【Caution!】

全年齢向きもR18もカオス仕様です。
★とキャプションを読んで、くれぐれも自己判断でお願い致します。
★エロし ★★いとエロし! ★★★いとかくいみじうエロし!!
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 夏休みが終わり、伽に呼ばれる頻度もほとんど元通りになった。
 年末年始や春休みなど長期休暇の時はまた増えたので、基本的にはイルカの勤務時間に配慮されているようだ。カカシが外遊に出る時などは長く間が空くこともあるが、その後は埋め合わせとでもいうように続けて呼び出される。
 今まで考えが及ばなかったが、もしかして。
 ――自分以外にも伽役がいるのではないか。
 その可能性に気付いて、イルカは暗澹とした気持ちになった。
 外遊には夜の接待が付き物だから、カカシは断れないこともあるかもしれない。そういう時に伴侶や専属を連れていると体よく断れるのに、イルカを伴うことはなかった。カカシのことだから、長く休んでイルカの仕事に支障がないようにという配慮なのだろうが、その裏で他の、たとえば艶やかな女性が閨に侍っているのだとしたら。
 イルカと同じように、舌の奥に呪印を持つ誰かが。
 あのベストに包まれたカカシの体を慰める者が他にもいるかもしれないという思いつきは、折に触れてイルカを苛んだ。
 専属契約は一方通行なのだ。
 カカシが他の誰と夜を過ごそうと、イルカには異を唱える資格も権利もない。他にも伽役がいるのかと詰ることも。それが伽役というものだから。
 直接聞けもしないことで悩むのはやめようと思っても、一人の夜などはどうしてもそこに考えが流れてしまう。
 散々悩んでから自分に任された仕事だけに集中しようと結論を出すまでが、最近のイルカの思考のルーティンだった。

 アカデミー教師と受付という通常の仕事に加え、火影の伽役としての任務をこなす二重生活は、イルカが教頭の職に就いても変わらなかった。
 しかもその教頭職は、火影本人が勧めてきたものだ。
 伽などという役に就く者が、アカデミーの管理職になっていいものか悩んだのだが。
「伽役なんて一時的なものですよね。準備が整い次第ナルトに引き継ぐ、中継ぎの火影ですから」
「そ……っ、うですね……」
 説得の合間に挟まれたカカシの何気ない言葉に、イルカはうちのめされる。
 分かっていたはずのことなのに、気持ちがついていかなかった。
 カカシが火影を降りる時、イルカの役目は終わる。
 今までの上忍と中忍の関係に戻るのだ。
 いや、戻ることすらできないだろう。
 火影を降りたとしても、カカシはずっと『六代目火影』を背負っていくのだから。



「うみのイルカ様、お待ち申し上げておりました」
 決まり文句を述べた烏は相変わらず淡々とイルカを出迎え、湯浴みと着替えを簡単に手伝い、寝所へと案内する。
 二度目の伽以降、世話役の烏が閨に侍ることはなかった。
 イルカもどんな顔でいたらいいか困り果てていたので、烏の着ける半面でお互い表情が見えないことに救われている。
 ただ、伽を重ねるごとに、烏が別の意味で気になり始めていた。
 狐の半面と同じくらい抜けるような白い肌と、唇の下にぽつりとある黒子。
 体格といい声音といい比べるまでもなく違うのだが、それでも頭の中で重ねてしまう。
 烏と、カカシを。
「今夜は冷えますので、湯浴みのお時間をゆるりとお過ごしくださいませ」
「……ありがとうございます」
 喋る時にきゅうと引き上げられるその黒子が、同じ動きをしているような気がしてならない。
 半面には目の部分に穴がないのに、その向こうから向けられる眼差しに、時々同じ熱を感じてしまうのだ。
「火影様の御伽役、どうぞ恙無くお務めくださいませ」
 去っていく烏の柔らかな物腰は、どう見てもカカシとは違う。
 違うからこそ、似ているところが目につくのだ。
 たとえ烏がカカシの影分身だったとしても、それで何か変わる訳でもない。
 だがもし烏が影分身だとするなら、カカシはここに、火影の寝所にイルカがいる時には『他人』を入れてはいなかった。その一点が伽役であるイルカへのカカシの誠意にも思えてしまう。
 その誠意が火影としての配慮なのか、カカシとしての気遣いなのかは分からないが。
 そういえば、資料室で襲ってきた上忍の姿も全く見かけなくなった。それに気付いたイルカはこっそり調べてみたのだが、彼は心神耗弱で忍を辞め、忍だった記憶を消されて里を出ていた。
 そこにカカシの名は一つも出ていないが、資料室を飛び出していった時の彼の様子を思い出すと、原因は呪印にあると思っても間違いはないだろう。里の貴重な上忍を、自分を襲ったという理由だけでそこまで追い詰めるものなのかと疑問を抱いたが、恐らくは他にイルカの知らない納得のいく理由があっての追放なのだろう。
 だが、その中に僅かでもカカシの嫉妬と独占欲があるならと、小さな歪んだ喜びが胸に宿った。
 それがたとえ思い込みだとしても、他の伽役がいるかもしれないという澱だらけの胸の内では僅かな慰めになった。
 それに――。
 閨でのカカシは昂りや仄かに嗜虐的な笑みを見せたり、時に独占欲や嫉妬心を覗かせたりと、人形のような無表情もあまり見せなくなっていた。
 カカシと濃密な夜を過ごすうち、少しずつ何かが変わってきた気がする。
 いや、気付かなかっただけで、最初からそれは目の前にあったのかもしれない。
 六代目火影のマントの中に隠している、カカシの本当の気持ちが。
 襖の向こうからひたひたと足音が近付いてきた。
 すらりと襖が開き、無表情であっても以前より柔らかくなったカカシの顔をいっとき見つめてから、イルカは頭を下げた。
「火影様のお情けを有り難く頂戴致します」
 ――この情けには、肉欲以外にも情愛は含まれているのだろうか。
 手甲を嵌めたままのカカシの手が伸び、無言のままにイルカの肌を晒し唇を滑らせていく。
 肌を合わせない伽でも、数え切れないほどの夜を共にして身体だけはお互いに深く馴染んでいった。
 イルカを深く貫くカカシが、欲を浮かべた顔でうっとりと見下ろす。
 その袖をまくり上げた腕に触れると、以前は一切感じられなかったカカシの汗ばんだ肌が、イルカの手の平にしっとりと吸い付いた。