【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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 一週間後、改めて集まったカカシとイルカ、テンゾウ、オビラプトゥール、アスタロトの五人は、サスケを伴って氷炎の洞穴のある境界まで数日をかけて遠征してきた。
 一族の長であり第五十八階層全体の領主、そして境界の洞穴と九尾の警備隊長でもあるサスケの父フガクにはあらかじめ話を通してあり、簡単な挨拶だけで一行は境界に立ち入ることを許された。
 ただ、部外者だけで不慮の事故が起きても困るということで、九尾の竜の監視役であるサスケの兄イタチが同行することになった。
 イタチの案内で、洞穴のある境界の結界の手前まで皆でぞろぞろと歩いていく。そこは緑溢れる丘陵地帯で、とても凶悪な竜を封じているとは思えないのどかな場所だった。
 目的地までは九尾を刺激しないように魔力の使用はできるだけ控えてほしいとの要請で徒歩で向かったが、たとえ封印されていてもそれだけの注意を払う必要があることにイルカは緊張する。
 先頭で歩きながらイタチは噂に聞く無冠のカカシをちらりとは見たが、それよりも久しぶりに里帰りしたサスケを構うのに忙しそうで、サスケはそれを憮然とした表情で振り払うのに躍起になっていた。
 イタチは既に立派な角が雄々しく突き立つ大人の魔物で、サスケはまだ本当に子供なんだなと後ろから微笑ましく見守っているうちに、イルカは強張っていた肩の力が抜けるのを感じる。
 すると隣を歩いていたカカシが、イルカとイタチとの間に割り込んで口を尖らせた。
「まったく、イルカはどうしてすぐ目移りするの? そんなにイタチが格好いい?」
 相も変わらずいちいち嫉妬の炎を燃やすカカシに、イルカはどっと疲労感を覚える。
「あのな……兄弟仲が良くていいなぁと思ってただけだろ。そんなにいつも嫉妬してて疲れないか?」
「だっていつイルカが他の奴に盗られちゃうか心配なんだもん」
「もんじゃねぇ! お前は俺のこと信用してないのか⁉」
「イルカのことは信じてるよ? 信じたいけど、でも、こないだもイく時にスケアって言ってたし……」
「イく時……って! そういうことみんなの前で言うなよバカ! それにスケアは元々カカシだろうが!」
「俺だけど俺じゃないし。それにイルカは最初スケアとばっかり仲良くしてたじゃない」
「それはお前がいっつもむっつり黙ってたからだろ⁉ 俺は嫌われてると思ってたんだからな!」
 二人の喧嘩がまた始まったと一行が生温い目を向ける中、イタチが心配そうに目でサスケに問いかけた。
 サスケは肩をすくめると前方を指差して「あれが氷炎の洞穴だろ。俺も入ったことはないけど」と呟く。
 その声で全員が目前で大きく口を開ける洞穴に目を向けた。
 洞穴の入口の周囲には無数の札がおどろおどろしく貼られ、左右には巨大なトーテムポールのような物が向き合って立っている。その縦に重なった像には全身に無数の赤い目が見開き、あたかも洞穴の中を監視するかのように同じ方向を向いていた。
「なんか……ちょっと怖いな」
 先ほどの言い争いの勢いは鳴りを潜め、イルカがそっとカカシに寄り添った。
 それだけでカカシは機嫌を直し、イルカを抱き寄せて耳元にキスをするついでに優しく囁きかける。
「じゃあイルカはここで待ってて」
「だから! それが赤んぼ扱いだって言ってんだろ!」
 イルカはカカシを突き飛ばし、ずんずんと入口に向かっていった。
 その腕をイタチが素早く掴んで引き止める。
「待って下さい、まずは入口の封印を解きます」
 そう言うとイルカを下がらせ、パンと両手を打ち合わせた後に低い声で呪文を唱え始めた。
 すると入口の周囲に貼られていた札が一斉に燃え上がって消え去り、トーテムポールのような像の全ての目が閉じられる。そしてビシッとガラスにひびが入るような音がすると、イタチが振り返った。
「それでは九尾の竜をお見せしますが、くれぐれも魔力はお使いにならないよう」
 穏やかな顔で警告するイタチの額には、うっすらと汗が浮かんでいた。


 洞穴の中はひんやりとして薄暗く、奥に続く道がぼんやりと浮かんで見えた。
 イタチが懐から短い木の杖のような物を取り出して一度振ると、先端に灯りが点る。
「これはこの地に生息するアカリギです。炎より暗いですが、ないよりはましなので」
 そう言って懐からさらに数本取り出すと銘々に配った。
 アカリギを掲げたイタチとサスケを先頭に、一行はカカシとイルカ、テンゾウ、オビラプトゥールの順に続き、アスタロトを殿に奥へと進んでいく。
 ゴツゴツして不安定な足場を歩きながら、イタチが半身に振り返りつつ説明をしてくれた。
「九尾の竜はこの地で封印されました。氷炎の洞穴とは我ら炎の一族と、氷の一族との協力で作られた人工の洞穴です。封印媒体の少年ナルトを九尾の腹に埋め込んで動きを止めた後、相反する属性を融合した炎で溶かした岩で覆って二重に封印したのです」
 イルカには分からなかったが、他の者が賞賛のこもった声を上げたところをみると、相当高い魔力を必要としたことなのだろう。
「そこまで出来るなら、そのまま殺っちまわなかったのか?」
 オビラプトゥールが疑問を投げかけると、アスタロトが先に口を開いた。
「九尾の竜ほどの絶大な力を持つものを殺してしまうと、魔界にどんな影響が出るか分からないからね。特に九尾は九つの属性を持つ古の生き物だ。それに殺すだけの力を持つ者もいなかっただろう――大魔王サタン様を除いては」
 イタチが頷いて同意を示した。
 そしてアカリギを高く掲げると、前方を指し示した。
「この先の天井が高くなった所、そこに九尾の竜がいます」

 九尾の竜は、氷漬けになっていた。
 目尻からそのまま伸びたような長く尖った耳と、背中に広がる細長く中間のぶわりと膨らんだ九本の尾が、竜というよりは巨大な狐のようだった。
 太陽の下なら黄金に輝くであろう被毛は、今はくすんだ黄色に見える。
 見開いたままの両目は、洞穴の灰色の壁を越えてどこか遠くを見据えていた。
 ――そして。
 四つ足の動物がお座りをした体勢で露わになっている腹の部分には、金髪の少年が被毛にくるまるように埋め込まれていた。
「あれが封印媒体のナルト……? まだほんの子供じゃないか」
 イルカが悲痛な声を上げる。
「そうです。元は赤ん坊でしたが。私が生まれる前、およそ八百年前からゆっくりと成長を始めて、今はサスケと同じくらいまでになってます」
 一行が九尾の腹で目を閉じているナルトと、イタチの隣に立つサスケとを見比べた。
「こんなに大きくなるまで大魔王サタン様に報告してなかった訳ないよね。なんで急に会いたいなんて言い出したんだろう」
 カカシの疑問にイタチが無表情に答えた。
「定期報告はしていましたが、直接のご報告は許されていませんでしたから……大魔王サタン様のお耳に届いたのが、ごく最近だったのかもしれません」
 その返答にカカシは小さく唸った。
 それがイルカが魔物に生まれ変わった時というのは、タイミングが悪すぎる。カカシを九柱にしたい首柱バアルには、どこまでも好都合だったのだが。
 すると今まで沈黙していたイルカが、一人言のように呟いた。
「この子はずっとこのままなのか? ひとりぼっちで、こんな暗い所で……」
「可哀想ですが、それがこの子の運命なのです」
 イタチの静かな声が洞穴の高い天井に吸い込まれる。
 これから先、どれだけ成長してもそれは報告上のことなのだと、誰にも顧みられることはないのだとイタチは告げていた。
 封印媒体の子は、ナルトという名こそあれど、ただそれだけの存在なのだと。
「そんな……」
 イルカは引き寄せられるように、ふらふらと九尾の竜に近付いていった。
 氷漬けにされた九尾の竜の脚は、しゃがんだ状態で折り畳まれている。前に立つとイルカの背はその膝の高さにも及ばない。
 その脚の間に覗く封印された少年を見上げ、イルカは手を伸ばしたが氷の壁に阻まれてしまった。
「……お前は赤んぼの時からずっとひとりぼっちだったんだな。でも……九尾の竜もだよな。お前たちはずっと二人っきりで、こんな寂しい所に閉じ込められてたんだよなぁ……何万年もずっと、ずっと……」
 途切れ途切れに洩れるイルカの湿った声を、その場の誰もが身動きひとつせず聞き入った。
 九尾の竜を監視対象としてしか見ていなかったイタチさえ、封印媒体の少年に対する言葉には心を動かされたようだった。今までは単に目安として弟のサスケと同じくらいと認識していたが、目の前の少年もまた一人の子供なのだということに、初めて思い至ったのだ。
 カカシがイルカに寄り添おうと足を踏み出して、ふとイルカの髪がまたびっしょりと濡れていることに気付いた。
「イルカ、髪が……」
 その声はガラスが叩き割られたような、ガシャーンという轟音にかき消される。
 カカシがその音の方を見上げると、九尾の竜を覆っていた氷が割れ、一本の巨大な尾が今まさにイルカに向かって降り下ろされるところだった。
「イルカ……っ!」
 とっさに伸ばしたカカシの手は届かず、地面に向かうくすんだ黄色の軌跡だけがカカシの目に映る。
 ――と同時に。
 洞穴の中が突如として大量の水に満たされた。





 水中で思うように動けないながらも、カカシは必死にイルカを探した。
 カカシは水竜の尾を持つ水属性もあるのだが、烏と獅子のキメラなので幻獣化すると水中では翼が邪魔になってしまう。しかたなく本来の能力を発揮できない人型のまま水底に向かって泳いだ。
 イルカの立っていた場所を見渡しても何の痕跡もなく、焦燥感だけが募る。顔を上げて辺りを見回すと、半人半牛の大型の魔物がサスケを抱えて出口の方へと泳いでいた。恐らくイタチの幻獣化に違いない。弟を安全な場所へ逃がして一族に援軍を頼んでから、九尾と対峙しようという思惑なのだろう。
 その時視界の隅に、水蛇のような細長い影が写った。
 アスタロトの幻獣化かと思い、イルカの姿を求めて目を逸らそうとすると、その細長い影は滑らかながらも素早い動きでカカシに近付いてきた。
「カカシ! 無事だったんだな!」
「イルカ⁉」
 その細長い影はイルカだった。
 水蛇と見間違えたその姿は、裸の上半身は人のままだったが下半身は魚のそれで、まるで人魚のようだった。
「イルカ……良かった………」
 折れんばかりに抱きしめた体は、確かにイルカのもので。
「カカシごめん、こんな事になっちゃって……どうしよう」
 おろおろするイルカの声で体を離してよく見ると、耳があった場所には魚のヒレが黒髪から突き出していて、下半身は黒く輝く鱗に覆われ大きな尾びれが揺れている。
 原因は分からないが、九尾が自力で封印を解いたこのタイミングでイルカが幻獣化したのは、やはりショックのせいかとカカシは狼狽えるイルカを案じた。
 イルカを見つめると顔の周りで黒髪が水流に揺らめき、その背後にはゆったりと上下する黒みを帯びた半透明の尾びれが垣間見える。
「ううん、とっても綺麗だよイルカ。イルカはどんな姿でも綺麗」
「そうじゃねぇ! 俺の見た目じゃなくて、ここを水浸しにしちゃった事だよ!」
「え、これってイルカがやったの⁉」
 てっきり九尾の竜の仕業かと思っていたカカシは、心底驚いた。恐らく他の者もそう思っていることだろう。
 遅まきながら気付いたが、水中なのに呼吸ができている上に会話までとなると、洞穴を満たしている水はとても普通のものとは思えない。特殊な水なのか一種の結界のようなものなのかは分からないが、これだけの魔力を有する水なら九尾に違いないとカカシは思い込んでいたのだ。
 そういえば九尾の竜は、と壁面を見ると、水中ではよく分からないが氷の壁は消え去っているように見える。現に九尾の竜は立ち上がろうとして天井に頭がつかえ、牙をむき出して苛立った顔をしていた。
「イルカ、今のうちに逃げよう」
 カカシがイルカの手を握ると、指の間の柔らかい襞に触れた。どうやら尾や耳だけでなく、水掻きのようなヒレもあるようだ。
 他にもどんな変化があったのか、じっくり検分したいが後回しとイルカの手を引くと、イルカはその手を優しく振りほどいた。
「ごめんカカシ、俺、たぶんやることがあるんだ」
 この非常事態に、しかも幻獣化したばかりのイルカが何を? と黒いままの瞳を覗きこむと、イルカは戸惑いながらもきっぱりと繰り返した。
「よく分かんないけど、あの竜に呼ばれてる気がするんだ。この水を通してアイツの思念みたいなのが伝わってくるんだよ。何か、俺しか出来ないことがあるんだって」
 そう言うとイルカはカカシの唇にちょんとキスをして、「じゃあ、ちょっと行ってくるな!」とにかりと笑った。
 カカシは慌てて抱き止めようとしたが、イルカは腕の中からするりと抜け出して身を翻し、黒く透けた煌めく尾びれをひらりと動かしてみるみるうちに遠ざかっていった。
 追いかけようとするカカシの目前で、水中を泳ぐイルカのなだらかなラインがさらに大きく細長く変化していく。
両腕は平たく広がって扇形のヒレになり、人型だった上半身には瞬く間に下半身と同じ黒い鱗が広がっていった。
 そして水流になびいていた髪は、耳や尾びれと同じ半透明の黒みを帯びた、たてがみのようなヒレへと変わった。
「あれは魚……水蛇? いや水龍か?」
 思わず追うのも忘れて見入っている内に、イルカは九尾の竜の眼前まで迫っていた。
 何か九尾に話しかけているようだが、カカシには聞こえない。ただ、九尾の竜の動きも止まり、イルカの言葉に耳を傾けているようだった。
 急いでイルカの元へ泳ぎ着こうともがく内に、水龍と化したイルカの細長い胴体が九尾の竜に巻きつく。
 巨大な九尾の竜の体にくるり、くるりと二巻きしたイルカの頭は後ろ向きになっていて、カカシからその顔は見えなかった。
 背に刻まれた六花結晶の紋様が、水中にぼんやりと光を帯びて見えるだけだった。
「イルカ……いったい何を……?」
 ようやく追いかけることを思い出したカカシは、腕を動かしてイルカの元へと向かおうとした。
 すると何か絶大な魔力の波動が、水を伝ってカカシの全身を震わせる。
「おい、これはヤバいんじゃないか?」
「イルカ様は何をなさっているんです⁉」
 いつの間に側に泳いできたのか、オビラプトゥールとテンゾウが声をかけてきた。
 振り向いたカカシが口を開こうとしたとたん、その魔力がさらに大きく膨れ上がるような、ある一点に凝縮されていくような両極の力の波動を感じて九尾の方に向き直ると。
 突如として爆発的な水流が押し寄せ、カカシたちは洞穴の出口の方へと押し流されてしまった。