【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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 全ての授業が終わって明日は休みという金曜の夕方。
 アカデミーの教員室には、珍しくどことなく弛緩した空気が漂っていた。
 一番窓際の机に向かうイルカもそれは同様で、受付も入ってない今日は定時に帰れるかもしれないと、手元のテスト用紙の束をまとめる。
 なんとなく口寂しくてベストの巻物ホルダーから飴を取り出そうとした手が胸元で止まり、変わったばかりの支給服はまだ慣れないなぁと苦笑した。
 すると開け放たれた窓から、真っ黒な蝶が迷い込んできた。
 最初はクロアゲハかと思ったが、ゆったりとした羽ばたきは夕陽を受け、ネオンブルーやエメラルドのメタリックな光をちらちらと放っている。
「綺麗なカラスアゲハね。珍しい」
 先輩教員のツバメも同じ結論を出したらしく、目で追いながら呟いた。
 その美しい蝶は、ひらりひらりと優雅に舞いながらイルカの肩に止まった。
 ベストの肩口で羽を震わせる蝶にそっと指先で触れると、イルカのチャクラを感じ取った蝶は真っ黒な式に姿を変える。
「え、俺宛て……?」
 黒だと思った紙は、よく見ると僅かに赤みがかっていた。光に透かすと濃い紫にも見える。
「あら、それ。素敵な色の式ね。至極色じゃない」
「しごくいろ、ですか?」
「そうよ、黒に近い紫だから濃紫とも言われてるわね。高貴な方の色って言われてるから、あんまりおおっぴらに使う人もいないんじゃないかしら。国王や大名とか、うちの里なら……そうね、火影様くらい」
「火影様……」
「まさか本当に大名や火影様じゃないでしょ。なんにせよ粋な人ねぇ」
 スズメと話しながら式を開いたイルカは、手元に落とした目を見開いた。
 そこには何も書いていなかったのだ。
 式は通常、チャクラを認識することで紙に変わる。だが秘匿性の高い内容のものは、さらに手順を必要とすることもある。スズメの言うように、まさか大名からの手紙とも思えないが、極秘任務など何かおおっぴらにできない内容なのかもしれない。
「特定の薬品で炙り出しかしら。それか時限式とか?」
 興味津々で覗き込んでいたスズメも、任務に関わる事かとそれ以上は追求してこなかった。
「帰ったらまた見てみますよ」
 軽い口調で答えたイルカは、壁の時計を見て終業を確認すると荷物を詰めたカバンを肩にかけた。



 大戦で全壊した中忍寮は綺麗に建て直されたはずなのに、既に中古感の出た階段を上がって一番端のドアを開ける。
 室内は昼間の湿度の高い熱気がこもっていて、イルカは居間と寝室の窓を開け放った。買ってきた夕飯の前に風呂を沸かすかとカバンを椅子に置き、先ほどの至極色の式を思い出す。
 取り出した紙を広げると、ぼうっと白い文字列が浮かび上がった。どうやら宛先の者の周囲に他人がおらず、一人だと解読できるような術がかかっているらしい。
 その短い文面に目を通したイルカは絶句した。


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 イルカの目はまずカカシの名と伽役という文字を何往復もした。
 それから七月朔日とは七月一日のことでいいのだろうか、まさか旧暦ではないとは思うんだが、としばし考え込む。
 あまりに非日常的な単語に、思わず理解しやすい方に思考が流れたのだ。
 そしてもう一度、伽役の文字を見てから火影印をじっと見つめる。
 執務室には三代目の頃から非公式の雑用係として出入りしていた。五代目を経て六代目となった今は、それもほとんどなくなったが。
 それでもはたけカカシの下に捺された火影印は嫌というほど見慣れている。アカデミーは火影直轄の組織だから、たいていの書類には火影印が捺印されているからだ。
 同時にそこに込められたチャクラも、この至極色の式は正しく火影からだと伝えてくる。
 火影印の上にそっと指先で触れると、馴染みのある、だが遠い存在になってしまったカカシのチャクラを感じ取る。
「どういうことだよ……カカシさん」
 日頃のように様を付けるのではなく、かつて馴染んでいた呼び方がイルカの口からこぼれ落ちた。
 七班の子供たちを通じて親しくなり、解散とその後の怒涛の日々に流され疎遠になっていった人。
 だがそれはイルカの意思でもあった。
 ――好きになってしまったから。
 カカシは一度死んでいる。イルカを助けて。
 それだけでも怖いのに、カカシはどんどん前へ、上へと行ってしまう。ビンゴブックに載るほど有名とは言えただの戦忍だったはずが、大戦では隊長として忍連合軍の上に立ち、最終的にはナルトたちと共にカグヤと対決したという。
 そして今は六代目火影だ。同じ上に立つ者でも大名や国主などとは違い、火影は有事の時は常に最前線で体を張る。そして命を狙われることも戦忍時代より格段に多くなる。
 誰よりも前へ、誰よりも上へと立つ者は、同時に誰よりも死に近付くのだ。たとえ平和な時代になったといっても。
 そんな苛酷な環境に身を置き続けているカカシに、一介の中忍如きが「好きです」などと脳天気に言えるはずもない。
 それは身分違いなどと生易しいものではなかった。
 生きている世界が絶対的に違うのだ。
 その六代目火影が、イルカに伽役を任命する。
 遠くから秘かに寄せる思いがバレてしまったのかと一瞬鳥肌が立ったが、その考えはすぐに打ち消した。
 不埒な思いを抱いた罰などと、カカシがいちいち反応する必要はないのだから。気付いてもただ無視すればいい。
 いきなり伽役など、きっと何か表に出せない理由があるに違いない。
 何度も食事や飲みに行った時の穏やかで控え目なカカシを思い浮かべたイルカは、機会を見つけて直接問い質しにいこうと思い立ち、ようやく風呂に入ることを思い出して腰を上げた。


 カカシに直接会うことができたのは、十日も経ってからだった。
 執務室に座るカカシを久しぶりに真正面から見て、改めて好きだなと真っ先に思ってしまう。
 カカシは全く普段通りで、後ろめたさや落ち着かない素振りもなく、やはりあの任命書には何か隠された事情があるんだと確信しながら口を開いた。
「あの、カカシ様、先日の任命書のことで」
 空気がぴりりとした殺気じみたものに変わった。
 カカシは穏やかな笑みを浮かべたまま、片手を肩まで挙げる。すると二人の周囲の空間自体が圧縮されたようになり、何らかの結界が張られたことをイルカは肌で知った。
「あれは拒否できない任務です」
 変わらず笑みを浮かべるカカシが、イルカの問いかけを押し潰すように答える。
「はい、それは了解してますが、その……伽役、とは」
「文字通り伽役です」
「と仰ると伽役、というのは、えっと……寝所に侍る者のことで……?」
「そうですね」
「ですが! 一般的には女性が務めるものかと」
「あの任命書はイルカ先生、あなたを指名してあります」
 淡々と事務的に答えるカカシに、イルカは徐々に空恐ろしさを覚える。
 何か。
 何か知らないうちにカカシが見知らぬ人間に成り代わってしまったような、笑みの形をした目の奥に知りたくないものが見えるような。
 カカシが突然立ち上がった。
 そして机を回ってイルカの前に立ち、無言で見つめてからふと視線を遠くに投げる。
「昔、イルカ先生は言ってましたよね。好きな人はいないの、結婚したいとか思わないのって聞いた時、『俺は旧いタイプの忍です。結婚はしません。あえて言うなら、俺は里と誓いを交わしたようなもんです』って」
 確かに言った。細かい部分までは覚えていないが。
 だがそれは他の誰でもなく、カカシに問われたからだ。
 「好きな人はあなただ」
 そう言えないから。
 カカシに答えるというより、自分に言い聞かせるために言ったようなものだった。
 カカシの視線がすいとイルカを捉える。

「だからね。それならイルカ先生は、里の長で火影である俺のもの。そうですよね?」

 ……誰だ?
 ……この人はいったい誰なんだ?
 呆然とするイルカの顔に、カカシの手が伸びる。
 左手で両顎の付け根を掴むとぐっと力を入れ、イルカの口を強引に開けさせた。
「舌を出して、そのまま動かないで」
 その強制力のある声音に言われるがままに舌を出すと、カカシの右手が素早く動く。
 何かの印を結んでいるようだ、とイルカが気付いた時には指先に重いチャクラが集まっていた。そしてその二本の指先が躊躇なく舌の奥の方に当てられる。
「ぐ、ぅう」
 舌の表面にじゅわっと熱いものを感じて、思わず呻き声が漏れた。
 カカシは指先を抜くと、どこかうっとりとしたように舌を見つめる。それが今までの張り付いた笑みより本物らしく、イルカは一瞬その顔に見とれてしまった。
 ようやくイルカの顔を解放したカカシが、ポケットから小さな手鏡を取り出してイルカに向ける。
「見て」
 恐る恐る覗いた鏡の中には、自分の戸惑う顔。
 舌を見てみると、奥の方に何か赤黒っぽい模様が浮かび上がっている。
 それは暗部の刺青に似ているが、右下に流れる線が無く、その印はまさに炎を象っていた。
「これは火影の伽役という証です。自ら名乗ることはできないけど、この呪印を見せれば火影の伽役と分かるようになっているから、イルカ先生はもう誰ともセックスできません。……俺以外は」
 イルカの手からそっと手鏡を取り上げたカカシが、至って事務的に告げた。
「セ……ッ」
「それでは朔日に」
 用件は済んだとばかりに席に戻るカカシに、呆然としたままのイルカは習慣的に頭を下げて退室した。
 自分の身に何が起きているのか、全く実感のないままに。

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