている。
「これは……雷黒水晶!」
「かみなりくろすいしょう?」
 イルカも隣に並んでカカシの手元を覗き込む。
「雷水晶は水晶に落雷しても割れてないっていう、他にも特殊な条件が揃って初めてできる鉱石なんだよ。中でも黒い水晶のはとても稀少で、魔界でも本当に珍しい石なんだ。それに……人間を魔物にするのに必要な素材でもある」
「カカシ! それホントに?」
「父さんのペンダントはただの黒水晶だったはずなのに……」
 カカシはサクモの石像を見つめた。
「………父さん、いいの?」
「いいからこれをくれたんだろ! お義父さんも言ってるじゃないか! 俺を魔物にして、めいっぱい愛してもらえって、そういうことだろ!」
 イルカが飛び付いてカカシをぐらぐらと揺らした。
「いい加減腹を括れよ! カカシは黙って俺に愛されてろ! それ、で……俺のことも、好きなだけ、あいすれ、ば……」
 イルカの声が途切れ途切れになり、抱き付いていた体もカカシにもたれ掛かってきた。
「あ、やべ……充電切れ……」
「イルカ? ああ、魔染め!」
 カカシは慌ててイルカの口に舌を突っ込んで、唾液を流し入れた。
 本来なら明日まで保つはずだったのだが、深い階層に来たことで瘴気による腐敗が進んだのだろう。カカシはイルカを抱え上げると、急いで階段に向かった。
 その途中、一度だけ石像を振り返ると小さく呟く。
「父さん、ありがとう」



 イルカを抱えて飛ぶように向かった先は、落ち着いてはいるもののどこか子供っぽさのある続き部屋だった。
「ここは……?」
「昔の俺の部屋。ちょっと埃っぽいけど、ごめんね」
 カカシが謝りながら天蓋付きベッドのモスリンのカーテンを開け、イルカを横たえた。
 腐敗紋はまだ出ておらず、深い口づけを繰り返すうちにイルカの呼吸も平常に戻っていく。だが魔染めとも言い難いほどの濃厚な愛撫を施され、先ほどとは違う理由でイルカの息はさらに上がっていった。
 胸の尖りを執拗に嬲られ、否応なく反応した股間の昂りを含まれ弄ばれると、イルカはカカシの角を掴んで離そうとした。
「待って、そんな……色々しなくて、い……からっ」
「切羽詰まって魔染めするほど今は悪くないでしょ? ある程度はちゃんと経皮吸収してるから問題ないよ。昨日は無理させちゃったから、今日はゆっくりさせて?」
 ツナデの洞穴での深い口づけを思い出したのか、カカシは手も舌も止めようとはしなかった。それどころか、なおも角を引っ張るイルカへの仕返しとばかりに、再び含んだ性器に器用に舌を巻き付け蠢かせながら強く吸い上げた。
「ひんっ! んぁ、イく……ぅああ」
 イルカの腰が跳ね、角を掴んだままの手がぶるぶると震える。
 咥内に広がる苦味の混じった体液を掌に吐き出すと、カカシはそれを後ろに塗り込めながらゆっくりと解す作業に移り始めた。



 身体を震わせ体内に一度放つと、カカシはそのままイルカを抱き込んだ。
 お互いの吐く忙しない息遣いがしばらく続き、合わさった胸に早い鼓動が伝わる。それが落ち着いたので一旦抜こうとカカシが身じろぐと、イルカが両腕を回してぐっと力をこめた。
 珍しく引き止めるような仕草をするイルカに驚き、カカシは身体を寄せてふっくらとした唇にちょんと口づけをした。
「どうしたの?」
 イルカはカカシの緋色の眼をじっと見つめていたが、頬を染めてふいと顔を逸らした。
「だってさ、俺が魔物になったらもう魔染めは要らないじゃん。そしたら……もうこんな風にすることも減っちゃうのかなって思っ、うぐぅ! ンうう!」
 思いがけない言葉に、カカシは我を忘れてイルカに食らいついた。
 同時に体重を乗せられたカカシの身体で奥深くまで抉られ、くぐもった呻き声を漏らす。
 カカシはそのまましばらく咥内を存分に貪っていたが、ようやく顔を離すとイルカの黒い瞳を覗きこんだ。
「イルカが魔物になっても抱くよ? こんなに愛しいのにやめられる訳ないじゃない」
「そんなにいっぱいじゃなくていいよ! ……俺が、魔物になっても? カカシ、決心してくれたのか⁉」
 イルカがカカシの両肩をがしりと掴むと、カカシは首を傾けて目を閉じ、その手に顔を擦り寄せた。
「……うん。イルカの気持ちが嬉かったし、父さんも後押ししてくれたみたいだしね。だから、イルカ……」
 カカシがゆっくりと目を開く。
 そして双眸の緋にさらなる深い緋色を宿らせ、イルカを見返した。
「魔物になって。俺のために……ううん、俺たち二人のために」




 次の日、カカシはイルカをサクモの城に残し、諸々の準備を整えるために霧の中をクロの背に乗って飛び立っていった。
 並んで見送っていたヒルゼンが、落ち着いた渋声で話しかける。
「きっと大丈夫でございますよ。カカシ坊ちゃまは大変優秀でございますからな」
「そうですよね! ただ時間をおくと、心変わりしてやっぱりやめるとか言い出さないか心配で……」
 ヒルゼンはイルカを見上げ、皺を深めて笑顔を向けた。
「ご心配召されるな。カカシ坊ちゃまは一度決めたことは、必ずやり遂げますぞ。魂を削りスケア坊ちゃまを創られた時もそうでしたからの」
「そうか……そうだよな。うん、ありがとうヒルゼンさん」

 城の中に戻ったイルカは、そのまま真っ直ぐ最上階へと向かった。
 変わらず静かに立ち続けるサクモの像の前に立つと、心の中で話しかける。
(お義父さん……ホントはお義父さんって呼んでいいのか分からないけど。どうかカカシを、カカシの心を守ってやって下さい。俺を魔物にする儀式が成功するように、お義父さんも祈ってて下さい)
 そして胸元に下がる雷黒水晶をじっと見つめて頭を下げた。