【Caution!】
全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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《終幕》先輩が嫁って何ですか⁈
昔のことだけど、あの時は本当にびっくりしたよね。
先輩が嫁。
五百歩譲って先輩に嫁ができたならまだ分かるけど、それでも先輩が結婚ってライフスタイルを選ぶことにもびっくりだからね。しかも先輩が嫁だよ⁉
ある日突然「そうだテンゾウ、俺、結婚したから。すっごく素敵な旦那さまができちゃった♡」って任務中に言われた僕の身にもなってほしい。ちょうど忍刀を振り抜いたところだったから、うっかり横の夕顔さんを斬り付けそうになったけど、夕顔さんもびっくりして気付いてなかったからお互い命拾いした。夕顔さん、キレると怖いから。
先輩はしばらく誰も、僕ですら声をかけづらいくらい抜き身の刃みたいなビリビリした雰囲気だったのに、ちょっと里に帰還したと思ったらこれだからね。お相手はどうやら、あの長年可愛い可愛いと聞かされ続けた幼馴染みの『イルカ』ってところは納得だけど、先輩が嫁。もうビリビリ切れ過ぎてトチ狂ったのかと思ったよ。
それから先輩は、ずっとトチ狂ったまま今日に至る。
その今日も先輩は相変わらずだ。帰還途中、いかにうちの旦那さまが格好良く男前でエッチかを延々と聞かされ、いい加減うんざりしてたところに、木ノ葉の隠し小屋で休憩を取ることになった。
久しぶりに温かい物を食べられると床下収納の封印を解いて食糧を取り出したら、先輩が「あ」と声を上げた。
「それ。ここにも置かれるようになったんだね」
指差すのは、僕の手の中の乾燥味噌玉。
味噌玉を干し野菜や海藻、干し肉で挟んだものを更に日持ちするよう火遁と風遁で乾燥させたもので、湯を注いで汁として飲んでもいいし、干し米を入れれば雑炊にもなる優れものだ。もちろん補給食として持ち出して、このままかじってもいい。
「イルカがね、外地でも美味くて栄養価の高いものを食えるようにって、資材部と共同開発したんだって」
「へぇ、これイルカさんのアイディアだったんですか。凄いですね」
先輩は乾燥味噌玉を見て目を細めた。
「ほんとは乾燥ラーメン玉にしたかったらしいんだけど、コストの問題でね」
「あぁ、なるほど」
囲炉裏に火を起こして鍋をかけると、干し米と竹筒の水を入れて沸騰するのを待つ。小さな気泡が上がってきたところで、干し野菜の乾燥味噌玉を二つ砕いて入れた。
僕たちみたいな任務の場合はほとんど兵糧丸で何日も過ごすから、こういう人里を思わせる食糧は本当に有り難い。さすがにラーメンまでの贅沢は言わないけど、味噌の香りも十分に郷愁を漂わせる。
「こういう匂いを嗅ぐと、僕でも早く帰りたいなって思いますよね」
すると先輩がふっと微笑んだ。
「だよね」
そしてしばらく鍋の中を見つめてるかと思ったら、不意に呟いた。
「そのための味噌玉なんだって」
先輩が木杓子で鍋底から掬い上げるようにかき混ぜると、また鍋の中を見つめる。そこに誰かの顔でも浮かんでいるかのように。
「俺たち根っからの戦忍って、食卓を囲むって記憶があんまりないじゃない。でも味噌ってさ、家庭の香りでしょ?」
確かにそうだけど、僕に至っては家庭の香りすら記憶にない。だけど味噌の匂いでとっさに浮かんだのは、なぜかというかやはりというか、木ノ葉の里だった。夕暮れ時の家々から漂ってくる、夕餉の匂い。
「そういうことだよ、テンゾウ」
いつでも里は僕たちの帰りを待っていると。
温かい味噌汁の香りが漂う木ノ葉の里――僕たちの故郷で。
「……イルカさんって凄いんですねぇ」
「うん。凄いのよ、俺の旦那さま」
珍しく旦那さまにハートが付いてない。こんなしんみりとイルカさんの事を語る先輩は初めてかもしれない。先輩が結婚なんてって思ってたけど、ここまで敬愛を持てる相手と添えるなんて、ちょっと羨ましい。僕も素敵なお嫁さんを探そうかとまで、チラッと思ってしまった。
「そういう発想は、むしろイルカさんがお嫁さんみたいですよね。嫁の鑑っていうか」
ヒュ、と耳元で風が鳴る。
遅れて背後にタンッと何かが刺さる音。そう、あまりにも聞き慣れた音。例えば、クナイとか。
「……今、何て言った?」
先輩が鬼神の如き形相になっている。
え、僕、何か変なこと言った? 褒めただけだよね。イルカさんが嫁の鑑のどこが駄目だった⁉
「イルカはこの世で最も素晴らしい旦那さまなんだよ。それを嫁の鑑って何? 嫁の俺を馬鹿にしてんの?」
「えっ、いやそんな、……えっ⁉」
目の前の空気が僅かに揺らいだ。
と、膝の上に何かがパサリと落ちる。
「言葉には十分気を付けろよ、テンゾウ」
膝の上に散らばるのは焦げ茶の髪の束だった。先輩は銀色で、そうするとこの髪は……。
「斬新な髪型だな、テンゾウ。しばらくそれでいなよ。しっかり反省するまで」
恐る恐る手で探ってみると、前髪が二センチくらいしかない。でもどうやら先輩の逆鱗に触れたらしいので、僕は素直にはいと返事をするしかなかった。
おっそろしい嫁だなぁ。イルカさんはこんな嫁の真実を知ってるんだろうか。でも意外とどこの家庭でもそんなものなのかな。僕が知らないだけで。
今まで他里の忍や敵に『先輩が嫁』って事はトップシークレットだと思っていたけど。だって二つ名まである木ノ葉の看板忍者が男と結婚、しかも格下の中忍の嫁なんて外聞が悪いだろう?
だけど先輩がここまで嫁であることに誇りを持ってるなら、特に問題はないか。多分、馬鹿にした奴らは、全て跡形もなく消えちゃっただろうしね。そのうちビンゴブックにも『嫁』がNGワードとして載るんじゃないかな。皆も命が惜しいから。
僕は敵じゃないし先輩をよく知ってるから、『嫁』の扱い方さえ分かればNGワードにはならない。
「ところで先輩にとって、良い嫁って何ですか? 後学のために教えてください」
とたんに先輩の顔がへらりと崩れ、何なら鼻息も荒く嫁の心得を語り出した。もちろん、旦那さまがいかに愛らしく頼りがいあって素晴らしいかも、ふんだんに交えて。
あーあ、木ノ葉の誇る精鋭のトップに君臨する忍が、元暗部隊長まで昇り詰めた男が嫁の鑑かぁ。そこはもういいけど、先輩を嫁にできちゃうイルカさんが、実は一番怖いんじゃないかと思うよ。ここまであの先輩を骨抜きにして、嫁の鑑にさせちゃうんだからね。
何より五大国広しといえども、先輩を嫁になんて思い付く人なんて絶対にいない。あの写輪眼のカカシと結婚したいと思う人は数多くいるだろうけど、『嫁』にって発想がまず有り得ない。
本当に何て言うか……
「先輩たちってお似合いの夫婦ですよね」
うわ、はにかんだ。
先輩のはにかみ顔なんて僕は見ても嬉しくも何ともないけど、イルカさんはきっと言うだろうな。あのキリッとした男らしい顔を、やっぱりへらりと崩して。
「俺の嫁は可愛いんです!」
ってね。
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