【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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 七月朔日、夜。
 イルカは火影別邸の門の前に立っていた。
 休日の朝だというのに、前夜から一睡もできなかったイルカが気分転換に窓を開けると、待ち構えていたように蝶が舞い込んできたのだ。
 至極色のカラスアゲハ。
 そこには時間と場所だけが素っ気なく記されていて、服装や持参品の指示はなかった。任務だから無難に支給服でいいだろうかと悩みながら入浴して着替えを済ませ、とにかく火影直々の命令なのだと自分に言い聞かせて重い腰を上げてきた。
 心のどこか深いところで、想い人に抱かれることへの喜びが静かに熱を持ったことは見ないふりをして。
 竹薮の中ひそりと建つ別邸はこじんまりとして、いかにも隠れ家といった雰囲気が漂っている。竹で編まれた門戸を押し開け、飛び石を辿って玄関に立つと程なく引き戸がカラリと開いた。
「うみのイルカ様、お待ち申し上げておりました」
 玄関は足元だけに灯を点されていて、薄暗がりからぼうっと滲み出るように一人の男が現れる。
 濃い茶のふわりとした短髪に濃い紫の単衣を着た、恐らくは若い男。断言できないのは、顔が上半分の白い狐面で覆われていたからだ。
 その半面には、目の部分にあるべき穴が無かった。
 盲目なのか、そういう制約の必要な能力の持ち主なのか、或いは身元を判別させないためなのかもしれない。半面のせいで口元の黒子がやけに目に焼き付くな、と思いながらイルカは男をじっくり見ないよう、さりげなく目を逸らす。
「私は今夜の貴方様のお世話役を仰せつかっております烏と申します。どうぞこちらへ」
 見えずとも迷いのない歩みの男のあとをついていくと、歩き方も忍のそれとは違って、爪先から足を落として内股に運んでいる。本来なら男に使うべきではないが、こういうのを柳腰というのだろうか。姿形も華奢というよりは嫋やかという表現が相応しい。世話役というくらいだから、もしかすると閨房術専門の忍かもしれない。
 そこでイルカは今夜、自分が何のために呼ばれたのかを改めて強く意識することになった。

 薄暗い廊下を進むと、烏は右に折れて小部屋に案内した。そこはやけに湿度が高く、部屋の中に洗面台ともう一つ磨りガラスのドアがある。
「まずはこちらで湯浴みとお着替えをお願い致します」
 烏が棚からバスタオルとタオルを取り出し、イルカに手渡した。どうやらここは風呂らしい。伽役というくらいだからと一応入浴は済ませてきたが、なぜ真っ先に風呂を進められるのかと戸惑っていると、烏の口元が緩んだ。
「私はくれぐれも貴方様のお体に触れることのないようにと、六代目様からの御達示ですので。それから湯殿ではご自分でご準備をされる必要はないそうです」
 準備とは、と尋ねかけたイルカの頬が染まる。
 聞くまでもない。体の、はっきり言うと後ろの準備だ。カカシを迎え入れるための。
 腹の底がふるりと震える。
 それがこれから起こることへの恐ろしさなのか、それとも形がどうであれ、ずっと恋情を寄せていた男に抱かれることへの期待なのか、イルカには分からなかった。

 風呂から上がると、烏が綺麗に畳んだ薄衣を持って控えていた。
「お召し物はこちらになります」
 両膝を突いて捧げるように差し出してきた衣は、紗か絽か。
 黒一色に見えるごく薄い生地だが、イルカが手に取ると僅かに紫がかった赤い色合いが腕の内側に影を落とす。
 軽く広げてみると、衣には斜めに二本ずつ線の入った特徴的な菱形の柄がところどころ織り込んであった。粗い目の生地なのに、さらりとしていながらもしっとりと吸い付くような手触りで、あまりの布の見事さにイルカは今の自分の状況も忘れてつい堪能してしまう。だが、この薄衣一枚では着物とはいえない。襦袢や帯はどこに、と辺りを見回していると、烏が立ち上がって薄く微笑んだ。
「こちらの紋紗は一枚でそのままお召しになってくださいませ。帯はこの扱きで」
「え、でも」
 紗は本来襦袢の上に重ねるものだ。一枚で着たら全身が透けて丸見えになってしまう。そういえば下着も用意されていない。
 そこでこの薄衣だけを着せる意図に気付いた。
 これは伽役としての衣装なのだ。
 この肌の透ける薄衣をまとって男を誘えと――火影をその気にさせろと言っているのだ。
 改めて突き付けられた事実に、イルカはごくりと唾を飲む。
「御伽の際、貴方様は枕元に控えて六代目様のお越しをお待ちください。そして六代目様がいらしたら『火影様のお情けを有り難く頂戴致します』と口上を述べてくださいませ。あとは六代目様にお任せくだされば」
 淡々と手順を説明する烏に、イルカは我に返って小さく頷いた。
「それでは六代目様の御寝所にご案内致します」



 またしても薄暗い廊下を進んだ突き当たりで、烏の足が止まる。
 すらりと開けられた襖に顔を上げたイルカは、目の前の光景に息を呑んだ。
 枕元に置かれた行灯の揺らぐ仄明かりに、てらりと艶めかしい光を放つ真紅の布団一式。
 これではまるで――
(遊女の寝具じゃないか……っ)
 イルカはぐうっと奥歯を噛み締めた。
 遊郭で特に格の高い太夫の寝所では黒、或いは真紅の絹の寝具を使う。抜けるような白い肌が、最も妖艶に映える色だからだ。
 若い頃は遊郭の上客として通い詰めていたという噂のあったカカシのことだ。それを知らないはずがない。
 この真紅の寝具は、あくまでもイルカを伽役として扱うというカカシの意思表示としか思えなかった。
「火影様の御伽役、どうぞ恙無くお務めくださいませ」
 烏の言葉に我に返ると、彼は頭を下げてするりと襖を閉じた。
 ぽつんと一人、寝所に取り残されたイルカは、身の置きどころがなく布団の回りをうろうろする。部屋はそれほど広くはなく、掛け軸のかかった床の間、その手前に置かれた香炉からは緩く煙が立ち上っていた。他は縁側に面した障子の手前に立ててある布をかけられた姿見と、行灯の側に置かれた小箪笥以外は何もない。その簡素さが中央の赤い寝具を一層卑猥なものに見せていた。
 そういえば枕元に控えてと言っていたなと烏の言葉を思い出し、枕と行灯の間のできるだけ寝具から離れたところに正座をする。
 すると襖の向こうから、ひたひたと密やかな足音が近付いてきた。三つ指を突いて頭を下げるべきか迷っているうちに襖が開く。
 そこに立っているのは見間違うはずもない、六代目火影だった。
 誰もが知っている背に六火と染め抜かれたベストの、唯一無二の火影服。上忍時代から変わらず嵌めている手甲と腕には木ノ葉の腕章、額当てもきちりと巻かれている。
 一分の隙もない出で立ちの中、素足の白い甲だけがやけに艶めかしく見えてイルカの胸がどきりと跳ねた。
 慌ててそこから目を逸らして顔を上げると、無言で見下ろしているカカシと視線がぶつかる。
「ほ……っ、ほか、げ、様の」
 ――しまった、口上を言い損じた。
 イルカは乾いた喉に無理やり唾を飲み込み、改めてそらんじる。
「火影様のお情けを有り難く頂戴致します」
 手を突いて頭を下げると、カカシはすたすたと脇をすり抜け、布団の真ん中に片膝を立ててどかりと座った。
「見せて」
 口布を下ろした顔はひたすらに端正で。
 その作り物めいた無機質な美しさは、まるで陶器の人形のようだった。
 品定めをするようなその静かな眼差しに、イルカは息を呑む。
「こちらに来て、もっとよく見せてください」
 伸ばされた手に、暗示にかかったかの如くふらふらと膝を進めると、手首を掴んで引き寄せられた。
「……うん。その紋紗、似合ってますね。良かった」
 その面には笑みも昂りもなく、商品を買い取ったオーナーのように満足げに頷くだけのカカシに、イルカの頭にカッと血が上る。
 だがその衝動はすぐに驚きに取って代わられた。
 カカシの手が薄衣の胸元から差し込まれたからだ。手首を掴んでいた手は腰に回り、ぐいと抱き寄せられてカカシの膝に乗り上げるかたちになる。
「カカシ様、どうして……っ」
 思わず零れ落ちたイルカの声に、カカシの動きが止まる。胸元を見下ろすと、イルカの両手が突っ張るように押し返していた。
 その手はどこか縋り付くようにも見えて。
「それは質問? それとも拒絶の意思?」
 カカシはイルカの手に優しく自分の手を重ねると、払いのけるように胸元から外す。
「うみのイルカ中忍」
 フルネームに階級を付けて呼ばれたことで、イルカはぎゅっと閉じていた目を開いた。
「あなたに拒否権はありません」
 丁寧だが支配的な声に、イルカは初めてカカシを真っ向から見る。
 温度の感じられない、無の表情。
 ただ、先ほどまでは欠片も無かった情欲だけが、深灰色の双眸に燃えている。
 そこにはカカシ様も、もちろんカカシさんもいなかった。
 六代目火影ですらなかった。
 いるのは誰も知らない、誰も見たことがないであろう、はたけカカシという一人の男だけだった。
 カカシの手が再び胸元に入れられても、今度は押し返す手はない。薄衣の中を滑る手が胸の突起を見付け、数本の指先で順に弾くように撫でる。そして掌で胸を包むと、突起を潰して転がしながら揉み上げた。
「……ここはまだ感じないみたいですね」
 そう呟くと薄衣を肩から滑り落とし、胸下からぐっと揉み上げた柔らかい筋肉の膨らみに口を付ける。
 女のように扱われることにイルカの腹が煮え、とっさにカカシの手を振り払いそうになったが、まさにこれこそが伽役の仕事なのだと唇を噛み締めた。
 カカシの唇は胸を這い回り、刺激できゅうと尖り始めた乳首を強く吸い上げる。
「んっ」
 その強さに思わず声を上げると、カカシは乳首を含んだまま舌先で転がして押し潰し、ちゅくちゅくと柔らかく吸い付く。そしてべろりと舐め上げると目線だけをイルカに向けた。
 深灰色の双眸には、静かな欲望の炎と、なぜか――ほんの僅かな躊躇いと怯え。
 それを見付けてしまったイルカは、何か考える前についカカシの頭を抱きしめていた。
 拒否できない任務とはいえ、受け入れると決めたのはイルカ自身だ。何がカカシを怯えさせ躊躇わせているのかは分からないが、そんな必要はないのだと抱きしめる腕で、受け止める胸で反射的に応えていた。
 その覚悟が伝わったのかは分からないが、カカシの唇と手が何か吹っ切れたかのように遠慮がなくなる。唇と舌が胸を味わうように執拗に動き、薄衣の上からイルカの股間の膨らみを撫で回した。
「少し勃ってきましたね」
 ほら、と布ごと緩く握られ、イルカの両脚に力が入る。男の急所をこんな風に男に触られたことなど一度もない。ふふ、と含み笑いを零したカカシを見ると、にんまりと意地の悪い笑みを返された。
「この布、紋の入ってる部分以外は透けてるでしょう? イルカのやらしいところが全部見える」
 カカシのあけすけな言い様にイルカが下腹部を見下ろすと、黒っぽい布を兆し始めたモノが押し上げ、うっすらと形を露わにしている。
 いきなり呼び捨てにされたことも忘れ、恥ずかしさで顔を背けたイルカにカカシはさらに顔を寄せてきた。
「この模様はね、うちの家紋なんです。それがあなたのおちんちんに張り付いてて、これが俺のものって印みたい」
 先ほどの怯えも躊躇いも見間違いだったかと思うほど、カカシは饒舌に語った。幼児に使うような言葉までわざとぶつけてイルカの羞恥を煽ろうとする。
「ね、舌出して」
 躊躇いながらも従順に舌を出すと、カカシはまたしても嬉しげに見つめてイルカの舌の表面をべろりと舐める。そこにびりりと走った電流のような感覚にびくりと肩が跳ねてしまい、イルカは自分の過剰な反応に驚いた。
「舌、そんなに感じるんだ? 呪印のせいかな。そんな効果はなかったはずだけどねぇ」
 目を細めたカカシが、顔を覗き込みながら布ごと熱棒を握った手をゆっくりと上下に擦ると、親指で先端を撫で回した。
「ん、……っふぁ」
 開いたままの口から間抜けな声が漏れ、イルカは慌てて舌を引っ込めて口を押さえた。
「ダメ。ちゃんと声を聞かせて」
 口を覆った手越しにカカシが真剣な顔で乞う。
 イルカに拒否権はない。閨においては、どんなことでも。だがそれ以上に、ただカカシの望みに応えたかった。
 ゆるゆると手を下ろすと、狙いすましたかのようにぺニスの先端を布の上から親指で抉られる。
「ああ……っ」
 強い刺激を与えられ、イルカは思わずため息のような嬌声を上げてしまった。さらりとしていた布は、今はもうしっとりと濡れてイルカの雄の形に張り付いている。
 カカシの手がイルカの頭の後ろに添えられ、押し倒されたと思ったら布団に髪が広がる感触があった。片手で髪紐を解くその手慣れた仕草に、イルカの胸がじわりと焼ける。
「そんな顔してもやめないよ」
 一瞬歪んだイルカの顔を拒絶と捉えたのか、カカシはイルカの脚の間に自らの股間をぐりと押し付けた。
 今さらながら、カカシが自分の体を前に興奮して勃っていることに驚く。伽役に任命されたとは言え、イルカには未だにカカシの真意が読めなかった。これだけ不埒なことをされていてもなお、イルカの体を我が物にすることが目的とは思えなかったのだ。
「勃ってる……」
 思わず呟いてしまうと、カカシは少し怒ったような顔でイルカを見返した。
「当たり前でしょう」
 同じ男を相手に、何が当たり前だというのか。怪訝な顔でイルカも見返すと、カカシは気まずそうに目を逸らす。
 だがすぐに熱を孕んだ濃灰色の眼差しが戻ってきた。
「ここ、使ったことある?」
 カカシの指が無遠慮にここ、とイルカの後穴をぞろりと撫でると反射的にきゅっと締まる。固く目を閉じたイルカが首を左右に振ることで答えると、「そう」と嬉しげな声が返った。
 カカシが枕元の小箪笥から茶色のガラス瓶を取り出し、手甲を嵌めたままの手の平にとろりとろりと垂らすとイルカのモノを握った。紗とは違う革の感触と、オイルのような液体の滑りでイルカはあっという間にカカシの手淫に陥落してしまう。
「ぅ……んん、っあ」
 一度解放された声は途切れることなく上がり続けた。垂れ落ちたオイルと体液の混ざったものをまとったカカシの指先が陰嚢をやわやわと揉み、会陰を辿ってその奥の固い蕾に押し入る。その違和感にびくんと固まるイルカを宥めるように、熱棒にふぅと息を吹きかけて舌を這わせながら指は増やされ、内側の肉をぐにぐにと捏ねた。
 ふと、イルカは自分の肌に、体の中に触れる違和感に気付いた。
「カカシ……さ、ま、……手甲外さない、と、ぁあっ」
「いいよそんなの」
「でも汚れ……ひうっ」
 肉襞を探るように蠢いていた指がイルカの前立腺を捉えた。ゆるゆると撫で、柔らかく押すのに合わせてイルカの声がなだらかに高くなっていく。耐え切れず腰を震わせて達すると、休む間もなく俯せに返された。
「ほら、見て」
 カカシの囁きに指す方を見ると、まだ先端から零れる精の残滓が真紅の布団を白く点々と汚している。
 火影の寝所の、恐らくは絹であろう高級な布団を己の劣情で汚してしまった。その罪悪感と視覚に訴える紅と白の卑猥さに、イルカの胸が背徳感からか奇妙な興奮に襲われる。
「ぁ……、や、」
 半ばぼうっとしたままのイルカの両脚を、カカシが脚で挟んでしっかりと閉じて押さえ、腰だけを持ち上げる。そしてイルカの尻と脚の付け根の僅かな隙間に、猛り切ったぺニスをぐいと突っ込んだ。
「ぁ、え……? ンあ、だめ、まだ、やぁ……っ」
 悦楽の余韻で過敏になった陰部を、カカシの雄がずりゅずりゅと往復する。会陰を、陰嚢を、性器の裏側を傍若無人に犯されても、イルカには為す術がなかった。
 ひっ、ひっと苦しい息の中、背中に覆いかぶさってくるカカシの重みを感じる。
 だがそれは肌と肌の交わりではなくて。
 ごわつくベストが擦れる感触に、見えないカカシの表情に、再びうねりを増す快楽の波に。いろいろな感覚と感情がごちゃまぜになったイルカは、翻弄されるがまま意識を手放した。